2017年03月25日

借金癖の浪費者を食い物にしてよしとする社会

 平成二十九年三月十月付、のauのニュースサイト


   EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「借金癖の浪費者を食い物にしてよしとする社会」


 を企画、取材、執筆しました。



 先月から朝日新聞が依存症についての連載をしている。9日付朝刊は万引きをテーマにしているが、先月は「ギャンブル」がテーマだった。そこでは一人の北九州の男性を紹介していた。

 記事によると、その男性は大学一年のときにパチンコを始め、たまに遊んだ。卒業後、製薬会社に勤め、同僚の女性と結婚。スポーツ用品店に転職した25歳ごろからパチンコが習慣づき、週12回通い始め、30代のある休日朝、2千円を元手に大当たりし、夕方までに28万円稼いだ。「この金をもっと増やそう」と仕事の後や休日に通い詰めたが、3か月後には消え失せた。

 あまりの金遣いの荒さに、妻は金を簡単に渡さなくなると、「くれんかったら、給料もらっても一銭もやらんぞ」と声を荒らげたこともあった。そして駅前の大手消費者金融で金を借り始め、限度額の50万円を借り、パチンコにふけり、借金を繰り返し、月給20万円のうち、利息返済だけで月8万円に上ったが、「大勝ちすれば一気に返せる」と、ますますパチンコにはまった。

1999年、43歳のときに大手企業の営業職をやめ、害虫駆除の自営業を始めたが、朝から閉店までパチンコ店に入り浸るようになった。3万円程度勝つことがあっても、「28万円勝った時の記憶が鮮やかで、うれしくもなんともなかった」。消費者金融からの借り入れは6社約500万円まで膨れ上がったが、台に向かえば「大当たり、こないかな」と夢見て、気分は高揚したという。

 借金の返済期日に合わせ、利息だけ払い込み、パチンコ代は確保した。そのうち、消費者金融から借りられなくなった。

 すると、この男性は、母親に「商売で使う材料費が足りない」などとうそをつき、金をせびり、2001年の年明けには、息子2人の学習机の引き出しの鍵をボールペンの先でこじ開け、10万円のお年玉を盗み、子どもが通う学校の担任教諭や教頭の自宅に行き、「車のタイヤがパンクしたが手持ちの金がない」とうそをつき、数万円借りたりし始めた。その後、男性はギャンブル依存症と診断され、3か月入院した。

 その後、この男性は更生した、という話なのだが、筆者が言いたいのは、かつては、こういう人は、「浪費者」として扱うことができたという点である。「準禁治産制度」という制度がかつてあり、浪費者本人、配偶者、四親等内の親族などの請求により、家庭裁判所は「準禁治産宣告」をして、その浪費者を「準禁治産者」とすることができた。準禁治産者になると、借金をしたり不動産の処分等をするには、保佐人の同意を得なければならず、保佐人の同意を得ないでした行為は取り消すことができた。

 要するに、前出の男性が浪費者として準禁治産宣告されれば、借金は取り消すことができた。

 なお、この準禁治産者は、浪費者の他に、心神耗弱者も含まれていたが、法改正により平成124月から、準禁治産者は被保佐人となった。そしてこのとき、浪費者は被保佐人から除外された。

 その理由は、準禁治産制度では、浪費者に準禁治産宣告を受けさせることが、浪費者本人の保護としてではなく、家族の財産保護のために利用されたり、準禁治産制度が親族から浪費者に対する制裁的な意味合いで利用されることが多かったことや、浪費者は性格には偏りがあるにしても十分な判断能力を持つので、金銭の使い方等に裁判所が介入することは、市民生活に対する過度な干渉となり不適切であることなどが理由といわれている。(参考、朝日中央グループHP

 では、浪費者を除いたことにより、どうなったか。それについて、法テラスHPには、こういうQAがある。「借金癖のある家族について、これ以上借金ができないようにする方法はありませんか?」という問いに対し、法テラスは、「単に浪費者だということで保佐人・補助人を付けることはできません」が、「生活費までも使い込んでしまうなど、金銭管理の能力が低いという状態が精神上の障害に基づく場合や、ギャンブル依存症のような精神的な病気の場合」には、その借金癖の人は被保佐人になる可能性があります、としている。

 つまりこれは、浪費の原因が精神の障害に基かなければ、被保佐人にはならない、という意味である。なお、浪費が精神の障害が原因か、それとも単なる浪費なのか、という違いはグレーゾーンといえよう。

 さらに同HPには「貸付自粛制度を利用する方法もあります」とある。この制度は「本人が、日本貸金業協会に対して、自らを自粛対象者とする旨を申告することにより、日本貸金業協会が、これに対応する情報を個人信用情報機関に登録し、一定期間、当該個人信用情報機関の会員に対して提供する制度です」とある。

 では、この貸付自粛制度を利用すれば、浪費者を制御できるのかというと、まったくそうではない。同HPの末尾には、「貸付自粛に法的拘束力はなく、また、個人信用情報機関の会員でない業者や、ヤミ金などからの借入れをとめることはできません」「また、一定期間経過後は、本人が貸付自粛情報の撤回をすることもできます」とある。

 要するに、法改正で成年後見制度になったことにより浪費者が野放しになり、浪費者が多重債務しても自己責任、という、浪費者を食い物にして儲けることをよしとする社会になりこんにちに至っているわけだが、前の制度に戻し、浪費者は被保佐人に加えるべきではないか。(佐々木奎一)

posted by ssk at 18:45| Comment(0) | 記事
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