2017年01月28日

海と、天地の生き物を汚染するマイクロ・プラスチック 十一

 次いで同年96日付の「マイクロ・プラスチックの主因・ペットボトル対策の実情」の元原稿は以下のとおり。

71226日付の当コーナーで海を漂う微細なプラスチックゴミ「マイクロ・プラスチック」の実態を報じた。その道の世界第一線で研究を続ける東京農工大学の高田秀重教授によると、マイクロ・プラスックの問題を解決するためには、ペットボトル対策が最重要で、具体的には、「水筒を持ち歩くことが大切。例えば有料で給水できるものをコンビニなどに置けばよい。そういう流通、消費の仕組みをつくっていくべきだと思う。 給水機も色々な場所にあります。それに水を入れておくのもよい」と語っていた。

そこで、この国のペットボトル対策の実情を調査した。調査対象のエリアは、筆者の住む横浜市栄区周辺とした。栄区は、人口と少なさ、面積の小ささ、高齢化率の高さは横浜18区の中でも屈指で、名前とは裏腹に、栄えていない区として名を馳せている。つまり、この栄区で行われていれば、他区でも同等かそれ以上の施策は打たれていると見ていい。

 横浜市のペットボトル対策は、「マイボトル・マイカップ」運動と呼ばれる。これは出かける時、マイボトル(水筒)やマイカップを使うことで、ペットボトルを減らすというもの。マイボトル・マイカップ運動は、九都県市(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市)でも行われており、共同でマイボトル宣言を出している。

 横浜市では「国民1人あたりに平均すると、1年間に約180本(500mlボトル換算)も使っているというペットボトル。マイボトルを持つことで、ペットボトルなどの使い捨てを減らしていきませんか? マイボトルスポットでは、いれたてのコーヒーやお茶などを、持参したマイボトルに入れて販売したり、お水などを無料で提供しています。街中で飲み物を買う感覚で、空になったマイボトルにおいしい飲み物を入れてもらえるようになると、マイボトルを使うのがもっと楽しくなりますね。横浜にも、そんなスポットが増えています。おでかけのときには、ぜひバッグにマイボトルを」(同市HPより)として、「マイボトルスポット」を設けている。

 周知の通り、職場や、営業などの外回り、遊びなどで出かける、といった場合、水筒に飲み物を入れて持って行っても、500ml程度の容量では、すぐに飲み干してしまうものだ。かといって、あんまり大きな水筒に入れると、重過ぎて苦痛になる。なので、マイボトル運動を成功させるには、マイボトルスポットの充実が鍵を握るといっても過言ではない。

 横浜市HPでは、マイボトルスポットを地図で示している。そこで栄区周辺を調べたところ、その数は一見して少ない。区役所周辺の公共施設に、3つ集中しているが、区内の中心となるJR本郷台駅前にはマイボトルスポットは絶無だった。ほかには同駅から約2km先の、ローソンやスーパーなどに同スポットがある。

 これらの実態を知るため、現地へ向かった。

 まず、本郷台駅から約1kmの栄スポーツセンターへ行くと、玄関前に「マイボトル使えます!」というのぼりが立っていた。

 中に入り、受付の30代位の女性に「マイボトルを入れる場所はどこですか?」と聞くと、「あちらのトイレの手前の右にあります」というので、行ってみたが、筆者は発見することができなかった。再度、戻って聞くと、20mほど先導されて「これです」という。それは、ボタンを押すと噴水し、そこに口を近づけて飲む機器だった。筆者は、これはその場で飲むためのもので、容器に入れるものではない、という先入観があったため、気付かなかったのだった。平日昼間だったため、スポーツセンター内には、たくさんの高齢者が来ていたが、誰もこの給水機に水を入れていなかった。

 次に、そこから数十メートル先にある、栄区役所へ行った。本館1階受付の50代位の女性に、「マイボトルを入れる場所はどこですか?」と聞くと、聞き返してきたので、「水筒に飲み物を入れる場所のことです」と説明すると、「レイスイトウですか?それなら、新館1階のトイレの手前にありますけれども」という。新館はすぐ隣の建物。行ってみると、人の気配のまったくないガランとした場所に、ポツンと給水機があったが、トイレの出入り口にあるのでトイレ臭もした。自治体としてやる気があまりないように見受けられる。

