平成二十八年六月十日付、のauのニュースサイト
EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事
「身内の自民・公明が舛添都知事を“公開集団リンチ”」
を企画、取材、執筆しました。
いやましに袋叩きに遭う舛添要一都知事は今月6日、元検事の弁護士2人と記者会見を開いて調査報告書を公表し、「違法性はない」と結論づけた。その上で、批判を浴びている宿泊費と飲食費の約114万円分は、不適切な支出として個人資産から返金して慈善団体に寄付し、美術品計約315万円分は将来の寄付を前提に都の施設などで活用すると表明。さらに神奈川県湯河原町の別荘を売却する考えを示した。こうしてけじめをつけた舛添氏は「粉骨砕身、都政運営に努めたい」と、決意を語った。
それにもかかわらず、マスコミは相変わらず、袋叩きを続けている。例えば、9日発売の週刊新潮では、「湯河原別荘を売って一儲け?」と題し、別荘を売却したら8000万円になるとして、舛添氏を批判している。もはや週刊誌は、舛添氏が何をやっても、あるいは何もやらなくても、執拗にストーカーみたいに批判している。もっとも週刊誌というのは、読者が興味をそそりやすい、おもしろおかしいネタで有名人を叩く売文業であり、はなから良識など持ち合わせていない。なので舛添都知事を叩けば売れる、と踏めば、いくらでも上記のような記事を書く。
また、最近では記者クラブメディアも、週刊誌と同じ論調になってきている。例えば、毎日新聞は6日付朝刊で「社説 舛添氏の調査 これで続投に意欲とは」と題し、舛添都知事について、「都政トップとしての資質が問われている。どれほど事態が重大かという認識が足りないのではないか」といい、「都議会はきょうから各会派による代表質問がスタートする(中略)とりわけ都政与党である自民、公明両党の責任は大きい。知事の監視役としての役割を果たすべきだ」と、自公に追及するようけしかけている。
こういうマスコミの論調と、そのことが琴線に響く読者の相乗効果で、延々と袋叩きが続いているわけだが、舛添氏は違法行為をしたわけではない。それなのにマスコミや一部大衆は、まるで舛添氏を巨悪な犯罪者であるかのように、罵倒している。これは狂気の沙汰とえよう。
だが、議会の議員は、そうした狂論とはまったく別の考えのはずなので、議会が始まれば冷静に対処していくことになるだろう、と筆者は考えていた。そもそも、舛添氏は、企業献金を全くといっていいほど受け取っていない。つまり、政治献金による業者との癒着により政治を歪めるというダーティーさは絶無である。その意味で、舛添氏は極めてクリーンな政治家である。
また、舛添氏の支出については、5月27日付の当サイトで指摘したように、舛添氏の掲げる都市外交のツールとしての支出なので、歴とした政治活動費である。ほかの支出についても、舛添氏は理由を述べているのに、メディアや一部大衆は、納得できない、という、不毛な議論を繰り返している。
例えば、7日付の日本経済新聞朝刊は「ピザの焼き方 『クレヨンしんちゃん』…、購入本、家族向け?」という見出しで報じている。これをみると、あたかも、舛添氏が、政治資金で買ったマンガや料理本を、プライベートで読んで楽しんでいるかのような印象を抱く。こうしたマンガなどを持ちだすと、読者には身近なため、喰いつきやすい。だが、記事をよく読むと、見出しの印象とはまったく逆のことを、舛添氏は言っている。記事によると、ピザの焼き方に関する本の購入理由について、舛添氏は「ピザを焼いて振る舞いながら政治課題について意見を聞いたことがある」と言っている。要するに、ピザは政治活動のツールに使っており、そのための本である、ということになる。また、「のらくら同心手控帳シリーズ」や「ゼロの焦点」といった小説については、「江戸時代の風俗研究のため」「映画化されたので支援者との話題作りのため」と説明している。また、「クレヨンしんちゃん」や「イナズマイレブン」などの人気コミックについては、「児童の保護者から子どもが悪い言葉遣いをまねる」と相談を受けた舛添氏が「どのような表現がされているか確認するため」に購入した、と説明している。
このように万事、舛添氏は説明しているのに、公私混同ではないか、といってマスコミが食い下がり、執拗に批判しているというわけ。
それにしても、かつて、政治家の支出のこんなに細かいことについて、マスコミは目くじら立てて怒り狂っていることはなかった。要するに、せこい、せこい、と舛添氏を批判しているが、せせこましいのは、舛添氏を執拗に批判している方なのである。日本人は、かつてないほど、せせこましくなってしまった。こんな箸の上げ下げレベルの支出まで批判していては、政治家の裁量の余地はほとんどなくなってしまう。そして、裁量の余地がないと、活力のない政治家ばかりが量産されてしまう。
