2016年11月09日

村上春樹の言葉と蔓延する歴史修正主義の暗流

 平成二十八年十一月四月付、のauのニュースサイト


   EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「村上春樹の言葉と蔓延する歴史修正主義の暗流」


 を企画、取材、執筆しました。




1029日付の朝日新聞朝刊に、「日テレが産経に抗議『恣意的な記事』 『南京事件』番組巡り」という記事がある。それによると、日本テレビのドキュメンタリー番組についての、産経新聞の検証記事が、事実と異なるとして、日本テレビが産経に対して文書で抗議したという。

 「番組は昨年10月に日本テレビ系で放送された『南京事件 兵士たちの遺言』。日本兵の日記や証言などをもとに、中国で捕虜や住民を殺害したとされる事件を検証する内容で、優れた放送作品などに贈られる昨年度のギャラクシー賞(優秀賞)を受賞した。

 この番組に対し、産経新聞は今年1016日付朝刊で「『虐殺』写真に裏付けなし」という見出しの記事を掲載。川岸に多くの人が倒れている写真の取り上げ方について、逃れようとする中国兵同士の撃ち合いや多くの溺死があったという記録に触れていないと批判した。捕虜の殺害についても『暴れ始めたためやむなく銃を用いた』とする大学教授の見方を紹介した。

 一方、日本テレビはホームページで『虐殺写真と断定して放送はしていない。産経新聞記者の『印象』から『虐殺写真』という言葉を独自に導き、大見出しに掲げた。いかにも放送全体に問題があるかのように書かれた記事は不適切と言わざるをえない』と指摘」したという。

 要するに、南京虐殺事件はなかったことにしたい、という、産経新聞のいつもの言い分を巡る話である。この産経新聞の思考は、そのまま安倍政権とその支持団体・日本会議にも当てはまる。

 一例をあげると、「新しい歴史教科書をつくる会」の創設者で同会元会長の藤岡信勝氏は、「南京大虐殺」について、「私たちの父や祖父達がこんなことを組織的にしていたとしたら、私達日本人は百年は立ち直れないでしょう。祖国愛や誇りを持つなどということもあり得ないことです」と訴え、南京大虐殺は「でっち上げ」であると述べている。その根拠の一つは、「虐殺者数がはっきりしない」、だからデタラメであり、「自虐史観」だというものだ。

 だが、99日付当コーナーで指摘したように、南京大虐殺当時、日本政府により発禁となった西洋メディアの日本語新聞の記事には、「非戦闘員の殺戮は広く行われていた。被害者は多く銃剣で刺され負傷者中には暴虐無残なものがあった。日本軍の掠奪は殆ど全市を侵すに及んだ」(ニューヨーク発行「アメラシイア」19382月号)、「南京占領の際、過去の日本軍には見られなかった掠奪、強姦、虐殺が大量的に行われたので、外人目撃者は非常に驚いて『南京攻略は日本戦史に輝かしい記録として残るよりも、その大量的虐殺の故にかえって、国民の面をふせる事件として記憶に残るであろう』との見解をもたらしている。一説には今回の戦争に大義名分がないから緊張味を欠くのだともいわれている」(シアトル発行「ニュース」1938112日号)などと報じられていた。(「太平洋戦争と新聞」(著:前坂俊之/講談社刊))

「私たちの父や祖父達がこんなことを組織的にしていたとしたら、私達日本人は百年は立ち直れない」と藤岡氏は言うが、我々人間というのは、ときに大虐殺などという、他の生物では考えられないようなオゾマシイことをしてしまうほど、“度し難い”生き物であるということを直視するところからはじめなければいけない。

 折しも、作家の村上春樹(67)は、1030日にデンマーク生まれの童話作家アンデルセンにちなむハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞の授賞式(アンデルセンの生誕地オーデンセで開催)に出席し、こう語った通りである。(以下、1031日付朝日新聞朝刊より)。

 「登壇した村上さんはアンデルセンの『影』という作品を引き合いに出し、『人間一人一人に影があるように、あらゆる社会や国家にも影がある。明るくまぶしい面があれば、それに釣り合う暗い側面があるのです』と英語でスピーチ。『私たちは時に、影の部分から目を背けようとします。あるいは無理やり排除してしまおうとします。でもどんなに高い壁をつくって外から来る人を締め出そうとしても、どんなに厳しく部外者を排除しようとしても、あるいはどれだけ歴史を都合のいいように書き直したとしても、結局は自分自身が傷つくことになる。自らの影、負の部分と共に生きていく道を、辛抱強く探っていかなければいけないのです』」

 (佐々木奎一)

posted by ssk at 22:58| Comment(0) | 記事
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