2018年03月03日

ルポ猫を飼う いきさつ 五



 ふじちゃんが、カミさんの実家でくらす、という選択肢がなくなった。

そこで、意を決し、引っ越すことに、決めた。改めて。


そのとき、カミさんは、いま住んでいるところで、猫が飼えないか、念のため、大家さんに聞いてみたい、という。もともと、ペット可マンションではない、と聞いていたので、大家に聞いても無理だ。


 と確信しつつ、筆者は、大家のいるとある場所へ行き、


「猫、飼えないですかね?」


と聞いた。


「飼えません」


と大家は即答した。


それを伝えたところ、カミさんは、仲介した不動産の担当者に、手紙を書いた。


本当にこの物件が気に入っていたけど、どうしても猫を飼いたいので、引っ越します、短いあいだでしたが、いままでありがとうございました、という意味のことが、つらつらとつづってあった。


そして、いざ、引っ越し、という段になる直前に、ささやかな、奇跡が、起こった。


手紙を読んだ不動産の担当者が、カミさんに電話をし、にわかに、こう切り出したのだ。

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2018年01月27日

ルポ猫を飼う いきさつ 四

 こうして、フジちゃんと、カミさんの実家のオス猫を、居間のガラス窓越しで、引き合わせることとなった。


すると、実家の猫のほうは、ニャンニャンと親しげに鳴いて近付いた。


だが、意外にも、フジちゃんのほうは、プイっと横を向いて無視した。気に食わなかったのだろうか。


そして、「なんだ、ほかの猫がすでにいる家なのか。こんな家に興味なし」、という感じで、さっさと庭の外に出て行ってしまった。


実家のオス猫が、新手のフジちゃんを追い返そうとするならわかる。が、野良猫で日々ひもじい思いをしているフジちゃんが、こういう態度をとるとは、思わなかった。


人間なら、もっといやしく媚びへつらって、飼われようとすることだろう。


要するに、たとえ雨露をしのぎ毎日食事が出る生活が送れるとしても、自分以外の猫のいる家に住むくらいなら、飢えや寒さに苦しんでも、我が道を行く、というプライドが、ほとばしっている。


 司馬遼太郎氏の「街道をゆく」に、モンゴルには「悪く生きるより、よく死ね」という言葉がある、とあったが、猫の生きざまにも共通する。


この気位の高さ――。


人間も猫を見習うべきである。

 (続く)

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2018年01月03日

ルポ猫を飼う いきさつ 三


  そして、悲しみのなかで考えた。


 実は、カミさんの実家では、すでにオス猫を一匹飼っている。が、もう一匹は飼えない、という。


なんでも、以前、カミさんが飼っていたメス猫が、カミさんの国家試験の勉強のさ中、膝に乗ったり、部屋にいたりで、合格の結果が出る直前まで見守り、息を引き取った。


  カミさんは応援してくれたその猫のことを感謝し、今も、居間にその猫の写真を飾っている。

  そしてその猫は生前、カミさんの実家に一匹だけで住んでいたところ、ある日、オス猫もあらたに飼うことにした。すると、メス猫のほうの食が細り、ストレスでずいぶん苦しんだ。結局、その後、オス猫が、家でぬくぬくと生きることを潔しとせず、血気のままに家を飛び出し、再び一匹になったことで、ストレスは解消された。


そういう経験をしたため、猫を一匹飼って、あとから猫をあらたに飼うと、前からいた猫が、苦しんでしまう、だから、実家でフジちゃんは飼えないという。


 だが、それは猫によるのではないか、と筆者は思った。


まず、フジちゃんと顔合わせして、相性がよさそうか、たしかめてみる価値はあるのではないか。

(続く)

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