その一方で、自公の議員の中には、舛添氏とは、次元の違う支出をしている議員は多々いる。例えば、5月24日付日刊ゲンダイ電子版によると、麻生太郎副総理は、「昨年公開の政治資金収支報告書(14年分)によると、(中略)2億円近い政治資金をカキ集めたが、使い道はメチャクチャだ。資金管理団体『素淮会』は14年だけでも政治活動費の名目で計137回、総額1531万円を飲み食いに浪費。支出先も銀座のミシュラン3つ星すし店『すきやばし次郎』など高級店ばかり。
政治活動に名を借りた“夜のクラブ活動″にも政治資金から途方もないカネを落とし、支出先には『クラブ由美』や『ファーストクラス』など“座っただけでウン万円”の老舗クラブの経営会社がズラリ。(中略)気になるのは、居並ぶ高級店に交じって『オフィス雀部』という六本木の有限会社への支出が突出していること。14年までの5年間で計42回、総額3359万円を計上。1回50万〜100万円の支出もザラで、13年5月27日には1回で128万円を払っていた。
かつて麻生大臣は衆院予算委員会でオフィス雀部について『いわゆるスナックを経営している』(13年2月12日)と説明したが、実際は六本木の会員制サロン『Bovary』の運営会社だ。
『オフィス雀部の女性経営者はもともと銀座のクラブに勤めていた頃から、麻生大臣とは30年来の旧知の仲。過去には女性経営者が“麻生大臣と愛人関係にあったことを認めた”と週刊誌に書かれたこともあります」(自民党関係者)(中略)
写真誌『FRIDAY』が昨年3月に2週間、Bovaryの前に張り込むと、麻生大臣は9回も姿を見せたという。まさに『三日にあげず』。舛添知事への猛バッシングと比べ、浮世離れした金銭感覚の財務相は守られ過ぎている」とある。
こういう支出も、政治家当人が、政治活動であるといえば、政治活動費である。無論、違法ではない。
また、政治資金収支報告書で大事なことは、ガラス張りで国民にオープンにすることである。その意味で、麻生副総理も舛添都知事も、ちゃんと公開している。それに対し、例えば、公明党の漆原良夫・中央幹事会会長は、政治資金収支報告書の政治活動費の支出で、「クレジットカード代金支払い」という、「使途不明の支出」を繰り返している。その額は、漆原氏が代表の政党支部「公明党衆議院比例区北陸信越第1総支部」で、平成26年1,847,362円、平成25年2,642,680円、平成24年2,277,939円。漆原氏の資金管理団体「政経フォーラム21」で、平成26年1,001,170円、平成25年1,130,305円、平成24年1,102,992円。3年間でトータル10,002,448円と、実に一千万円以上も、得たいの知れない支出をしている。しかもこの「クレジットカード代金支払い」には領収書も添付されておらず、正真正銘、何に使ったのか全くわからない。よっぽどオープンにするのがはばかられるような、ヤマシイコトに政治資金を使っているのだろう。こんなデタラメな政治家すら、不問に付されている。
その一方で、舛添氏への個人攻撃は、尋常ではない。だから、舛添氏を都知事に当選させた、身内である自民党、公明党は、よもや、週刊誌や記者クラブのような批判はせず、舛添氏を守っていくだろう、と、てっきり筆者は思っていた。
だが、実体は違った。
7日の都議会で、最初に質問した与党・自民の神林茂氏は「私は怒っている。都民も議員も職員も」と切り出し、「あまりにせこい」などと批判した。そのたび、「そうだ」の合いの手が与党席から響いた。(8日付毎日新聞朝刊)
さらに8日の都議会では、最初の質問者の自民党の来代勝彦議員が、「今の知事は、『疑惑の総合商店』。人間性にも疑問を持たれるようになっている」(9日付読売新聞朝刊)と言い、ほかにも自民党議員が「苦言を呈する最後の機会」「東京の未来について質疑する意義がない」など言い、公明党の斉藤泰宏氏も「いかなる理由で知事に居座るのか」と辞任を迫った。(9日付朝日新聞朝刊)さらに、自公の議員から、「出処進退について早急に結論を」「辞職を求める声はますます広がりを見せている。いかなる理由でとどまろうとしているのか」という発言が出たという。(9日付日本経済新聞朝刊)
さらに、永田町の国会議員の幹部からも、説明責任や辞任を求める声が相次いでおり、自民党幹部は「都民は続投に納得していない」と指摘し、公明党幹部も「説明責任は十分には果たされていない。場合によっては出処進退の判断も必要になるかもしれない」と語っているという。(6月8日日本経済新聞朝刊)
また、同日付の朝日新聞朝刊によると、舛添氏は給料を50%減額する条例改正案を都議会側に打診したが、議会からはすでに「お金の問題じゃない」との批判もあがっているという。
自分たちのことは棚に上げ、身内であり瑣末なことで違法性がない舛添氏を、議会の場で“公開集団リンチ”にさらしている自民・公明は、もはや堕ちるところまで堕ちたといえよう。政治家失格である。それ以前に、人間失格である。舛添氏を巡る公開リンチから、自公政権の政治家たちが根元から腐ってきていることが観て取れる。(佐々木奎一)
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