2016年12月06日

タバコの“罪と罰” ニ

 不動産屋に電話をしたところ、担当者は今日は休みで明日出勤します、と言い、要件をうかがいしましょうか、というので、事情を説明した。すると、「どこの部屋の人が吸っているか、わかりますか?」と何回か聞き返してきた。「いえ、それは確認していません」と、筆者は答えた。

 なぜなら、喫煙している現場を確認するとなると、喫煙者と目が合う可能性がある。ひょっとしたらその喫煙者は、粗暴極まりない輩かもしれない。そうすると、トラブルになるのは必定。じかには、そういう輩とかかわりたくないので、部屋を特定するためのアクションは控えていたのだ。

 結局、その不動産屋は、「わかりました。明日、担当の何々に事情は伝えておきます」と言って、電話を切った。

 それにしても、よくよく考えてみると、こういう場合、賃貸物件を管理する不動産屋、あるいは大家の考え方次第で、対応はガラリと変わってしまうはずだ。

 もしも喫煙者の言い分を擁護する前時代的な思考回路の不動産屋なら、「タバコの煙が部屋に入ってくるくらいは、我慢してください」とか言い放つことだろう。

 受動喫煙の弊害に理解のある不動産屋なら、ベランダでの喫煙を許さないことだろう。

 不動産屋の考え方一つで、住民の生活は、大きく変わってしまう。

 賃貸物件で、どんなにいい間取りで、内見した時点では非の打ちどころがなかったとしても、いざ住んでみたら、隣接する住人がベランダでタバコ吸い放題で、自分の部屋にタバコの煙がひっきりなしに入ってきて、その状況を、不動産屋が容認する、というようでは、住み心地はすこぶる悪い。

 よって、こういうときは、あらかじめ、ほかの住民がベランダで喫煙した場合は、どういう対応をしているのですか?と、質問した方がいい。もし、わたくしどもの管理しているマンションでは、外で喫煙することは禁止しています、と言うのなら、いい物件といえる。ただし、入居させたいがためのデタラメの可能性もゼロではないので、契約書のどの部分を根拠にそう言っているのか、を聞いたり根拠条文が抽象的でどうとでも解釈できるようなら、この条文を根拠にベランダでの喫煙は禁止します、とった文面を作成してもらった方が、あとあとトラブルになった場合、有利だ。

 どう対応するのか、すぐに答えられない不動産屋に対しては、しっかりと返事をするよう要求した方がいい。それでも、まともに回答できないようなら、「受動喫煙蔓延物件」かもしれない。

 考えてみれば、レンタカーなんかでも、最近は、禁煙車、喫煙車と区分けされているケースが多い。ホテルの部屋も、禁煙者専用というのが増えてきた。中古車の販売も、禁煙者のワンオーナーかどうかがわかるようになっている。

 いまや、この世のあらゆることが、禁煙か、それとも喫煙か、この二つに峻別されつつある。

 だから、賃貸物件も、最初からずっと完全禁煙の部屋とか、建物全体が「禁煙者のみ入居可」の物件で、入居後喫煙者になったりして部屋のなかで喫煙したら違約金を払って退去する契約の物件があったら、入居者が殺到するのではないか。「禁煙マンション」は、資産価値が上がることだろう。

 「喫煙マンション」は、受動喫煙被害のリスクに満ちている。喫煙者とすれ違うだけでも、タバコ残留成分がただよっているし、エレベーターで喫煙者と一緒になったら、密室空間にタバコ残留成分が蔓延することになる。それに、ベランダでの喫煙や、換気扇から蔓延する煙で、ほかの人の部屋を汚染するリスクもある。タバコの火の不始末による火事のリスクもある。

 「喫煙マンション」には、なるべく住みたくない、という人は多いはずだ。

 (続く)

posted by ssk at 16:12| Comment(0) | 連載
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