2016年01月30日

“核”情報流出…原発再稼働で高まるテロリスク

 平成二十八年一月二十五日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「“核”情報流出…原発再稼働で高まるテロリスク」


 を企画、取材、執筆しました。



23日付朝刊の毎日新聞に、「核検査機関情報流出 複数共有ソフト使用か 昨年10月、不正使用を幹部に報告」という記事が出た。それによると、公益財団法人「核物質管理センター」は22日、職員のパソコンから外部へ不正な通信があったと発表したという。

 核物質管理センターとは、「原子炉等規制法に基づき、核物質が平和利用に限って使われているかを調べる指定検査機関。職員は約160人。原子力施設が保有するウランやプルトニウムの量を調査したり、国際原子力機関(IAEA)の査察に同行して核物質の濃度や組成を分析したりする役目がある。1972年に民間の出資で設立され、99年に指定機関になった。青森県六ケ所村のほか、原子力施設が集まる茨城県東海村にも事務所がある」。

 記事によると、核物質管理センターの「六ケ所保障措置センター」(青森県六ケ所村)勤務の40代男性主査が、「迅雷」という中国製の共有ソフトを無断でインストールし、データが流出した。このパソコンに機密情報は保存されておらず、重大な情報流出はなかったとみられるという。

 また、昨年7月に同センターが購入した台湾製のハードディスクに「ビットトレント」という別の共有ソフトが入り、これを介して米国などのサーバーから698回の不正アクセスを受けた。データ流出はなかったという。同センターは会見で、「この2種類のソフト以外は使用していない」と説明した。

 だが、この会見には虚偽がある。記事によれば、「同センターの内部資料によると、昨年1月には『eDonkey』というさらに別の共有ソフトによる外部との通信が確認されていた。データ流出の有無は確認できていないが、同月末に職員に対してファイル共有ソフトの削除を命じる通知が出された。

 さらに、同センターは昨年8月下旬、情報漏えい対策のため、民間会社に委託して外部との通信の常時監視を始め、その結果をまとめた内部資料に『多くの不正なメール、Web閲覧、P2P(ファイル共有)ソフトの不正使用が検知された』と記されていた。

 この資料は、昨年1029日に開かれた村上憲治理事長ら幹部職員が全員出席する同センターの企画運営委員会で報告された。ところが、22日の会見で責任を問われた村上理事長は『(今月まで)私に報告はなかった』と釈明し、謝罪も拒否した」という。

 つまり、核物質の管理に携わる団体のトップ自らが、“サイバーアタック”にさらされている事実を隠ぺいし、シラを切っているというわけ。

 “サイバーアタック”とは、「インターネットを通じ、企業などのシステムを攻撃する行為。標的とする団体や個人の持つサーバーや個別のパソコンに不正ログインし、そのシステム内のデータを改ざん、破壊、盗むなどするのが一般的である。攻撃対象を社会基本インフラや政府機関をとしたものは、特にサイバーテロともよばれる」(ニッポニカ・プラスより)

 ちなみに、115日付ニューヨークタイムズによると、原子力発電所を乗っ取り、破壊したり、原発の核物質を盗むのを防ぐ機能を麻痺させるためには、“サイバーアタック”が最も効果的で簡単な方法だが、アメリカのシンクタンク「核脅威イニシアティブ」の調査によると、20か国の使用済燃料中間貯蔵施設と原子力発電所には、サイバーアタックを防護するための政府の規制がないという。

 その20か国のなかには、アルゼンチン、中国、エジプト、イスラエル、メキシコ、北朝鮮を含んでおり、日本はリストには入っていないが、実際は、冒頭の事件に象徴されるように、おそまつな実態がある。原発再稼働と称して全国でどんどん原発を動かしつつある日本は、“サイバーアタック”による原発事故というリスクにもさらされることになる。(佐々木奎一)
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2016年01月27日

甘利明TPP担当大臣の金銭スキャンダル報道

 平成二十八年一月二十二日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「甘利明TPP担当大臣の金銭スキャンダル報道」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの各紙は「甘利氏、与党から進退論 業者と面会認める 金銭授受疑惑」(朝日新聞)、「甘利氏、金銭授受疑惑で『曖昧』答弁に終始、建設業者と面会認める、辞任は否定、『法律違反ない』」(日本経済新聞)、「甘利氏『調査に時間』口利き疑惑 閣僚辞任は否定」(毎日新聞)といった見出しで報じている。

 これは今週発売の週刊文春のスクープである甘利明経済財政・再生相の金銭スキャンダル報道について、昨日の国会で甘利氏が野党が追及を受けたことにまつわる記事。週刊文春のスクープの概要は次の通り。

 告発者は千葉県白井市にある建設会社Sの総務担当者・一色武氏(62、実名)。一色氏は自身も会社を経営しており、甘利氏の支援者でもある。これまでの金銭授与などのやり取りについて、一色氏は、自分の身を守る手段として録音し、いつ誰とどこで会ったかを記録に残し、領収書はメモと一緒に保管してきた。口利きの見返りとして甘利大臣や秘書に渡した金や接待で、確実な証拠が残っているものだけでも1200万円に上るという。

 最初のきっかけは、S社がUR(独立行政法人 都市再生機構)の道路建設を巡り、度々トラブルが生じ、2013年頃、URS社の間で補償の話が持ち上がったことにはじまる。URとの交渉は難航するばかりだったため、一色氏は甘利事務所に頼った。

201359日、一色氏は大和事務所を訪ね、数か月前に知人の紹介で知り合った甘利氏の公設第一秘書の清島健一氏(39)に、「何とかしていただけませんか」と相談。清島氏は真剣に話を聞き、「私が間に入ってシャンシャンしましょう」と言い、URに内容証明を送ることを提案。その後、別の秘書を現地に行かせるなどし、3か月後にS社はURから約22千万円の補償金を手にしたという。

 清島氏の尽力に一色氏は、さっそく820日に大和事務所を訪れ、お礼を言い、現金5百万円を持参した。事務所を入った右手に応接室があり、そこで現金を出すと、清島氏はスタッフがいる広い部屋に行き、大きな声で「一色さんは約束を守る人だね」と、現金を見せびらかしたという。その後、500万円分の領収書を渡したが、後日、金額を200万円分に差し替えるよう指示。つまり、300万円は闇金になったという。

 そして、このお礼の後、一色氏とS社の社長は、甘利大臣と面会することになった。1114日、大臣室で、S社社長が、桐の箱に入ったとらやの羊羹と一緒に紙袋の中に、封筒に入れた現金50万円を添えて、「これはお礼です」と言って甘利大臣に手渡した。紙袋を受け取ると、清島氏が甘利大臣に何か耳打ちした。すると、甘利氏は「あぁ」と言って50万円の入った封筒を取り出し、スーツの内ポケットにしまったという。その後、約40分雑談し、記念写真を撮った。

 その後、また新たにURS社が、S社の敷地を巡りトラブルになり、S社にとって不本意な金額の補償金が提示された。そこで、納得できないS社側は、またぞろ甘利事務所に頼った。201421日午前1030分過ぎ、一色氏は、大和事務所の応接室で甘利大臣と会った。一色氏が事情を説明した後、清島氏が「一色さん、例のものを」と小声で言うので、一色氏は現金50万円が入った封筒を大臣に差し出した。甘利氏は「ありがとう」と言って、封筒を受け取った。その後、記念撮影をしたという。
 なお、この二つの甘利氏の金銭授与は、いずれも、現金を銀行でピン札(新札)に替えて、札のナンバーのコピーもとっているという。

 ほかにも、衆院選を一か月前に控える20141120日に、一色氏は清島氏から金銭提供の依頼を受け、S社と一色氏の名義で50万円ずつ寄付したり、20151019日には、知人に頼まれて、ある外国人のビザ申請で便宜を図ってもらおうと、甘利事務所の力を借りた見返りに、清島氏に対し、計20万円を手渡した。

 こうした口聞きの「経費」と、秘書に対する食事やフィリピンパブ代などに費やした「飲食費」は、2014年が経費455万円、飲食費211万円、2015年は経費210万円、飲食費160万円に上るという。

 こういうスキャンダラスな人物がTPP交渉を担当しているということは、ごく一部の特定の業者の口聞きに基づいてアメリカと交渉している、と国民に疑われても仕方がない状況といえよう。(佐々木奎一)

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2016年01月24日

長野スキーバス14人死亡事故、国交大臣の責任

 平成二十八年一月十八日、auのニュースサイト


EZニュースフラッシュ増刊号「朝刊ピックアップ」で記事


「長野スキーバス14人死亡事故、国交大臣の責任」


を企画、取材、執筆しました。



 週末の各紙は、スキーバス事故を大きく取り上げている。これは15日(金)午前155分ごろ、長野県軽井沢町の国道18号「碓氷バイパス」入山峠付近(JR軽井沢駅から南約2km)で、大型バスがセンターラインを越えて対向車線側のガードレールを突き破り、約3メートル下に転落して山林内の立ち木に衝突し、乗客・乗員41人のうち、運転手2人を含む男性9人と女性5人の計14人が死亡し、2人が重体、24人が重軽傷を負った大惨事を指す。死亡した14人のうち、大学生が12人(早稲田大3人、法政大3人、東京農工大2人、東海大1人、首都大学東京1人、東京外国語大1人、広島国際大1人)、残りは2人の運転手だった。

 同日夕刊には、すでに「バスを運行していた『イーエスピー』は、運転手への健康診断などを怠っていたとして、今月13日付で国土交通省から道路運送法違反で行政処分(車両使用停止処分)を受けたばかりだった。国交省は昨年2月、イーエスピーに対し、道路運送法に基づき、2014年度中の業務について定期監査を実施した。その結果、13人の運転手のうち10人について、年1回実施すべき健康診断を受けさせていなかったことが判明。また、運行管理者は運行業務に出る運転手と対面して健康状態などを確認しなければならないのに、312回のうち46回で不適切な対応があったほか、初任運転手への適性診断もしていなかった」とある。(毎日新聞より)

 さらに同紙の16日夕刊によると、事故後の国交省の特別監査により、昨年2月の監査以降も、違法が常態化していたという。            例えば、「ツアー終了後の点呼では、運転手同士の引き継ぎ状況を確認することになっているが、イ社は往路の途中で事故が起きたにもかかわらず『終業点呼簿』に運行終了を認める印鑑を押していた。さらに、今回の事故以外の運行で、国の基準を超えて長時間運転していた社員がいる疑いも浮上」したという。

 さらに、ツアー会社の買いたたきも明らかになっている。そもそも124月の群馬県藤岡市の関越自動車道事故(7人死亡、38人重軽傷)により、国交省は、1日の距離の上限を昼間は原則500km、夜間は400kmに引き下げ、基準運賃の下限を引き上げたりしたが、「今回ツアーを企画した旅行会社『キースツアー』のツアー料金は12泊の宿泊費やリフト代を含めて130002万円程度。別の旅行会社は「(中略)うちのツアーは東京―上高地間の場合、バス料金だけで往復14000円以上する。キ社のツアー料金は非常に安い。かなりコストをカットしていたのではないか」(同紙16日付朝刊)、キースツアーは、「道路運送法が定める貸し切りバスの基準運賃を下回る19万円でバス運行を受注していた」(同紙翌日朝刊)という。

 なお、16日付の日本経済新聞によると、12年の関越自動車道での事故後、上述のように国交省が規制を強めた結果、どうなっているかというと、「大手のバス予約サイトをみると、118日出発の東京―大阪間の最安値は2000円。新幹線自由席の7分の1で『規制強化前より安い』(バス事業者)」という。

 こういう状況なので、消費者は、他より格段に安い業者には裏があるとみた方がよさそうだ。

 なお、国交省は2日前にバス会社を行政処分していたというが、同省HPをみても、そのような記載はない。しかも監査してから約1年も処分に時間がかかっている。そして、ツアー会社が、何というバス会社を使っているのかを知る手だてが、消費者には、ない。こうして何重にも隠蔽し、業界のブラック体質を隠匿、放置していたことが、今回の大惨事を招いた大きな原因である。その最大の責任は、国交省のトップである、昨年2月の監査時の国交大臣だった公明党の太田昭宏、昨年10月から就任した公明党の石井啓一の両氏にある。(佐々木奎一)


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2016年01月22日

NHK仏アナウンサー原発事故避難で失職事件、一部勝訴

 平成二十七年十一月二十九日、auのニュースサイト


EZニュースフラッシュ増刊号「潜入! ウワサの現場」で記事


NHK仏アナウンサー原発事故避難で失職事件、一部勝訴」


を企画、取材、執筆しました。



1116日、福島第1原発事故後にフランスに避難し、NHKから契約を解除されたフランス人女性の判決があり、この女性が勝訴したことをメディアが報じていた。

 筆者は2年半前、このフランス人に取材をしている。そこでマスコミのベタ記事ではわからない事件の内幕をお伝えする。

 事件の原告、エマニュエル・ボダンさん(現58歳)は、もともとはフランスで教育関係の公務員をしていたが、日本に観光で来たのを機に、日本を気に入り、日本に住むことを決めた。

 その後、公務員を辞め、フランスの大学で日本語を習得した上で、今から約20数年前に、日本の青山学院大と慶應義塾大でフランス語の教員の契約を結び、念願の日本に住み始めた。ほどなくして、NHKの翻訳の仕事も始めた。

 それは「ラジオジャパン」という海外向け老舗番組の、フランス語のセクションだった。そこでは、各国のニュース等の原稿が英語で送られてくる。それをフランス語に翻訳して、マイクに向かって話す、という仕事に従事した。

 番組は、生放送のときもあれば、録音する場合もあった。担当する番組本数は週34回程度だった。

 「この仕事は、ニュースをよく知っていて、上手に翻訳文が書けて、上手に話す能力が必要です。さらに、チームワークなどの色々な要素の力が求められるので、誰でもできる仕事ではありません。そのためスタッフの入れ替えは少なく、長く仕事を続けるケースが多いです。フランス語のセクションのスタッフ約10人のうち、一番長く続けている人で30年超、その次に長いのが20数年の私でした」とボダンさんは言う。

 一つの番組は1015分。その翻訳を、ボダンさんほか計3人のスタッフが、5分ずつ担当していた。3人で翻訳していたので、融通はきいた。番組収録の直前で、翻訳スタッフの1人が、子どもが病気になったり、電車が止まったりして、「ごめんなさい。今日は行けません」と連絡が入り、残り2人でやることもあった。時には1人で翻訳しなければならない時もあったが、問題なくこなしていた。

 こうして日本で仕事を続けるなかで、ボダンさんは、都内の語学学校「アテネ・フランセ」でも教鞭をとる時期も経て、2011年時点では、慶應大の教員とNHKの仕事を掛け持ちしていた。収入は、NHKが年間約650万円、大学が約430万円だった。

NHKとの業務委託契約は1年更新で、年度末の前に担当者から契約書を渡され、後日、サインして手渡すのが常だった。ボダンさんは、もう20年以上も続けているので、形式的に契約を取り交わす状態で、最後の契約書についても、担当者が「来年もまた宜しくお願いしますね」といって11223日にボダン氏に手渡しており、あとはサインしてハンコを押す作業を残すのみだった。

 こうしたなか、3111446分、東日本大震災が発生した。

 地震発生後、津波により福島第一原発123号機の非常用電源が使えなくなり、格納容器内の圧力は上昇。その後、以下のように立て続けに事故が起きたのは記憶に新しい。

12日午後336分、1号機の原子炉建屋が爆発。

14日午前614分、2号機爆発。

14日午前614分ごろ、4号機の原子炉建屋損傷。

14日午前111分、3号機の原子炉建屋が爆発。

 ボタンさんのメールには、13日以降、フランス大使館から朝、晩、連日、メールが届いた。

 例えば、13日のフランス大使館のメールは、「緊急メッセージ」というタイトルで、こう発している。「これからの進行状況を考えると、東京に住んでいるフランス人は、なるべく東京地方を離れて、日本の南側か、フランスまで逃げて下さい」14日には、さらに強い避難勧告が出た。

 ボダンさんの部署のスタッフは、13日、14日に計約3人が東京を離れた。その間、ボダンさんのもとには、フランスの家族や友人から「早く逃げて!死んでほしくない!!」といった電話が鳴り響いたという。

 そうした中、ボダンさんは他のスタッフたちと「あなたはどうする?」と互いに連絡を取り合った。ちなみに、NHKの上司に当たる人物N氏は、原発事故以降、一切スタッフに連絡していなかった。

 「私が上司だったら、一人一人のスタッフに電話をして、『もう3人、東京を離れました。あなたは、どうするつもりですか?』と聞きます。それが何にも連絡がない。私はどうすればよいのか、悩み、すごいストレスでした」(ボダンさん)

 そして、15日を迎えた。この日は午後14時出社、14時半から番組収録がある日だった。この日、ボダンさんは、朝早くから、三人の翻訳者のうち、最年長で30年以上続けているベルギー人男性B氏に電話をして、今日仕事に行くかどうか確認した。すると、そのベルギー人は「私は行きます」と言うので、ボダンさんは「それでは私の分までお願いします」と伝えた。上述のように、翻訳業務は1人でも十分こなせる。

 そして、出社の3時間前の11時頃、上司のN氏に電話をし、「ごめんなさい。今日から1週間、東京を離れます。今日の仕事は、B氏にお願いしているので、心配しないでください」と伝えた。すると、N氏は、全然驚かずに、こう言うのみだったという。

 「はい、わかりました」

 その後、ボダンさんは、心配だったのでもう一度、ベルギー人B氏に電話をして「もう会社に着きましたか?何か問題は発生していませんか?」と問うた。すると、B氏は無事NHKのオフィスに着いたという。それを聞いて、ボダンさんは安心して東京を離れた。

 なお、3人の翻訳スタッフのうち、もう1人の女性は、ボダンさんがN氏に電話した約5分後に、メールで「ごめんなさい。今日は行けません」と送信して、東京を去ったという。結局、311日以降、ボダンさんの部署のスタッフ約10人のうち、東京に残ったのはベルギー人を含めたった3人だけだった。

15日の番組は、問題なくオンエアされた。

 なお、ボダンさんは例年、3月下旬に一週間、フランスに帰国するのが常で、この年も23日から29日まで帰国することを、31日時点で伝えており、会社側は了承していた。

 こうして東京を離れて約1週間後の324日、「もうすぐ帰りますから」とボダンさんは、上司にメールを送った。

 すると、上司から1行のメールが返ってきた。

 「添付の書類を見て下さい。以上」

 その書類をクリックしてみると、驚くべきことに「契約解除及び申し込み撤回通知」とあり、その下にこう書いてあった。

 「貴殿と平成22325日付けで締結している業務委託契約を本日をもって解除することを通知します」「貴殿との間で、平成23年度の契約を締結しませんので、その旨通知します」

 寝耳に水のボダン氏は、何かの間違いだと思い、10回くらい読み直した。

 「信じられませんでした」とボダンさんは振り返る。

 その後、日本に戻ると、NHKの上司から電話があり、「入館証を返してください。あなたの入館証は無効にしたので、もう入れません。二度と来ないで下さい」という趣旨のことを言われたという。

20年以上も働いたNHKにこのような仕打ちを受けたボダン氏は、ショックで、それ以来NHKのある渋谷には近づけないという。

 ボダンさんは涙ぐみながら声を震わせて、「外国人はすぐ逃げられるからいいよね、という人もいますが、今までの20数年の人生を全部捨てて逃げるなんて、あり得ません。日本は私の国です。私の子どもは、日本人のように日本語を話せるし、日本にたくさんの友達もいます。今は、フランスより日本の方が母国と感じているのです」と語る。

 なお、同僚約6人が同じように東京を離れたにもかかわらず、契約解除になったのはボダンさんただ一人だった。

 その後、ボタンさんは都内の、はなみずき法律事務所の西岡弘之弁護士らに依頼。ボタンさんとNHK、双方の弁護士がやり取りを交わす中で、NHKは契約解除の理由をこう述べ始めた。

 「315日のニュース放送の原稿の翻訳を担当していたにもかかわらず、翻訳2時間前、放送3時間半前になって、『NHKに来られません。状況はお分かりでしょう」と、一方的に電話で通告しただけで、当日の『ラジオジャパン』アナウンス業務及び翻訳業務などを放棄し、当協会の報道業務に多大な混乱と影響を与えました。これにより、当協会は、やむを得ず、契約を解除した次第です」

 だが、上述のように、翻訳業務はベルギー人B氏に頼み、滞りなく放送できていたので「多大な混乱と影響」は与えていなかった。NHKの言い分は不可解といわざるを得ない。

 契約解除が、先にありき、で、理由はあとから取ってつけたかのように見える。ボダンさんとNHK20数年もの付き合いであるがゆえに、原発事故で避難したことに、理屈抜きの感情が噴出したのではないか。本当は自分たちも逃げたいのに逃げられず、仕事をしている。最古参のベルギー人も残っている。それなのに、二番目に古参のボダンさんは逃げた――。その事に対する、恨み、つらみ、裏切られた、という感情である。

 その後、ボダンさんは、なんとか話し合いで契約解除無効の道を模索したが、両者は平行線を辿り、ついに2013115日、NHKを相手取り、地位確認、未払い賃金や慰謝料等1571万円、提訴以降、毎月538千円の支払いを求め、裁判を起こした。

 その判決が今月16日にあり、東京地裁の吉田徹裁判長は、労働契約とはみなさなかったものの、「生命の安全を優先して国外避難した人を無責任と非難できず、契約解除は無効」として11年度分の報酬に相当する約514万円の支払いを命じた。

 会社から理不尽な仕打ちをうけている人は、ボタンさんの姿勢を参考にしてほしい。(佐々木奎一)
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2016年01月19日

日本国内2400万人が使うフェイスブックの闇

 平成二十八年一月十五日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「日本国内2400万人が使うフェイスブックの闇」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの朝日新聞に、驚いたり爆笑している絵文字やハートマーク、親指を突き立てグッドのポーズをしている絵文字の画像入りで、「『超いいね!』『悲しいね』FB、日本でも6つの絵文字に」という記事がある。

 それによると、「世界最大の交流サイト『フェイスブック(FB)』は14日、日本国内でも、利用者が互いのコメントや写真に共感を示す時に押す親指マークの『いいね!』に加え、悲しみや怒りを示すボタン5種類を、同日から順次使えるようにすると発表した」「『いいね!』ボタンを長押しすると、新たに『超いいね!』『うけるね』『すごいね』『悲しいね』『ひどいね』を示す絵文字やマークが浮かび上がって選べる。すでにスペインやポルトガルなどで導入し、日本が6カ国目」という。

 ちなみに、フェイスブックの利用者数は、世界全体で約13.5億人。日本では2,400万人が使っている。(セレージャテクノロジー、153月発表の数字より)

 だが、フェイスブックにはこんな欠点がある、という記事が13日付のジャパンタイムズの記事(ブルームバーグ配信)にあった。

 それは、フェイスブックを使うと、人々は、どのようにして間抜けになるか、という挑発的な見出しの記事。

そこには、こう書いてある。

 なぜ、ソーシャルメディアでは、誤った情報が、急速に拡散するのか?なぜ、それは訂正されないのか?正しい情報を見つけることはとても簡単なのに、なぜ、人々はウソを受け入れるのか?フェイスブックユーザーに焦点を当てた最新の研究では、それは「確証バイアス」のためである、という強い証拠を提供する。(※「確証バイアス」とは、「自分の願望や信念を裏付ける情報を重視・選択し、これに反証する情報を軽視・排除する心的傾向」。デジタル大辞泉より)

 確証バイアスは、オンラインのエコー室(※「演出効果を高めるため人為的に残響・反響を作り出す部屋」広辞苑第六版より)をつくるうえで、重要な役割を果たすことがわかった。

 この発見は、大統領選や国際紛争など、多岐の問題に関係する。

 イタリアのコンピューター社会科学研究所のミッシェラ・デル・ビカリオらによる、その新しい研究は、20102014年のフェイスブックユーザーのすべての投稿をベースに、どのようにFBユーザーが、誤った情報を拡散させたか調査したもの。

 その結果、その研究者たちは、似た考えの人々が集まったたくさんのコミュニティが拡散させているのを発見した。そこでは、たとえ情報に根拠がなくても、誤った情報は、急速に、そのコミュニティ内で拡散する。

FBユーザーは、彼らが信じているメッセージを含んだ話はシェアし、信じていない情報は無視した。そして、その話が、すでに人々の間で信じられている事にまつわること、つまり、いかにもありそうな話であればあるほど、より一層、かれらはその誤報に興味を持って拡散させた。

 確証バイアスの結果、「FB上では、たくさんの均一なクラスター(集団)を形成します。これらのクラスター内では、新しい情報は、友人知人間で、ものの数時間で一気に広まります。その結果、根拠のないウワサ、怪情報、妄想による偏った話が急速に拡散されます。それはFBだけでなく、ツイッターなどのほかのソーシャルメディアでも同様の事態がおこるのは、ほとんど疑いないことです」

 また、同類の集団内で、誤報が広まるとき、人々は、互いに誤報に関与することで、より誤報を信じていくことになる。それに、一度、人々が、いいね、などで他人の同意を得ることを発見したら、彼らはより自信をもつようになり、一層、極端に、誤報を拡散するようになる。例えば、自分自身、半信半疑で、FBに投稿した情報でも、多くの人が同意すると、自分の投稿に自信をもつにようになっていき、誤報を拡散させていく。このように、確証バイアスにより悪循環に陥るという。

 フェイスブックやツイッターなどのSNSのユーザーは、そのことを熟知した上で使った方がよい。(佐々木奎一)

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2016年01月17日

三国志にみる今の政治、軍師のいない野党

 平成二十八年一月八日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「三国志にみる今の政治、軍師のいない野党」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの朝日新聞に「考20164 三国志の教訓 三国志学会事務局長・渡邉義浩さん 1強に対抗、戦略を」という記事がある。

 これは同紙の野党担当記者・菊地直己氏が「安倍晋三首相が率いる自民党1強に対し、多弱な野党は離合集散を繰り返して対抗勢力になりきれない。野党担当記者として、もどかしさを感じてきた。古代中国で三つの国がせめぎ合い、多くの英雄が生まれた『三国志』。日本でも人気の高いこの物語から、今の日本政治に得られる教訓はないだろうかと、研究家のもとを訪ねた」というコンセプトの記事。

