2016年02月02日

検証「育鵬社の教科書」 反知性的封建主義、愚民下政策のトゥールとして 四

 育鵬社「中学社会 新しいみんなの公民」のP40「大日本帝国憲法と日本国憲法」の章は、その見出しからして“印象操作”がほどこされている。

 どういうことかというと、「大日本帝国憲法と日本国憲法」という見出しのうち、「大日本帝国憲法」の字の上に「だいにほんていこくけんぽう」とルビが入っている。そして改行して、「と日本国憲法」となっているのだ。日本国憲法という字には、ルビはない。

 これにより、ただでさえ大日本帝国憲法の方が、日本国憲法より文字数が多い上、振り仮名を入れていることで、文字サイズが1.5倍ほど大きく見えるのだ。(写真は育鵬社「中学社会 新しいみんなの公民」より)

  

見出し.jpg


 それだけではない。

 印象操作をしたこの見出しの上には、カラーの洋画の写真がある。これは「大日本帝国憲法発布(和田英作「憲法発布式」)」。このように大日本帝国憲法をページのいたるところで権威づけしている。

 そして洋画の隣には、「五箇条の御誓文」が書いてあり、女子生徒のイラスト入りで、「五箇条の御誓文の理念は日本国憲法にも生きているのかしら。」と、日本国憲法に疑問を投げかけている。(写真は育鵬社「中学社会 新しいみんなの公民」より)

  

洋画.jpg


 本文では、大日本帝国憲法について、「この憲法は、アジアで初めての本格的な近代憲法として内外ともに高く評価されました」と、ほめちぎっている。

 そして、本文横のスペースには、極小サイズの細字で、こう書いてある。

 「昭和に入り、国際情勢の変化によって危機感を強めた軍部が、憲法の不備をついて政治の介入を強め、戦時体制が整えられるなどした結果、憲法の理想は、大きくそこなわれていきました」

  要するに、こういう育鵬社にとって都合の悪い歴史は、目立たないところに追いやっている。極小の字で書いてあるところが、本当は、こういう箇所は消したい、という本音が、ミエミエである。

 そして見開きの右側P41の上には、二つの文面を載せている。

 左側は、「大日本帝国憲法の理念」。上側には、赤色のルーペのイラストに「理解を深めよう」とあり、こう書いてある。

 「日本は万世一系の天皇が統治する立憲君主制であることを明らかにしました。天皇は国の元首であり、国の統治権を総攬する(すべてまとめもつ)ものであるが、憲法の規定に従って統治権を行使するものと定められました。具体的には、法律の制定は国民の意思が反映された議会の協賛(承認)によること、行政は国務大臣の輔弼(助言)によること、司法は裁判所が行うこととされました」

 そして、末尾には、こう書いてある。

 「国民には法律の範囲内で権利と自由が保障されました。」

 これは、裏を返せば、国民は、本然的に自由も権利もない奴隷的存在で、国家が決めた法律の範囲内でしか権利と自由が保障されない、つまり、国民の権利と自由は、国家のさじ加減一つでどうとでもなる吹けば飛ぶようなものでしかなく、国家の一存で、国民の権利と自由などいつでも抹消することができる、ということになる。

 実際、治安維持法のような法律もできた。それもこれも、大日本帝国憲法では、国民が主権者ではないからである。

 要するに、育鵬社は、国民の主権者の地位を剥奪したがっており、国民主権のいまの憲法を、苦々しく思っている。大日本帝国憲法下の時代に、時間を巻き戻したいのだ。(写真は育鵬社「中学社会 新しいみんなの公民」より)


大日本帝国憲法の理念.jpg


 (続く)

posted by ssk at 20:00| Comment(0) | 連載
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