平成二十九年二月三月付、のauのニュースサイト
EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事
「近隣住民の“ベランダ喫煙”による受動喫煙被害」
を企画、取材、執筆しました。
喫煙者を国民の2%未満に激減させる、と宣言している国がある。無論、日本ではない。
CNN電子版によれば、「フィンランド政府がたばこのない国家の実現に向けて、2040年までに成人の喫煙人口を2%未満に減らすという大胆な目標を打ち出した。普通のたばこのほか、かぎたばこ、無煙たばこ、葉巻、パイプ、電子たばこも含めてあらゆる形態のたばこの一掃を目指す」というのである。
すでに、「フィンランドでは今年から新たな対策が導入され、たばこ製品の販売や喫煙に対する規制が大幅に強化された。
まずたばこ販売のハードルを引き上げるため、たばこ販売業者に対して免許の取得を義務付けた。免許を取得した業者は毎年料金を支払い、各自治体で販売業者が規制を守っているかどうか監視するための費用を負担する。
この監視料は、レジ1台当たり年間で最大500ユーロ(約6万円)にもなる。レジが10台ある店舗は、免許料に加えて年間5000ユーロあまりを負担しなければならない計算だ。
自宅のベランダでの喫煙についても、煙が流れ出て近隣の迷惑になると判断すれば、住宅会社が禁止を申し立てることが可能になった。
15歳未満の子どもが同乗している車の中では、たとえ自家用車であっても喫煙が禁止された。こうした措置は英国などでも導入されている」
「電子たばこは昨年8月からたばこと同じ厳しい規制の対象となり、風味を付けることも禁止された。風味付きの電子たばこを巡っては、子どもが喫煙に興味を持つきっかけになりかねないとして論争の的になっていた」
「たばこ製品一掃の目標を打ち出したのはフィンランドが初めて」という。
一国の政府が、たばこを根絶することを宣言したことは、時代の最先端をいくもので、こうした国はこれからどんどん増えていくことだろう。
そして、フィンランドが今年から導入しているという前記の対策は、どれも日本にとって参考になる。
なかでも注目なのは、ベランダの喫煙で、近隣が迷惑を被れば、住宅会社が禁止を申し立てることができる、とする制度である。
日本ではこういう自宅のベランダの喫煙者は、ホタル族ともいわれる。夜のベランダ喫煙者のタバコの火は、はたからみると、ホタルのようだからだ。
しかし、ホタル、という表現は、良い風に例え過ぎである。実体は、毒ガスをまき散らすテロ行為のような悪質な仕業だからだ。
ベランダで吸ったタバコの煙は、四方八方にまき散らされ、他人の部屋に侵入する。窓を開けていると、モロに煙は入ってくるし、たとえ窓を閉めていても、キッチン等の換気扇とつながっている換気口や、部屋の換気用の換気口から、タバコの煙は入ってくる。それにベランダで洗濯物を干していた場合は、洗濯物がタバコ臭に侵され有害物質まみれになってしまう。
つまり、平穏な空間であるべき家の中にいながら、他人のベランダ喫煙のせいで、年間1万5千人以上を殺している受動喫煙被害を受けることになる。
しかも、たちの悪いことに、喫煙者がベランダで吸うのは、自分の部屋の中は、タバコの煙で蔓延させたくないからである。
そんな身勝手なベランダ喫煙者のなかには、近隣を受動喫煙にさらしているという事実を知らない無知蒙昧な者もいる。また、害をまき散らしていることを承知の上で、吸う輩もいる。
現状、こうした喫煙者に対する対応は、物件ごとに異なっている。大屋や管理会社次第である。卑近な例でいうと、筆者の住むマンションでも、ベランダ喫煙被害があった。そこで管理会社に事情を説明したところ、担当者は、即座に喫煙者に電話をして、外でタバコを吸わないよう、注意した。それ以降、被害は沈静化した。こういうちゃんとした管理会社なら安心だが、そういう会社ばかりではない。
しかも、賃貸物件なら、喫煙者も、被害者側も、いずれ引っ越しをするので、まだましである。何千万円とか億単位のお金でマンションを買った場合、その大枚をはたいた物件がどんなに良い立地、間取り、造りでお気に入りだったとしても、隣や下の住民がベランダで喫煙をするような輩だったら、台無しである。
しかも、管理するのがマンション管理組合の場合、決議のための多数派工作や役員の考え次第で、マンション内のルールがクルクルと変わることもある。つまり、マンションを買うときは、ベランダ喫煙禁止になっていたとしても、将来、規約が変わって、ベランダ喫煙可となるリスクを内包している。
では、一戸建を買えば安全かというと、そうとも言い切れない。特に都会では、隣の家との距離が近い物件は多い。その隣の住民が、ベランダで吸う場合、悲惨である。
それにベランダでは吸わず、部屋の中で吸っていたとしても、隣の換気口から、もうもうと煙がまき散らされ、それがこちらの部屋に侵入してくることもある。
一戸建ての場合、管理組合や管理会社がないため、その住民は喫煙する自由を声高に主張するかもしれない。
こうした受動喫煙の被害者が、たとえ裁判を起こしても、負けるかもしれない。たとえ勝訴しても、「ある程度は受忍すべき義務がある」といった理由で、5万円の慰謝料を得る程度だったりする(名古屋地裁平成24年12月13日判決、月刊誌「国民生活」19年4月号「暮らしの法律Q&A」より)。
要するに、現状、日本では、隣人のベランダ喫煙による受動喫煙被害者は、泣き寝入りを強いられる環境下にある。フィンランドのように、日本も、ベランダでの喫煙は禁止すべきである。(佐々木奎一)
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なぜ、もっと厚生省がそのことを公に伝えてくれないのか、不思議です。
佐々木さんが取材されている記事を何度か読んだことがあります。
現在の日本では、ご自分で取材され、独自の意見を様々な視点から述べようとする気骨のあるかたは少なく(それはどこの国も同様かもしれません)市民に問題提起をしてくれる記事が減ったように思います。
ソーシャルメディアが世界で幅をきかす今の世の中、独自で情報発信するのは、大変だと想像します。お体に気をつけて無理ないよう、活動を続けられてください。