 尋ねた先は、三国志学会事務局長、早稲田大教授(中国古代史)で、赤壁の戦いを描いた映画「レッドクリフ」の日本語版監修も務めた渡邉義浩氏。

 同記者が、渡邉氏に対し、自民党に独走を許しているのは、野党陣営の自滅に原因があるのではないか、と問うと、渡邉氏は、こう答えた。

 「後漢末期から三国時代に1強を目指したのが曹操です。漢帝国が混乱して民が飢える中、新たな政治を起こそうと挙兵。天下統一目前まで迫ります。これに対抗したのが孫権と劉備。三国志の物語です」「迫り来る曹操と戦うか降伏するか、孫権陣営は大もめでした。そこで軍師の魯粛(ろしゅく)が主戦論を主張して劉備と同盟を結び、『赤壁の戦い』で曹操を撃退。魏の曹操、呉の孫権、蜀の劉備が天下を三分する三国時代を迎えます。面白いのが天下を三分する目的です。孫権は自国の生き残りのため、劉備は漢再興の足がかりのため。目的は違えど、戦略で一致できたため、共闘したのです」

 これに対し同記者が「弱い勢力が手を結ぶのは理がありますが、簡単に利害が一致するものでしょうか」と問うと、渡邉氏は、こう言った。

 「戦略を実現するため優先順位をどう考えるかだと思います。注目すべきは最も弱小だった劉備に、孫権側が領土を貸し与えたことです。当初は孫権自身も含め国中が猛反発したのですが、魯粛が『劉備が弱いままでは三国の均衡が崩れる』と説得し、反対論を封じ込める。この一報を聞いた曹操は、驚きのあまり筆を落としたと言われています。巨大与党に対する野党の戦略につながる話かもしれません」

 そして、「三国志から現代政治が学び取るべきものとは」との問いに対しては、こう答えた。「志を持つことです」

 最後に取材後記として「大きな目的の前には妥協も辞さなかった三国志を教訓に、党益の追求だけではなく、この国の未来を見据えた野党共闘に注目したい」と記者は記している。

 たしかに、志を持ち、この国の未来を見据えた野党共闘に期待する人は多いに違いない。

 ちなみに、三国志の時代には、「軍師」がいた。劉備には諸葛公明、呉には周瑜や魯粛、魏には郭嘉や荀ケ、そして曹操自身も兵法に精通していた。

 いまの日本はどうか。安倍自公政権は、いいわるいは別にして、平和憲法の改憲という目的の実現のため、緻密に戦略を立てているように見受けられる。例えば、リスク要因は、火種が大きくなる前に摘み取り、国会では野党の分裂状態の継続を心がけている。その手法には、軍師の影がちらつく。軍師の戦略のもと、統率がとれているように見える。

 他方、野党第一党・民主党はどうか。そもそも民主党は、前回の参院選では結党以来最低の17議席で、比例の得票数はなんと公明党にすら及ばない壊滅状態だというのに、風頼み、運頼み、行き当たりばったりで、どうしてよいかわからないまま各自がバラバラに動いているのが実情ではないか。死に体であり、勝てるわけがない。

 三国志でいうなら、いまの野党は、諸葛孔明のいない頃の劉備軍のようなもので、連戦連敗で風前の灯火。

 では、野党に軍師がいないのかといえば、そうではない。国会の外に、野党を勝たせるための戦略を持つ軍師はいるように見受けられる。例えば、慶應大学名誉教授・小林節氏だ。野党は、軍師を迎え入れて、軍師の戦略のもとに動かなければ、赤ちゃん対大人の戦いのようなもので、いくさにならない。(佐々木奎一)
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2016年01月14日

マレーグマ脱走謹慎と動物園という名のプリズン

 平成二十八年一月十一日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「マレーグマ脱走謹慎と動物園という名のプリズン」


 を企画、取材、執筆しました。



7日付の毎日新聞夕刊に、こんな記事がある。それは「マレーグマ 脱走防止、壁改修 昨年『未遂』後謹慎、外遊びやっと 名古屋の動物園」という記事。

 それによると、「昨年5月、獣舎の壁をよじ登り外へ逃げ出しそうになって以降、屋内で“謹慎”生活を送っていた東山動植物園(名古屋市千種区)のマレーグマ『マーチン』(3歳、雄)が、8日から広い屋外運動場へ再び出られることになった。脱走を防止する壁の改修工事が完了したためだ」という。

 昨年の脱走とは、具体的には、昨年55日、屋外運動場のコンクリート壁(高さ約5メートル)の上にマーチンがよじ登っているのが見つかり、職員がデッキブラシなどを使って制止する騒ぎになったというもの。壁のつなぎ目のゴム(幅約3センチ)に爪を引っ掛けたり、壁の突起物に脚を掛けたりして器用に登ったとみられている。突起物は「平らな壁だと殺風景」との判断で取り付けられたが、ゴムや突起物を削り取り、隣接するメガネグマの運動場の壁にも同じ改修をした。

 脱走騒ぎ以降、マーチンは13平方メートルの屋内施設に収容されていた。ストレスから脚をかきむしるなどの行動がみられ、樹脂製のドラム缶で遊ばせるなどして、発散させてきたという。

 一見ほのぼのした記事だが、脱走したのは、狭い獣舎に閉じ込められた生活が嫌だったからではないだろうか?

 そもそも日本の動物園は、動物たちにとって“無期懲役の刑務所”という指摘は多い。例えば、7日付ジャパンタイムズに掲載された時事通信配信の記事によると、つい先日、こういうことがあったという。それは東京都内の「井の頭自然文化園」という動物園にいる、国内最長齢のアジアゾウ・はな子(69歳)の話。

 記事によると、昨年10月、英語のブログで、「日本にいる最長齢の、捕われの身の象は、1949年にタイから日本の動物園に連行された。そこが彼女の終生のプリズン(刑務所、監獄)になることだろう。彼女は、一人ぼっちで、狭くて、無機質で殺伐としたセメント製の檻の中で、絶望的に安心できず、刺激もないまま、ほとんど死んだように、フィギュアの人形のように突っ立っている、と記し、悲しそうな、はな子の写真を載せた。

 この投稿は、フェイスブックやその他のSNSでまたたく間に拡散し、はな子をもっと快適で、ほかの象と触れ合える新しい場所に移すよう嘆願する、30万もの署名が集まった。

 それに対し、園側は、はな子が高齢であり、移動がストレスになることや、はな子は人気があり、この動物園のシンボルであり、はな子が去れば、多くの人たちが悲しむ、といった理由で、はな子を移動させることに反対している、という。

 なお、「とらわれの野生 動物園のあり方を考える」(著者:ロブ・レイドロー、監修:山崎恵子、訳:甲賀珠紀/リベルタ出版)」には、「ホッキョクグマ、ゾウ、イルカ(シャチを含む)、大型類人猿(ゴリラ、オランウータン、チンパンジー)は、動物園にいるべきではありません。動物園では実現困難な、広大な自然空間がなければならず、多くは大家族を必要としているからです」とある。

 そして、動物園には、「5つの自由」が必要という。これは1960年代のイギリスで農場動物を保護するため提唱されたもので、以来、世界中の政府や動物関係団体によって使われるようになった指標。「5つの自由」とは、以下の通り。

1 飢え、渇き、栄養不良からの自由(栄養のある食餌と新鮮な水)

2 肉体的苦痛と不快からの自由(適切な避難場所と快適な気候)

3 苦痛、外傷、疾病からの自由(適切な手当てと獣医師による治療)

4 正常な行動を表現する自由(広く自然な空間とか豊かな環境)

5 恐怖や不安からの自由(隠れ家と動物の気持ちを尊重する飼育員)」

 この中の特に4が、日本の狭い動物園ではネックなる。無論、井の頭自然文化園、東山動植物園だけではない。商業的に成功しているとされる北海道の旭山動物園を含めた多くの動物園で、「動物のプリズン」がまかり通っている。(佐々木奎一)

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2016年01月08日

離婚した男の、子どもとの「面会交流」の実態

 平成二十七年十二月二十一日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「離婚した男の、子どもとの「面会交流」の実態」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの毎日新聞に「離婚後も続く『親子』 子どもの視点必要」という記事がある。それによると、横浜市の商社経営・清水知行さん(32)は前妻と憎しみ合い、口を開けば悪口ばかりの関係となり2011年に離婚。離婚協議では長男との面会を巡り対立し、親権を持つ前妻は「子どもにはもう会わせたくない」とかたくなだったが、清水さんは「父親は自分一人しかいない」と説得し、前妻も納得。こうして長男との面会を重ねるうちに、前妻から声がかかり、運動会など保育園のイベントにも「パパ」として顔を出すようになった。双方、再婚し、今年は互いに新たに子どもも産まれる中で、長男との親子関係は続いているという。

 だが、こういう親子ばかりではない。日本では近年、離婚数は年間20万件以上で推移している。(直近の2013年度は231,383件)。同年の結婚数は660,613件。離婚率は35%、実に3組に1組は離婚していることになる。しかも離婚したうち、子どもがいるケースは135,074件(58%)に達する。そして、親権を持つのは実に84.2%が妻である。

 そうした中、切実に子どもと会いたがっている父親は多い。例えば、離婚した元プロ野球選手の清原和博は、ブログに、「久しぶりに 息子達3人で 焼き肉を食べた あっと言う間に 時間が過ぎた」「別れ際に 最後まで手を振る 2人に涙がでた」、「昨日は久しぶりに 息子と3人でご飯たべた その後 ひとしきり泣いた」「息子が使ってたグラブを見て 今日も1日 生きよう」といった哀愁漂う文面をつづっている。清原は、「息子の存在がなければ、この世にはいなかった」とテレビで打ち明けたこともあり、子どもが人生の支えとなっていることがわかる。

 離婚して親権を渡す多くの父親は、清原のような心境になる。もしも、清原のような父親が、子どもと会えなくなってしまうと、徐々に人格が壊れていくことが多く、最悪の場合、子どもと無理心中をはかってしまう。

 それほど深刻な状況にもかかわらず、世の中には、子どもを連れ去り、父親が「子どもに会いたい」と言っているのに、面会交流をさせない、というケースもある。

 例えば20121029日付AERAの記事「『連れ去り』容認する司法 『子に会えぬ』現役副市長が実名で告発」によると、「栃木県那須塩原市副市長の渡邉泰之氏(39)は、2年前から5歳になる一人娘と一度も会えていない。2010年春、妻が突然、実家に長女を『連れ去』ったためだ。教育方針などをめぐり、妻とは意見がすれ違っていたという。それでも当初は何度か娘に会えていたが、やがて身に覚えのないDVを受けたと裁判所に訴えられ(後に相手方が取り下げ)、以降も様々な理由から、面会がかなわなかった」と訴えている。

 記事では、「夫婦が別居や離婚する際、一方の親が子を連れ去ってしまう『連れ去り』が近年、社会問題化している。子を連れ去ってでも面倒を見続けた方の親に対し、裁判所が監護者の地位を認めることが圧倒的に多かったからだ」という。ここでいう「監護者」とは、子どもを養育する権利と義務である。つまり、連れ去って親になるというわけ。

 なお記事では、「親に会えなくなった子どもは、両親に育てられたり、離婚後も両方の親に会っていた子よりも『自己肯定感』が低くなるという調査結果もある。たとえ離婚しても、両方の親が子育てにかかわるべきだというのが最近の潮流だ」とある。

 子どもを連れ去る、という日本の“悪しき風習”は、国際問題にもなっている。19日付のジャパンタイムズによると、国際結婚後に海外で離婚した日本人が、海外から子どもを連れ去るケースが相次いでおり、“子ども誘拐”の“ブラックホール”として、日本は海外で有名という。

 しかも、日本も締結しているハーグ条約という国際条約では、親権をどちらにするかはもともとの居住地で判断することになっているため、勝手に日本に連れ去るのは違法なのだが、日本の裁判官の多くは、連れ去った親を合法とする判決を下す。また、違法との判決が出ても、母親に子どもの居場所を12か月間隠すよう、弁護士がアドバイスしたりする。そうするよう助言しているウェブサイトもある。1年面倒をみれば、「監護者の地位」を認められるケースが多いためだ。

 そんなわけで、海外から日本に連れ去られた子どもの返還率は3%でしかないという。

 この不名誉な因習をただす必要がある。(佐々木奎一)
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2016年01月07日

党利党略と新聞利権の産物「自公の軽減税率」

 平成二十七年十二月二十五日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「党利党略と新聞利権の産物「自公の軽減税率」」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの朝日新聞に「池上彰の新聞ななめ読み 新聞への軽減税率適用 重み増した報道の責任」という記事があり、こう書いている。

 「20174月から消費税が現行の8%から10%に引き上げられます。これについて朝日新聞1217日付朝刊は、次のように報じています。

 〈最大の焦点だった174月の消費税率10%引き上げ時に導入する軽減税率は、酒類と外食をのぞく食品全般のほか、週2回以上発行する新聞を定期購読する場合の税率を8%に据え置く。法人実効税率は現在の3211%から、16年度に29.97%に引き下げ、企業の負担を軽減する。来夏の参院選を意識する首相官邸の意向が色濃く反映された内容となった〉

 さて、ここで『来夏の参院選を意識する首相官邸の意向』とは、何を指すのでしょうか。食品全般を軽減税率の対象にしたことでしょうか、『週2回以上発行する新聞を定期購読する場合』も参院選を意識しているのでしょうか。

 安倍政権は、新聞に軽減税率を適用することで新聞社に恩を売った。そう受け止めている読者も多いはずです。新聞社は、安倍政権に対し、新聞に軽減税率を適用するように要請していました。頼みを聞いてもらったら、相手から何らかの見返りを要求されること、よくありますね。安倍政権は今後、新聞報道に対し、見返りを要求することはないのか。あるいは、それを仄(ほの)めかすことはないのか。(中略)もちろん現場の記者に、そんな意識はないでしょうが、編集幹部なり経営幹部なりが安倍政権の意向を忖度(そんたく)して指示を下す……。こんなことは考えたくもありません。(中略)

 同日付の紙面で、朝日は日本新聞協会の白石興二郎会長(読売新聞グループ本社社長)の談話を掲載しています。

 〈新聞は報道・言論によって民主主義を支えるとともに、国民に知識、教養を広く伝える役割を果たしている。このたびの与党合意は、公共財としての新聞の役割を認めたものであり、評価したい〉

 新聞協会は、軽減税率に関する与党合意を評価しています。これは新聞に軽減税率を適用することに対する評価でしょうが、これでは、軽減税率全般に関する批判的報道はしにくくなるのではないでしょうか。

 今回の軽減税率は、安倍政権が公明党に配慮して決断したと指摘されています。来夏の参院選で公明党の選挙協力が欲しいからだと。そんな批判を、今後新聞は書けるのでしょうか」

 このように指摘している。

 そもそも新聞社は、ただでさえ記者クラブ制度により言論統制されている上、秘密保護法により、一層萎縮圧力が強まっているというのに、今後は、「軽減税率を外すぞ!」と脅され、さらにさらに萎縮することが容易に予想される。これのどこが、「新聞は報道・言論によって民主主義を支える」姿なのか。

 ちなみに、公明党にとって新聞の軽減税率といえば、支持母体・創価学会の信者たちが定期購読している聖教新聞である。聖教新聞は税抜きで1790円。それが消費税10%になれば1,969円。8%に据え置けば1,934円で、毎月35円、年間420円の差がある。この小さき利権で歓心を得ようようというわけ。

 また、池上氏は「来夏の参院選で公明党の選挙協力が欲しいから」、軽減税率を安倍政権が認めた、と書いているが、これは参院選だけではなく、「衆参ダブル選」での協力が欲しいためだという指摘を1215日付のジャパンタイムズはしている。

 今月はじめ、自民党の幹部から衆参同日選挙の可能性がある、との発言があり、波紋を広げた。このとき、公明党の山口那津男代表は「衆参ダブルは望ましくない」「衆参共に選挙区と比例区がある非常に複雑な選挙で、有権者に党名や候補者名を徹底する大変なエネルギーがいる。(自民、公明両党の)選挙協力の点から決して得ではない」と指摘した。(123日付朝日新聞夕刊より)要するに、ダブル選は、集票マシーンである創価学会の信者の負担が重過ぎる、だからやりたくない、というわけ。

 そうした中、安倍政権は、軽減税率で公明党の言い分を丸のみした。その見返りとしての衆参ダブル選という洞察である。ダブル選で自公が勝てば、憲法改正が現実味を帯びてくる。

 自公の軽減税率は“党利党略”と“新聞利権”の産物である。(佐々木奎一)
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2016年01月06日

自公の「軽減税率」で奈落に落ちる低所得者

 平成二十七年十二月十八日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「自公の「軽減税率」で奈落に落ちる低所得者」


 を企画、取材、執筆しました。



 今日の朝刊は休刊。昨日の朝刊各紙は一面トップで一斉に「軽減税率 食品全般で合意 消費税増税時 財源1兆円規模」(読売新聞)、「軽減税率 外食除く 自公『1兆円』決着 財源明示は先送り」(毎日新聞)といった見出しで報じている。

 それによると、自民、公明両党は12日、消費税率を10%に引き上げる際、現在の8%に据え置く軽減税率の対象品目について、酒類と外食を除く、食品全般(生鮮食品・加工食品)にすることで合意した。「軽減税率に必要な財源(※筆者註:消費税増税で見込んでいた財源から軽減税率により減った分の財源)は、消費増税に伴う低所得者対策分の4千億円を振り替えると決めたが、残る6千億円のめどは立っていない」(朝日新聞)という。

 ちなみに、この財源4千億円の「低所得者対策」とは、「総合合算制度」を指す。総合合算制度は、「医療・介護・保育などにかかる家計の過重な負担を軽減するため、自己負担の合計額に上限を設け、超過分を国が負担する制度。20128月に成立した消費税増税法には、消費税の逆進性を和らげるため低所得者対策の一つとして検討が明記されている。財源は年4000億円を見込む。自己負担の上限は年収の一定割合とし、自己負担額の把握には社会保障と税の共通番号(マイナンバー)を活用する」(時事通信より)

 なお、法律に明記されているというのは、具体的には、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法」の、第七条に、「消費課税については、消費税率(地方消費税率を含む。以下この号において同じ。)の引上げを踏まえて、次に定めるとおり検討すること」とあり、こう書いてある。

 「イ 低所得者に配慮する観点から、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(中略)の本格的な稼動及び定着を前提に、関連する社会保障制度の見直し及び所得控除の抜本的な整理と併せて、総合合算制度(医療、介護、保育等に関する自己負担の合計額に一定の上限を設ける仕組みその他これに準ずるものをいう。)(中略)の施策の導入について、所得の把握、資産の把握の問題、執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する」

 この「総合合算制度」を削って軽減税率を導入するというわけ。

 いうまでもなく、今回の軽減税率を執拗に主張してきたのは公明党である。

 その公明党の井上義久幹事長は昨日の会見で、「軽減税率に必要な財源」について、「社会保障といえども、重点化や効率化は常にやらねばならない課題だ。そういうことを含めて安定財源をきちっと確保する」と述べている(日本経済新聞より)。つまり、年金・医療・介護の支出をカットしようというわけ。

 そもそも公明党は、これまで軽減税率について、「低所得者ほど負担感が重くなる逆進性や消費者の痛税感を緩和し、消費税の引き上げに対する国民の理解を深めることだ」(井上幹事長、1026日付公明新聞)、「低所得者ほど負担感が重くなる逆進性を緩和する視点が重要だ」(山口那津男代表、116日付同)、「Q なぜ軽減税率導入が必要か。A 一つは、所得が低い人ほど負担感が重くなる逆進性を緩和するためです。低所得者は高所得者よりも、家計の消費支出に占める食料費の割合(エンゲル係数)が高くなります。その負担感を軽くするために、食料品の税率は抑える必要があります」(Q&A1124日付同)などと、「低所得者のため」と繰り返してきた。

 それがあろうことか、この軽減税率による、消費税増税分で見込んでいた財源の埋め合わせとして、「低所得者対策」の「総合合算制度」に必要な財源「4千億円」を丸々充てることを決定したのだから、度し難い。

 総合合算制度については、宮本太郎・中央大教授が、125日付毎日新聞朝刊で、こう指摘している。「総合合算制度とは、医療、介護、障害、保育の自己負担分について上限を設けようというものである。医療費の窓口負担、介護保険や障害者福祉サービスの利用者負担、保育料負担は増大傾向にあるが、その総額について、たとえば世帯所得の10%といった上限を決め、それを超える分は公費負担とする。(中略)

 医療などの自己負担および社会保険の保険料は、消費税以上に逆進性がはっきりしている。そして今日の困窮は、病気、障害、高齢者や子どものケアなどの要因が連鎖しつつ深刻化する傾向がある。(中略)

 総合合算制度は、こうした世帯に支援を集中できる仕組みであった。また、今年度にスタートした生活困窮者自立支援制度との組み合わせも期待できた。すなわち市町村が取り組む自立相談支援事業を通じて、困窮者を適切な医療、障害者支援、保育のサービスにつなげることができれば、生活保護の手前の段階での就労支援も効果をあげうる」

 このように低所得者を支援する制度を廃止する公明党は、事実は「低所得者」を奈落の谷に突き落とすような悪政を行っているに等しい。

 もちろん、総合合算制度以外に削除できる財源がないわけではない。

 例えば、1026日付の当コーナーで記載した通り、大雨時に役に立たないダムに毎年2000億円を支出している。そのなかには総額1兆円の八ッ場ダムも入っている。また、たったの120メートルの建設に47億円もかかるスーパー堤防よりも安価で効果的な方法がある。

 ほかにも需要の少ない高速道路やハコモノ、港湾鉄道など、今年度の国の公共事業費は59711億円に上る。

 また、1019日付の当コーナーで伝えたように、ノーベル経済学賞ディートンは対外援助は、無駄なばかりか発展途上国の政治をっかさせるだけだ、と批判しているが、日本の今年度のODA予算は5,422億円に上る。また、存在自体が無駄といわる、高速増殖炉もんじゅの維持費は今年度197億円に上る。ほかにも無数にある天下り先の人件費に、補助金、委託費として血税が注がれている。

 これらを見直せば、食品の税率は8%よりももっと下げることができる。(佐々木奎一)


 ※法律条文の個所を加筆した。

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2016年01月03日

2016年 国内政治編 壊憲の有無を決する今夏の国政選挙

 平成二十八年一月一日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号


 「あのニュース今年はどうなる 国内政治編」の記事 

 「壊憲の有無を決する今夏の国政選挙」

 を企画、取材、執筆しました。


 2016年の国内政治の注目日程は、ズバリ、夏に行われる参院選である。

 この選挙は、自公政権側の視点に立ったシナリオ、野党サイドのシナリオが、いくつか考えられる。

 シナリオ1は、衆参同日選挙である。これは当コーナー1113日付で詳述した通り、衆院の任期は201812月までだが、20174月に予定されている消費税増税が実施されれば、国民の激しい反発により、解散は難しくなることが予想される。

 そうすると、衆院選は今夏の参院選に合わせてくるというのが有力になってくる。

 シナリオ2は、参院選のみ実施するパターンである。

 重要なのは、シナリオ12いずれにしても、焦点は、憲法改正である点だ。つまり、憲法九十六条にある憲法改正の発議には、各議院の総議員の三分の二以上が賛成した上で、国民投票で過半数の賛成が必要とする。その「衆参の総議員の3分の2以上」を、自公政権プラスアルファの改憲勢力でとれるかどうか。これが与党の判断基準となる。プラスアルファというのは、橋下徹氏のおおさか維新の会等である。

 シナリオ1で自公維が衆参で3分の2以上を確保すれば、衆院の任期は2020年夏までとなる。つまり、東京オリンピックイヤーと重なる。すると、お祭りムードのなかで、衆院選の勝算を立てて、じっくりと時間をかけ地ならしをした上で、20182019年辺りに憲法改正を仕掛けてくることが考えられる。しかも、その間、もしも日本国内でテロが勃発したり(もしくはテロリストを泳がせてテロを誘発したり、工作員がテロリストの仕業とみせかけた工作をしたり)、南シナ海や尖閣諸島で、同盟国や日本と、中国との間で紛争が起こり(もしくは日本国民には秘密で中国を挑発して紛争を誘発して)、国民がパニック心理に陥った場合、自公維政権は、それを機に、他国への武力行使や核武装の必要性を訴え、平和憲法を消す憲法改正を発議することだろう。

 安倍官邸が軽減税率で公明党の要求を丸のみしたのも、衆参同日選への布石である。つまり、自民党幹部連が衆参同日選を口にしはじめたとき、公明党は集票マシーンである池田大作教団の信者たちの負担を懸念し、衆参同日選に否定的な発言をしていた。そのタイミングで、ちょうど自民幹部たちがしぶってた公明党のいう軽減税率を、官邸は受け入れた。要するに、安倍晋三首相は、公明党に対し、「貸し」をつくった。衆参同日選を決行するとき、今度は公明党に無理をのんでもらいますよ、という「貸し」である。軽減税率の実現と引き換えに、日本国憲法が改憲され破壊される、という党利党略の取引である。

 シナリオ2の参院選のみ行われた場合はどうか。参院は現状、自民が115(議長含む)、公明20で計135と、3分の2の「162議席」を下回る。ただし、改憲に前向きな維新、次世代の党、新党改革の野党勢力を合わせると、現状で150議席を超えているので、今夏の参院選後の3分の2以上は十分見込める。(参考:1553日付日本経済新聞朝刊)

 ただし、その場合、衆院選の任期が201812月までとなるので、20174月予定の消費税増税後の改憲発議は、衆院選に不利と判断する可能性が高く難しい。となると、9条改正の改憲発議は、今年後半から来年初めくらいしか、選択肢はなくなる。するとテロなどの不測の事態でもない限り、国民投票で却下される可能性が高い。そのため、自公維側は、手始めに、憲法に「環境権」を加えるといった、当たり障りのないもので、改憲の先例をつくることだろう。この場合、その後の衆院選で、与党で3分の2を維持できるかは未知数。つまり、野党が党勢拡大すれば、平和憲法をなくすための憲法改正は、立ち消えになる。

 次に野党の視点でみてみよう。シナリオ3は、野党第一党の民主党が党名を変えるパターンだ。すでに民主党執行部内では、党名を変えないと選挙を戦えない、という共通認識はできているといわれる。あとはいかに党内の軋轢なく党名変更ができるか、はかっている状態。党名が変われば、党の綱領も当然変わる。綱領で自公維の改憲勢力に対峙するスタンスを明確に打ち出し、党名を、立憲民主党、立憲自由党といった、憲法を護ることを国民に知らしめる名にすれば、改憲阻止につながっていく。

