2017年01月09日

野党の地力

 平成二十九年一月二月付、のauのニュースサイト


   EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「あのニュース今年はどうなる 国内政治編 野党の地力」


 を企画、取材、執筆しました。



2017年の国内政治の注目点は、野党第一党が地力をつけるかどうか、である。なぜか。

 周知のとおり、改憲を何としても成し遂げたい安倍晋三首相は、昨年の参院選後、幹事長に、総裁任期延長を持ち上げるゴマスリ・二階俊博氏(77)を据えた。自民党の総裁任期は党則で連続26年まで。つまり、本来なら、安倍氏の任期は20189月までだったのが、太鼓持ち・二階氏の音頭により、39年まで、となった。これで安倍氏は20219月まで総理総裁のイスに居座る環境が整った。

 だが、衆院任期満了(181213日)まで2年を切っている状況で、悪名高い「自民党改憲草案」を現実化するとなると、支持率が下がることは避けられない。つまり、このまま改憲を強引に実行すると、次の選挙で負ける。

 だから、安倍自公政権は、まず、次の衆院選で大勝し、引き続き与党で衆参ともに3分の2の議席を確保した状態で、じっくりと腰を据えて憲法改正を実行したい。

 現状のような「次の衆院選のときに支持率を下げられないから、無理矢理に改憲できない」という「後顧の憂い」を絶った状態で、改憲したい。

 それにより支持率が急落しても、1年以上かけて国民の目を引く政策(アメダマ)を大量導入して、支持率を回復させ、改憲のことを有権者たちがすっかり忘れた時点で、満を持して次の衆院選をしたい、と切に思っているに違いない。

 そして、今年722日には東京都議会議員の任期が満了となり、都議選が行われる。無論、この都議選も、公明党の支持母体創価学会は、集票マシーン活動に専念したい。都議選と衆院選の時期が重なり、集票マシーンである創価学会の信者たちが都議選に集中できなくなる事態だけは、避けたいと思っている。

 だから、都議選より半年近く前か、都議選のあとに総選挙をする、というのが、自公のあいだで暗黙の了解となっている。

 そこで、昨年末、あるいは今年初めに解散という解散風が盛んに自公から流れた。当初の見立てでは、ロシアのプーチン大統領を山口で迎え、北方領土の2島返還という歴史的な外交実績を目玉としていたようだが、その目論見は崩れたため、解散は先送りしたように見受けられる。(161220日執筆時点)

 そうすると、都議選のあと、つまり、今年の8月以降、来年12月までのどこかで解散総選挙、ということになる。

 なお、都議会で公明党が、にわかに自民党と決裂の様相をみせている。そのことが国政にも影響を与えるのではないか、つまり、自公連立が解消されるのではないか、と推測する者もいる。仮にそうなれば、改憲どころではなくなるわけだが、その芽はほとんどなさそうである。

 ちなみに、にわかに分裂した、というのは、昨年1214日夜、にわかに都議会公明党・東村邦浩幹事長が、「自民党との信義という観点でこれまでやってきたが、完全に崩れたと思って結構だ」と発言したことを指す。

 この発言により、40年間も続いた自民党との蜜月関係は終わったことになる。

 なお、ここでいう「信義が崩れた」という経緯は、11月に開かれた「議会のあり方検討会」の前に、議員報酬の2割削減、政務活動費の減額、本会議などに出席する度に最低1万円が出る費用弁償を実費支給にする、などを柱とする公明案が報道されたことにより、事前報道に反発した自民が「公明が修正案を出すか、検討会で公明を除いて議論を進めるしかない」と求め、公明は修正を拒否、両者の溝が埋まらないまま、自民が12月の検討会開催を通告し、公明が離脱を決めた、というもの。(毎日新聞電子版より)

 この程度のことで40年間の蜜月が終わるというのは、にわかには信じ難く、実に、うさんくさい話である。

 しかも、この「信義が崩れた」発言と同時に、この東村氏は、「知事が進める東京大改革については、公明党も大賛成」と、あからさまに小池百合子・東京都知事に秋波を送っている始末。この節操のなさ自体、信義のかけらも感じせない。

 なお、小池氏は、都議会自民党との対決姿勢で、テレビ受けして支持率を上げている。東京オリンピック後は、国政に戻り、総理の座に就こう、という野望を小池氏は持っている、とも目されている。

 その自民党と小池陣営の対立、というパフォーマンスの一環で、小池氏は都議会で新会派をつくる動きもみせてる。

 要するに、公明党は、小池氏が勝ち馬に乗る、と踏み、40年の付き合いの自民党を突如見捨てて、小池氏に乗り換えた。

 では、それが国政に影響するだろうか――。

 東洋経済オンライン1216日付の「都議会公明党が自民党に決別を宣言した真因」によると、この一方的な縁切り発言の数日前に公明党都議が「もう自民党には我慢できない。特に高木啓幹事長は、あまりにも横暴だ。もう彼が首を差し出しても、元に戻らないところまできている。国政とは別の話だが」と、述べたという。

