2016年12月08日

役人がひた隠す貧困の連鎖を止める生活保護の特例

 平成二十八年十二月二月付、のauのニュースサイト


   EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「役人がひた隠す貧困の連鎖を止める生活保護の特例」


 を企画、取材、執筆しました。



1129日付の朝日新聞朝刊に「貧困の子へ贈与『税軽減を』 来年度税制改正、政府・与党で議論」という記事がある。それによると、来年度の税制改正で、貧困家庭の子への贈与税について次のように議論されているのだという。

 「現行では30歳未満の子や孫に教育資金を一括で贈与する場合、最大1500万円まで贈与税がかからない。だが、血縁関係がない場合は年間110万円を超える分が課税される。仮に一括で1500万円を受け取れば約450万円の税金を納めなければならない。

 内閣府と厚生労働省は来年度の税制改正要望で、貧困家庭の子どもが篤志家から教育資金を受け取った場合、最大1500万円まで贈与税を非課税とすることを提案。内閣府は『資力のない親の代わりに教育資金を出すと考えれば理解は得られるのでは』とする。22日の自民党税制調査会では『貧困の連鎖や世代間格差の解消につながる』との意見も出た。

 しかし、政府内には『篤志家と出会えた子どもと出会えなかった子どもとの間で不公平が生じる』との懸念があり、与党協議では『来年度の税制改正に盛り込むのは難しい』との意見が強い」というもの。

 これは例えば、相続する人がいない人などが、貧しい知人の子どもの進学のために寄付したい、といったケースがあるとする。政府内には、そういう篤志家に出会う人、出会わない人で格差が出るのは不公平、だから贈与税を免除する必要はない、と言う者がいるのだそうだ。

 だが、それをいうなら、世の中は、生まれたときから貧困家庭から中流、上流家庭といった具合に、不平等に満ち満ちているのが現実である。第一、政府内で「格差が出るのは不公平」と言ったという者は、格差社会の上位にいる。そういう者が、「格差が出るのは不公平」などとほざく資格はない。

 上述のように贈与税を1500万円まで非課税にすれば、少しでも篤志家が増える要因になる。ひいてはそれが、貧困固定の格差社会を1万分の1ミリでも改善することにつながるのではないか。

 なお、貧困家庭の子どもの教育という意味では、贈与税をどうかするよりも重要であり、すでに定められた制度でありながら、周知されていない事がある。それは、生活保護世帯の子どもの進学費用についてである。自治体の役人の中には、例えばシングルマザーの生活保護受給者に対し、「あなたのお子さんは、入学金などの費用が賄えないのだから、大学に行けません。高校を卒業したら働いて下さい」と、ひとの人生を指図する役人がいる。その役人の言葉により、進学を諦める子どもが、世の中にはたくさんいる。

 もちろん、大学に行かない=貧国というわけではないが、大学に行かない方が貧困になる可能性はアップするのは事実。ただし、当コーナーで再三再四指摘しているように、ろくに勉強をしない三流大学に行って遊び呆けて何百万円も借金をして劣化して卒業するくらいなら、すぐに社会に出て働いた方がよっぽど将来性はある。だが、他方では、ちゃんとした大学で目標を持ってしっかり学んで卒業する、真の意味での「大学生」も多々いる。そうした真の大卒者は、進学しない人より高所得者になる率は高い。

 それだから、役人が入学金を理由に進学を諦めさせることは、子どもを貧困連鎖のアリ地獄に追い落とすに等しい暴挙である。

 しかも、生活保護の制度上、子どもが進学する道があるのにもかかわらず、役人は、進学できません、と言い切る。それで進学できずに貧困に陥ったら、その役人と上司、上層部のせいだ。役人の連中に対する懲戒解雇等の処分と、役人の指図で進学を逸した子どもへの賠償をしっかりとさせる、という責任を明確にする仕組みが必要である。

 ではどうやって入学金等の進学費用を捻出するのかというと、子のアルバイトによっである。通常、子がバイトで稼いだ額は、生活保護の世帯収入に換算されるので、バイトをした分、生活保護の支給額は減る。しかし、バイトで貯めたお金を進学費用に充てることが特定できる場合は、役所に申告してそのことを認めさせて、手続きをしっかりと踏むことにより、バイト収入を、世帯収入から控除することがてぎる。つまり、生活保護が満額支給された上で、バイト収入も入る。こうしてコツコツとバイトをして稼いだお金を、進学費用に充てることができる。だから、勉強さえできれば、生活保護世帯の子どもでも大学に行き、高所得者にもなれる。

 そういう制度があるのに、そのことを言わない役人は、実に多いのだ。役人が言わないのは、生活保護費による財源の支出を減らすためとみられる。つまり、往々にしてバイトをしている生活保護世帯は、生活保護の支給を減らしたくないので、バイトをしていることを役人に隠したりする。その後源泉徴収により、役人が半年以上経ってからバイトをしていることを突き止めて、不正受給ですよ、と迫り、バイト分の生活保護支給額の返金をさせている。返金させた分、財源は浮く。役人にとっては、貧困家庭が貧困のアリ地獄から抜け出すことよりも、故意に不正受給に追い込み、貧困層から借金を取り立てることの方が大事なのだ。

 しかも法律家などの専門家ですら、生活保護の制度を詳しく知らない人が実に多いのが実情である。

 では、どうすればよいか。生活保護受給者が、単身、役人と掛け合うというのは、できれば避けた方がよい。前述のように、役人がデタラメなことを言って、言いくるめて、進学を諦めさせる可能性があるからだ。

 そのため、できれば専門家を同行させた方がよい。例えば、法テラスを通せば、費用がかからなくて済む場合がある。ただし、法テラスを通す場合にも、ただ漫然と法律家を選んでもらう、というのでは、よい結果は望めない。法律家にとって、現状、生活保護法は、盲点となっている。生活保護法は仕事に結びつかないことが多いため、詳しい内容を知らない法律家が多いのである。

 それだから、なるべく生活保護受給者自身が、生活保護法に精通した法律家をピックアップして、その法律家の事務所に出向いて相談して進めた方がよい。

 なお、法律の専門家による各種団体は、もっと勉強して生活保護法に詳しい法律家を育成し、情報発信すべきである。(佐々木奎一)

posted by ssk at 14:51| Comment(0) | 記事
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