 ただし、そうなるには、共産党との緊密な協力が不可欠である。そもそも衰退する野党の中で、党勢拡大を続けているのは、共産党だけである。全国の比例の投票数でみると、共産党は、12年の衆院選での368万票(千以下の端数切り捨て、以下同)から、13年参院選515万票、14年衆院選606万票と、うなぎ昇りだ。その間、自民党の補完勢力である宗教政党の公明党は、700万票台で推移し、直近の14年は731万票。昨年の安保法制の国会審議以降、共産党の主張への共感は拡がっており、公明党の平和の看板は地に落ちていることを鑑みると、次の選挙で共産党が公明党を凌ぐことも十分あり得る。

 そうなると、これまで一人区で自民党は、公明票の上積みで競り勝つことが多かったが、その公明票分を共産党が相殺してお釣りがくる状況なので、一気に政権交代も視野に入ってくる。14年の衆院選の比例の票数でみると、自公合わせて2497万票。他方、野党を合わせると2821万票。野党が結集すると、すでに自公を凌いでいる。もっとも、14年時点では維新の会の838万票が野党に換算されている。このうち、旧みんなの党の多くが野党に残るとしても、仮に旧維新の票のうち6割が与党にいくとすると、自公維で3002万票。一方、野党は2318万票となる。そこから、安保法制、改憲への国民の反対の意思、脱原発の意思表示、民主党の党名変更、共産党とのタイアップを加味すると、いい勝負となるのではないか。そうなると、与党は、ダブル選挙に打って出れなくなる。

 つまり、シナリオ3になった場合、今年の衆院選の芽はなくなることだろう。そうなると、前述のように、当面の改憲は難しい情勢となる。

 シナリオ4は、民主党が何もかわらないまま、“共産アレルギー”により、共産党とも疎遠なまま選挙に突入するというパターン。これは、野党のボロ負け必至で、だからこそ、ダブル選を与党は仕掛けてくる。こうなると、先述のとおり、憲法改正が現実味を帯びてくる。

 シナリオ14のいずれかの組み合わせに向かい、今後進んでいくことになるが、有権者に突き付けられるのは、自公維による改憲の動きをよしとするか、それよりは野党を選ぶか、という選択である。特定の支持政党を持たない多くの有権者にとって、それは、どっちがましか、という、期待感の薄い選択になるかもしれない。そういう状況でも政治に絶望しない、オプティミズム(楽観主義)が今こそ求められる。(佐々木奎一)


 ※軽減税率について加筆した。(2016年1月3日付)


 ※テロや、中国との紛争が、日本政府の不作為や工作、挑発により誘発される可能性について、加筆した。(2016年1月5日付)

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2015年12月29日

施行から1年「特定秘密保護法」の闇


 平成二十七年十二月十一日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「施行から1年「特定秘密保護法」の闇」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの日本経済新聞に「秘密保護法施行1年 監視の実効性、疑問も」という記事がある。それによると、特定秘密保護法の施行から10日で1年が経ったが、「運用実態を判断する情報が不十分との指摘は多い」という。

 同法は毎年1回、特定秘密の指定や解除の件数などを国会に報告することになっており、6月に出た初の報告書によると、特定秘密の行政文書件数は23121件に上った。しかもこれは昨年12月末までの「22日間」のみが対象という。つまり、単純計算で1年間になおすと381万超に達することになる。

 「同報告書で目立ったのは、特定秘密に指定された件名のあいまいさだ。『電波情報、画像情報』(防衛省)、『領域保全の措置、方針』(内閣官房)など抽象的だ」。 

 そして、「同法は運用を監視する政府の仕組みとして、次官級で構成する『内閣保全監視委員会』と独立公文書管理監をトップとする『情報保全監察室』の2組織を設置した」「国会には衆参両院に与野党議員8人からなる情報監視審査会を置いた」が、特筆すべきは、「問題があって是正勧告しても政府、国会の監視機関ともに強制力はない」という点。

 山田健太・専修大教授(言論法)は、「特定秘密保護法のポイントは(1)指定と解除の仕組み(2)運用の監視(3)秘密の取扱者の扱い――の3つ。だがすべてについてどのように運用されているのか疑問が消えないというのが、1年たった現在の状況だ。(中略)中でも監視の仕組みは重要だが、政府と国会の各監視機関が適切なチェックをしているようには見えない。政府内に監視機関がある、是正の強制力がないなど制度の不十分さは明らかだ。改めて厳格な運用の仕組みを作り直すために国会で議論していくべきだ」と指摘している。

 なお、秘密保護法については107日付のジャパンタイムズの社説でも、問題点を指摘している。それによると、アメリカでは、市民が秘密指定の解除を求めるシステムがあり、実際にこれまで1509件の文書が開示されているという。日本には、そういう制度はない。

 なお、憲法学者で弁護士の小林節・慶應大名誉教授は、同法について、こう述べている。特定秘密保護法とは何かというと、政府が何か悪事を隠したとき、政府が指定すれば永遠に我々には見えなくすることができる。アメリカでは20年、30年経てば、自動的に公開される。これは歴史の資料です。

30年経てば、ほとんどの権力者は、生きていないか、施設に入っているような状態になっている。そのときに、「実はズルしてました、アハハ」となる。でも、それは教訓としてのちに、同じような悪事を起こらせないようにするために、歴史的に果たすべきことです。

 これを、日本では、永遠に見せないことができる、「世界でも稀にみる“悪事隠し法”」なんです。

 そして、それに向かってアプローチすると、「お前ねぇ、昔みたいに公務員法違反の懲役2年ではなくて、懲役10年よ」。怖くてみんなブルってしまいますよね。こういうことさせてはダメですよ、と述べている。(121日の横浜市内の集会「戦争法(安保法制)と憲法・教科書問題を考える」(主催:横浜教科書問題市民・有識者会議)にて)

 前述のジャパンタイムズでも、秘密保護法は大幅に改正するか、廃止しなければならない、と訴えている。安保法制と共に次の選挙の争点といえよう。(佐々木奎一)
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2015年12月24日

夫の姓96%、最高裁『夫婦同姓』合憲判決の背景


 平成二十七年十二月十八日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「夫の姓96%、最高裁『夫婦同姓』合憲判決の背景」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの日本経済新聞に「『選択的夫婦別姓』、自民、慎重論多く、民主、法案提出へ」という記事がある。それによると、夫婦同姓を合憲とした最高裁判決を受け、与野党で17日、結婚の際に夫婦同姓か別姓かを選べるようにする『選択的夫婦別姓制度』をめぐり、幅広く議論すべき、という声もあるが、慎重意見が多かったという。

 また、野党の民主党は、来年1月召集の通常国でに選択的夫婦別姓を導入する民法改正案を提出する考えを示したという。

 これは一昨日の最高裁判決による。原告の一人・塚本協子さん(80)は、戸籍上の姓は小島。提訴のきっかけは、民主党政権の2009年に千葉景子法相(当時)が選択的夫婦別姓を可能にする民法改正案法改正に意欲を示したが、連立を組む国民新党の反対で法案の閣議決定を見送ったこと。これを機に「司法が最後のとりで」と計5人の原告団を結成して11年に提訴。国会が法改正を長年放置したため精神的苦痛を受けたとして、計600万円の損害賠償を求めた。

 この最高裁判決が16日にあり、このテーマについての初の憲法判断が下った。

 朝日新聞によると「判決は、夫婦同姓の制度について『社会に定着しており、家族の姓を一つに定めることには合理性がある』と指摘。どちらの姓を選ぶかは当事者に委ねられており、性差別には当たらないと判断した。

 現実には妻が改姓することが多く、アイデンティティーの喪失感を抱くなどの不利益が特に近年増していることを認める一方、旧姓の通称使用が広まることで『一定程度は緩和できる』と指摘。夫婦同姓が、憲法の定める『個人の尊厳』や『男女の平等』に照らし、合理性を欠くとは認められないと結論づけた」

 その一方で、「ただ、この判決が『選択的夫婦別姓が合理性がない、と判断したのではない』とも述べ、『この種の制度のあり方は国会で論じ、判断するものだ』と国会での議論を求めた」という。

 この判決を下した15人の裁判官のうち、5人が「違憲」とする反対意見を述べたが、そのうち実に3人の女性裁判官は全員「違憲」としたという。

 原告の塚本さんは、判決を聞いたとたん、悲しみで涙があふれた。原告弁護団長の榊原富士子弁護士は、「最高裁の女性裁判官が3割にも満たないようなこの状況が、残念な結果を生み出したと思う」と悔しさをにじませたという。(毎日新聞)

 ちなみに、夫婦の姓は当事者に委ねられている、とはいうが、現実は、夫の姓になる割合は実に96%に達する。(2014年に婚姻した夫婦。厚生労働省の人口動態統計より)

 結婚して名字を変えた女性のなかには、一人っ子や、姉妹だけで兄弟がおらず、姉妹には子どもがいないため、結婚により家名が途絶える、という女性も多い。そういう人のなかには、顔は笑って心で泣いた人も無数にいることだろう。

 ではどうすればよいか――。たとえば海外では、ドイツが「夫または妻の姓。合意できなければ、各自の姓、または結合姓(夫と妻の姓の並列)も可」、スウェーデンが「夫または妻の姓。または各自の姓。結合姓も可」、フランスが「各自の姓。妻は夫の姓も可」、タイ「夫または妻の姓、または各自の姓」、トルコが「夫の姓に統一。妻は結合姓も可」、中国と韓国が「各自の姓」、米国は「州によって異なる。ただし、同姓制はない」となっている。(読売新聞)

 このため、海外のように夫婦別姓を可能にするとよい、という声もあるが、その一方で、姓が一つになることで夫婦、家族に一体感が生まれる、という声は根強い。

 だからこそ、今回の最高裁判決になったわけで、国会ですぐに事態が変わるとも思えない。

 それよりも、夫の姓が96%に上ることに疑問を持つ男どもが、この国の男性を代表して、率先して結婚するときに女性の性に変更して、この国の男尊女卑のカルチャーを変えていくべきである。今必要なのは、行動である。(佐々木奎一)



PS:姓を変えることで、喪失感に苦しむことも多い。

 例えば、1217日付の朝日新聞朝刊の「耕論『夫婦同姓』合憲、でも…」で、プロテニス選手・クルム伊達公子は、こう語っている。

 「2001年の結婚で、いったん『クルム公子』になりました。夫はドイツ人のレーシングドライバー、ミヒャエル・クルム。このとき戸籍名から『伊達』をなくし、彼の姓にしたのです。(中略)

 印鑑も『クルム公子』で作りました。『クルムさーん』と呼ばれることが新鮮でしたね。

 でも、しばらくして寂しさがすごく湧いてきました。伊達公子の伊達がなくなる。名乗れなくなる。そのことに喪失感を感じたんです。自分でもびっくりしました」

 また、1217日付の毎日新聞朝刊には、通称の実情について、「労務行政研究所が2013年、企業約3700社を対象にした調査では、645%が旧姓使用を認めている」というがしかし、こうも書いている。

 「事務手続き上の手間などを理由に、旧姓使用を認めない中小・零細企業も少なくない」

 またこう記している。

 「国家公務員も01年から旧姓の使用が認められ、国家資格の司法書士や行政書士も登録名簿に旧姓の併記が可能だ。弁護士も登録は戸籍名だが、仕事上では旧姓が使用できる。

 医師や看護師は戸籍名で登録し、結婚などで姓が変わった場合は、変更の届け出が義務付けられている。ただ、罰則はなく、登録時に発行される免許証を書き換える必要もない。このため、厚生労働省の担当者は『旧姓を使い続ける人も少なくない』と話す。

 一方、公的、法的な手続きには、戸籍名を求められるケースが多い。今回の夫婦別姓訴訟の原告の一人でもある行政書士の小国香織さん(41)は、遺言状の作成を依頼された際、公証人から戸籍名での署名を求められ、戸惑ったという。

 法人登記簿の役員欄は今年2月、旧姓が併記できるように規則が改正されたが、身分証明に使われる運転免許証や住民票、健康保険証などは、氏名の記載を戸籍名に限定している。

 パスポートは、仕事などで必要な場合に限り、旧姓の併記が認められているが、航空券が戸籍名で発行され、混乱を招くこともある」
 このように、通称を使っても仕事に不都合を及ぼすケースもある。




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2015年12月23日

来夏参院選向け空手形・バラ撒き「1億総活躍」

 平成二十七年十一月二十七日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「来夏参院選向け空手形・バラ撒き「1億総活躍」」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの各紙は一面で「低年金者に3万円検討 1億総活躍緊急対策 給付1000万人想定」(朝日新聞)、「保育・介護施設100万人分増 一億総活躍 最低賃金 年3%上げ1000円に」(日本経済新聞)、「『1億活躍』緊急対策 介護受け皿『50万人』明記」(読売新聞)といった見出しで報じている。

 それによると、「GDP(国内総生産)600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」の三つの目標を柱とした「一億総活躍社会」を掲げる安倍自公政権は、この目標達成の具体策を検討する有識者らによる「国民会議」で昨日、実現に向けた緊急対策を決めたという。

 その中身は「年3%の最低賃金引き上げ、将来的に全国加重平均1000円目指す」「低年金受給者を支援(3万円の給付を検討)」「法人実効税率を早期に20%台にする」「介護の受け皿を50万人分拡充し、待機高齢者を解消」「介護福祉士をめざす学生への学費貸し付け対象を大幅拡大」「介護休業給付を賃金の67%に引き上げ」「低年金受給者を支援(3万円の給付を検討)」「結婚に向けた地域での出会いの場の提供」「非正規労働者の正社員転換促進」「不妊治療への助成拡充」「認可保育所の整備などで保育の受け皿を201317年度に50万人分拡充」「三世代同居のための住宅建設や支援」「中小企業のパートも厚生年金加入」など。

 これについて朝日新聞2面の記事「時時刻刻 1億総活躍、苦肉の対策 参院選控え、政策寄せ集め」に、「低年金受給者への給付金は(中略)一度使ってしまえば終わりで、貯蓄に回る可能性もあり、持続的な消費拡大にはつながらない(中略)政府内からは早速、『来夏の参院選をにらんだバラマキととられても仕方ない』(経済官庁幹部)との声が漏れる」「首相が『1億総活躍社会』を打ち出したのは、自民党総裁選で再選が正式に決まった924日。来夏の参院選をにらみ、世論が大きく割れた安全保障法制の影響を払拭する新たなスローガンを掲げる狙いがあった。加藤勝信1億総活躍担当相も今月22日の講演で、首相らと事前に『(安保法制が)一区切りを得た後にはもう一度経済に軸足を置いて取り組むべきだ』と話し合ったことを明かした」という。

 他紙もこの緊急対策については「賃上げのような『民間頼み』の項目や、財源に踏み込まない分野も目立ち、実現に向けたハードルも予想される」(読売新聞)、「『介護離職ゼロ』や『出生率1.8』といった目標はいずれもハードルが高く、政策をすべて実行できても到達するかどうかは見えない。国民の負担増や介護・保育の職員不足への不安も大きい」(日本経済新聞)と、実現不能であることを示唆している。

 なお、「GDP600兆円」についても実現不能という指摘は実に多い。例えば、115日付の文化放送「くにまるジャパン」で政治アナリスト伊藤惇夫氏は、IMF(国際通貨基金)によると、現在、日本のGDPは約500兆円。アメリカが約2000兆円。中国が約1200兆円。日本は第3位。これを600兆円といっているが、それは無理だろう、という声が強い。IMFの調査では世界188か国中、GDPの前年比伸び率トップがエチオピアで10.347%。2位がトルクメニスタンも10%超え。3位がコンゴ、4位がウズベキスタン、5位がパラオ。要するに、上位に入っているのは全て途上国なんです。

 一方先進国で一番上位にきているのがイギリスで2.553%、世界111位。アメリカ115位。ドイツ140位。日本は172位。

 これが一体何を意味するのか。要するに、先進国がこれ以上GDPを伸ばし続けるのは不可能だということを、明確にこの数字は物語っているわけですよ」

 つまり、昨日打ち出した安倍自公政権の緊急対策は、選挙向けの絵空事の夢物語と、低年金者1000万人へのバラ撒きでしかない、ということになる。

 そして、巷間言われるように、選挙が終われば、安保法制のときの同じように、他の政策を棚上げして、今度は憲法改正に血道をあげるのは想像に難くない。(佐々木奎一)
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2015年12月19日

『遺伝子組換えサーモン』表示義務なし

 平成二十七年十一月二十九日付、のauのニュースサイト


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 「『遺伝子組換えサーモン』表示義務なし」


 を企画、取材、執筆しました。



 昨日付の朝日新聞朝刊の天声人語に「遺伝子組み換えサケ、米市場に」とある。それによると、「生きている魚を想像せず、切り身だけを見るなら、これも受け入れられるのだろうか。遺伝子組み換え技術により、通常の2倍ほど速く成長するサケが米国で開発された。それを食品として販売していいと、米当局のお墨付きが出た▼消費者や環境保護の団体は反対したが、早ければ2年後、ピンク色の身が店頭に並ぶ。遺伝子を組み換えた魚だと表示する義務もない(中略)▼このサケ、反対派はフランケン・フィッシュとも呼ぶ。本家のモンスターが科学の積み重ねの上に生まれたように、新型魚にも前史がある。穀物の遺伝子組み換えは普及し、ホルモン剤で牛の成長を速めている国もあるという。怪奇譚か、新たなる正常か。素朴な自然の恵みから随分遠い所に、私たちは来た」

 ちなみに今月20日付のニューヨークタイムズに、この「遺伝子組換えサーモン」の話が詳しく載っている。それによると、遺伝子組換え技術は今、「CRISPRCas9」と呼ばれるゲノム編集技術により、「遺伝子組換え家畜・ペット」への関心が急速に高まっているという。例えば中国では最近、筋肉が増え毛の長い「遺伝子組み換えヤギ」がつくられた。スコットランドの研究者たちは、アフリカの豚コレラウィルスに抵抗力のある「遺伝子組み換えブタ」をつくったという。そして現状、これらが米国FDA(食品医薬品局)により規制されるかどうかは未知数という。

 なお、今回のFDAの承認を受け、消費者、環境団体が猛烈に反対しているため、いくつかの米大手スーパーマーケットでは、遺伝子組換えサーモンを売るプランはない、と宣言しているという。

 なお、売上が減ることを恐れ、遺伝子組み換え食品を自発的に表示しようという会社は、絶無に近いが、成分を開示をせよ、という消費者のプレッシャーの高まりを受け、多くの会社はNon-GMO食品であるという表示はするようになってきているという。

 また、バーモント州では遺伝子組み換え商品の表示を義務化する「バーモンド法」という法律が、来年7月に施行させる予定。そうした動向から、遺伝子組み換えの表示の問題は解決に向かっている、と同紙は述べている。

 だが、たとえバーモンド州で表示されても、一国全体で表示されるわけではない。それに自主的に表示するスーパーが増えるといっても、全てのスーパーというわけではないし、中小零細の店や加工品、外食店などで表示されるのかも疑問。要するに、全く楽観できる状況でない。

 冒頭の天声人語には「▼環太平洋経済連携協定(TPP)では、素性の知れない食品が入ってくるのではとの不安があった。食の安全を守る制度に変更はないと日本政府は言うが、主導役の米国で何が起きているか、よく見ておいた方がいい」と述べているが、TPPは何年かごとに制度を見直す仕組みになっている。そして、米国の食品業界は日本でも遺伝子組換え食品の表示をしなくても済むようにしたい。だから、そのために米政府にいって日本に圧力をかけてくることだろう。TPPの名の下、日本の消費者は、米企業の利益のために、「遺伝子組換え肉・魚・穀物・野菜」を食べさせられる危機にさらされている。(佐々木奎一)




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2015年12月14日

書店、展示会、TV…「偏っている」クレーム続出

 平成二十七年十二月七日付、のauのニュースサイト


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 「書店、展示会、TV…「偏っている」クレーム続出」


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5日付の毎日新聞に「JCJ 岸井氏への攻撃『許さず』」という記事がある。それによると、「TBSテレビの報道番組で岸井成格キャスター(毎日新聞特別編集委員)による安全保障関連法反対の訴えが放送法に違反するという新聞の意見広告を巡り、日本ジャーナリスト会議(JCJ)は4日、『岸井氏への不当な攻撃を許さない』との声明を発表した。JCJは『安保法に対する国民の反対の声を伝えたもので放送法違反ではない』と指摘している」という。

 この意見広告の経緯は4日付の当コーナーで報じた通りだが、「政治的に中立でないので直せ!」というクレームは最近、巷で増殖中だ。

 例えば、今年8月には、市民団体主催の「平和のための戦争展」について、福岡市が「展示予定の漫画が反原発に偏っている」などとして後援を拒否していたと判明。10月には、東京の「MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店」が、書店員の「闘います!」とのツイッターをきっかけに選書が偏っていると指摘され、民主主義を考えるブックフェアを一時中断。11月には、北海道博物館の自衛隊基地問題をめぐる常設展の内容が偏っていると抗議が寄せられ、同館が資料の一部を撤去していたことが判明している。(122日付朝日新聞朝刊「『偏り』『公平』って? 相次ぐ報道批判・書店の自粛」より)

 また、神奈川新聞では、昨年7月に安倍自公政権が集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に踏み切った2週間後から続けている連載「時代の正体」に対し、「記事が偏っている」という批判が来る。これに対し、同紙は「ええ、偏っています」と答えているという。1015日付で同紙はこう記している。

 「私とあなたは別人で、考えやスタンスが同じでない以上、私が書いた記事が偏って感じられても何ら不思議ではない。つまり、すべての記事は誰かにとって偏っているということになる。

 あるいは、やり玉に挙げられるのは安倍政権に批判的な記事だから、政権の悪口ばかり書くなということなのかもしれない。

 これにも『でも、それが仕事ですから』としか答えようがない。権力批判はジャーナリズムの役割の一つだからだ。それは先の大戦で新聞が軍部や政権の片棒を担ぎ、非道で無謀な侵略と戦争を正当化し、美化した反省に基づくものでもある」

 「民主主義の要諦は多様性にある。一人一人、望むままの生き方が保障されるには、それぞれが違っていてよい、違っているからこそよいという価値観が保たれていなければならない。それにはまず自らが多様なうちの一人でいることだ。

 だから空気など読まない。忖度(そんたく)しない。おもねらない。孤立を恐れず、むしろ誇る。偏っているという批判に『ええ、偏っていますが、何か』と答える」

 また、そもそも、今回の岸井氏の件で批判の根拠とされる「放送法」は、戦中、戦前のように、政府が放送媒体をプロパガンダ目的で使うことを防ぐために制定された法律である。(125日付ジャパンタイムズより)

 放送法については、映画監督・テレビディレクターの是枝裕和氏が自身のHPで、第1条二号に「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保する」とあるが、ここでいう「『不偏不党』を『保障』する主体は明らかに公権力です。放送事業者に『不偏不党』を義務付けているのではありません」と言う。

 そして、同法成立期の1950124日の国会審議で、綱島毅電波監理庁長官が「放送番組につきましては、第1条に、放送による表現の自由を根本原則として掲げまして、政府は放送番組に対する検閲、監督等は一切行わないのでございます」と言った事を指摘し、「放送法のこの条文を前後も含めてもう少しわかりやすく現代語訳するとこうなります」といい、こう書いている。

 「我々(公権力)の意向を忖度したりするとまたこの間みたいな失敗を繰り返しちゃうから、そんなことは気にせずに真実を追求してよ。その為のあなた方の自由は憲法で保障されてるのと同様に私たちが保障するからご心配なく。だけど電波は限られてるから、そこんとこは自分たちで考えて慎重にね」

 安倍自公政権や、巷で偏っていると連呼するクレーマーは、この放送法の精神を学習する必要がある。(佐々木奎一)


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2015年12月13日

TBS『NEWS23』岸井成格が1面ぶち抜きで批判受ける

 平成二十七年十二月四日付、のauのニュースサイト


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 「TBSNEWS23』岸井成格が1面ぶち抜きで批判受ける


 を企画、取材、執筆しました。


 けさの朝日新聞に「批判広告『偏った見方』民主・岡田氏」という記事がある。それによると、「民主党の岡田克也代表は3日の記者会見で、TBSのキャスターが安全保障関連法への反対意見をテレビ番組で述べたことに、市民団体が批判の広告を出したことについて『キャスターが自分の意見を言ってはいけない、というのは偏った見方だ』と述べ、懸念を示した。岡田氏は放送法が求める公平性は『一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体で判断すべきだ』と指摘。最近のテレビ番組全般について『自重しているのか、政府にはっきりモノを言う人が減った』と述べた」という。

 くだんのTBSキャスターとは報道番組「NEWS23」のメーンキャスター・岸井成格氏を指す。同氏は安保法案成立直前の916日放送で「メディアとして(安保法案の)廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」と発言した。

 すると、1114日付の産経新聞と15日付の読売新聞に全面意見広告が載った。それはデカデカと人間の両眼のイラスト付きで監視していることを強調した、「私達は、違法な報道を見逃しません」という見出しの広告。本文では、岸井成格氏を名指しし、番組メーンキャスターがそういうことを言うのは「政治的に公平であることなどを定める放送法に反する」と主張している。広告主は、「放送法遵守を求める視聴者の会」という市民団体だが、意見広告が載ると、自民党の礒崎陽輔前内閣補佐官(安保法制について「法的安定性は関係ない」と発言して物議を醸した人物)が、この意見広告は「極めて冷静で妥当な意見です」とツイート。安倍政権との“連携プレー”をうかがわせた。(1126日付日刊ゲンダイ電子版より)

 なお、この市民団体の発起人7人のうち、上智大智大名誉教授の渡部昇一、作曲家・すぎやまこういち、経済評論家・上念司の3氏は「2012年、当時野党だった自民党の安倍氏を『総理大臣に』と推す『民間人有志の会』発起人に名を連ねており、『広告』が安倍政権の後ろだてにしたメディア攻撃の一環」(1130日付赤旗新聞)という。

