2016年12月01日

タバコの“罪と罰” 一


 この国のタバコを取り巻く環境は、後進国そのものである。いまから5年、10年、20年もすれば、タバコについてまかり通っているいまの現状について、唖然とすることは山ほどにあるに違いない。あたかも、われわれ現代人が、今から3040年前の映像で、たとえば労組と会社の交渉かなにかの席で、労働者たちが大きめの部屋で椅子に座りながら灰皿も持たずにタバコをスパスパ吸いながら使用者に盛んに抗議していて、その喫煙風景を労使ともに当たり前としている様子を現代人がみると、異様にみえるのとおなじように。

 そういう時代状況で生活するなかで、最近、こんなことがあった。

 それは、筆者の住むマンションでのこと。筆者は、横浜の片隅の自然が取りえの土地に移り住んで丸二年経つ。無論、空気がよいので、窓を開けることも多いのだが、ここ34週間前から、窓をあけると、にわかに、タバコのにおいがしてくるようになった。最初は気のせいかとも思ったが、どう考えてもタバコ臭い。しかも、一度や二度ではない。ほとんどあけるたびに、数分以内にタバコのにおいがしてくる。

 タバコのにおいがいやなので、次第に、窓を開けなくなった。すると、驚いたことに、窓を締め切っているにもかかわらず、部屋の中がタバコ臭いときがあるのである。それも一度や二度ではない。かなり頻繁に、タバコくさい。

 しかも、カーテン付近では、タバコのにおいが、すでにこびりついている。

 さらに、閉口したことに、キッチンにある換気扇あたりからも、タバコのにおいがしてくるのである。それも一度や二度ではない。一日に何度も、タバコくさくなる。

 しかも、平日、祝日、土日とわず、時間帯も、朝から晩までひっきりなしに、時節、タバコくさくなるのである。

 隣か上下階か、斜め下か、斜め上の階か、定かではないが、隣人のしわざにちがいない。

 そこで、ちょっと受動喫煙について調べてみたところ、ホタル族といって、ベランダに出てタバコを吸う輩がいて、当人は外で吸えば煙は人のいないところにいく、と思っているのかもしれないが、実際は、隣室の窓から部屋の中にタバコのけむりが侵入する、という受動喫煙被害が横行している、という、被害ケースが載っていた。

 いまのご時世、職場の受動喫煙も、禁止される流れになってきており、罰則が付くのも時間の問題だというのに、世の中には、自宅にいながら受動喫煙に苛まれる人もいるという事実を知り、呆然とした。そして、筆者も、にわかに、その被害者に列したことを認識した。

 昔、アメリカの新聞かなにかで、かの国のどこかの町では、自室の部屋のなかでの喫煙さえも禁じている、とか、タバコを吸った者は追い出すマンションがある、という記事をみたことがあり、アメリカでは喫煙者は存在自体が否定されているのかと思ったものだが、いざ自宅にいながらの受動喫煙に遭ってみると、そんなアメリカに先進性を感じてきた。

 だが、日本では、自宅での受動喫煙被害を防止する法律は整備されていない。

 自宅にいながらの受動喫煙被害の場合の裁判の判例も調べてみた。が、あんまりパッとしない。画期的な判例といわれるものですら、加害者である喫煙者に対し、5万円の賠償を命じる程度。判例では、かなりの程度、住民は、受動喫煙を受忍する義務があるのだそうだ。

 受忍義務があるなどというのは、到底納得できるものではないが、裁判官が、こんな判決をしてしまうのは、社会全体の認識がそうだからである。社会認識が変われば、裁判官の認識も変わる。それに社会認識がかわれば、タバコ利権にまみれた怠け者の政治家官僚の者共も変わらざるを得ない。

 だが、残念ながらいまの社会認識は、他人の家にタバコの煙をまき散らす輩が隣人となった場合は、かなりの程度、被害者は耐え忍ぶ義務があります、というものである。

 だからこそ、被害者は、泣き寝入りしては、ならない。

 そういうことも考えつつ、12週間経過したが、あいかわらず、家のなかはタバコくさい。そこで、外とつがっている、壁に付いている通気口を閉じて、外の空気と遮断したところ、窓付近からはタバコのにおいはしなくなった。ただし、そのせいで、部屋は換気できなくなってしまった。

 そして、キッチン付近の換気扇からは、あいかわらず、タバコのにおいがする。そのため、換気扇をほとんど付けっ放しにすることにした。

 それにしても、この換気扇はどこにつながっているのだろう。ひょっとしたら、隣人が換気扇の下でタバコを吸っていて、その煙がこの部屋に流れてきているのではないか。そこで、調べてみたところ、キッチンの換気扇は、ベランダの外と通じていた。ということは、やはり、隣人がベランダに出て吸っている煙が、うちのベランダに充満している、ということになる。

 どう対処すればよいのか。

 色々考えたが、まずは、不動産屋を通して、大家さんから、各戸に、ベランダで吸わないよう、書類で通知してもらうよう、依頼することにした。もしも、通知してからも、相変わらず、タバコを吸っているようなら、そのときは、どこでだれが吸っているのか、こらちで調べて、喫煙者に個別具体的な通知をするよう依頼して、それでも、吸い続けるようなら、じかにその喫煙者と話し合いをして、双方の折り合いのつく方法を考えて、今後はこうしていく、という取り決めをして、文書に書き、サインをする。それでも、その喫煙者が約束を破る輩なら、そのときは、裁判をしなければいけない、かもしれない。

 そのように考えた末に、不動産屋に電話をした。

 (続く)

posted by ssk at 19:38| Comment(0) | 連載
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