平成二十八年八月二十九日付、のauのニュースサイト
EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事
「ゴマスリ幹事長にゴマをする記者クラブメディア」
を企画、取材、執筆しました。
26日付の当コーナーで自民党内の元プリンス船田元氏が、安倍晋三氏を公然と批判していることを取り上げたが、奇しくも25日は、自民党の小泉進次郎氏も、公の場で安倍氏の独裁制を、暗に指摘する場面があった。26日付の朝日新聞朝刊によると、「自民党の小泉進次郎農林部会長は25日、東京都内で開かれた内外情勢調査会(筆者注:時事通信社の関連団体)で講演し、党内で取りざたされる党総裁任期の延長について『率直に言ってなぜ今なのか分からない。急いで議論すべきことがそれか』と述べ、疑問を呈した。党則で連続2期6年までと定められた総裁任期の延長をめぐっては、二階俊博幹事長が党内で検討する意向を示している。小泉氏は『議論の場が仮にできるとしたら、なぜ今なのかぜひ説明していただきたい』と求めた」という。
つまり、自民党内には、元プランス船田元氏や石破茂氏、野田聖子氏といった面々に加え、若武者の小泉進次郎氏といった反安倍勢力が点在する。これに安倍氏に面従腹背している潜在的な反安倍層を加えると、一大勢力となることだろう。
他方、安倍氏のご機嫌取りでいち早く党総裁任期の延長を持ち出した「ゴマスリ太鼓持ち」幹事長・二階俊博氏。滑稽なことに、そのゴマスリに対し、さらにゴマをする記事が、記者クラブメディアには溢れている。
例えば、28日付の日本経済新聞朝刊の「永田町インサイド 自民幹事長、権力の盛衰、二階氏、存在感増す、選挙・人事…実権握れるか」には、こう書いてある。「二階俊博幹事長が誕生した。二階氏は77歳で、幹事長に就いた年齢は歴代で最年長。自民党ナンバー2の幹事長とはどんな仕事をするのか。(中略)二階氏の最大の課題は自民党総裁の任期延長だ。3年2期を3期まで可能にする案を軸に調整する。
党内ではさっそく小泉進次郎農林部会長が25日の講演で『なぜいまなのかわからない』と異論を唱えた。その直後、二階氏は自民党本部で小泉氏を見つけると肩を叩きながら『小泉元首相はすぱっと物事を決める方だった』と郵政民営化の思い出話を語りかけた。
進次郎氏が『二階幹事長もすぱっと決めようとしているんじゃないですか』と混ぜっ返すと、二階氏は『いやいや。今度飲みに行こう』と応じた。やりとりをみていた二階氏周辺は『相手を包み込むのが二階流だ』と解説する」と、二階氏の太鼓持ちぶりには一切触れず、もてはやしている。
また8月4日付同紙朝刊の「党幹部の横顔――幹事長、二階俊博氏」には「好機を見逃さない独特の政局観で存在感を放つ。師事した田中角栄元首相譲りの面倒見の良さは政界でも有名。国会議員39人を率いる志帥会の会長も務める。来客は政界から経済界まで幅広く、1時間待ちの例もある」と、ほめそやしている。
また、毎日新聞の8月2日付朝刊には「自民党 二階幹事長、党内抑え役 『実力者』起用に警戒感」という記事がある。それには「安倍晋三首相(自民党総裁)が1日、同党の谷垣禎一幹事長(71)の後任に二階俊博総務会長(77)を充てることを決めた(中略)党務経験の豊富な『実力者』の起用で、官邸主導の政権運営は変質する可能性があり、首相にとってリスクを抱えた人事といえる」「政府関係者は1日、二階氏の起用を『重量級だ。首相は安定感を求めたのではないか』と解説した」などと、高齢でゴマをする二階氏はポスト安倍のリスクがないから、幹事長にあてたにもかかわらず、「実力者」「重量級」などとほめちぎっている。
また、同紙の8月2日付の社説には「二階自民幹事長『安倍一色』から脱却を」とあるが、そもそも任期延長をさかんに唱えている時点で、安倍一色丸出しなのに、なんとも節穴な社説である。
また、読売新聞の8月19日付朝刊の記事「編集委員が迫る 改憲 急がず、穏やかに 自民党幹事長 二階俊博氏77」には、「『最後の党人派』注目」という小見出しで、「二階氏がお盆の恒例にしているという金丸信元副総理の墓参で山梨に行く道中に話を聞いた。二階氏が『最後の党人派』と言われるのは、田中角栄氏、竹下登氏や金丸氏ら昭和の大物政治家たちに直接薫陶を受け、その面影を感じさせるからだろう。自民党総裁任期延長や憲法改正などの難題にどう取り組んでいくのか。幹事長として党の中心に座った二階氏の動向にますます注目しなければならないだろう」と、ゴマスリ幹事長をベタボメしている。
このように記者クラブメディアはいつもの通り、権力にへつらっている。(なお、全国紙のなかでは、朝日新聞がいまのところ、ゴマスリ幹事長にゴマをすっている形跡はない。ただし、二階氏のゴマスリぶりをさして批判もしていないところが、五十歩百歩である)
ゴマスリ幹事長にゴマをする姿は、結局、安倍晋三氏にゴマをすっているのと同じことである。実際、すでに8月29日付日本経済新聞には「東京五輪『安倍首相で』59%、力入れるべき『テロ警戒』最多(本社世論調査)」などという記事が出回っている始末。
そもそも、当サイトでは、以前から安倍氏が任期延長して東京五輪まで権力の座に居座る腹であることを指摘していたが、その間、記者クラブメディアは、こぞって安倍氏が総裁選任期が来たら首相の座を降りることを前提にした記事ばかり書いてきた。それが、二階氏が任期延長を唱えゴマをすり出した途端、記者クラブは一夜にして、総裁選任期延長を前提とした記事を書き始めた。いまさらいうまでもないことではあるが、記者クラブメディアは、国家権力の太鼓を持つプロパガンダなのである。(佐々木奎一)
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