 なお、最近の安倍自公政権のメディア絡みの動向には以下のものがある。

 昨年1118日、総選挙を前に安倍首相がニュース23に出演。アベノミクスへの不満をいう街の声が紹介されると、「おかしい。(局)が選んでいる」と批判。

 同月20日、自民党はNHKと在京民放テレビ5局に選挙報道の中立性を要請。

 同月26日、アベノミクスについて報じたテレビ朝日・報道ステーションに対し、自民党は公平中立な報道を求める文書を出す。

 今年417日、クローズアップ現代で問題となっていたNHKと、コメンテーターが官邸批判をした報道ステーションのテレビ朝日幹部を自民党が呼び出し事情聴取。聴取後、自民党の川崎二郎氏は「政府は停波の権限まである」と発言。BPO(放送倫理・番組向上機構)については「お手盛りだ」と批判。同党幹部は「政府側の人間を入れる方法も」と発言。

 同月28日、高市早苗総務相NHKに厳重注意の行政指導。

625日、自民党文化芸術懇話会の参加議員が、「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなることが一番」「沖縄の2紙はつぶさないと」などと発言。(1130日付赤旗新聞、1107日付朝日新聞より)

 こうした経緯を辿り、今回、岸井氏の名指し批判となったというわけ。

 ちなみに、中国では今、フランス週刊誌の女性記者が、中国政府と政府系メディアから名指しで個人攻撃を受け、呼び出されて訂正記事を書くよう脅されている。SNSでも、その記者を「殺してやる」といった投稿が殺到している。この記者はパリで同時多発テロが起きた際、中国政府や政府系メディアが「中国もウィグル族のテロと戦う」と発言や報道している事に対し、パリのテロとは性質が違う、と指摘する記事を書いていた。 

 この現象について中国ウォッチャーのジャーナリスト福島香織氏は、新聞が一人の特派員を実名で批判するのはとても珍しいこと、ここまでメディアとネットを総動員して圧力をかけてくることは今までなかった、と述べている。(121日付TBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ!」より)

 安倍自公政権になってから、そんな中国に日本は急激に似てきた。(佐々木奎一)
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2015年12月10日

フェイスブックで広まる「フランス国旗」現象

 平成二十七年十一月二十三日付、のauのニュースサイト


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 「フェイスブックで広まる「フランス国旗」現象」


 を企画、取材、執筆しました。



20日付の朝日新聞朝刊に「哀悼か仏政府支持か?FBのトリコロールに賛否」と言う記事がある。それによると、FB(フェイスブック)の最高経営責任者マーク・ザッカーバーグ氏は「テロ発生から約4時間後の14日朝、自身の写真に青、白、赤の仏国旗を重ねると、131万件の『いいね!』がついた。『パリ市民の安全と平和を願う写真を設定しよう』とのメッセージが現れ、世界に広まった。東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会も15日昼、FBの招致エンブレムを三色に染め、『いいね!』が3万件を超えた」、著名人ではレディー・ガガや、「XJAPAN」のYOSHIKIらが同調したという。

 だが、「ネット上では『レバノンでもテロが起きたのに、なぜフランス国旗だけなのか』『空爆や誤爆で亡くなる中東の人々をなぜ同様に悼まないのか』など批判が相次いだ。(中略)エジプト出身のタレント、フィフィさんは15日夜、FBでの動きについてツイッターで『世界で何が起きているかに目を向けて』と記し、自身の写真は変えていない。『テロは、中東では日常。トリコロール化(※筆者註:トリコロールとはフランス国旗の三色旗)をファッションで終わらせず、テロの背景や中東情勢を考えるきっかけにして欲しい』と話す」という。

17日付のジャパンタイムズのAP通信記事にも、パリ同時多発テロの前日、レバノンの南ベイルート郊外で、自爆テロがあり少なくとも43人が殺され、金曜日にはイラクで自爆テロがあり少なくとも21人が殺され、両事件ともISが犯行声明を出すなど中東では毎日のようにテロが起きているのに、中東以外では、ほとんど関心が払われないことや、フェイスブックがパリ同時多発テロ後に、安否確認のボタンを導入したのに対し、中東でテロが起きてもスルーしている点、フェイスブックやツイッターなどのSNSユーザーのプロフィール写真がフランス国旗になってきている事などを通し、中東の人々の目には「ダブルスタンダード」に映る、いう趣旨の記事が載っていた。(写真はニューヨークタイムズ電子版記事)


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 なお、17日付の朝日新聞の紙面ではなく電子版のみに、こんな記事も載っている。それは「パリ同時多発テロ、SNSに感じた一抹の違和感」という記事。それによるとフェイスブックがプロフィル写真の上にトリコロールを重ねられるようにしたことに、違和感を感じた、とし、理由をこう述べている。

 「一つは、これがパリで起きたテロだからこそ、世界中の注目を浴びたという面が否定しにくいことだ。パリのテロが起きた前日には、レバノンの首都ベイルート南部で連続爆発が起き、40人以上が死亡し200人以上が負傷した。今年4月にはケニアの大学がイスラム過激派に襲われ、キリスト教徒ばかり約150人もが射殺された。さらにさかのぼれば、イエメンでは3月、首都サヌアでISの自爆テロによって140人以上が死亡。9月には結婚式会場が爆撃され、130人以上が死亡した。毎月のように爆発や銃撃の起きているパレスチナは、死者数を数えることすら難しい。しかし、いずれの事件も、パリのテロほどの連帯感や同情、注目を集めることもなかった。もちろんメディアの責任も大きい」「ISが生まれる背後には、宗教問題だけでなく、国内の貧困、少数派への弾圧、国内政治の腐敗、経済格差、西側への不満といったあらゆる問題が絡み合っている。もちろん、それが何であっても無差別テロを許す言い訳にはなるはずもない。ただ、ふだんこうした問題から地理的にも心情的にも決して近くにいるとは言えない私自身を含めた世界中の人たちが、クリック一つでフランス国旗を掲げ、『気持ちはフランスと共にある』と表明することで、本来目を向けるべきこうした問題を素通りしてしまうような居心地の悪さを感じる」

 万事につけ中東と西欧の間には「ダブルスタンダード」が存在する。それがフェイスブックに如実に表れたといえよう。(佐々木奎一)


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2015年12月07日

臨時国会見送り、「国会正月スタート」の裏事情

 平成二十七年十一月十三日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「臨時国会見送り、「国会正月スタート」の裏事情」


 を企画、取材、執筆しました。



 今日の朝刊は「臨時国会10年ぶり見送り 首相、外交・経済を優先 通常国会前倒しで対応」(日本経済新聞)、「臨時国会見送り、首相・谷垣氏確認 通常国会前倒しで調整」(朝日新聞)といった見出しで国会の動向を報じている。

 それによると、安倍自公政権は昨日、野党が求めている臨時国会の年内召集を見送る方針を決めたという。「秋の臨時国会を開かないのは10年ぶり」。「召集見送りには『首相官邸の強い意向があった』との声が与党内にある。10月の内閣改造の直後に臨時国会を開いて、高木氏ら(※筆者註:香典を政治資金で支出したり30年前にパンティーを盗んだといわれている高木毅復興相や、選挙区内でカレンダーを配布して公職選挙法違反の疑い濃厚の島尻安伊子沖縄北方担当相など)へ追及が激しくなれば政権には大きな打撃。自民党幹部の一人は『年内召集をしないため、首相官邸が『どんどん外交日程を入れろ』といっている』と語っていた」。そして、通常国会を「例年より早く、14日にも召集する」ことで「『論戦逃れ』との批判を回避する構えだ」という。(日本経済新聞)

 要するに、年を越せばどうせ国民は忘れてしまうだろう、という戦略である。

 さらに、14日の国会スタートは、来年夏の参院選で「衆参同日選挙」の思惑もある。そのことは11日付のジャパンタイムズに詳しい。同紙の記事(時事通信配信)には、こうある。

 「5つの解散シナリオ」が自民党内でしばしば話題になっている――。今年暮れ、通常国会スタートの20161月、2016年夏、2016年暮れ、20171月の、5つのシナリオである。

 そもそも衆議院の任期は201812月まで。それがなぜ20171月までに解散がささやかれているのかというと、20174月に予定されている消費税増税が実施されれば、国民の激しい反発により、解散は難しくなるためだ。

 そして、上記5つのシナリオのうち、今年暮れと来年1月は、前回の衆院選からたったの1年後ということもあり、現実的にはありそうにない。

2016年暮れと20171月は、参院選からたったのは半年後のため、集票マシーンである選挙支援組織の過労が懸念される。

 したがって、来年夏の衆参ダブル選挙が、最もありそうである。

 このダブル選というオプションをキープするために、政府与党は、1月に国会を召集するという現在の慣習となった1992年以来、はじめて14日という早期に国会を召集しようとしている。

14日に通常国会をスタートさせて、国会法で定めた通常国会の会期「150日」で会期延長せず閉会すれば、61日に衆院を解散することができる。そうすると、衆院解散から40日以内の総選挙の日を、参院選の投票日の有力候補である710日に設定することができる。

 記事にはこのように書いてあった。ちなみに、最近の選挙の投票先をみる限り、安倍自公政権の得票数は、野党全体の得票数より少ない。つまり、野党が結集しなければ、自公政権が選挙で勝つのは必至。そうした中、にわかに共産党が安保法制を廃案にするために、野党結集を呼びかけ始めた。これに対し、小沢一郎氏の生活の党や社民党は賛同しているが、民主党や維新の党は、及び腰の姿勢である。さらに、けさの日本経済新聞によると、昨日、民主党の岡田克也代表と前原誠司元外相が会い、前原氏が「一度裸になって一つの理念の下に集まるべきだ」と民主党と維新の党を解党して再結集すべきだと言ったが、岡田氏は「いい話ができた。看板の掛け替えではだめだ」と記者会見で述べたという。

 このように野党は停滞状態にある。野党がバラバラであればあるほど、来夏ダブル選の確率は高まってくる。(佐々木奎一)


※なお、国会14日召集については、仮に衆院同日選を抜きにしても、重要な意味を持つ。そのことは、1119日付文化放送「くにまるジャパン」での政治アナリスト伊藤惇夫氏の話に詳しい。同氏は、こういう趣旨の解説をした。

 公職選挙法の第三十二条第一項には、「参議院議員の通常選挙は、議員の任期が終る日の前三十日以内に行う。」とある。

 今回改選になる参院議員の任期満了日は、725日。

 そこから逆算して30日以内となると、投開票日の可能性があるのは、626日、73日、710日、717日、724日。日曜日はこの5つある。普通に考えれば、このどれかを選べるように見える。

 ところが、公職選挙法をよく読んでみると、第三十二条の第二項には、「前項の規定により通常選挙を行うべき期間が参議院開会中又は参議院閉会の日から二十三日以内にかかる場合においては、通常選挙は、参議院閉会の日から二十四日以後三十日以内に行う。」とある。

 たとえば、国会の召集日が15日だとすると、通常国会は150日間(国会法第十条)ですから、最終日は62日になる。そうすると、「通常選挙を行うべき期間が参議院開会中又は参議院閉会の日から二十三日以内」にかかってくる。そうすると、「参議院閉会の日から二十四日以後三十日以内」に当たる日曜日は、626日しかなくなる。

 それが、14日召集により61日が閉会日となれば、第二項にかからない。投開票日の選択肢は5つになる。


PS 公職選挙法は、六法全書のように分厚い解説書があるのだが、その中身は、民主主義のシンボルである「選挙」について、箸の上げ下げまで「官」が規定して、民衆と、民衆の代表を、しつける、という倒錯した法律である。



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2015年12月04日

人体に危険なマイクロビーズ、化粧品やソープで使用野放しの実態!米国で禁止の州も」 人体に危険なマイクロビーズ、化粧品やソープで使用野放しの実態!米国で禁止の州も

 平成二十七年十二月四日付

  サイゾー「Business Journal(ビジネスジャーナル)」の記事

 「人体に危険なマイクロビーズ、化粧品やソープで使用野放しの実態!米国で禁止の州も」

 を企画、取材、執筆しました。


  http://biz-journal.jp/2015/12/post_12717.html
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2015年12月02日

フランスのIS空爆とテロ

 平成二十七年十一月二十日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「フランスのIS空爆とテロ」


 を企画、取材、執筆しました。



 今日の産経新聞のオピニオン欄の正論というコーナーで、杏林大学名誉教授・田久保忠衛氏が「いつもながら、テレビの解説を目にしてうんざりした。中東専門家による、パリの惨劇は米仏などのIS空爆が原因との説明だ。テロには妥協の余地は全くない。911事件に見られたように北大西洋条約機構(NATO)は集団的自衛権の行使に踏み切り、米国を引きずり込まないと事態はさらに深刻になる。国際社会の総力による対決だ。それにつけても、戦後続いている日本の非力はますます鮮明になってきた」と述べている。

 たが、「パリの惨劇は米仏などのIS空爆が原因」と言っているのは、日本人の中東専門家だけではない。

16日付のTBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ!」で、日仏共同テレビ局フランス10の及川健二氏は、同時多発テロについて、こう語っている。

 「起こるべくして起きた、というのが率直な感情です。

 昨年、イスラム国への空爆をフランスが開始した時に、ドミニク・ド・ビルパン元首相という、イラク戦争の折に、国連安保理などでイラク戦争反対の演説をして脚光を集めた方が、こういうことをおっしゃっていたんですね。

 『空爆にフランスが参加することで、私たちはますます危険にさらされることになる。これは明白な事実だ。空爆によって世界各地に散らばるテロリストを、我が国に呼び込むことになる』

 また、反テロ行政の長を務めたアラン・マルソーさんという下院議員の方が、『軍事介入は、フランスを危険にさらすことになる。私たちはイスラム聖戦士たちの標的になる恐れがある』と警鐘を鳴らしていたんですね。

 このように一部政治家や有識者のなかでは、テロがイスラム国攻撃によって起きるというのは、懸念されていたんですね。私も警鐘する記事をいくつも書いてきたんですけども、それが現実になってしまったというのが率直な感想です」

 また、報復の空爆については、「ドミニク・ド・ビルパン元首相が、空爆について、次のようにコメントしています。『この種の空爆や軍事介入によって、テロリストの集団の除去という、私たちが期待する結果はもたらせ得ないと、我々は過去の経験から知っている。50年、60年の経験から、いや、ここ10年の経験だけでも、軍事介入はテロを根絶するのではなく、テロの土壌をつくってしまうのは明らかだ』と。

 つまり、軍事介入によって『報復の連鎖』が起き、テロリズムをむしろ、育成、醸成することになるのではないか、と私は考えています」

 では、どうすればよいのか。及川氏は「私が考えるのは、中東においてスンニ派の国が前面に立ってイスラム国に対峙していくべきなのではないか、と考えています。結局、スンニ派のイラクの空白によって、イスラム国が伸びてきたという現実がありますので、スンニ派の国々が連帯して立ちあがるべきではないか、と考えています」

 今必要なのは、「報復の連鎖」を止める手立てではないだろうか?(佐々木奎一)



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2015年12月01日

横浜市にみる歴史修正教育の実態

 平成二十七年十月四日、auのニュースサイト


EZニュースフラッシュ増刊号「潜入! ウワサの現場」で記事


「横浜市にみる歴史修正教育の実態」


を企画、取材、執筆しました。



 「歴史修正主義」という言葉がある。意味は、「1 歴史に関する定説や通説を再検討し、新たな解釈を示すこと。2 一般的な歴史認識とは異なる解釈を主張する人、またそうした言動を否定的にいう語」である。(デジタル大辞泉(小学館刊)より)

 歴史修正の動きは、教育現場でみられることが多い、とよくいわれる。。そこで横浜の教育現場で近年起きた事件を掘り下げてレポートする。

 高校の教科書の定番「詳説 日本史B」(山川出版社刊、2012年発行)は、関東大震災(192391日)の混乱の情景を囲み記事で紹介している。そこにこういう一節がある。

 「地震と火災の大混乱で、『朝鮮人が暴動をおこした。放火した』との流言(りゅうげん)がとびかい、政府も戒厳令を公布して軍隊・警察を動員したほか、住民に自警団をつくらせた。関東全域で徹底的な『朝鮮人狩(が)り』がおこなわれ、恐怖心にかられた民衆や一部の官憲によって、数千人の朝鮮人と約200人の中国人が殺害された」

 これは「朝鮮人虐殺」として日本の歴史に刻まれている。その表記を巡り、近年、横浜市で事件が起きた。

 横浜市内の市立中学校では、教科書以外に、「副読本」と称する、市教育委員会が作成した冊子を授業で使っている。それは「わかるヨコハマ」という縦20cm、横15cmA5判の冊子。

 教科書の場合、「教科書検定」制度によって、文科省の審査に合格しなければ世に出すことはできない。だが、「副読本」は、自治体の判断で、国の審査を経ず自由に「準教科書」の扱いで教育現場で使うことが許されている。つまり、使い方によっては教科書検定制度を無視した「抜け道」に成り得る。

 この「わかるヨコハマ」は2009年度に発行し、市立中学一年生全員に配布している。


わかるヨコハマ(アマゾンより).jpg

 そこには朝鮮人虐殺について、「自警団の中に、朝鮮人や中国人を殺害する行為に走る者がいた」と書いてある。「徹底的な朝鮮狩り」という前出の山川出版の表現に比べ、極めてマイルドで、虐待がなかったかのような表記である。しかも、山川出版には、官憲も朝鮮人を殺したと書いてあるのに比べ、副読本には、自警団のみがやったかのようにしか記載されていない。この副読本で教わると、歴史的事実を曲解する恐れが強い、と言わざるを得ない。そういう教材で横浜の中学生は教わっている。

 そうした中、2012年に、にわかに副読本が改定された。

 「東京湾岸・相模湾一帯は大きな被害を受けた。東京や横浜のほとんどが壊滅状態になり、火災と余震に襲われ続けた市民は不安にかられてた。この混乱のなかで、『朝鮮人が井戸に毒を入れる、暴動を起こす』などというデマ(根拠のない噂)が流された。2日、政府は軍隊の力で治安を維持するため東京に戒厳令を適用した」

 ここまでは前年と同じで、そのあとに以下の一文が加筆された。

 「デマを信じた軍隊や警察、在郷軍人会や青年会を母体として組織されていた自警団などは朝鮮人に対する迫害と虐殺を行い、また中国人をも殺傷した。横浜でも各地で自警団が組織され、異様な緊張状態のもとで、朝鮮人や中国人が虐殺される事件が起きた」

 この記述は、山川出版をはじめとする歴史教科書からみれば、ごくごく標準の内容である。

 だが、この動きを産経新聞が問題視した。12625日、同紙は一面で「『軍や警察 朝鮮人虐殺』 横浜市教委、書き換え 中学副読本、事務局独断」という見出しで報じている。リードには「歴史認識に関わる改訂にもかかわらず、一部の事務局職員の判断で行われた。今後も恣意(しい)的な“修正”が相次ぎかねず、文部科学省の検定を経ない副読本の課題が浮かび上がった」とある。

 本文には、「市教委によると昨年、旧版の記述について市立中の元社会科教諭から『誤った見解』と繰り返し修正を求められ、これを執筆者に伝えた。書き換えは監修する市教委事務局の社会科指導主事の判断で行われた」とある。

 この記事から約1か月後の2012719日、横浜市会で自民党の横山正人市議が、このことを取り上げた。

 すると、市教委の山田巧教育長は、「指導主事が改訂に当たっての決裁をとるときに課長の承認で済ませてしまった」と言い、「震災全体の被災状況ですとか横浜市の状況をわかりやすくするといったことを意図して改訂」したが、「結果として、その表現ですとか文脈、構成などによって誤解を招くような内容」があった、「虐殺という言葉は非常に強い、一定の主観が入った言葉だと考えておりますので、この部分については、例えば従前の表現に戻すといったことで改訂していきたい」といい、「2013年度版では改めて」もとの表記に直すと明言した。

 さらに、改定した暁には、「今年度、既に中学校1年生に配っております2012年度版は回収した上で、来年度1年生になる子と来年度2年生になる子と、2年度分の『わかるヨコハマ』を配付していきたい」と述べた。

 その後、「虐殺」という表記に改定した職員は懲戒処分で「戒告」となり、実際に回収して改訂版を配布した。

 そこで筆者は、横浜市教委に対し、このときの一連の経緯を記した内部文書を情報公開請求した。すると44枚の文書が開示された。

 例えば上記の市会から約2か月後の2012925日に、各市立中学校長に通知した文書には、こうある。

 「横浜においては朝鮮人等に対する迫害と虐殺に軍隊や警察が関与したとの資料は見つかっておらず誤解を招きかねないので、この点に留意して指導すること」。

 「中学生の心身の発達段階を考慮し、『虐殺』という語句については、『殺害』という言葉に置き換えて指導すること」



市教委は市立中学校長に通知した.jpg


 また、虐殺というワードを消した13年度改訂案には、「2012年度版は東京の状況についての記述が詳しすぎたので、改訂版では横浜の状況に重点を置く」「2012年度版は朝鮮人殺害の記述が焦点となる印象がもたれていたが、改訂版では震災での被災の状況、復旧・復興の状況についても既述する」「<具体的内容>・東京での、軍隊、警察による関与は既述しない。・『殺害』『迫害』の語句は用いず、『殺害』と既述する」

 また、懲戒処分文書によると、「戒告」処分をうけた職員は、指導部指導企画課長・A氏。処分発令日は2012928日。処分理由は「担当者から改訂内容について報告を受けた際、改訂箇所の表現をよく確認せず、文脈や構成に誤解を招く部分を含んだまま原稿内容を確認するとともに、文書による起案・決裁の指示を欠いた」とある。

 ちなみに、副読本「わかるヨコハマ」は、これ以降、今も同様の表記のまま使われている。(佐々木奎一)

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2015年11月30日

パリ同時多発テロ IS空爆で標的にされた仏国

 平成二十七年十一月十六日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「パリ同時多発テロ IS空爆で標的にされた仏国」


 を企画、取材、執筆しました。


 昨日の各紙朝刊は1面で大々的に「パリ同時テロ、『イスラム国』が犯行声明、仏大統領『戦争行為だ』、死者128人に」(日本経済新聞)、「パリ同時テロ『イスラム国』監視強化 欧米 情報収集力向上へ」(読売新聞)、「パリ同時テロ 6カ所で 128人死亡、IS犯行声明 仏大統領『戦争行為』」(毎日新聞)、「同時テロ、IS犯行声明 パリで6カ所襲撃、死者128人 仏大統領、強く非難」(朝日新聞)といった見出しで報じている。

 それによると、「■13日午後9時すぎ(日本時間14日午前5時すぎ) パリ近郊の国立競技場『スタッド・ド・フランス』 ドイツとフランスの代表チームによるサッカーの親善試合が開催されているさなかだった。試合はオランド仏大統領も観戦。前半の試合中に突然、競技場の入り口付近で少なくとも2回の爆発音が鳴り響いた。異常事態に気づき、混乱した大勢の観客はピッチに流れ込んだ。オランド氏と、ともに観戦していたシュタインマイヤー独外相は緊急避難した。

 ■同時刻 パリ市内のバタクラン劇場 米国のロックバンド『イーグルス・オブ・デス・メタル』がコンサートを開いていた。コンサートが中盤にさしかかったころ、劇場入り口に突然数人の男が現れ、自動小銃を撃ちながら劇場内に侵入した。バンドの演奏はストップし、観客は一斉に床に伏せた。現れた男らは『アラー・アクバル(神は偉大なり)』と叫びながら、伏せる人々の斜め上から自動小銃で銃撃を繰り返した。劇場内では約80人が射殺された。

 ■同時刻 パリ市内のレストラン『プチ・カンボジー』 コンサート会場から北に約1キロ強離れた場所に自動車が急停車した。武装した2人の男が降り立つと、レストランのテラス席で食事を楽しんでいた客にいきなり激しい銃撃を浴びせた。撃たれた客は次々と倒れていった。『シリアのため』。仏メディアによると、犯人はこう叫びながら、銃撃を続けた」という。(日本経済新聞より)

 そして、「過激派組織『イスラム国』(IS)の広報部門のロゴが付けられたビデオ声明が14日、ネット上に掲載された。(略)銃を手にした男らが並ぶ中、男たちは『フランスが空爆を続ける限り、平和ではいられない』などと脅した。また、イスラム教徒に向け『フランス人に脅威を与え、眠らせるな。武器や車、毒まで入手可能だ』とテロを呼びかけた」という。(朝日新聞より)

 なお、「フランスはイスラム過激派を攻撃するためマリに軍事介入したほか、イラクとシリアに支配地を広げるISへの空爆にも参加している。1月のテロの標的となった週刊紙はイスラム教預言者の風刺画を掲載し挑発したことで知られる。フランスは過激派から象徴的な敵として位置づけられやすい面もある」という。(日本経済新聞)

 日本はどうか――。ジャーナリスト鳥越俊太郎氏は71日の衆院平和安全特別委員会で「問題は、集団的自衛権の今回の解釈改憲の議論を見ていますと『アメリカ軍が行くところは世界の何処でも地球の裏でも行くことがある』、つまり、中東地域に米軍が行って助けが欲しいというときは、後方支援を日本の自衛隊はやる可能性があるということ。

 これまでのイスラム過激派の認識では、日本は全く視線外にあった。しかし、先日のエジプトでの安倍総理の2億ドル供与という発言。あれで一気にイスラム過激派の連中の視野に、日本が入ってきた。それで、後藤健二さんを殺害するという事態に陥った。

 この構造のなかで将来、日本の自衛隊がアメリカ軍の後方支援で中東地域へ行った場合、明らかに『日本の自衛隊はアメリカの友軍である、友達である』、つまり、『イスラム教、イスラムの国にとっては敵である』という認識を持つ可能性がある」として、将来、日本が自爆テロリストの攻撃の標的標的になる可能性がある、と警鐘を鳴らしていたが、安保法案が存在する限り、テロのリスクは一層現実味を帯びてくる。(佐々木奎一)

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2015年11月26日

原発再稼働とアンダーコントロールされない福島

 平成二十七年十一月九日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「原発再稼働とアンダーコントロールされない福島」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの新聞は休刊。7日付の毎日新聞朝刊に「鹿児島川内原発 周辺、線量測れず」という記事がある。それによると、鹿児島県が九州電力川内(せんだい)原発周辺の25カ所に設置したモニタリングポストの稼働状況を会計検査院が調べたところ、稼働に必要な電力を確保できず、空間放射線量を測定できない時間帯が生じていたことが分かったという。

 なんともズサンな話だが、そもそも福島第一原発が全くアンダーコントロールされていないなか、原発再稼働するなんてとんでもない、という声は根強い。福島原発の「再臨界」を懸念する識者もいる。

