2016年09月13日

旧日本軍を彷彿、日の丸と日本刀の自衛隊エンブレム

 平成二十八年九月九日付、のauのニュースサイト


    EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「旧日本軍を彷彿、日の丸と日本刀の自衛隊エンブレム」


 を企画、取材、執筆しました。(写真は自衛隊エンブレム、陸上自衛隊HPより)



陸上自衛隊のエンブレム.jpg

   


 日の丸の下に、抜き見の日本刀と鞘をクロスさせ「日本国陸上自衛隊」と書いてあるエンブレムの写真付きで、「陸自エンブレムに日本刀、なぜ?」という記事が7日付の朝日新聞朝刊に載っている。

 記事によると、「陸上自衛隊が記念品などに使うために作ったエンブレムが物議を醸している。日本刀をあしらったデザインで『日本人らしい強さ』を表したというが、陸自の装備に日本刀はない。かつての日本軍を思い起こさせるとして、『アジア諸国への配慮が足りないのでは」との見方も。(中略)上段に日の丸、下に陸自のモチーフの『桜星(おうせい)』。そして真ん中には、交差する抜き身の日本刀とさや。エンブレムは『桜刀(さくらかたな)』と名付けられ、5月に公表された。

 陸自の中枢・陸上幕僚監部の広報室によると、安倍政権が掲げる『積極的平和主義』を具現化したデザインだという。国連平和維持活動(PKO)や国際共同訓練などで他国軍と交流する際、エンブレムを刻印したメダルや盾を記念品として贈る予定だ。

 なぜ日本刀なのか?

 陸幕広報によると、古くから武人の象徴とされてきたことから選ばれたという。『外国の陸軍のエンブレムにも銃や銃剣を使う例が多い。陸自では日本人らしさを示す観点から刀が適切だと考えた』

 これに対し『国内のみならず海外でも大きな反発を引き起こす』と主張し、エンブレム撤回を求める活動を始めた人もいる。埼玉県ときがわ町の市民団体代表世話人、篠原陽子さん(66)は6月、オンライン署名サイト『Changeorg』で署名集めを開始。約3週間で22千人以上の署名が集まった。『軍刀は帝国日本軍の略奪や脅迫を思い起こさせるシンボル。自衛隊のエンブレムにふさわしいとは思えない』

 民主党政権時に観光庁の事業につくエンブレムの監修に関わった劇作家、平田オリザさんは『アジアの人がどう考えるかといった調査をしたのだろうか』と疑問視する。観光庁のエンブレムについては事前に、日の丸入りのデザインへの反応を探るため、在外公館を通じて中国や韓国の反応を探ったという。(中略)

 陸自には00年から使ってきたシンボルマークもある。手のひらで日本列島を包み込むようなマークの横に、『守りたい人がいる』との言葉が添えられたものだ。エンブレムとは使い分け、自衛官募集などのために活用するという。

 昨年、安全保障関連法が成立し、自衛隊の海外任務の役割は拡大する。国内ではソフトなイメージを維持しつつ、主に海外向けにはハード路線のエンブレムが作られた狙いは何なのか。

 陸幕はエンブレムと安保法の関係は否定しつつ、『災害派遣などを通じて陸自の優しさ、頼もしさは幅広く理解してもらっている。ただ、(国防には)精強さも不可欠。それをエンブレムで感じてほしい』と説明している」という。

 ちなみに、上記署名の呼びかけ文には、「陸自が、これまでの『国土防衛マーク』を捨てて、日本刀の『抜き身』をエンブレムに登場させました。『帝国陸軍軍人』が帯刀していたこと、それが飾り物ではなく実際に殺戮のために振るわれたことを記憶しているアジアの国々では戦前の『亡霊』が現れたと受け止めるでしょう。

 鞘を抜き払った日本刀が描かれたエンブレムは陸自が人殺しの道具をあがめている集団と表明していることも同然です。『問答無用』での武力行使をしてきた旧日本軍の血に塗られた軍刀の記憶を呼び覚ますこのエンブレムは、国内のみならず海外でも大きな反発を引き起こすことは必至です。

 『平和への活動』と言いつつ、刀を崇拝しているデザインは、国民としても、大変恥ずかしく、海外に出すわけにはいきません。陸自に新エンブレム撤回の英断を求めます」と書いてある。

 実際、筆者もこのエンブレムをみて、旧日本軍を想起した。例えば、旧日本軍と日本刀といえば、「百人斬り競争」を連想する人もいるに違いない。百人斬り競争とは、「大阪日日新聞」(大阪毎日新聞)の昭和12年(1937121日夕刊の「南京めざし 怪絶・百人斬り競争『関の孫六』五十六人を屠り 伝家の宝刀二十五名を倒す」という見出しが発端。

 同記事には「快進撃の第一線に立つ片桐部隊に『百人斬り競争』を企てた青年将校が二名ある(中略)一人はすでに五十六人を斬り、もう一人は二十五人斬り果たしたといふ(中略)二人は無錫入場と同時に直ぐに追撃戦に移った際どちらからともなく『南京に着くまで百人斬りをしようぢやないか』といふ相談がまとまり、柔道三段の向井少尉が腰の一刀『関の孫六』を撫でれば野田少尉も無銘ながら祖先伝来の宝刀を誇るといつた風で互いに競争するところあり(中略)

