あれは数か月前のこと。深夜に突然、ドカンという音がひびいた。
たぶん、隣人だろうと思い、無視していたのだが、朝、窓の外に置いてあるゴミ箱が、ひっくり返っていた。
たぶん、隣人だろうと思い、無視していたのだが、朝、窓の外に置いてあるゴミ箱が、ひっくり返っていた。
そのさまが、上下さかさまに近い、不自然にみえなくもないひっくり返り方だったため、人間の仕業かもしれない、と思い検証したところ、ゴミ袋の一つが、爪でひっかいたように破れていた。
野良猫が庭を通るのを見たことがあったので、たぶん、猫だろう、と筆者は推察した。
それから約二週間後。
また、ゴミ箱がひっくりかえっていて、同じように破れていた。
そこで、筆者は、ロック式のゴミ箱を入手した。これだと、人間でなければ開けれないはずであるる。
それから約二週間後。
筆者はたまたま深夜に起きていたところ、にわかに、ガタン、と何かが倒れる音がした。
筆者は、そっと外のライトをつけて、カーテンの隙間からのぞいてみた。
すると、動物が二匹、ゴミ箱をひっくり返し、開けようとしていた。
猫が二匹?
と思いよく見た。
なんと、たぬきたった。
だが、ロック式にしたので、いかなる動物でも開けることはできまい、と、やや安心しながら、動向を見守っていた。
すると、たぬき二匹は、両サイドから、物凄い勢いで、ロックをはずそうとしている。
まさか開けれまい、
が、ものの数十秒で、ゴミ箱を開けてしまった。
その手際の良さは、窃盗団、さながらだった。
その手際の良さは、窃盗団、さながらだった。
たぬきたちは、お目当てのごみ箱に顔を突っ込もうとした。
このまま荒らされると、これから先、同じことの繰り返しで、手の打ちようがない。なにしろ、寝静まった時間を見計らって犯行に及ぶのだから。
これはまずい、と思い、筆者は、ドン、と窓を叩いた。
これはまずい、と思い、筆者は、ドン、と窓を叩いた。
すると、たぬき二匹は、こっちを振り返った。
目が合った。
すると、にわかに、向かって右側のたぬきは、猛ダッシュで逃げた。
しかし、左側のたぬきは、こっちを見たまま動かない。
こう着状態が数秒続いた。
もっと驚かせよう、と筆者は、窓を開けて、あえて、こぶしを振り上げた。
もっと驚かせよう、と筆者は、窓を開けて、あえて、こぶしを振り上げた。
たぬきは、数メートル下がって、間合いをとり、まだこっちをジッーとみている。人間に多少、興味を持ったようである。
すると、にわかに、うちのかみさんも起きてきた。
加勢が入ったことに驚いたのか、たぬきは、ダッシュでしりぞき、二メートル近くあるフェンスを、ピョン、と軽く飛び越えて、去っていった。
その後、たぬきは、肝を冷やしたのか、来なくなった。
なお、筆者はこれまで、皇居の東御苑を散歩しているとき、たぬきを見かけたことはある。が、近づくと、サササっと隠れてしまうので、マジマジとみたことはなかった。
また、この横浜市の片隅のわが栄区にきてから、小高い山を散策した際、たぬきとみられるガサガサっという物音はしたが、姿をみることはできなかった。
要するに、たぬきというは、警戒心が強く、めったに人前に出てこないもののようである。
そのたぬきを、数十センチの距離で、活発に賢く動いている姿を見るという、稀有の経験をした。
その姿は、映画「平成狸合戦ぽんぽこ」で描かれるリアルなシーンの姿と酷似していた。
その賢さ、身体能力を目の当たりにした筆者は、古来、たぬきは、へんげして人をばかす特殊な生き物、とされているのが、なんとなくわかった気がした。