 例えば、42728日付週刊プレイボーイ電子版によると、43日、2号機の格納容器の温度が約20℃から70℃へ急上昇を計測。2日後には88度に達し、4月第3週現在も70℃前後から下がっていない。熱源はメルトダウンした最大重量100tと推定される核燃料。(※筆者註:東電は、この上昇について、温度計の故障の可能性が高いと説明)

 だが、異変は「3号機内部でも起きているようで、今年に入って何度か3号機の屋上から大量の蒸気が噴き出す様子がライブ配信映像で目撃された。そして、もっと見逃せないのが2号機の温度上昇と連動するように46日から福島第一原発周辺の『放射線モニタリングポスト』が軒並み高い数値を示し始めたことだ。

 中でも原発から北方向の南相馬市では、復旧したての常磐自動車道・南相馬鹿島SA(サービスエリア)ポストで通常線量の1000倍にあたる毎時55μSv(マイクロシーベルト)を最大に、市街地各所で数十倍の上昇が見られた。それぞれの線量上昇時には福島第一原発方向からの風が吹いていた」

 だが、福島県は、この後すぐに40ヵ所ものモニターを“機器調整中”とし測定を止めるという、不可解な行動に出たという。

 同時期、福島県以外にも異変はあった。47日、東京都内で、「北東・北方向から45メートルの風が吹き続けた7日正午から夕方にかけて、港区・新宿区・渋谷区・世田谷区を中心にいつもの24倍に達する線量上昇を確認した。また『原子力規制委員会』が公開した4月中旬までの全国線量グラフにも東北各県や神奈川県などで急激な上昇が見られた」

 「これは一体、何を意味するのか? 考えられるのは、原発内の核燃デブリ(ゴミ)が従来の注水冷却工程に対して異なった反応を示す状態に変化した可能性。例えば、デブリが格納容器下のコンクリートを突き抜けて地盤まで到達(メルトアウト)し、地下水と接触するなどだ」という。

 「『IAEA(国際原子力機関)』の“不測事態の管理技術会議”は、2012年時点で(中略)厄介な事態を予測している。それはデブリの核分裂反応が再び爆発的に加速化する可能性だ。通常ならば、原子炉や実験施設内でコントロールされる『再臨界』は自然状態でも一定の条件が整えば起き得る。その条件とは中性子と水、地質。IAEA技術会議のシミュレーションでは、まず原発地下の水流と岩盤層が中性子の反射装置となり、デブリ内のウランやプルトニウムが連鎖的に核分裂していく。そして膨大な崩壊熱で水蒸気爆発が繰り返され、新たに生まれた放射性物質が地上へまき散らされる…。」

 さらに「CTBT(包括的核実験禁止条約)に基づき『日本原子力開発機構』が群馬県高崎市に設置した高感度の放射性核種監視観測システムには、昨年12月から福島第一原発の再臨界を疑わせる放射性原子、ヨウ素131とテルル132が検出され続けている」(※同記事掲載の8日後、「CTBT高崎放射性核種観測所」は、3か月間も表示ミスを続けていたとして数値を訂正した)

 「また福島第一原発2号機横の観測井戸では、今年に入って新たな核分裂反応の再発を示すセシウム134とトリチウムの濃度が高まるばかりだ。昨年秋に開通した国道6号線の第一原発から第二原発までの12q区間でも高線量が続いている」という。

 今やらなければいけないのは、原発再稼働だろうか?(佐々木奎一)


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2015年11月23日

TPPと亜米利加

 平成二十七年十一月六日付、のauのニュースサイト

  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「TPP協定文書の中身」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの各紙は「TPP協定文書公表 ポイントは 全30章 幅広い貿易ルール」(朝日新聞)、「TPP域内 ビジネス活発に 協定案全容」(日本経済新聞)といった見出しで、TPPについて報じている。

 それによると日米など12か国(日本、アメリカ、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム)は昨日、TPP(環太平洋経済連携協定)の協定案の全容を公表した。文書は英文で本文、付属文書合わせ1500ページに及ぶ。

 これにより、当初から懸念されていた日本の農業は、「『聖域』であるコメなどの関税を維持することができた」が、「高い関税を維持する代わり、米国と豪州向けに7.8万トンの無関税輸入枠を新たに設ける。輸入は義務ではないが、輸入が不調な場合に日米、日豪間で話し合う」「野菜や果物、水産物の大半の関税を撤廃し、牛・豚肉の関税を引き下げる」という。(朝日新聞)

 また、「参加国による協定違反があった場合、損害を被った投資家が国連の仲裁機関などを通じてその国を訴えられる『ISDS手続き』が盛り込まれた」という。この「ISDS条項」も当初から懸念されているが、同紙によると、「韓国経済に詳しい高安雄一・大東文化大学教授(経済学)は、『米韓FTA(自由貿易協定)でもISDSによる訴訟乱発が懸念されたが、実際にはまだ1件もない。TPPにはそれと同等以上の乱訴の防止策がある。協定に違反するようなことをしなければ、問題は起きにくいのではないか』と分析している」という。

 著作権保護については、「著作物の保護期間は、著作者の死後50年から70年に延長された」「同人誌などの即売会『コミックマーケット(コミケ)』など2次創作への影響が懸念された著作権侵害の非親告罪化は、『市場において利用する権利者の能力に影響を与える場合』に限定された。福井弁護士は『萎縮効果はある程度抑えられたが、対象を海賊版に限定するべきだ』」という。

 また、国民皆保健制度の崩壊も懸念されたが、「制度は維持されることになった」という。

TPPは原則自由化だが、「外為法や建設業法、弁護士法など約60分野の根幹の規定は変えずにすむこととなった」「日本で活動する外資系企業も引き続き日本国内のルールに沿って活動することになる」(日本経済新聞)、「労働者の権利を、自国の法律で採用することを明記。最低賃金や労働時間を定めた法律をつくることを盛り込んだ」(朝日新聞)という。

 このようにTPPでこの国の形が一変するのではないか、という不安の声もあるが、ひとまずは国の形は保たれるように書いてある。だがその一方で、こういう一文もある。

 「公表された合意の全容は参加各国が批准後に発効する。合意文書では発効から3年以内に12カ国全体のルールを見直すことに言及している」。

 つまり、今後どうなるかは予断を許さない。

 ちなみに、民主主義国家であるはずのアメリカでは今、国民の「裁判をする権利」が失われるという、にわかには信じ難い事態に陥っている。

1112日付のニューヨークタイムズによると、ゆりかごから墓場まで、例えば妊娠出産の医療、教育、住宅、携帯電話、インターネット、車、銀行、クレジットカード、病院、老人ホーム、墓などなどのあらゆる「消費契約書」や、「労働契約書」の大半に、紛争になった際は裁判ではなく仲裁で処理すること、という「仲裁条項」が定められている。これにより、医療過誤や、詐欺、欠陥商品、事故や、職場のハラスメント、サービス残業、リストラ、過労死といった労働事件に遭った消費者、労働者が、会社を訴えた場合、裁判所は、仲裁により解決してください、と言って裁判を終わらせてしまう事態になっているという。

 仲裁というのは、会社の顧問弁護士や米国仲裁協会とJAMSという大手仲裁会社等を通して選定される「仲裁人」により紛争を解決するという制度。仲裁は密室で行われており非公開だが、同紙の調査によると、多くの仲裁人にとって、消費者・労働者よりも会社の方が年に何度も顔を合わせる大事な顧客なので、仲裁の結果は、えてして会社に有利な判定が下りることが多い。

 いうまでもなく日本では、日本国憲法第三十二条で「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。」と明記しているが、TPP名の下、国境が消えたかのように、アメリカの「法の崩壊」の事態が日本でも起こりかねない。(佐々木奎一)


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2015年11月17日

急変する“南シナ海”情勢、人工島を米軍航行

 平成二十七年十月三十日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「急変する“南シナ海”情勢、人工島を米軍航行」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの読売新聞に「南シナ海で米軍と訓練 海自護衛艦、中国けん制か」という記事がある。それによると、「海上自衛隊と米海軍が南シナ海で共同訓練を行っていることが29日、わかった。訓練海域は、中国が領有権を主張している南シナ海・スプラトリー(南沙)諸島からは離れた場所だが、日米連携をアピールし、中国をけん制する狙いがあるとみられる」という。

 これはにわかに今週27日(火)午前に勃発した米海軍のイージス駆逐艦ラッセンが、南シナ海で、中国が岩礁を埋め立てて造成した人工島の12カイリ(約22km)内の海域を航行し、巡視活動を行ったことに関連したニュース。

 国連海洋法条約では、領土の12カイリ内を領海と定めている。そして島の定義は、高潮時でも海面上にあるもの、としている。だが、中国が埋め立てている人工島は、高潮時に海に沈む。つまり、国際法上、領土ではない。領土でない海域は、全ての船舶が自由に航行できる国際水域ということになっている。そうした中、にわかに米軍が人口の12カイリ内を航行した。国際法を無視した中国の行為を認めない姿勢を示したものだ。

 これに対し中国は、ミサイル駆逐艦1隻を含む中国の軍艦2隻が航行中のラッセンを追尾し、警告を発した。また、張業遂外務次官が北京駐在のマックス・ボーカス米国大使を呼び、ラッセンの27日の航行は「極めて無責任な行動だ」と非難したというが、アメリカは今後も航行を続けると明言している。オーストラリアも軍艦を派遣することを検討しているという。((ウォールストリートジャーナルより)

 一触即発の可能性については、中国メディアでは激しい論調もみられるが、「アナリストたちの間では、短期的に中国は米艦船をこの水域から駆逐しようとはしないと予想されている。駆逐すれば、軍事対決になり、中国は勝てるかどうか自信が持てないからだ。(中略)しかし、米国がこのような巡視活動を継続すれば、習主席はこの問題でもっと決然とした行動をとるよう国内で公然たる圧力を受けるだろう。習主席は偉大な世界パワーとしての国家を確立するという自ら提唱する『中国の夢』において、この領有権を中心的な課題にしているからだ。(中略)シンガポールの東南アジア研究所の南シナ海専門家イアン・ストーリー氏は『中国は対応しないことによって、弱いとみなされることはできない』と述べ、『ナショナリスト的な宣伝で成長してきた中国の一般市民は、力強い対応を要求するだろう』」という(同紙より)。今後、中国は“内圧”により、不測の事態が勃発するリスクはあるということになる。

 人工島は今後どうなるのか。読売新聞によると、「この一帯の中国の覇権は今後強まることはあっても弱まることはない。問題の人工島もいずれ中国軍の前線基地になるはずだ」(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・宮家邦彦氏)。ウォールストリートジャーナルも、米軍の今回の行動により「中国が造成した7つの小島が存在しなくなるわけではなく、この海域で中国がますます民間・軍事的存在感を示すのは避けられないようだ。(略)中国が南シナ海における基地ネットワークの構築・維持という目的を最終的にあきらめることはないだろう」とある。

 また、けさのニューヨークタイムズ電子版によると、オランダ・ハーグの国際裁判所は、フィリピンが提示した中国の主張に対する法的な異議申し立てについて、自分たちの裁判所に管轄権があると判断したと報じている。国際裁判所で審議されれば、中国の違法行為が白日の下にさらされることが予想される。

 日本はどうなるのか。読売新聞には「9月に成立した安全保障関連法に基づき、自衛隊は米軍との共同の訓練や情報収集中に米艦船などを守れるようになり、平時の協力範囲は拡大する」とある(29日付朝刊)。冒頭の南シナ海ですでに日米共同訓練がなされている点、安保法制が成立した翌月に米軍が動き出した点などから見て、はじめから日本はこの軍事作戦に組み込まれていて、そのために安倍自公政権は強引に安保法制を成立させたのではないかと疑わざるを得ない。安倍自公政権は国民になんの説明もないまま憲法を骨抜きにした法案を通し、国民の知らない間に事を進めている。(佐々木奎一)

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2015年11月09日

旭化成、東洋ゴム、マツモトキヨシ…相次ぐ不祥事

 平成二十七年十月二十三日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「旭化成、東洋ゴム、マツモトキヨシ…相次ぐ不祥事」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの各紙はどこも「改竄者関与 9都県41件 マンション傾斜 旭化成、3040件公表」(産経新聞)、「現場責任者関与41件 旭化成 全国3040件 概要報告」(読売新聞)、「杭偽装の責任者、41件担当 3040件公表、調査へ 旭化成建材」(朝日新聞新聞)といった見出しで報じている。

 それによると、横浜市の大型マンションが傾いた問題で、杭工事を行った旭化成建材と親会社の旭化成は昨日、旭化成建材が過去10年間に杭を打った物件は45都道府県3040件あると公表した。また、データ偽装を行った現場責任者が関わった物件は全国に41件あることを明かしたという。

41物件のうち、最多は愛知23件、次いで岐阜6件、三重5件、東京2件、茨城、千葉、神奈川、石川、静岡が各1件。内訳はマンションなど集合住宅が13件、工場・倉庫9件、事務所4件、病院や介護施設などの医療・福祉施設4件、学校3件、百貨店やスーパーなどの商業施設2件、県庁などの公共施設2件、その他3件、不明1件。なお、同社は具体的な物件名は公表せず、都道府県別や建物種別の物件数しか明かさなかったため、各地で疑心暗鬼が広がっている。(朝日新聞より)

 大企業の不正はこれにとどまらない。今月14日には東洋ゴム工業が、過去10年で鉄道車両メーカーや造船関連企業など18社計189種類、87804個の不正な部品を納めていたことが発覚。これは鉄道車両で数千両分、船で数百隻分に相当する。

 東洋ゴム工業は今年3月にも建物の免震ゴムで性能偽装を犯したのが明るみになり、今年8月に「安全宣言」を出したばかり。(同紙より)

 今月15日には、ドラッグストア大手マツモトキヨシホールディングスの子会社で山梨県内でドラッグストアを展開するイタヤマ・メディコが、複数年にわたり在庫の評価額を水増しして架空の資産を計上していたことが表沙汰となった。水増しは4億円に上る可能性があるという。(同紙より)

 このように、大手企業のブラック化が著しい。先人たちが築いてきた「メイド・イン・ジャパン」の信用は、急速に失われてしまった観がある。

 企業だけではない。政治をみると、例えば東京五輪招致が決まった139月にアルゼンチン・ブエノスアイレスで行われた国際オリンピック委員会(IOC)総会での演説で、安倍首相は、福島第一原発の汚染水は、コントロールされている、と言い、汚染水の影響は原発の港湾内の0.3平方kmの範囲内で完全にブロックされている、と海外の人々にウソをついた。(130927日付朝日新聞朝刊より)

 さらに安倍首相は、この席上、薄闇に浮かび上がる流線形のスタジアムがスクリーンに大写しにされる中、「他のどんな競技場とも似ていない真新しいスタジアム」とアピールしていた(15714日付日本経済新聞朝刊より)。これもウソをついたことになる。

 また、先月、安保法制が成立したとき、安倍首相は「まだまだ(国民の理解は深まっていない)。これから、粘り強く、丁寧に法律の説明を行っていきたい」(920日付読売新聞朝刊より)と言ったが、丁寧な説明どころか、臨時国会すら開かない腹積もりでいる。野党5党は、憲法53条の規定に則り、総議員の4分の1以上にあたる衆院125人、参院84人が名を連ね、臨時国会の召集を求めたが、自公政権は安倍首相の外交日程が立て込んでいることなどを理由に召集を見送る方針でいるのだ。(1022日同紙朝刊より)

 一国の首相や大企業が、その場限りのウソを平気でつく時代――。それを目の当たりにして育った子どもたちは、一体どういう日本をつくるだろうか?(佐々木奎一)




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2015年11月05日

ノーベル経済学賞ディートンの「対外援助」批判

 平成二十七年十月十九日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「ノーベル経済学賞ディートンの『対外援助』批判」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの日本経済新聞に「ノーベル経済学賞にディートン氏―消費起点に貧困・福祉研究」という記事がある。これは今年のノーベル経済学賞受賞者・米プリンストン大学アンガス・ディートン教授についての記事。

 それによるとディートン氏は、発展途上国での格差や貧困の問題を研究し、貧困の中でも特に「健康の格差」を分析した、という。

 なお、ディートン氏の研究で議論を巻き起こしているのは、先進国の行う「対外援助」である。

 例えば、13日付ウォール・ストリート・ジャーナルによると、「ディートンは、対外援助の強い批判者だ。過去50年間でおよそ5兆ドルものお金が、豊かな国から貧しい国へ援助された。しかし、それは貧しい国の政治リーダーたちが、自国民に対して、援助の使い道の説明責任を果たさず、何に使ったのかも定かではなく、その国の政治を悪化させるだけだった、とディートンは信じている」という趣旨のことが、記されている。同日付のニューヨークタイムズにも、同様のことが書いてある。

 では、どうすればよいか?そのことは、同日のジャパンタイムズに詳しい。同紙によると、ディートンは、対外援助は、健康、特に、栄養不良との戦いが、ほかの全てに優先されなければならない、ワクチンと食糧を直接、人々に配ることができれば、発展途上国の健康は改善できる、と言ったという。

 なお、ディートン博士と同様の指摘は、前々からある。例えば、「傲慢な援助」(著:ウィリアム・イースタリー/訳:小浜裕久、織井啓介、冨田陽子/東洋経済新報社刊)によると、世界には二種類の貧困の悲劇があるという。一つは、何十億人もの人々が、先進国では何でもない病気で苦しみ、何百万人の子どもたちが命を失っているという「極端な貧困」。そして、「第二の悲劇」は、「1ダース12セントの薬がマラリア汚染地域に住む子供たちに届けばマラリアによる死亡者数は半減することができる」のに、「過去50年間、先進国は2.3兆ドルもの援助をしてきたにもかかわらず、本当に薬を求めている子どもたちに薬が届いていないという現実である。同様に、貧しい家庭にたった4ドルの蚊帳も行き渡らないし、500万人の子どもの命を救うのに要する母親一人当たり3ドルのお金も届いていない」という事実である。

 日本は、発展途上国に対して何百億円支援します!とよく約束している。もちろんその原資は、全て国民のお金である。だが、それは貧しい人々を助けるためになっていない。政府の支援よりも、現地で直接人々を支援するNGOの方が、よっぽど世の中に貢献しているということになる。

 (佐々木奎一)



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2015年10月29日

ユネスコ「南京大虐殺」世界記憶遺産登録の波紋

 平成二十七年十月十六日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「ユネスコ「南京大虐殺」世界記憶遺産登録の波紋」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの朝日新聞に「記者レビュー 南京事件を冷静に追う」という見出しの記事がある。これは4日深夜の「NNNドキュメント シリーズ戦後70年 南京事件 兵士たちの遺言」(日テレ系)についての後藤洋平記者の署名記事。

 それによると「事件の犠牲者数について番組は、東京裁判で20万人以上と認定され、中国側は30万人と主張していると紹介」「またインターネットなどでは、虐殺や事件そのものがなかったと主張する人々がいることにも触れた」という。

 また、「当時南京に進軍した元兵士の複数の日記に『(捕虜を集め)年寄りも子供も一人残らず殺した』など生々しい記述があることを明かす。『何万という捕虜を殺したのは間違いない』という当事者の声や、『見たことは口外するな』と上官に口止めされたとの証言も紹介」している。

 この背景には、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が今月9日、中国が申請した「南京大虐殺」の資料を世界記憶遺産に登録したことがある。

 これを受け安倍晋三首相は14日、中国の外交を統括するヤンチエチー国務委員(副首相級)と首相官邸で約45分会談し、「遺憾だ」と表明し、「過去の不幸な歴史に過度に焦点を当てるのではなく、未来志向の関係を構築していくべきだ」と訴えたという。

 ちなみに、ユネスコは今回、日本の申請したシベリア抑留資料も登録している。シベリア抑留とは、194588日、ソ連軍が旧満州になだれ込み、日本軍を捕虜にし、ソ連各地の収容所などへ強制連行し労役につかったことを指す。戦争が終わってもなお捕虜を労役に使うという、国際法を無視した非道行為だった。これにより厚労省によると約575千人の日本人が抑留され、極寒での労働や飢えなどで約55千人が死亡した。(参考:「街道をゆく5」(著: 司馬遼太郎/朝日新聞出版)、「朝日新聞掲載『キーワード』」)

 このシベリア抑留の登録について、ロシア・ユネスコ委員会のオルジョニキゼ書記は14日、「ユネスコに政治問題を持ち込むべきではない。戦争に関連した遺産を登録することは控えるべきだ」と指摘し、日本とユネスコ事務局に対して、撤回を働きかける考えを明らかにした。(けさの朝日新聞)

 これに対し、菅義偉官房長官は15日の会見で、「(申請は)ロシア側の理解と協力を得ている」などと述べ反論している。(けさの日本経済新聞)

 要するに、南京大虐殺とシベリア抑留で、日本政府は正反対の態度を取っており、ダブルスタンダードである。これは第三者の欧米などからみて、みっともないのではないか。

 そうした中、けさの日本経済新聞の社説には「菅義偉官房長官がユネスコへの資金面の貢献を見直す可能性を表明した。自民党は部会などで分担金の支払い停止を求める決議を採択した。ここは落ち着いた対応を求めたい。(略)資金負担の見直しをちらつかせて主張を通そうとすれば、国際社会の理解を得ることはできないだろう。日本政府として南京事件そのものを否定しようとしているとの印象を世界に与え、結果として中国に歴史に絡めた宣伝の材料を提供することになるおそれもある。(略)前向きな提案でユネスコの遺産事業の強化に力を注ぐべきではないか」と述べている。

 たしかに、中国の政治利用を批判したいなら、日本政府は今のような登録を撤回せよという論調ではなく、こう諭すべきではないか。「中国は他国の歴史を批判するだけではなく、自らを省みるべきである」と。例えば中国は第二次世界大戦後、「大躍進政策」と称して、生産力を急進的に上げようとして、自国民を1000万人以上、餓死等で殺している。「毛沢東 大躍進秘録」(著: 楊継縄/:伊藤正・田口佐紀子・多田麻美/文藝春秋刊」によると犠牲者数は3600万人に達したともいう。

 ほかにも、文化大革命や天安門事件などなど、中国は大虐殺事件を頻繁に起こしている。それに比べ、日本は、戦後一貫して平和国家を貫いている。そうした事例を挙げて、「中国は戦後の日本に学ぶべきである」と、懇々と説いた方が、よっぽど国際社会の支持を得ることきができるのではないか?(佐々木奎一)



PS 南京虐殺事件については、作家・半藤一利氏がこう語っている。「私は雑誌記者時代、当事者を呼んで座談会をしたことがあったんですよ。南京を先に攻略したのは揚子江沿いに進撃した部隊、次に南京の南へ行った部隊であり、こちらはすごい激戦を経験してあまり虐殺はしていません。前者の部隊が虐殺をした方だと思うんですが、そこの人たちがしゃべらない。『ノーコメント』だと」

 これに対し、インタビューアーの平井康嗣・週刊金曜日編集長が「以前、『南京虐殺否定』派は、『30万人殺したなんてウソだ』と主張していましたが、いまや『ゼロだ』といも言い始めていますね。」と、振った。

 それに対し半藤氏は、こう語った。「私の知人でもある秦郁彦元千葉大学教授が『陣中日誌』といった陸軍関係の資料を元に、『南京事件―『虐殺』の構造』(中公新書)という本を書き、4万人という数字を示しています。また、陸軍軍人の最後の集まりの『偕行社』が出版した『南京戦史』では、厳密に旧軍人の証言を集めて3万人とし、同時に『深くお詫び申し上げる』と書かれてあります。ただ、数字の問題ではないんですね、これは。非戦闘員を殺害したのですから。」(週刊金曜日20141017日号(1012号)より)

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2015年10月26日

「ブログメンテナンス中」で変節・・・河野太郎

 平成二十七年十月十二日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事 


 「『ブログメンテナンス中』で変節…河野太郎」


 を企画、取材、執筆しました。



9日付の毎日新聞朝刊に、似顔絵のイラスト入りで「河野氏『脱原発』封印 ブログ公開を中断」という記事がある。

 これは7日に初入閣した、河野太郎・国家公安委員長兼行政改革担当相の話。河野氏は、自公の現役国会議員の中で、脱原発派の急先鋒として有名。そんな河野氏のブログは、にわかに「メンテナンス中」と表示され、閲覧できない状態になった。。例えば昨年7月のこのブログには、「核のゴミには目をつぶり、やみくもに再稼働しようというのは無責任」と安倍自公政権を批判したりしていた。

 「メンテナンス中」の真意について、河野氏は8日、「『スマートフォン対応へのリニューアルをしていた』と説明。その上で『外に向け、政府の政策を訴える象徴』として内容を刷新する考えを示した」という。

 また、8日付朝日新聞朝刊によると、河野氏は7日の会見でも、「持論と政権方針との整合性を問われると『2012年の総裁選の時に、当時の安倍晋三候補は長期的には原子力への依存度を下げるとはっきりおっしゃっていた。ベクトルとしては同じ方向を向いている』と説明した。またブログを閲覧できなくしたことに関しては『今までは外から言っているだけだった。今度は政府内の議論でしっかりと言うべきところは言っていく』と述べ、言葉を濁した」という。

 要するに、「言うべきことは言っていく」という言葉とは裏腹に、大臣就任と引き換えに“変節”して、持論の脱原発を引っ込めたというわけ。今まで脱原発を訴え政権批判していたのは何だったのか。河野氏の発言を支持していた人々は、裏切られてしまった形だ。河野氏の言葉の重さは、所詮、吹けば飛ぶほど軽かったということか。

 ちなみに、安倍自公政権は、首相自らが「原発は、再稼働を進めていくのが政府の方針だ」(810日に発言)と言い、時の経産相も原発再稼働のことを「地球温暖化対策といった観点から重要であり、経済の健全な発展や国民生活の安定に不可欠」と翌日に述べている。(812日付日経産業新聞より)

 このように「地球温暖化」のためには二酸化炭素を出さない原発が必要、というロジックを聞くことは多い。だが、それなら原発事故リスクのない自然エネルギーのほうが良いことは、論をまたない。

 例えば日本は、世界第三位の太陽光発電の累積設置容量を誇る。だが、曇りや雨の日や夜間は電気に替えられないので、発電所を減らすことにはつながらない、だから原発が必要、という声は根強い。