 さらに、そこから150メートルほど行くと、本郷地区センターという公民館がある。そこの2階に、高齢男性数人がソファに座り、テーブルに碁を置いて対極している場所があった。給水機は、その付近にあった。トイレから離れている点がややましだが、やはり口を近づけて飲むタイプなので、水筒に入れている人がどれだけいるか疑わしい。

 次に、そこから原付で約3km走り、栄区の隣の戸塚区内にある大型スーパーマーケット「サミットストア下倉田店」へ行った。1階のレジの20代位の女性に、「水筒に飲み物を入れる場所はどこですか?」と聞くと、キョトンした後、思い出したように、「ああ!それでしたら、あちらのベーカリーのところにあります!」という。

 行ってみると、パンを販売している横にイスとテーブルが並び、飲み物を入れる機材が置いてある。その機材には「無料サービス(ご自由にご利用下さい) 電子レンジ 給茶・冷水」とあり、「冷水」「お湯」「お茶」のボタンの上には、「マイボトル使えます!YOKOHAMA」という青色の円形シールがペタンと貼ってある。イスも、無料で自由に使って下さい、と書いてあり、子ども連れ2組が団らんしていた。小奇麗で何から何まで行き届いており、前の3つの栄区の公共施設では、飲む気にはなれなかったのだが、このサミットでは、自然に持っていたマイボトルに手が伸び、冷水を入れてみる気になった。美味かった。

 次に、そこから約1km先にあるローソン戸塚下倉田町へ行った。一体どこに給水機があるというのか。20代位の店員の女性に聞くと、マチカフェというドリップしたコーヒーなどの飲み物が、水筒持参だと10円安くなるのだという。一方、飲み物コーナーには、例によってペットボトル飲料がズラリと並んでいる。

 そもそもマチカフェのコーヒーは、もともとペットボトルで販売しているわけではないので、「これでマイボトルスポットといえるのか?」と違和感をおぼえた。

 一応、90円を支払いアイスコーヒーをマイボトルに入てもらったが、サミットの冷水の方が美味かった。

 おそらくローソンは、サミットのようにすると、ペットボトル飲料の売り上げがガタ落ちするので、そうしないのだろう。だが、環境に配慮しペットボトルに見切りをつけるところに、商機はあるのではないか。

 次に、そこから約1km先の大型スーパーマーケット「アピタ戸塚店」へ行った。1階で台車を押している60代位の男性店員に、「水筒に飲料を入れる場所はどこですか?」と聞いたところ、「あちらです」という。行ってみると、有料のナチュラル純水の給水機器の横に、無料の給水機が置いてある。その機器には大きな貼り紙で「是非『マイボトル』で、ご自由にご利用ください!」とある。それを読んでいたところ、40代位の女性従業員が並んだので、場所を譲ると、水筒に水を入れていた。ここのマイボトルスポットは人々に親しまれているようだ。

 なお、横浜市全体のマイボトルスポットを見てみると、栄区周辺同様、やはり自治体やローソン、コーヒーショップ、大型スーパーが多い。これまで見て来たように、ローソンや、コーヒーショップは、もともとペットボトルで販売しているわけではないので、マイクロプラスチックを減らす効果は乏しい。

 それに比べ、大型スーパーのマイボトルスポットは、断然、使い勝手がよく、市民に利用されているが、惜しいことには、数が少ないので、距離的に利用できない人も多いに違いない。

 ペットボトルを削減していくためには、自治体が、サミットやアピタなどの大型スーパーをもっと見習って、設備を充実させていく必要がある。同時に、市民の側も、自治体の給水機の存在をもっと知って、マイボトル用に使っていく姿勢も必要といえよう。(佐々木奎一)



posted by ssk at 23:40| Comment(0) | 連載
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