平成二十八年一月十一日付、のauのニュースサイト
EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事
「マレーグマ脱走謹慎と動物園という名のプリズン」
を企画、取材、執筆しました。
7日付の毎日新聞夕刊に、こんな記事がある。それは「マレーグマ 脱走防止、壁改修 昨年『未遂』後謹慎、外遊びやっと 名古屋の動物園」という記事。
それによると、「昨年5月、獣舎の壁をよじ登り外へ逃げ出しそうになって以降、屋内で“謹慎”生活を送っていた東山動植物園(名古屋市千種区)のマレーグマ『マーチン』(3歳、雄)が、8日から広い屋外運動場へ再び出られることになった。脱走を防止する壁の改修工事が完了したためだ」という。
昨年の脱走とは、具体的には、昨年5月5日、屋外運動場のコンクリート壁(高さ約5メートル)の上にマーチンがよじ登っているのが見つかり、職員がデッキブラシなどを使って制止する騒ぎになったというもの。壁のつなぎ目のゴム(幅約3センチ)に爪を引っ掛けたり、壁の突起物に脚を掛けたりして器用に登ったとみられている。突起物は「平らな壁だと殺風景」との判断で取り付けられたが、ゴムや突起物を削り取り、隣接するメガネグマの運動場の壁にも同じ改修をした。
脱走騒ぎ以降、マーチンは13平方メートルの屋内施設に収容されていた。ストレスから脚をかきむしるなどの行動がみられ、樹脂製のドラム缶で遊ばせるなどして、発散させてきたという。
一見ほのぼのした記事だが、脱走したのは、狭い獣舎に閉じ込められた生活が嫌だったからではないだろうか?
そもそも日本の動物園は、動物たちにとって“無期懲役の刑務所”という指摘は多い。例えば、7日付ジャパンタイムズに掲載された時事通信配信の記事によると、つい先日、こういうことがあったという。それは東京都内の「井の頭自然文化園」という動物園にいる、国内最長齢のアジアゾウ・はな子(69歳)の話。
記事によると、昨年10月、英語のブログで、「日本にいる最長齢の、捕われの身の象は、1949年にタイから日本の動物園に連行された。そこが彼女の終生のプリズン(刑務所、監獄)になることだろう。彼女は、一人ぼっちで、狭くて、無機質で殺伐としたセメント製の檻の中で、絶望的に安心できず、刺激もないまま、ほとんど死んだように、フィギュアの人形のように突っ立っている、と記し、悲しそうな、はな子の写真を載せた。
この投稿は、フェイスブックやその他のSNSでまたたく間に拡散し、はな子をもっと快適で、ほかの象と触れ合える新しい場所に移すよう嘆願する、30万もの署名が集まった。
それに対し、園側は、はな子が高齢であり、移動がストレスになることや、はな子は人気があり、この動物園のシンボルであり、はな子が去れば、多くの人たちが悲しむ、といった理由で、はな子を移動させることに反対している、という。
なお、「とらわれの野生 動物園のあり方を考える」(著者:ロブ・レイドロー、監修:山崎恵子、訳:甲賀珠紀/リベルタ出版)」には、「ホッキョクグマ、ゾウ、イルカ(シャチを含む)、大型類人猿(ゴリラ、オランウータン、チンパンジー)は、動物園にいるべきではありません。動物園では実現困難な、広大な自然空間がなければならず、多くは大家族を必要としているからです」とある。
そして、動物園には、「5つの自由」が必要という。これは1960年代のイギリスで農場動物を保護するため提唱されたもので、以来、世界中の政府や動物関係団体によって使われるようになった指標。「5つの自由」とは、以下の通り。
1 飢え、渇き、栄養不良からの自由(栄養のある食餌と新鮮な水)
2 肉体的苦痛と不快からの自由(適切な避難場所と快適な気候)
3 苦痛、外傷、疾病からの自由(適切な手当てと獣医師による治療)
4 正常な行動を表現する自由(広く自然な空間とか豊かな環境)
5 恐怖や不安からの自由(隠れ家と動物の気持ちを尊重する飼育員)」
この中の特に4が、日本の狭い動物園ではネックなる。無論、井の頭自然文化園、東山動植物園だけではない。商業的に成功しているとされる北海道の旭山動物園を含めた多くの動物園で、「動物のプリズン」がまかり通っている。(佐々木奎一)
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