 だが近年、電力を貯め込む「蓄電池」の技術は急速に向上している。

 例えば、パナソニックは太陽光を蓄電することのできる家庭用蓄電池を、ドイツを皮切りにヨーロッパで販売する。この蓄電池により、実に家庭の電気使用量の70%もの量を節約することができるという。パナソニックは2018年度までに、海外で100億円の収益を蓄電池であげることを目標としているという。(93日付ジャパンタイムズより)

 この蓄電池は日本でも一応販売しているが、日本では一向に盛り上がっていない。日本の企業にもかかわらずである。これもひとえに、安倍自公政権が蓄電池の普及に力を入れていないから、と言わざるを得ない。それでいて、原発再稼働は、国民の反対が渦巻く中、躍起になって進めている。

 国民の意志を反映させ、国民と手を携えて進む政治は、果たして日本にやってくる日はあるだろうか?(佐々木奎一)
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2015年10月19日

来年の参院選「違憲訴訟」続出で幕開け

 平成二十七年十月九日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「安保法制の無効求め裁判所に門前払いされる理由」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの日本経済新聞に「安保法巡る訴訟2件却下、東京地裁」という記事がある。それによると、「9月に成立した安全保障関連法の無効確認などを求めた2件の訴訟で、東京地裁(増田稔裁判長)は8日、『具体的な権利義務に関する訴えではなく不適法』として、門前払いに当たる『却下』の判決を言い渡した」という。

 共同通信電子版によると、「1件は松山市の自営業福岡英二さん(58)が、安保法は交戦権を認めないとした憲法9条に違反し無効だと主張していた。もう1件は東京都の男性が国に法律廃止を求めていた」という。

 つまり、安保法制は違憲なので無効、として国民が提訴したが門前払いされたことになる。

 憲法第81条には「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」とある。これは「違憲立法審査権」といって、終審は最高裁だが、一審、二審は地裁、高裁などが受け持つ。

 なお、今年64日、衆院の憲法審査会で憲法学者3人全員が揃い踏みで安保法制は「違憲」と言ったのは記憶に新しい。この席で、憲法学者の小林節氏(慶應義塾大学名誉教授)は、違憲立法審査権について、こう述べていた。

 「具体的な事件にならない限り、裁判所は憲法問題は扱ってくれません。ですから、例えば、今問題になっている新安保法制でも、憲法違反だと訴えて退けられた人がいるんです。それは当たり前の話でありまして、例えばこういうことですよね。海外派兵を下令された部隊の隊員が出発の朝に逃げ出して懲戒処分を受ける、そうしたら、その懲戒処分が違法、無効である、なぜならば、その前提となる法制度及び海外派遣命令が憲法違反であるから、こういう議論を四、五年かけてやるわけです」

 つまり、具体的な被害の実例がない限り、門前払いされてしまうというわけ。

 だが、その小林節氏は、924日付日刊ゲンダイ電子版の記事「小林節氏が語る『民主主義を取り戻す戦いは始まったばかり』」で、こうも語っている。「違憲訴訟も視野に入れています。自衛隊の犠牲者が出たら、親が訴える。しかし、これは切なすぎるので、別の方法もある。この法案が成立したことによって、我々はいつ戦争に巻き込まれるかという恐怖にさいなまれることになった。これは平和的生存権の侵害ですから、あちこちで少額の損害賠償訴訟を起こす。弁護士はボランティアで支援する。

 日弁連では違憲訴訟に備えた内輪の勉強会が始まっています。弁護士の中にもさまざまな意見、考え方がありますが、今回、史上初めて、権力者による憲法破壊が行われたわけです。それに対して、憲法と人権を守るのが職業的使命である弁護士たちが最低限の義務を果たすべく立ち上がり、行動することは正しいことです。こういう訴訟を続けることによって、国民に怒りを忘れさせない。どれだけ、我々が失礼な目にあったか、その怒りを抱かせ続ける。それを持続させて、来年の参院選を戦う」

 なお、先月25日付の朝日新聞一面の記事「南スーダンPKO、安保法適用」によると、安倍自公政権は、安保法制の成立を受け、アフリカ・南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊の武器使用基準を緩和し、来年5月から「駆けつけ警護」を任務に追加する方針を固めたという。早ければ2月にも閣議決定する。これは自衛隊の活動に安保法を適用する初の事例となる。

 「自衛隊員はこれまで、自らや近くの人を守るためにしか武器を使えなかったが、法改正で任務を妨害する勢力の排除や住民の安全確保にも使用が可能になった。駆けつけ警護は離れた所で襲われた民間人や他国軍兵士を武器を持って助けに行く任務」、「改正法では、駆けつけ警護のほか、自衛隊が武器を持って検問や巡回などの治安維持活動に当たることも可能になった」という。

 来年5月といえば、ちょうど国政選挙の時期である。来年の参院選は、全国で違憲訴訟が続出、という異常事態で幕を開けることになりそうだ。(佐々木奎一)
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2015年10月14日

タレントで多発中の観があるがん、珍奇な最新研究事情

 平成二十七年十月五日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「タレントで多発中の観があるがん、珍奇な最新研究事情」


 を企画、取材、執筆しました。



924日に胆管がんで死亡した川島なお美(54歳)、同19日に胃がんで亡くなったフリーアナウンサー黒木奈々(32歳)、同23日に乳がんを公表したタレントで元プロレスラーの北斗晶(48)など、最近、タレントのがんが相次いでいる観がある。

 そうした中、けさの日本経済新聞に「免疫活用でがんを攻撃、慶大が転移を防ぐ基礎成果、京大はiPSから司令塔役」という記事がある。それによると、慶応義塾大の工藤千恵専任講師と食品製造販売のファーマフーズ(京都市)の研究チームは、「FSTL1」という、免疫細胞の働きを高めてがん細胞を攻撃する抗体を使った実験で、がん細胞を皮下に移植したマウス5匹に投与したところ、腫瘍をたたく効果が確認され、2匹でがん細胞が消え、がんが骨へ転移するのを防ぐ効果もあったという。

 また、京大iPS細胞研究所の金子新准教授らは、「別の免疫細胞を介して、がんをたたくキラーT細胞の攻撃力を高めたり、細胞を長寿命化したりできる」という「ヘルパーT細胞の働きを示す細胞を作った」という。

 日本の死因第一位で、国民の3人に1人を亡くす国民病「がん」の被害が減ることを期待したい。

 ちなみに、がんについては、つい先週木曜、「背の高さが、がんリスクに関連している」という、珍奇な学説が海外で公になったと3日付のジャパンタイムズが報じている。

スウェーデンの550万人のデータに基づく研究結果によると、身長100cm以上から10pごとに、がん発生の確率が、男性で10%、女性で18%高まるという。特に、女性の乳がんのリスクは、10cmごとに20%高まる。メラノーマ(黒色腫)のリスクは、男女とも10cmごとに30%アップするという。

 同様の研究は他国でもある。アメリカでは2013年に、女性に限った研究結果が出ている。それによると、特定のがんの発生率が身長10cmごとに13%高まったという。

 こうした研究は、一部の専門家から懐疑的にみられている。専門家のなかには、研究の方法論に疑問を持つ者や、遺伝や肥満といった他の要因の方が、もっと発がんリスクに関連している、と強調する専門家もいる。

 「それは一見したところ、奇異に感じます。しかし、危険にさらされる細胞の数がガンの決め手になるのだから、身体の細胞数の多さが、がん発生率の高さに関係しているいうのは、実はとっても、もっともらしいです。がんは、ノーマルな細胞の突然変異によって起こります。そして、体がビッグな人ほど、より多くの細胞を持っています」とロンドン大学の科学者・ドロシー・ベネット氏は説明している。

 なお、大きい人ほど細胞が多い、という理論でいくと、太るとがんのリスクが高まることになる。遺伝や身長は意志の力で変えられないが、体重なら変えられる。無論、暴飲暴食、喫煙、過労、ストレス、みだりな行為などの生活習慣や、受動喫煙、放射性物質、大気汚染といった環境要因などなど、回避可能なリスク要因は他にも多数ある。仮にくだんの珍奇な学説が真実だとしても、できることをやっていくしかない。(佐々木奎一)


 ※がんの要因の箇所で「放射性物質」が抜けていたので加筆修正した。(2016年1月2日付)

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2015年10月05日

日本の食品廃棄量、世界の食糧援助の5倍

 平成二十七年九月二十八日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「日本の食品廃棄量、世界の食糧援助の5倍」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの日本経済新聞に「特集―食品廃棄物の発生量、年1927万トン」という記事がある。それによると、企業が製造時に出す残りかすや規格外品、売れ残りや返品など製造、流通、消費の各過程で大量に生まれる食品廃棄物の量は、約1927万トンに上る(2013年度)という。そのうち食べ残しや賞味期限切れなど、まだ食べられるのに捨てられている「食品ロス」は642万トン(12年度)に上る。

 年間1927万トンという数字がどれほど多いかは、世界全体の食糧援助量約400トン(2011年)、日本の米収穫量約850トン(2012年)から推して知るべし。

 なお、食品廃棄物の量は、5年間で388万トン減少し、飼料や堆肥、燃料などにリサイクルされる率は85%と、一応健闘はしているという。例えば、「霧島酒造では芋焼酎の製造過程で生じた芋くずでバイオガス発電を行ったり、西友では賞味期限が迫った冷凍食品や菓子などを福祉施設などに再分配するフードバンクを活用」したり、「日本気象協会では気温、湿度、雨量、日射量などの気象データと企業が持つPOS(販売時点情報管理)データを人工知能(AI)で解析、商品の売れ行きを予測する。昨年度はミツカン、相模屋食料と仮想的実験を行い、冷やし中華つゆで4割、豆腐で3割のロス削減に成功」したという。

 なお、「業態別の再生率では、食品製造業が95%と高水準」だが、「食品小売業が45%、外食産業が25%」と食品製造以外は低いの実態。

 ちなみに、オランダではこんな動きがある。ポートフォリオ・オランダニュースの今年6月の記事によると、オランダの首都アムステルダムでは同国のスーパー「アルバート・ハイン」の元店員4人が、売れ残りを使ったレストラン「イン・ストック」を立ち上げ大成功しているという。

 さらにそれに触発を受けた隣国ベルギーでは今年7月、同国第2の都市アントワープでスーパーマーケットの売れ残りだけを料理に使用するレストラン「レカブ」を開店するという。野菜や果物はアルバート・ハインやオーガニックの八百屋から、肉もビオプラネット(ベルギー大手スーパー)から調達する。

 オーナーの女性二人は「実験的だけれどうまくいくと思う」「スーパーマーケットでは信じられない量の食料が捨てられている。ベルギーのフランダース地方だけでも200万トンのまだ完全に食べられる状態の食料がゴミ処理されてしまう。あまりにももったいないこと」、そこで自分たちも何かできないかと話題のアムステルダムの「インストック」を見学。残り物とは思えない美しく盛られた料理を見て、同じようなことをしたいと思いついた。使用する材料は、期限切れぎりぎりで、店頭には出せないものだが、質は全く問題ない。スローフードを専門にし3コース25ユーロで提供する、という。

 なお、こうした環境問題や社会問題の解決を目的として収益事業に取り組む事業体を「ソーシャルビジネス」(社会的企業)という。ソーシャルビジネスは、日本では、理想だけは高くて収益をあげれない零細企業、という印象が強いが、同ニュースの今年5月の記事によると、オランダでは大企業の参加も多く、同国の報告書「ソーシャル企業モニター2015」の対象300社のソーシャルビジネス企業の売り上げは、「過去2年で約25%上昇」しており、「従業員数も36%増加」、「300社の売上合計は47600万ユーロ、従業員数は10709名。このうち40%が利益を創出している。損失を出している企業のほとんどはまだスタートアップの段階である」という。

 このようにソーシャルビジネスが人々から評価され、その結果、売上も伸びて、環境、社会も改善されるという好循環があるという。ポイントは、どうせお金を出すならソーシャルビジネス企業の方にしよう、という確固とした規範を一人一人の国民が持っていることといえよう。私たち日本人にこういう規範はあるだろうか?(佐々木奎一)

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2015年09月25日

安保法制にみる「フィリバスター」

 平成二十七年九月二十一日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「安保法制にみる野党の『フィリバスター』


 を企画、取材、執筆しました。


 国民のおよそ6割が反対しているといわれる安保法制――。18日付当コーナーで報じた参院委員会での“違法採決”以後の流れは、野党側が、中谷元防衛相、山崎正昭議長、安倍晋三首相の問責決議。山崎正昭議長への議長不信任決議案を立て続けに出し、否決。

 その後、この法案を巡る国会の動向は、内閣不信任決議案を審議する衆院本会議を午後4時半から開会して民主党の枝野幸男幹事長が40分程演説している段階。(シルバーウィークの兼ね合いで締め切り間際の918日午後511現在の情報)

 この原稿の執筆時点ではこのような状況だが、ジャーナリスト鳥越俊太郎氏は16日付のTBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」で興味深い発言をしている。鳥越氏は「不信任案を決議したときの理由を述べるじゃないですか。あれは10時間でも20時間でも述べることはできるんです。昔はそういうのあったんですよ。だから今、野党のなかで、もうとにかく何でもいいから20時間、演説をぶつ、くらいな、そういう“ツワモノ”が出てきてもいいと思うんだよね。数は少ないわけだから、そういう形で参院通過を止めよう、と。

 それはもう最終的には『60日ルール』(衆議院で可決した法案を参議院が60日以内に議決しない場合、衆議院は『参議院は否決した』とみなし、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再可決して法案を成立できる規定。憲法第59条第4項に基づく)を使えるかもしれないけれども、参院は徹底的に抵抗したという実績を示してほしい」「そうすればやっぱり、国民の受ける印象というのは、相当追い込まれたな、あれだけ多数を獲っても国会ですんなり通らなかったという印象を持たれるでしょうから。あんまり60日ルールは使いたくないんですよ。政府はね」と語っている。

 つまり、内閣不信任案の決議で、野党議員が徹夜の「フィリバスター」(演説を長時間続けて議事進行を遅らせる行為)で引き延ばすのかどうか。そして仮に野党がそうした場合、安倍自公政権は果たして60日ルールを使うのかどうか。あるいはひょっとすると、シルバーウィークに突入したため国会を連休明けに仕切り直すという可能性も、確率は限りなく少ないがゼロではない。

 なお、連日国会を取り囲むデモの背後には、国民の過半数の反対の意志があるわけだが、そうした人たちのなかには、このまま安保法案が成立したら落胆する人もいるに違いない。そういう人は、次の言葉を思い起こすとよいかもしれない。

 アニメ映画制作会社「スタジオジブリ」の共同創設者で、戦時中の空襲での話を描いたアニメ映画「火垂るの墓」などを手掛けた高畑勲監督は、12日付のジャパンタイムズのインタビューを受けている。同記事には、こうある。

 「自公政権は、安保法案を今週早々にも可決しようとしている。しかし、高畑は、あきめようとはしない。高畑氏はこう語る。『たとえ自公政権が明白に憲法を犯して、法案を成立させたとしても、抗議を続けます。時が来たら、この安保法制を廃案にすることができる、と私は信じています』」(佐々木奎一)


Isao Takahata.JPG

(写真はジャパンタイムズHPより)

PS 結局、枝野氏は、2時間程度で話を切り上げた。全くツワモノではなかった。2時間引き延ばして本会議の採決を翌日未明に引っ張ることでヨシとしている民主党は発展消滅させて、日本国憲法党とか憲法擁護党といった明確なビジョンで一つにまとまる野党にした方が、お国のためになる、と筆者は考える。

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参院安保“違法採決” 揉みくちゃシーンの内幕

 平成二十七年九月十八日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「参院安保“違法採決”揉みくちゃシーンの内幕


 を企画、取材、執筆しました。


 けさの各紙一斉に一面トップで議員たちが激しくもみ合う写真付きで「安保法案採決 再び強行」(毎日新聞)、「安保採決 参院委も強行 怒号と混乱 虚を突き採決」(朝日新聞)、「安保法案 参院委で可決 本会議でも野党抗戦」(日本経済新聞)、「安保法案 参院委可決」(読売新聞・産経新聞)といった見出しで報じている。

 その揉みくちゃのシーンの内幕について、朝日新聞はこう記している。

 「8分あまりの強行劇。怒号が飛び交うなかで行われた採決だった。しかし、その筋書きは周到に準備されていた。17日午後4時半ごろ、参院特別委員会の鴻池祥肇(よしただ)委員長に対する不信任動議が否決された。委員会室の外で待機していた鴻池氏が右、左、正面とお辞儀して委員長席に腰を下ろした。

 民主党の福山哲郎理事が『これからの議題は何ですか』と話しかけながら委員長席に歩み寄った瞬間だった。委員会室の後方に控えていた約10人の自民党議員が鴻池氏をガードするためにスクラムを組んだ。同時に、安倍晋三首相も閣僚席に座り、中谷元防衛相と岸田文雄外相が続く。前日夕から足踏み状態にあった委員会が、あっという間に安全保障関連法案の採決の舞台へと転換した。

 虚を突かれた野党議員は、一瞬遅れて委員長席に押し寄せた。鴻池氏の横に陣取った自民の佐藤正久筆頭理事が、手で合図する。すると同党の山本一太議員が法案の質疑を終え、ただちに採決に入ることを求める緊急動議を読み上げた。

 混乱を尻目に、安倍首相は採決の結果を見ることもなく、委員会室を足早に立ち去った。

 鴻池氏は採決の進行を記した紙を読み上げるが、聞こえない。佐藤氏が与党議員に起立を促す。民主の小西洋之氏が委員長席の後ろから自民議員の輪の中に飛び込むが、佐藤氏にはじき飛ばされた。

 こうして関連法案は可決された。野党議員から『無効、無効』の大合唱が起きるが、自民の議員らに囲まれたまま鴻池氏は委員長席を後にした。

 鴻池氏は上着のポケットに、野党議員に進行表を奪い取られることを想定して、人気マンガ「ONEPIECE(ワンピース)」の歌舞伎上演のチラシをダミーとしてしのばせていた。(略)

 幹部らは首相官邸とも連絡を取り、動議否決後、鴻池氏が委員長席に戻ると同時に、安倍晋三首相が委員会室入りする段取りも決めていた。参院幹部らは『委員会を開けば質疑をする』と各方面に吹聴。委員会が始まっても、すぐに採決にはならないと受け止めた野党を油断させた」

 また、毎日新聞によると、「どの時点で何の採決が行われたのか、議場にいた野党議員すら分からなかった。(略)生中継するNHKすら『何らかの採決が行われたものとみられます』などと実況し、散会するまで『可決』を伝えられなかった。

 参院のウェブサイトで公開されている審議の録画には、鴻池氏が着席してからの約110秒間、『速記を中止しているので音声は放送していません』というテロップが出る。鴻池氏の入場直前に、委員長の代理を務めていた自民党の佐藤正久議員が速記の中止を命じているからだ。記録を取っていない間に採決が行われた可能性も否定できない。

 採決前の慣例の首相らが出席する締めくくり質疑も省略された。(略)

 政治アナリストの伊藤惇夫さんはこう分析する。『怒声で聞こえないことはあったが、これほどの混乱は久しぶりだ。委員長のそばにいた自民党議員が身ぶり手ぶりで立ち上がるよう指示を出していた。要するに議員すら起立採決の声が聞こえなかったのだろう』

 安倍晋三首相の母校成蹊大の加藤節名誉教授(政治哲学)は『まさにイリーガル』と憤慨し、立憲主義を唱えた英国の政治思想家ロックの言葉を引いた。『法が終わるところ暴政が始まる』。憲法学者の小林節氏も『慣習律も守れない高度に幼稚化した安倍政治の象徴だ』と批判した」という。

 違憲法案と呼ばれる安保法制は、イリーガル、つまり“違法採決”で本会議には入った。その動向を注目したい。(佐々木奎一)


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2015年09月24日

小泉純一郎“怒り”の独占インタビュー

 平成二十七年九月十四日付、のauのニュースサイト


    EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「小泉純一郎“怒り”の独占インタビュー

 を企画、取材、執筆しました。

 今日の新聞は休刊。昨日の朝日新聞は、小泉純一郎元首相の独占インタビューを載せていた。小泉氏がメディアのインタビューに応じるのは、069月の首相退任以来初。その日は、安倍晋三氏の自民党総裁再選が決まった翌日、かつ、鹿児島県内の川内(せんだい)原発1号機の営業運転再開の前日だった。インタビューは予定時間を大きく超え、約90分間にわたって語り続けたという。

 小泉氏は「再稼働は間違っている。全国で原発が1基も動かない状態は約2年続いたが、寒い冬も暑い夏も停電しなかった。原発ゼロでやっていけることを証明した。政府はできる限り原発ゼロに近づけていくべきなのに、維持しようとしている。それが自然エネルギーの拡大を阻害しているんだ」

 「原発事故が起きるまでは専門家の話を信じていた。でもね、自分なりに勉強して分かったんだよ。政府や電力会社、専門家が言う『原発は安全で、コストが一番安く、クリーンなエネルギー』。これ、全部うそだ」「なぜうそか。例えば、新潟県中越沖地震や東日本大震災など、マグニチュード7前後の地震は最近10年でも頻繁に起きている。対策を講じようとすれば、さらに莫大(ばくだい)な金がかかる。いまだに家に戻れない福島の状況を見ても、原発がCO2より危険なものを生み出しているのは明らかで、全然クリーンじゃない。原発は環境汚染産業なんです」「かつて原発を推進してきた1人としての責任は感じている。でも、うそだと分かってほっかむりしていていいのか。論語にも『過ちては改むるに憚(はばか)ることなかれ』とあるじゃない。首相経験者として逃げるべきじゃない、やっていかなければと決意した」と語ったという。

 また、原発が潜在的な核抑止力になるとの言い分については、「抑止力とか他国を牽制(けんせい)するような武器にはなり得ない。プルトニウムの保有は便益より損失が大きいと思う。そもそも核廃絶の時代なんだから、核兵器を持たなければならないというのが分からないね。米国だって核の問題を真剣に考えるようになってきている」「米国は、日本が『原発ゼロで行く』と決めれば、必ず認めます。同盟国だからね。一部の推進論者は反対するかもしれないが、日本国首相と米国大統領が信頼関係のもとで話をすれば、米国は絶対に日本の意向を尊重する。それが民主主義国家同士の関係だ」と述べている。

 そして、原発再稼働反対の声が選挙の投票行動につながらない点については、「『原発ゼロはまだ先の話だ』とか『他に大事な問題もある』と感じた人が多かったのかもしれない。自分の生活が原発と関係する人も少なくないでしょう。でも政府がどれだけ安全性を強調しても、いまだに高レベル放射性廃棄物の最終処分場は決まらない。国民は『今のままでは済まない時代がいずれ来る』とわかってますよ。原発ゼロが選挙の争点になる時は必ず来る。時代は変わります」と言い、聞き手が「現職国会議員から『原発ゼロ』の機運は感じられない」と言うと、小泉氏は大きく首を振り、「国民が変われば、政治も変わる。自分一人でもやる」と語ったという。

 ちなみに、川内原発は160km圏内に5つのカルデラ(火山の中心部または周辺にある円形の著しく広い凹所、広辞苑第六版より)があり、巨大噴火の被災リスクが最も高い原発の一つとして有名。

 それに川内原発は川内川の河口に位置する。先週、関東の鬼怒川が決壊したが、洪水と火山には密接な関係がある。例えば、1783(天明3)年、長野県と群馬県の境にある浅間山が噴火した際は、火砕流が発生し、下流で泥流に変化して吾妻川を塞ぎ、次いで決壊、多量の水が利根川に出て流域の村落を流失した。(気象庁HPより)

 つまり、川内原発は地震、津波のみならず、火山、洪水リスクもはらんでいる。それに、安倍自公政権が進めている安保法制により、米国と同一視されて、日本の原発がテロの的になるリスクもある。原発を再稼働してよいのか、決めるのは私たち国民である。(佐々木奎一)


PS 小泉純一郎氏は今月16日、安保法制の採決が迫る中、こう述べている。

 「(国会周辺の動きについて)若い人であろうがお年寄りであろうが、自分の思うところを発言し行動することは、民主主義の社会においては当然ですし、良いことだと思う。民主主義というのは選挙で多くの国民の支持を得なければ当選できないんですから、そういう多くの意見に政治家は常に耳を傾けていかなきゃいけないと思っている。長い目で見れば、国民多数の意見は必ず政治に生かされていく。(松山市での記者会見で)」(朝日新聞より)


 「原発再稼働」と「安保法制」は、つながってくる。

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2015年09月14日

石橋を叩くかのような石破茂が派閥結成

 平成二十七年九月十一日付、のauのニュースサイト


  au EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「石橋を叩くかのような石破茂が派閥結成」


 を企画、取材、執筆しました。



 自民党総裁選は8日、野田聖子氏が推薦人20人を集めることができず、安倍晋三氏の無投票再選という形で終焉した。自民党内が羊のように安倍氏につき従う中、名乗りを上げたことで、野田氏の株が上がったのは確か。

 一方、ポスト安倍の最有力と目されながら、負けるのが嫌なのか、石橋を叩いて渡るように物事を進めたいタイプなのか、とにかく煮え切らない態度で、結局、総裁選に立候補しなかった石破茂・地方創生担当相は、今回、多くの国民を失望させたのは確か。

 そうした中、総裁選が終わってから、にわかに石破氏は動き出した。自民党の総裁公選規程では連続での3選は認められておらず、安倍首相の任期は最長で309月末で終わることを見越して、「政権構想を作るには、長い時間と大変な労力が必要だ。『誰が』でなく何をやるのかきちんと提示し、いつの日かご審判をいただくために備えたい」と9日に述べ、派閥の立ち上げを明言したのだ。

けさの各紙には「『石破派』決定へ会合 次期総裁選向け基盤固め」(毎日新聞)、「石破派 月内立ち上げ 20人超参加へ 『無派閥会とは一線』」(産経新聞)、「石破派 準備会合に9人 16人参加意向 閣内残留が焦点」(読売新聞)といった見出しで報じている。

 それによると、石破氏は昨日、「自身に近い自民党議員と『石破派』結成に向けた準備会合を国会内で初めて開いた。(略)会合には石破氏のほか、山本有二元金融担当相、鴨下一郎元環境相、田村憲久前厚生労働相ら8人が出席した。(略)周辺は10月の内閣改造・党役員人事での石破氏の対応について『閣僚を退くべきだ』と語る。首相と近い参院議員は『閣外に出て安倍降ろしに備えるのでは』と警戒感を示す」という。(毎日新聞)