 両少尉は語る。『向井少尉=この分だと南京どころか丹陽で俺の方が百人くらい斬ることになるだらう、野田の負けだ、俺の刀は五十六人斬つて歯こぼれがたつた一つしかないぞ

 野田少尉=僕らは二人とも逃げるのは斬らないことにしています、僕は○官をやつているので成績があがらないが丹陽までには大記録にしてみせる

 記者らが『この記事が新聞に出るとお嫁さんの口が一度にどつと来ますよ』と水を向けると何と八十幾人斬りの両勇士、ひげ面をほんのりと赤めて照れること照れること」とある。

 その後、続報を経て、同年1213日付の東京日日新聞朝刊(現毎日新聞)には、日本刀を持つ両少尉の写真付きで、「百人斬り“超記録”向井106105野田 両少尉さらに延長戦」という記事がある。それによると、「南京入りまで“百人斬り競争”という珍競争をはじめた例の片桐部隊の勇士向井敏明、野田毅両少尉は(中略)百六対百五というレコードを作って十日正午両少尉はさすがに刃こぼれした日本刀を片手に対面した。

 野田『おいおれは百五だが貴様は?』向井『おれは百六だ!』…両少尉は“アハハハ”結局いつまでにいづれが先きに百人斬ったかは不問、結局『ぢやドロンゲームと致そう、だが改めて百五十人はどうぢや』と忽(たちま)ち意見一致して十一日からいよいよ百五十人斬りがはじまつた」などとある。

 当時の日本国民はこの話に熱狂した。

 なお、近年、この百人斬り競争は、戦意高揚のためのつくり話だったと盛んに主張する人がいる。

 「太平洋戦争と新聞」(著:前坂俊之/講談社刊)によると、当時の新聞は、昭和129月には、政府に内閣情報部が設置され、参与に毎日新聞と朝日新聞の主筆が就き、映画や雑誌のトップも参加し、政府、言論界が一体となり、挙国一致の「言論報国」へ邁進する体制が築かれていた。また、新聞は、政府の検閲による記事差し止め、禁止、掲載不可を恐れ自主規制が慢性化している状況だった(「太平洋戦争と新聞」(著:前坂俊之/講談社刊))

 そう考えると、百人斬り競争は、政府による戦意高揚のためのプロパガンダだったのかもしれない。なお、そのことをもって、あたかも南京で日本軍が残忍な行為をしていなかったかのような主張もあるが、同書によると、日本政府により発禁となった西洋メディアの日本語新聞の記事には、「日本国民は世界の大文明国および国民が日本の対支侵略、残虐な婦女子爆撃を非難しているということを知れば、心が暗くなるであろう。日本の国民は支那における日本の陸海軍の目も当てられぬ残虐行為を知っておらない」(サンフランシスコ発行「大洋新報」19371030日付)や、「非戦闘員の殺戮は広く行われていた。被害者は多く銃剣で刺され負傷者中には暴虐無残なものがあった。…日本軍の掠奪は殆ど全市を侵すに及んだ」(ニューヨーク発行「アメラシイア」19382月号)、「南京占領の際、過去の日本軍には見られなかった掠奪、強姦、虐殺が大量的に行われたので、外人目撃者は非常に驚いて『南京攻略は日本戦史に輝かしい記録として残るよりも、その大量的虐殺の故にかえって、国民の面をふせる事件として記憶に残るであろう』との見解をもたらしている。一説には今回の戦争に大義名分がないから緊張味を欠くのだともいわれている」(シアトル発行「ニュース」1938112日号)などと報じられていた。

 要するに、冒頭の日の丸と日本刀の自衛隊のエンブレムは、こうした旧日本軍の歴史を彷彿とさせる。

 なお、冒頭の記事の通り、このエンブレムは、安倍政権が掲げる『積極的平和主義』を具現化したデザインなのだという。

 その安倍政権の面々の多くは、日本会議のメンバーである。その日本会議について、かつて慶応大名誉教授の小林節氏は、「私は日本会議にはたくさん知人がいる。彼らに共通する思いは、第二次大戦での敗戦を受け入れがたい、だからその前の日本に戻したいということ。日本が明治憲法下で軍事5大国だったときのように、米国とともに世界に進軍したいという思いの人が集まっている。よく見ると、明治憲法下でエスタブリッシュメント(筆者注:支配者層)だった人の子孫が多い。そう考えるとメイク・センス(理解できる)でしょ」と言った。(2015615日、日本外国特派員協会の会見にて。同年712日付週刊現代のジャーナリスト魚住昭氏の記事「日本最大の右派団体『日本会議』と安倍政権のただならぬ関係〜なんと閣僚の8割が所属 みんな、そこでつながっている」より孫引き)

 安倍自公政権にしてこのエンブレムあり、ということがメイクセンス、理解できる。(佐々木奎一)



posted by ssk at 21:49| Comment(0) | 記事
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