 「国政とは別の話だが」、である。

 先例はある。かつて大阪維新の会という地域政党で、橋下徹氏が、盛んに自民党や公明党などの既成政党と対立した。例によってその対立構図をおもしろおかしくメディアが取り上げ、支持率は急上昇した。

 だが、国政レベルでみると、どうだったか。周知のように安倍氏と橋下氏は、緊密に会談を重ねる間柄で、国政に進出した維新の会は、自民党の補完勢力として、いまや限りなく与党に近い存在になっている。

 似た現象が今、都政で起きている。つまり、小池氏が今後、自民党との対決を演じ、公明党は小池氏という勝ち馬に乗り、小池陣営が都議会で勝ち、国政に進出したとしよう。

 そのとき、小池氏は、昨年まで自民党の国会議員だったこと、現時点でも自民党員であることなどからみて、国政で自民党と組むに違いない。小池氏は、自民党の国会議員に戻るかもしれない。つまり、そのときは、自民、公明、小池、維新による連立政権となることだろう。

 要するに、都議会での公明党の動向は、国政レベルでは影響しそうにない。

 つまり、国政で自民党と公明党が分裂する、などという淡くはかない観測は控えた無難である。自公維による自民党改憲草案の実現を阻止するためには、野党が地力をつける以外にない。なかでも、野党第一党の民進党が力をつけるかどうかが焦点である。

 そして、その意味で、憂うべき点は多々ある。たとえば、これはほんの一例だが、昨年4月に民進党が結党した。このとき、同党HPでは、党員募集のページを閉鎖した。それは結党してバタバタしているためなのかと思いきや、それから参院選後まで延々と閉鎖したままで、挙句の果てに、今年は募集を締め切りました、と表示されるようになった。そして、にわかに、昨年11月あたりから、党員募集のページができた。

 募集ページに氏名等を入力すると、おって最寄りのエリアの民進党の事務所から連絡がくる、という。だが、ふたを開けてみると、党員募集は今年度は終了している、このページから募集した人は来年度から党員となる、という悠長なものだった。

 党員=集票マシーン化するようなガンジガラメの党は御免被りたいものだが、民進党のゆるさも、驚嘆すべきものがある。ほかの党なら、募集した人はすぐにでも党員にして戦力にしていくことだろう。

 なお、不思議なもので、党員に属すると、往々にして、人の意識というのは変わるものだ。自然に、その党に属している、という意識に変わる。たとえば、どこかの政党の党員になれば、国会でその政党の議員がどういう言動をしているか、とか、党首がテレビに出てこんなこと言っていた、といった情報にも目がいくようになったりする。

 だから、明らかに、政党にとって、党員を増やすというのは、重要である。それは選挙の勝敗にも直結する。

 それだから、民進党の機関紙では、結党当初から、党員を増やしていかなければいけない、という意味のことを、党首が語ったりしている。それなのに、実体は、上記のとおりである。

 いったいこれは何なのか。

 いうまでもなく、民進党の支持母体は連合である。その連合というのは、巨大企業の労組が中心。そして、巨大企業の労組というのは、ユニオン・ショップ協定といって、労使協調の、対立のない、経営者寄りの労組が中心である。そのため、連合の労組出身の民進党の国会議員のなかには、その企業の利益のために国会活動している者もいる。それは、あたかも経団連の裏部隊のような存在といっても過言ではない。

 そういう体質を色濃くする連合と経団連にとっては、民進党は、連合が牛耳っている方が都合がよい。

 要するに、選挙がいつあってもおかしくない、という状況下で、民進党が党員募集をシャットアウトしたのは、

連合≒経団連を益するためではないか、と疑わざるを得ない。

 そんな民進党と連合の体質が、原発政策において世間に露呈したことは、当サイト161024日付で伝えた通り。

 ただし、だからといって、民進党は、連合と絶縁すべき、といっているわけではない。連合の言いなりではいけない、といっているのである。

 つまり、連合依存症から脱却できるかどうか。

 党員を増やしていけるかどうか。

 そして、野党共闘できるかどうか。主義主張が違う、とか、あいつは嫌い、といった基準で行動するのは、書生の類のすることである。少数野党で対立するのは、自公を利するだけである。よって大局で判断して動けるかどうか。

 こうした点からみて、野党が地力をつけることができるかが今年の焦点である。(佐々木奎一)



posted by ssk at 12:36| Comment(0) | 記事
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