 他方、「安倍首相は石破氏を閣僚として処遇する方針で、入閣要請を受け入れるかどうかが焦点だ。石破氏の周辺からは『総裁選はしばらく先だ。閣内で力を蓄えるべきだ』との声」(産経新聞)や、石破氏には「『首相に必要とされれば確認に残る』という思いもある」(朝日新聞)という。

 なお、石破氏は、09年に額賀派(旧田中派)を退会し、派閥を否定してきた経緯があるため、批判も予想される。がしかし、石破氏が派閥を退会した年は、民主党政権となり、自民党は失墜、数年後にはなくなるのではないか、という声すらあった年だった。

 当時の10226日付の石破氏のブログには、「政策で一致し、この人を総裁、やがては総理にしたいというグループは当然あっていい。しかしそれは自民党が選挙に勝って、初めて言えることなのです。今の自民党に、資金的にも、人的にもそんな余裕はない」と述べており、政権に返り咲いた先の派閥は否定しない物言いである。

 また、0 9912日付のブログには、こう書いてある。「かつて田中角栄元総理は、『何故自民党に派閥が五つあるか、それは中選挙区の最大定員が五名であるからだ』と喝破されました。自民党の各派閥はそれぞれ選挙区に三名から五名の候補者を立て、互いが激しく競い合いました。『自民党の敵は自民党』であり、候補者は現総理総裁ではなく、自分の派閥の領袖を総理総裁にするべく戦い、派閥はその武器である資金、ポスト、選挙応援を最大限に駆使しました。派閥領袖は、それなりに、間接的ではあるにせよ有権者の信任を受けていたのです。

 田中角栄理論に従えば、小選挙区制になれば、資金、ポスト、選挙応援を構成要素とする派閥は当然無くなるべきものでした」

 この言動からみても、石破氏は、あくまでもクリーンな政策集団でいくようである。

 もともと20代で田中角栄の派閥秘書となった石破氏は、全盛期の田中角栄をじかに知る数少ない政治家の一人。それゆえに、旧来の派閥の、時代に合わない側面をよく知っているのであろう。

 だが、その一方で、小選挙区制となり、資金や選挙公認権を党執行部が握った結果、執行部の意に背く議員は排除され、今回の総裁選の無投票という事態を招いた。現状を憂い、議員一人一人がもっと活気のあり、各派閥が政権を獲るためしのぎを削った時代をつくった原動力「中選挙区制」の復活を望む声も強くなっている。

 こういう時代だからこそ、今のような安倍政権を追認するための機関になり下がった派閥ではなく、現代版の「本物の派閥」を国民に示す必要があるのではないか。(佐々木奎一)
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2015年09月11日

三色旗掲げ新宿を練り歩く池田教信者たち

 平成二十七年九月七日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「三色旗掲げ新宿を練り歩く創価学会員たち


 を企画、取材、執筆しました。

  

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 けさの朝日新聞に、旗を掲げた人々のデモ行進のモノクロ写真付きで、「街頭に創価学会の三色旗 党元幹部『公明、目を覚ませ』」という記事がある。それによると、昨日、新宿の歩行者天国の約150メートルを、安保法案に反対する学生や学者らデモ行進して練り歩いた。その中に、創価学会の三色旗を掲げ、安保関連法案に反対の声を上げる学会員らもいたという。

 そして、このデモでは、民主党の蓮舫氏や共産党の志位和夫氏ら野党幹部のほか、こういう人物も現れた。

 「買い物客でにぎわう日曜の新宿伊勢丹前。歩行者天国のど真ん中に設けたステージで、『平和の党として一定の存在感を持っていた頃の公明党副委員長です』と自己紹介した上で、二見伸明氏(80)がスピーチを始めた」「公明党に『目を覚ませ、正気になれ』と言うことができるのは創価学会であり、党員であり、支持者です。勇気を奮い、私情を捨て立ち上がってください」

 「道路を埋め尽くした参加者からは『その通り!』の声が上がり、赤、黄、青の三色旗が揺れた。二見氏は1990年代に党副委員長や運輸相を歴任した元党幹部。その登壇をSNSなどで知り、遠方から集まった学会員もいた」

 また、けさの毎日新聞には、先週30日の、国会を埋め尽くした主催者発表12万人の安保法制反対デモについて、地方紙30社以上が1面で取り上げたうえ、テレビも関東地区の地上波で少なくと34番組、計2時間30分放送し、「公明党に異議を唱える創価学会員などを紹介する内容が目立った」とある。

 このように創価学会・公明党ににわかに注目が集まっている。ちなみに、長年平和の党を自称してきた公明党が変貌した理由について、「K?meit?:PoliticsandReligioninJapan」という洋書を昨年著した、スティーブン・リード氏(中央大学教授、政治学)とリード・クライン氏(デュースブルク=エッセン大学、政治学者)は、昨年1120日のジャパンタイムズ電子版でこう語っている。

 それによると、「変質」のきっかけは今から20年以上前にさかのぼる。1993年、公明党は当時の細川護煕首相の8党連立政権に加わった。それ以来、政権の座を奪われた自民党が、公明党を攻撃し始めた。1995年にはオウム真理教のサリンガス攻撃があり、これを機に宗教団体を問題視して、創価学会・公明党は、憲法で定めた政教分離に違反するという理由で、ますます攻撃し始めた。

 これにより、公明党は、創価学会の法的地位を守るため、生き残りを賭けて、自民党と手を組んだ。一方、自民党の方も、当時、選挙情勢が厳しく、全国の小選挙区で平均2万票を持つともいわれる創価学会員票に頼り、生き残りをはかった。

 それ以降、自民党のタカ派の政策に、公明党は抵抗しては負けて、創価学会員から批難される、という構図が続いており、昨年の集団的自衛権容認の解釈改憲の閣議決定でで、創価学会員の反対はピークに達した。これは、公明党が連立与党にとどまるための妥協の産物、という趣旨の指摘している。

 このように、憲法学者や弁護士、元最高裁長官、元内閣法制局長官らが「違憲」と断じる安保法制を、公明党が成立させようとしている裏には、「政教一致」と追及されて創価学会が法的地位を失うのを防ぐ目的がある。究極的には、公明党は創価学会のためだけに存在しているということになろう。

 昨日デモ行進した冒頭の創価学会員たちは、まるで創価学会と公明党が別物であるかのように、公明党だけ批判している。だが本来、新宿区の信濃町にある創価学会本部を練り歩く必要があるのではないか?(佐々木奎一)


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2015年09月06日

立候補あきらめず「今を必死に生きます!」野田聖子

 平成二十七年九月四日付、のauのニュースサイト


EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「立候補あきらめず「今を必死に生きます!」野田聖子」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの産経新聞に、野田聖子氏と安倍晋三氏の写真入りで「首相 石破グループに食指」「野田氏 自ら電話攻勢も苦戦」という見出しで、自民党総裁選の近況を報じている。それによると、安倍氏周辺は、党内前7派閥に加え、鳩山邦夫氏の政策グループや石破茂氏に近い議員でつくる「無派閥連絡会」にも推薦人を出すよう呼びかけているという。

 一方、野田聖子氏は、「推薦人確保が難しい状況が続いている。先週から親しい女性議員らに自ら電話をかけ、協力を呼びかけているが、立候補できる環境は整わないままだ。(略)ただ、野田氏は出馬をあきらめていない。55歳の誕生日を迎えた3日、自身のブログで障害を持つ長男が保育園に入園できるようになったことを紹介した上で、こう締めくくった。『11日の命を必死で生きているムスコさんは、鉄母の良きメンター(助言者)であり、永遠のライバル。ゆえに、ノダも今を必死で生きます!」と記しているという。

 ちなみに、福岡のRKBラジオ「ニュース新発見 インサイト」817日付で、政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏は、こう述べている。

 「8月の最初に、非常に自民党にとってショッキングな選挙があった。1つは、宮城県の仙台市の市議会議員選挙。もう一つは、東京の立川市の市議会の補欠選挙。

 仙台の方は、5つ選挙区があり、いつも自民党がトップ当選するのですが、今回、トップ当選、自民党ゼロ。5つのうち、なんと3つの選挙区で共産党がトップ当選した。

 立川の方も、自民党の候補が負けて、維新と民主党の統一候補が勝った。

 つまり、自民党は両方負けたんです。この2つの選挙には共通点があって、投票率がもの凄く低かった。投票率が低いと組織票が多くなりますから自民党が優位なのに、自民党が両方とも負けた。

 自民党の宮城県連や東京都連の幹部が何と言っているかというと、『来年の参院選挙勝てない。これじゃ』。いま、9月の自民党総裁選挙で、安倍さんの無投票当選と言われていますが、地方組織からは『絶対、総裁選やってくれ』と。『とにかく、徹底して自民党のなかで、もっと議論して自民党を活性化して』と。『総裁選で候補たちが全国回って、とにかく自民党がもう少し活気づかなくてはダメだ』『安倍さんが無投票で逃げるなんてことをしちゃダメだ』『とにかく総裁選が大きな節目になる。本当に、闘う、議論をする自民党を見せてくれ』『中央はなかなか地方の今の厳しい状況をわかっていないから、そこを何としてもわかってもらわなければ、大変なことになる』という、地方からの叫びが聞こえてきています」

 なお、TBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ!」825日付で、山崎拓・元自民党副総裁と亀井静香・元自民党政調会長が生出演した。そこで山崎氏は自民党総裁選について、本当はこの安保法制の問題で、総裁選に立候補してリベラルの代表になって、「この安保法制は平和安全法制という名がついているけれども、実際は戦争安保法制だよ、そんなものはやめろよ」ということを主張できれば、「私は今朝も電話で亀井さんと話したんだけど、総理大臣になれると思うんですよ」と語っていた。

 そこで筆者は昨日、「『総理になれる』という発言の真意は、今回立候補することで、名が知れ渡り、これから先、何度か総裁選に出るなかで、いずれ総理になれる、という意味合いか?それとも、今回の総裁選で、党員票を圧倒的に獲得して、地滑り的に勝利する、という意味合いか?」と山崎拓事務所に質問した。しかし、「山崎本人に確認しましたが、今回は、ご遠慮させていただきます。申し訳ございません」ということで、「総理になれる」という真意はわからずじまいだった。

 なお、同ラジオで亀井氏が言っていたが、自民党の派閥・石原派(旧山崎派)では、今も山崎氏は「鎮座」して強い影響力を持っているというから、ひょっとすると水面下で活発に動いているのでコメントしなかったのかもしれない。

 総裁選立候補の期限である98日までに野田氏が出馬できるのかどうかが注目される。(佐々木奎一)
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2015年09月04日

検証記事(大渕愛子弁護士に対する筆者の記事を検証した記事)

 2013年11月13日付でマイニュースジャパンで筆者が取材執筆した記事「『行列』大渕愛子が弁護士法違反で懲戒請求される→告発者の自宅に突然、名誉棄損で警官4人が押し掛け私物を差し押さえ」について、現在、大渕氏がマイニュースジャパン、同社社長・渡邉正裕氏、筆者・佐々木奎一を相手取り、名誉棄損で訴えて係争中の事件について、このたび、大渕氏より、記事の根幹を揺るがす新証拠が提出されたため、仮処分以降の経緯と併せ、ここに検証記事を掲載する。


 なお、先に結論からいうと、当該記事と関連記事合わせ4本の筆者の記事をマイニュースジャパンから削除することに合意した。責任を持てない記事を取材執筆して掲載して、ご迷惑をおかけしたことをお詫びする。


■取材の経緯

 筆者がこの事件を取材した経緯は、陳述書に記載した通り、A氏(女性、40代)からの情報提供がきっかけだった。


 ただ、当時、A氏からの一方的な情報に基づくのを避けるため、筆者は大渕氏に、箇条書きで事細かに質問した。もし、大渕氏に反論があれば、「ここは本当はこうだ」という具合に、返事がくる、と踏んでいた。


 この時点で、大渕氏から具体的な反論が来れば、A氏、大渕氏、双方の言い分を検証し、記事にするのを見合わせるか、あるいは、再取材してもっと詰めたうえで掲載したことだろう。特に、後述のように、それから一年後に大渕氏が、にわかに提出したA氏が送金したことを示す通帳と、膨大な量のA氏とのメールのやり取りの証拠のうち、ほんの一部でもいいので、この時点で示していれば、あのような記事が出ることはなかった。その点が痛恨事である。


■仮処分の経緯

 大渕氏が記事削除の仮処分を申請し、一回目の審理で、記事削除の命令が出たのは当時、報じた通り。(13年12月25日付「『行列』『朝ズバ』の大渕愛子、弊社記事の削除を求め東京地裁に仮処分命令を申し立て」、13年12月27日付「『行列』『朝ズバ』大渕愛子の弁護士法違反めぐる記事で、東京地裁民事第9部の鈴木雄輔裁判官が仮処分命令」)


 その後、筆者は、12年1月26日付で「大渕愛子が相手方プライバシー情報を勤務先の複数上司に漏えい、左遷させる 「弁護士職務基本規定」違反の無法弁護士ぶり」を取材執筆して以降、この事件について、沈黙を守ってきた。その理由は、以下の事情からだ。


 一回目の仮処分決定を不服として、こちらが保全異議申し立てをしたことにより、12年2月、東京地裁で2回目の審理が始まった。


 そのとき、筆者は裁判長の部屋に呼ばれた。その裁判長の名前は存じ上げないが、30代と見受けられる男性だった。その裁判長は、筆者に対し、この仮処分のことを記事にすると、大渕氏側は、証拠を出せない、と言っている。だから、今後は、仮処分のことについて記事にはしないということを約束してほしい、という意味のことを言った。


 筆者としても、大渕氏がこれまで具体的な根拠を示さず、A氏の言い分は事実無根と主張しているのをみて、「是非、そこまでいうなら証拠を出してほしい」と切に願っていたところだったので、裁判長に対し、「そういうことであれば、仮処分のことは記事にはしません」と約束した。(本訴に入り、この仮処分とは比較にならないほど大量の証拠が出されたことと、読者への説明責任を果たすため、このたび仮処分の経緯を記すことにした)


 この裁判長との約束のあと、大渕氏側は、証拠を出してきた。ただ、それは、A氏と大渕氏とのやり取りのメール4通と、銀行の通帳などで、どちらも、95%以上、黒塗りにしたものだった。それをみて筆者は、メールについては、あまりにも黒塗りが多くて判断しずらい面もあると思ったが、後述のように通帳については、どちらの言い分が正しいのか、見極めるための「リトマス試験紙」にするには打って付け、と判断した。


 そう思っていた矢先、仮処分の審理は急転したのだった。


 裁判長は、筆者と当時の代理人である「神田のカメさん法律事務所」の太田真也弁護士を部屋に呼び、A氏が太田弁護士を通じて東京弁護士会に出している、大渕氏に対する懲戒請求が、仮処分と並行して審理が進んでいることなどを理由に、和解するか、異議申し立てを取り下げて、仮処分ではなく正式な裁判で審理した方がよいのではないか?もしくは、裁判所が決定を下すということならば、異議棄却の決定をする根拠も覚悟もできている、三つのうちどの道にするかよく考えて決めてほしい、という意味のことを述べた。


 裁判長の部屋を辞した後、筆者は、渡邉氏に判断してもらった方がよいと思い、太田弁護士に渡邉氏に電話をかけてください、と言い、太田弁護士が渡邉氏に事情を説明した。その会話のなかで、太田弁護士は、大渕氏に対する懲戒請求の事件について「なんとしても懲戒相当を取りたい!そのためには、仮処分で2回目の負け(異議申し立ての棄却)の結果はどうしても避けたい。だから、仮処分に対する異議申し立てを取り下げてほしい」と何度も言った。そのたびに、渡邉氏は、最高裁を含め最大4回、仮処分で勝負できるのに、みすみすこちらから取り下げるのは納得できない、と言っている様子で、話は平行線となり、1時間以上、そういう会話が続いた。審理が始まったのが夕方だったこともあり、裁判所が門を閉める時間となり、外に出るよう言われてからも、二人の会話は続いた。結局、太田弁護士の熱意に根負けしたような形で渡邉氏はしぶしぶ仮処分を取り下げることに決めた。


 この仮処分の保全異議申し立ての取り下げの決断の数日後、筆者は、事件の真相を知るため、大渕氏が仮処分で出した資料について、A氏に電話で質問した。


 そのなかで、特筆すべきは、まず、大渕氏のメールの証拠のなかに、訴状のドラフトについての記載があった点だ。


 そもそも筆者の記事には、A氏が大渕氏に依頼したのは10年6月で、その後、訴状のドラフトを作成したのは翌11年3月下旬以降の時期と記している。これはA氏提供の資料からそう判断したためだ。しかもA氏の大渕氏に対する懲戒請求書には「受任後1年1ヶ月近く経過した時点で、やっと『訴状のドラフト』が作成されるに至った」と明記している。


 だが、大渕氏が提出した10年9月7日22時32分付のメールには、A氏が大渕氏に対し「件名:ご報告と訴状の修正箇所について」の下に、「大渕先生」という書き出しのあと、「訴状の内容で修正していただきたい点ですが、以下の2箇所、確認していただけますか?」「3ページ目、■■(※筆者注:黒塗り箇所は■■と表記。以下同)の3〜4行目」「訴状5ページ目、■■」「以上です。他の連絡事項については、後ほどまたメールします」とある。10年9月7日ということは、大渕氏に依頼してから3か月に満たない時期だ。


 さらに、10年10月7日11時16分付のA氏が大渕氏にあてたメールには「件名:訴状の確認と、電話連絡についての質問です。」とあり、本文には「大渕先生 取り急ぎ、まず訴状他の書類について確認しましたのでご報告します。■■に関する請求ですが、■■については削除で問題ありません。あと、■■したために発生した損害についてですが、■■意味で、請求したほうがいいのでしょうか?」とある。


 このように、A氏のいう訴状のドラフトの作成時期と、上記メールの記載には、約半年から10か月もの齟齬がある。これは一体どういうことか?


 その点についてA氏に聞いたところ、A氏は「早くからやっていたのは示談交渉で、訴訟の準備ではなかったです」という。そこで筆者は「電子メールで(2010年)9月7日時点で、『訴状の内容で修正していだきたいのですが』というようなこと、書いてますよね?」と聞いた。


 すると、A氏は「ああ、それはしょっちゅう、ありましたから」「ドラフトは最初から出しています」と述べた。


 「最初からというといつ頃からですか?」と筆者が聞くと、A氏は「いや、もう8月位じゃないですか」「ただ、作ったからといって、出さないと意味がないので(略)訴訟の提起をしていないのでは全く意味がないですよね。つくるだけですと、素人だけでもつくれますから」と言った。


 このように、大渕氏の証拠をみせた途端、A氏は、懲戒請求に書いてあることと、実際は違い、依頼から1、2か月後には、訴状のドラフトを作成していたことを認めた。つまり、A氏が事実とは違う主張をしていたことになる。


 次に、「リスマス試験紙」である通帳についてである。


 そもそも、着手金については、A氏は懲戒請求書や筆者の取材では、初めて大渕氏と面談した10年6月21日から数日後に10万5千円を支払い、6月26日以降、これに加えて、着手金26万2500円を支払った、と主張している。


 それに対し、大渕氏の通帳の証拠には、「22年6月2日 A 105,000」「22年7月20日A 151,000」とあるのみ。


 もしもA氏の言い分が正しければ、この通帳の証拠が偽造である可能性が出てくる。それに、A氏の方でも振り込み明細を持っているはずなので、どちらの言い分が正しいのか、判断しやすい。


 そこで、筆者はこの通帳の証拠はどういうことかを問うたところ、A氏はこう言った。


 「あの、それは、太田弁護士にこの間、お電話で言ったんですけど、分割でたぶん、渡している、ていたような気もするので、あの、一度で払えなくて」「お金が足りなくて、私、父から送金してもらってるんですけど、そのときに、それで送金した記録は残っていたので。父から送ってもらって、太田弁護士に渡してあります」


 そこで筆者は「じゃあ、送金した事実はあるわけでね?分割して?」と聞いた。


 A氏は「いや、ただ、それは、大渕弁護士に父が直接送ったのではなくて、私にいったん送っているので」「金額は合うんですけど、日にちはずれちゃいますよね。その、振り込む前とか、現金で払う前に送ってもらっているので」と回答をした上で、A氏は自身が使っている銀行名を言ったあと、「一年以上経つと、基本的にもうないんですよ、記録が」「取り寄せてもらうと、裁判所から、まあ、出して、ということになれば、出ると思うんですけど。だから、それは、そういうときになったら、出ると思います」と言った。


 筆者は、着手金が10万5千円プラス26万2500円という金額は本当に間違いないか、と念を押したところ、「それはないです。なぜかというと、最初の10万5千円というのは、最低着手金ということで、ホームページにも書いてあったんですよ。そのあとに、訴訟の際の、金額、着手金、成功報酬どれくらいかかるか、私が聞いたときに、請求300万円にするので、その8%が必要です、といわれた。なので24万円、プラス税金、プラス実費」と言った。


 このA氏との会話の後、筆者は、太田弁護士に電話をし、「A氏に対し、銀行に以前の振り込み明細を出してもらうよう、言ってもらえますか?」と聞いた。無論、ここでA氏が分割で、着手金26万2500円を2回に分けて払っているという物証が出れば、大渕氏の通帳の証拠が偽造だったということになる。これはわかりやすい上、決定的な材料、と筆者は判断したからこそ、太田弁護士に打診したのだ。太田弁護士は、納得してすぐに動いてくれるに違いない、と筆者はてっきり思っていた。


 しかし、太田氏弁護士、それはできません、と言った。なぜですか?と筆者が聞くと、太田弁護士は、こう答えた。


 「それはA氏の利益に反するからです」


 それを聞いた途端、筆者は、A氏と太田氏に、言い知れぬ不信感を抱き、少なくとも、この通帳については、A氏と太田氏は嘘をついているのではないか、と疑い、筆者は、思わず、「そんなことをしていたら、あなたは裁判所から信用されなくなるぞ!!」と激こうしてしまった。翌日、筆者は、仮にも代理人の弁護士に対し、あのような失礼な言い方をしてしまったことを反省し、太田氏に対して、昨日は感情的になってしまいすみませんでした、と謝罪した。


 なお、この仮処分が終わった段階では、通帳やメール数通の証拠という、かすかな窓を通してしか大渕氏の反論の根拠が見えず、全容は定かではない。だが、おそらく、裁判を通し、大渕氏側は、仮処分で出した証拠を改めて出してくるに違いない、それを通し、状況がもっと明らかになってくることだろう、と筆者は思った。


 そして、そのような大事な裁判が始まろうしている中、このまま、太田弁護士をこちらの代理人にしていると、通帳の証拠で上記のように不可解な対応をしたA氏・太田弁護士と、筆者は運命共同体になってしまう、と危機感を抱いた。


 もともと、筆者はA氏の言っていることが違う事が発覚すれば、率直に非を認め、記事を訂正するつもりでいる。A氏と筆者は全く立場は違う。むろん、A氏の利害に従う筋合いはない。


 それに、書き手として、今後いつまた別の裁判の当事者になるかもしれない身でもある。そこで常々思っていることは、筆者が裁判の当事者になった場合は、正直にいきたい、という点だ。だからこそ、通帳の証拠に対する、A氏、太田弁護士の対応は、心底、不本意だった。


 それだから、太田弁護士は、筆者の代理人には全く相応しくない、本訴に入るに当たり、他の弁護士に代えたい、と切実に思った。


 すぐにそのように渡邉氏に伝えたところ、渡邉氏は、すぐに代えるつもりはない、という姿勢だった。


 筆者は、そのままズルズル代理人をかえずに裁判が進むことを恐れた。そこで、こう提案した。太田弁護士によると、大渕氏への懲戒請求の結果は、14年5月頃には出る予定だが、そこでもしも、A氏が負ければ、太田弁護士は、懲戒相当をとるとあれほど言っていたのに、結果を出せなかったことになる。A氏が懲戒請求で負けた場合、こちらの裁判も、そのまま太田弁護士でいっても、こちらの勝ち目はない。だから、懲戒請求でA氏側が負けたときは、そのタイミングで太田弁護士から別の弁護士に代えて、こちらの被害を最小限に抑えるよう提案し、渡邉氏は納得した。


■裁判の経緯

 14年春となり、裁判の期日がスタートした。大渕氏は、訴状で、マイニュースジャパン、渡邉氏、筆者を相手取り、筆者の記事を名誉棄損として、以下の三点を請求した。


 1 記事を削除せよ。


 2 被告らは連帯して500万円を支払え。


 3 筆者のブログに掲載した記事の記載を削除せよ、筆者は100万円を支払え。


 こうして裁判が始まる中、14年5月には、A氏自身が原告となり、大渕氏を相手取り、裁判を起こした。(証拠品の返還と200万円超の損害賠償を請求)


 その後、太田弁護士は、何度か、A氏の事件と、こちらの事件を併合したい、と打診した。そのたびに筆者は、「まず、懲戒請求の結果を待ちましょう」と言った。しかし、筆者は内心、通帳の一件以来、あの調子では懲戒請求の方も難しいだろう、と思い、来るべき時に備え、新たな弁護士を探し始めたのだった。


 その後、こんなことがあった。筆者が14年6月、別件の取材をするなかで、偶然、太田弁護士と同姓同名の人物が民事事件で訴えられているのを知った。その裁判資料を調査したところ、太田弁護士本人だった。そこには、太田弁護士が、裁判の相手側の行政書士や代理人などに対し、ブログ記事の仮処分や、懲戒請求、損害賠償の訴訟を乱発し、相手側も応戦するなかで、太田弁護士に対し「懲戒相当」の議決が下っていると書いてあった。


 つまり、大渕氏を何としても懲戒相当にさせたい、と熱心に訴えていた当の本人が、実は別の事件で懲戒相当だったということになる。


 14年7月、ついにA氏・太田氏の大渕氏に対する懲戒請求の結果が出た。A氏の請求は棄却された。A氏の負けである。


 これを機に、太田氏から、用賀法律事務所の村瀬拓男弁護士に代えた。


 村瀬弁護士には、これまでの経緯を説明し、こちらの被害を最小限にして裁判を終わらせてほしい、と依頼した。


 その後、筆者とは別の執筆者により、大渕氏のことが様々報じられ、マイニュースジャパンの姿勢は変化していったが、そのことについて、筆者は一切関知していない。


 なお、14年8月には、筆者らが被告の今回の事件とは全く別の事件により、太田弁護士に対し「業務停止1か月」という重い懲戒処分が下ったことも明らかになった。


 その後、審理が進むなか、14年11月に入り、にわかに、大渕氏が、大量の証拠を出してきた。


 証拠の多くはメールで、その数、実に43通。そのなかには仮処分時に出してきたメールも含まれている。仮処分のときは黒塗りで内容の詳細が不明だったが、今回は、ほとんど黒塗りのないメール全文を出してきた。


 なお、後述のように、これらのメールについてA氏に取材したところ、A氏は、多くは身の覚えのない偽造メール、との認識を示した。


 そして、A氏は、「ヘッダ全部とメールファイル本体を大渕弁護士に開示させるべきです」「メールヘッダで送信者や送信元を確認しないとあのようなコピーでは『なりすまし』も見抜けません。私宛に2010年秋に着ていたインフィニティ(筆者注:大渕氏の以前の法律事務所名)を名乗るメールには送信者名とアドレスが偽造されているものが1通ありました。メールの場合はヘッダ全文とファイルスタンプなどを確認しなければ正確性は断定できません」とした上で、「証拠類などを検証せず、書いた覚えのないメール文を書いたことを前提とした陳述書等を出される場合、名誉毀損の可能性もあるとのことですので十分に事実確認を行った上で進まれたほうがいい」と回答した。


 だが、メールのヘッダで、偽装メールかどうか、判断することが本当にできるのだろうか?疑問を感じた筆者は、いくつかの専門機関に聞いてみた。すると、一般財団法人 日本データ通信協会の人は、「ヘッダ情報のみで、偽装メールかどうか判断するのは難しい」「ヘッダー情報は、知識を持っていれば改ざんは可能」という。また、一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会にも聞いたところ、「プロバイダの人か、技術の管理の人などの専門家なら、偽装メールかどうか、わかるかもしれない」と、正確に判断するのは極めて難しいという説明だった。


 これらの専門家の話からして、メールが偽装ではないことを科学的に完全に見分けるのは至難の業である。なお、村瀬弁護士によると、「メールは現在の裁判実務では、ねつ造したとの反論を、証拠を添えて行わない限り、証明力の高い証拠として扱われる」という。


 なお、これまで筆者は色々な取材で数々の裁判資料をみてきた。そのなかにはメールの証拠も多々あったが、メールの証拠に、ヘッダをつけているケースは見たことがない。


 今後、A氏の洞察通り、裁判所がこれらの新証拠のメールを採用しない事態も起こらないとは言い切れないし、A氏が原告の事件はこれから高裁で係争されることになるので、そのなかで、A氏の言うように大渕氏のメールが偽装であることを、裁判所が認定する事態もあるかもしれない。


 その意味で、メールの証拠は偽装の可能性はないとは言い切れない。だが、専門家ですら、偽装でないことを証明するのは極めて難しい中、筆者が見分けられる可能性は限りなくゼロに近いため、A氏のいうヘッダを確認せよ、との案は採用しないことにした。仮に、筆者がヘッダをみることにした場合、それが紙でもし印刷されたものなら、それは偽装することは可能だし、こちらが仮に大渕氏のPCの実物をみて、メールのヘッダを確認できたとしても、もしA氏のいうように偽装をしている場合なら、こちらが見に行く前に、整合性のとれたヘッダのメールを送るはずである。


 それに、印刷であれ、現物であれ、こちらがヘッダの情報を確認した結果、正確なことはわからない場合、それをもって、A氏が偽装の根拠とするかもしれない。だが、このような真相確認が困難なケースで、偽装の主張の根拠になりかねないA氏の案には乗れないと筆者は判断した。


 それに今回の裁判に限らず、証拠というのは、大なり小なり、偽装でないことを完全に証明するは困難である。(余談だが、裁判の偽証罪は、現状、証人尋問でのみ適用となっているが、証拠にも適用した方がいいのではないか、と筆者は思う)。


 要するに、A氏が偽装と訴えるメールの証拠を、最終的にどう判断するかは、裁判官にゆだねられる。筆者の任ではない。


 そうしたことを前提とした上で、このたび、大渕氏が出した証拠のメールのなかでもっとも筆者が重視したのは、「リスマス試験紙」である銀行口座の通帳である。前述した、着手金の齟齬を示す通帳以外に、今回、新たな通帳が提出されたのである。


 それは、A氏がいったん、11年8月に大渕氏との契約を解除した後、同年冬、改めてA氏が、顧問料に相当する3万1500円を大渕氏の口座に振り込んでいることを示したもの。これがもしも事実であれば、A氏の訴えでは、大渕氏が一年以上にわたり、提訴もせずに契約終了に至ったことや、契約から数か月後に、顧問料として月3万1500円をぼったくられたとして懲戒請求して、筆者の取材でもそのように訴えたにもかかわらず、その案件放置の契約終了後に、顧問契約を再び結んで、顧問料を振り込んでいたことになる。もしもそういうことであれば、A氏は大渕氏を頼っているわけなので、A氏の訴えの根幹が揺らぐ。その意味で、この証拠は極めて重要といえよう。


 通帳には具体的には、「23年11月7日 A 31,500」「23年12月7日 A 31,500」「23年1月16日 31,500」と記載があり、ほかに領収書控えで平成23年10月1日付で31,500円をA氏に渡したとの証拠がある。


 また、この時期には、顧問料以外にも、領収書の控えが証拠として提出されている。


 例えば、「入金先A 様 No・216 5,250― 但 法律相談料として 入金日平成23年10月1日」「入金先A 様 No・225 5,250― 但 法律相談料として 入金日平成23年10月13日」「入金先A 様 No・250 15,750― 但 書面作成料として 入金日平成23年11月10日」などなど、1か月に2回程度、法律相談を受けていること示す証拠が出ている。


 なお、顧問料の振り込みが12年1月までなのに対し、法律相談料名目の領収書の控えは、12年2月、3月、4月と、途切れなく支払い続けている。そして、12年4月10日には、顧問料名目の31,500円の領収書控えもある。


 A氏に取材したところ、この間の顧問料や相談料の支払いの証拠についてA氏は、「2011年9月以降に私が大渕弁護士に払ったのは、2012年5月の合意書の直前の日程調節の際と、その前の電話問い合わせの際の費用の2回のみです。その際の請求メール、領収書などの関係証拠は代理人に預けていますのでご確認ください」と、証拠にある支払いの事実関係については全否定した。


 また、通帳についても聞いたところ、A氏は、こう回答した。


 「印刷内容について言えることは、通帳からは誰がどういった方法で確かにその氏名の本人が送金したかどうかは確認できない、ということです。例えば架空名をもって現金で振り込めば一定額以下であれば特に本人確認チェックは入らない場合があるのではないか、と指摘されました」と回答した。要するに、通帳の印字のA氏の名は、架空の人物がA氏をかたった可能性がある、という意味と見受けられる。ということは、この時期に、大渕氏の口座に、A氏以外の何者かがA氏になりすまし、顧問料分の金額月31,500円を3か月にわたり振り込んでいたことになる。こんなことがあり得るだろうか。少なくともこの点については、A氏の言い分は、にわかには信じがたい。


 つまり、自然に考えると、この間、A氏は、大渕氏に、顧問料を振り込んでいたとみるのが、妥当といえよう。ということは前述のように、案件放置の契約終了後、A氏は再び顧問料を結ぶほど大渕氏を頼りにしていたことを窺わせるので、A氏は実は、言っていることとは違う動機で大渕氏に懲戒請求をするに至ったのではないか、という疑念も出てくる、といわざるを得ない。そのことが筆者が記事削除に合意するに至った一番の要因である。


 なお、太田弁護士にも取材し、この通帳の顧問料記載の証拠について、どうお考えか、と聞いたところ、そちらで通帳の現物をみて確認してほしい、ということだった。そこで筆者は、ではこちらで通帳を確認してA氏の顧問料振り込みが確認できれば、太田弁護士はどうしますか?A氏の非を認めますか?と聞いたところ、「仮定の話には答えられない」の一点張りだった。


 なお、その後、筆者らの現代理人である用賀法律事務所の村瀬拓男氏が、通帳原本を確認したところ、大渕氏の証拠の通り記載されており、偽装の形跡はなかった。


◇メールの証拠について

 大渕氏のメールの証拠については、A氏が、何者かに尾行されたり、街を歩いていて殴られたり、脅迫電話を受けたり、自宅に張り込まれたりしたという、にわかには信じ難い相談をし、大渕氏はそれを真っ向から受け止めて対応している事を示すメールや、顧問契約がスタートした10年秋、損害賠償以外の相談が多いためか、A氏から顧問契約の話をしたことを示すメールや、労働問題なども相談していたことを示すメールや、法テラスで会った弁護士のアドバイスを機に、大渕氏への懲戒請求をにおわしながら、新たな顧問契約を結ぼうとする内容のメールなどがある。


 これらのメールは、慰謝料請求の案件以外に、大渕氏に種々相談していたことを示しており、そこから考えると、大渕氏はA氏のいうように案件放置にはしておらず、むしろ、A氏の相談に応じていたことを伺わせる。


 ほかには、A氏の訴えでは、慰謝料請求の終了は、A氏が金銭に窮してしたことが理由だったが、実際は違うことを示す内容のメールもある。


 こうしたメールの真偽は定かではないが、仮にたしかな場合、A氏は、色々な脅迫メールなどを相談するなかで、大渕氏の応対に好感を抱くようになっていった、つまり、好きになった。そして、顧問契約を何度も結んでいることからして、心理的に大渕氏にすっかり依存する状態となっているように見受けられる。だが、労働問題の相談の頃から、大渕氏が、労働事件の専門ではないことや、テレビの仕事が増えて忙しかったことも重なり、以前に比べ、A氏の相談の対応が遅くなっていった。そのことにA氏が不満を持ちはじめる心理が窺われる。そして、懲戒請求をちらつかせ始めた。もちろんそれは、このメールが実在している、という仮定の話ではあるが、このメールをみた大渕氏は、さぞやゾッとしたことだろう。このメールはクレーマーかつストーカーの臭いが文面からただよっているためだ。


■A氏の一審敗訴判決

 この新証拠が、大渕氏側から提出されてから約2か月後の15年1月16日、A氏が原告の裁判の一審判決があった。判決では、A氏が請求した@動産(証拠書類等)の返還請求、A不当利得(追加支払いの着手金25万2500円、顧問料・相談料の28万350円)の返還請求、B不法行為(大渕氏が、警察を動かして捜査させたこと)による慰謝料・損害賠償162万9415円の全てが棄却された。


 裁判所の判断理由は、@全証拠をもってしても、A氏が大渕氏にそれらの動産を渡した事実、及び大渕氏がそれを持っている事実が認定できない。また大渕氏から脅迫されたことの証拠はない。AA氏が大渕氏に支払った顧問料や相談料には、それぞれ契約等の根拠があり、不当利得にはならない。それ以外に支払ったという主張は、A氏自身が本人尋問で否定している。そして、@Aともに、A氏が大渕氏と結んだ「和解合意書」により、そもそもそれらの請求権は存在しない。B大渕氏は、被害届を警察に提出しているが、その内容は、A氏を被疑者として特定したりするような内容であるという証拠はない、というものだった。


 ここでいう、「和解合意書」とは、12年5月8日、A氏と大渕氏が交わしたもので、この文書については、A氏も認めている。この合意により、A氏は、慰謝料請求案件の契約期間の顧問料として10か月分(10年11月〜11年8月)の顧問料31万5千円を大渕氏から返還させた。この合意書の条項には、A氏が腑に落ちないとする一切の事項その他該当期間に生じた一切の事項について解決したものとする、と定めた他、「原告と被告は、本件合意書の締結により本件につき一切解決したことを確認し、原告被告間には、本件に関し、本件合意書に定める内容を除き、何らの債権債務がないことを相互に確認する」と定めている。


 さらに、この和解合意書には、こういう条文もある。合意書の「甲」はA氏、「乙」は大渕氏なのだが、第4条(禁止事項)には、「甲は、理由の如何を問わず、乙及び乙の関係者に対して、次の各号に該当する行為をしてはならないものとする。(中略)(1)電話、手紙、ファクシミリ、パソコン、携帯その他一切の通信手段を用いて連絡すること (2)住居または勤務先を訪問すること (3)名誉または感情を害する事項をその知りえる状態に置くこと (4)他人を介して、または匿名にて本条各号の行為を行うこと」とあるのだ。


 この文面からは、もうA氏とは一切かかわりたくない、近寄らないでほしい、という思いが滲み出ており、ストーカーに対する文面のようである。


 さらに、第5条には「クレームの禁止」とあり、「甲は、理由の如何を問わず、如何なる第三者に対しても、平成22年6月23日から本合意書の締結日までに乙が担当した甲の案件(乙の事務所名が「法律事務所インフィニティ」であった期間も含む)および乙の運営に関して、如何なるクレームも申し立てない」とある。これはまさにクレーマーに対する文面そのものである。


 それにしても、このような合意書を交わしておきがら、A氏は、太田弁護士に代理させる形で、大渕氏に懲戒請求したのは、明らかにメール違反ではないか。その点について、A氏はこう回答した。


 「2011年2月頃に私が大渕弁護士にクレームをしたという趣旨のメールがあったように思いますが、その時期に私はすでに法テラス契約弁護士からの勧めで大渕弁護士への紛議調停事件の申立てをして法テラスからも援助決定が出ています。援助決定通知書の日付は2011年2月6日です。


 この時期に給与未払いで労働事件もありましたので、労働事件は迅速に動ける太田弁護士に依頼して(着手金は解決できた際に精算という条件で)無事未払い額ほぼ全額が認められて解決しました。


 この労働審判の際に会社に取引先として2011年10月頃から出入りしていたアムール法律事務所事務局長(当時本人は事務所を辞めて会社を立ち上げた、と挨拶して名刺ももらっています。ただし会社は調査したところ未登記でした)から私の委任事件内容が会社に漏らされていたことが労働審判の進行中に相手方会社の証言からわかりました。


 もともと大渕弁護士への懲戒請求のきっかけは合意書を交わした後に上記守秘義務違反の問題が発覚したためです。その他の事情も多くあったためどれが懲戒事由にあたるかの判断は弁護士がしています。


 しかし法テラスで相談した際の複数弁護士の見解も太田弁護士の見解も全員同じでした。つまり弁護士からみて懲戒に値する理由はあったということだと思います」


 だが、このA氏の言い分が仮にその通りだとしても、懲戒請求をしたことは、和解合意で定めた約束を破る行為であることに変わりはない。


 太田弁護士にも、和解合意したのになぜ懲戒請求したのか、と質問したところ、太田氏は、あの和解合意文書には穴がある、あの文書には、第三者を介して懲戒請求をすることを禁じてはいない、という趣旨の回答をするのみだった。


 なお、このA氏の一審判決文には、筆者が「リトマス試験紙」とした、A氏のいう、着手金25万2500円を振り込んだとの言い分について、「これを認めるに足りる証拠はない」と断定していた。


 なお、この着手金の齟齬について、太田弁護士に質問したところ、太田氏は、A氏は手渡しなどの振り込み以外の方法で支払っている、という意味の事を言っていた。だが、それなら、仮処分の取り下げ直後に、筆者がA氏に質問した時、A氏は、裁判所にいって銀行に開示させれば振り込んでいたことが明らかになる、という趣旨のことを言ったの矛盾する。


 なお、筆者の取材に対し、既に述べたようにA氏は、大渕氏のメールは虚偽なのでヘッダを確認するよう盛んに命じるが、実際には、メールが虚偽かどうかを突き止めるのは至難である。それよりもむしろ、新証拠のメール43通は、日時時刻が記載されており、なかには、送信文と返信文の対になったものも多いので、実際のメール数はさらに多い。これだけ時刻が特定されていて、文面にもいつどこで何をやっていたか、何日にどこに行くのか、といった情報量も膨大あるのだから、筆者がA氏の立場ならば、ヘッダを確認せよ、と筆者にいうだけではなく、この時間は私は本当はこういうことをしていた、とか、あの人と会っていた、とか、この日のこの時間は本当は大渕氏に電話はしていない、とか、そういう予定ではなかった、とか、メールにはこの時期の私の状況についてこのように記載があるが、実態はこうだった、その証拠にこういうものがある、といった立証が何かしら出てくるものなのではないか。要するに、43通のうちの多くのメールを、ほかの事実と整合性をもたせて偽造するのは非常に難しく、どこかでボロが出る可能性が高いのではないか。


 これは着手金の振り込みのときも思ったことだが、A氏の言葉からは、具体的に、いつ、どこで、いくらを振り込んだ、だから、大渕氏のいっていることは虚偽た、といった決定的な事実となる証言が出てこないのが、実に不思議である。


 もちろん、A氏が原告の裁判は今後、高裁、最高裁で争われることになるわけであり、今後、裁判所がA氏の言い分を認定する可能性はあるし、A氏の逆転判決の可能性もある。


 そのことを踏まえた上でも、筆者が原告の裁判については、現状、裁判所が、大渕氏の証拠を覆す判断を下すことは考えにくい、と筆者は当事者として思っている。前述のとおり、現在の裁判では、メールは証明力の高い証拠として扱われているためだ。しかも、A氏のほうは、懲戒請求、一審判決ともに負けているので、全体の情勢からみても、こちらの裁判も敗色濃厚といえよう。


 もともとも筆者は、内心、この事件は、新たな証拠が出てきたときが、こちらの非を認めるタイミングだろう、と思っていた。そう思っていたところ、ついにそのタイミングが来たので、筆者は、村瀬弁護士に対し、和解交渉をしてもらうよう、依頼した。渡邉氏も、大渕氏が出した証拠をみて、和解の決断をした。


 なお、繰り返しになるが、A氏は、大渕氏が出したメールの証拠は、偽装と主張しており、その真相をたしかめるのは容易ではない。しかし、メールの真偽が科学的に立証されていない状況とはいえ、筆者は、執筆者として、このA氏と大渕氏を巡る事件の記事を、責任をもって掲載できる状況ではない、と判断している。


 よって、A氏と大渕氏にかかわるくだんの四つの記事を取り下げることに合意した。


 今後、A氏と大渕氏の件については、書くことはない。もともと、筆者は、A氏の家に警察がきた、という点に、巨悪のにおいがして、その点に問題意識を持ち、A氏を取材したわけであり、ある弁護士が、依頼者と金銭トラブルになった、というだけの話には、ジャーナリストとして興味がない。


 なお、今回の取材について、反省点は多い。


 まず、大渕氏がA氏に顧問料31万5千円を返還した際の「和解合意書」は、筆者は取材時にA氏から提供を受けていたこの文面に、大渕氏がA氏に一切かかわりたくない、という心理が出ているように見受けられた。それにもかかわらず、A氏はその後、懲戒請求をしたり、こうして筆者に対し情報提供している。そのことについて、筆者は、これは構図としてクレーマーによるトラブルなるのではないか、と疑問に感じた。


 しかし、A氏の自宅に警察が押しかけてきたことや、大渕氏がA氏に顧問料を支払わせていたこと、結局、大渕氏が提訴すらしていなかったこと、といったA氏の証言や、その裏付けの証拠の文書と比較して、筆者は、この合意書の内容と、それをA氏が守っていないという事実を、重視することができなかった。この合意書の意味することをもっと理解することができれば、あのような記事にはならなかった。


 また、太田弁護士がどのような人物か、取材当時も、調べれば、ある程度、他の事件で物議を醸す言動をしていることはわかったはずだが、筆者はその作業をせずに執筆してしまった。


 また、弁護士の問題点についての取材にもかかわらず、一方の弁護士の非は追及する姿勢にもかかわらず、もう一方の弁護士、つまり太田弁護士については、無条件で、弁護士だから大丈夫だろう、という理由で、根拠なく信用してしまった。これはフェアではなかった。


 また、今から思えば、A氏の話について、複数の弁護士に、このような懲戒請求の事件があるのだが、どう思うか、と聞いていき、弁護士に対する懲戒請求の傾向を調べていけば、記事にするのを見合わせたかもしれない。それというのも、この記事を掲載して以降、筆者は二人の弁護士から、依頼人とのトラブルの話を聞く機会があった。そのうちの一つは、A氏の事件と構図がなんとなく似ていたのである。その話を、執筆前に聞いていれば、記事にしなかったか、全然違った視点の記事になったことだろう。


 このような経緯により、責任を持てない記事を取材執筆して掲載してしまい、ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。

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2015年09月03日

国会を埋め尽くすデモのうねり

 平成二十七年八月三十一日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「国会を埋め尽くすデモのうねり」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの新聞は、国会正門前の車道や沿道を人々が埋め尽くす写真入りで、「安保法案反対 大規模なデモ 国会周辺埋め尽くす」(日本経済新聞)、「声出す、世代超え 法案反対、最大デモ」(朝日新聞)といった見出しで報じている。

 それによると、「午後2時すぎ、国会議事堂の正門前。『戦争NO!』『9条壊すな』などと記された、赤や青、黄色のプラカードを手にした市民で、東西に延びる幅50メートル近い車道が埋め尽くされた。拡声機から流れる『戦争法案いますぐ廃案』のかけ声に合わせ、『ハイアン・ハイアン』と声をあげる。車道全体を覆うほどの人々が集まったのは、安保法案に反対する市民の抗議行動のなかで初めて。『どんどん人々がやって来て、自然発生的に歩道からあふれていった』(実行委事務局)」、「正門前の車道に加えて、国会をぐるりと囲む約1.3キロの歩道や、周辺の地下鉄駅の通路まで人波は延びた。流れを規制するバリケードの前で『ア・ケ・ロ』『ア・ケ・ロ』と声をあげる人々や、正門前にたどり着けず、『議事堂も目にできないなんて』と嘆く男性も」。「抗議のうねりは全国各地にも広がった」という。(朝日新聞より)

 なお、主催者によると、この日国会に集まった人数は「12万人」。一方、警察は、人数についてノーコメントだった(ジャパンタイムズより)。ちなみに、1960615日の60年安保反対デモでは、国会周辺に集まった人数は、主催者発表で33万人、警察発表で「13万人」。その1か月後、岸信介首相は退陣した。現在の主催者側のカウントは、当時よりも正確になっていることも予想される。55年前に近いかもしれない。

 ちなみに、ふだんはほとんど政治的発言をしないエンターテイメント業界の間でも、今回ばかりは反対の声が上がっている。例えば、アドレス「abe-no.net」のサイトには、「安倍政権のままだとこの国はおしまいでしょう」(ラジオDJ・ピーター・バラカン)、「わからないふりをされてるのか、ほんとにおわかりにならないのか、お話しが全く通じないみたいなので、とりあえず別の方に代わっていただけますか」(歌手・二階堂和美)、「戦後70年、憲法9条を掲げて私達の国は平和を作り守ってきた。たった一つブレずにちゃんとやって来た。これから先何年も平和主義を誇り、世界に堂々と顔をあげていよう。私達は争うために生まれてきたんじゃないんだ。」(歌手・SAY)。ジャパンタイムズよると、指揮者の小澤征爾、映像監督の高畑勲、アイドルグループ・制服向上委員会、タレント・SHELLYや、そのほか漫画家、画家、彫刻家、作家、俳優、ラッパー、料理家といった人々が声を上げている。

 国内外のデモ研究に詳しい五野井郁夫・高千穂大学准教授は、「今まさに文化的な抗議運動が起こっていることは、明白です」といい、こう述べている。

 総選挙が近くに予定されていない中、人々は、社会的、文化的デモによって、外側から政治を変えようとしています。

 ハリウッドでは、著名人は、一般的に、政治声明を出すことを避けようとしません。通常、彼らは大統領選挙で誰を支持するかを表明します。しかし、日本のエンターテイナーは、争点となる政治問題に対し、黙り続けてきました。自分の意見を言えば、仕事を失ってしまうという恐怖からです。

 しかし、福島第一原発事故以降、その流れは変っていき、特にアーティストとミュージシャンの間で、政府の政策に反対する人々が増えています。それを見た人々は、仕事を干されるんじゃなかろうかと心配したが、お気に入りのアーティストやミュージシャンが、自由に政治的意見を述べているのを見て、政治的発言をして政府を批判してもOKなのだ、と気付き始めています。

 日に日に高まるデモのうねり――これは特定の組織票を持つ団体ではなく、一介の市民が、この国の政治を動かし始めていることを示しているといえよう。(佐々木奎一)


posted by ssk at 09:52| Comment(0) | 記事

2015年08月26日

自民党総裁選、野田聖子・石破茂の動向

 平成二十七年八月二十一日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「自民党総裁選、野田聖子・石破茂の動向」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの読売新聞に「選挙戦望むOB 古賀元幹事長ら 党執行部は無投票志向」という記事がある。それによると、9月の自民党総裁選で、党執行部が安倍晋三氏の無投票再選をもくろむ中、古賀派(現・岸田派)会長だった古賀誠・元幹事長が「新聞や雑誌のインタビューなどで『総裁選で選択肢を示すべきだ』と訴えている。山崎派(現・石原派)を率いた山崎拓・元副総裁も古賀氏と連携し、無投票回避を模索している。

 古賀、山崎両氏とも安全保障関連法案に反対を明言するなど、『反安倍』で一致している。(中略)古賀氏の意中は野田氏(※筆者注 野田氏とは、前総務会長で無派閥の野田聖子氏を指す)とされ、野田氏の出馬に必要な20人の推薦人集めを模索している。今も岸田派に強い影響力を持つ古賀氏としては、無派閥で後ろ盾のない野田氏のために一肌脱ごうというわけだが、野田氏に近い議員からは『OBに頼る構図は印象が悪い』との声も出ている。野田氏は意向を明言していない。

 一方、これまで出馬に慎重な考えを示してきた石破氏は18日夜、自身を支持する鴨下一郎、山本有二両衆院議員と東京都内のホテルで会談した。石破氏に近い議員の一部には主戦論もあるが、『政権を支える閣僚が突然辞めて総裁選に出馬しても、党員の理解は得られないだろう。今回は出馬を見送るべきだ』(中堅)との声も出ている」という。

 ちなみに、野田聖子氏は、先月29日に米通信社・ブルームバーグのインタビューに応じ、安倍自公政権の推し進める安保法制を公然と批判し、総裁選についての見解も述べている。(