2015年12月04日

原発プロパガンダ「讀賣新聞」 敗戦、占領下 二

 放射男≠ニいうあり得ない記事の翌日、讀賣新聞はこういう見出しの記事を載せた。

 「“放射人間”大聴衆を唸らす」

 本文には、こうある。

 「研究室の街頭進出として帝都の人気を呼んだ『紀元二千六百年記念理研講演会』は十八日午後一時から九段の軍人会館で開かれたが、仁科芳雄博士の“人工ラヂウム”を嚥下する“放射人間”の実験は満場の観衆を唸らせた

 深遠な学理や宇宙の謎を極めて大衆向に見せるというので学術講演としては珍しく二千名を突破する観衆が詰めかけ、さしも広い軍人会館の一階から三階までを埋めつくして閉め出しを食った群衆が入口に列を作るという盛況で理研でも面喰った

 仁科博士の実験は『元素の人工(中略)と宇宙線』の講演と併行して始まり、先ず実験台となる仁科研究室の小使加藤弥太郎(五一)さんがコップになみなみと注がれた食塩の“人工ラヂウム”溶液を顔をしかめてグッと飲み下す、待つこと約二十五分加藤さんは立って宇宙線測定用の『ガイガー・ミューラー計数管』の上に手をかざすと突如パチパチパチパチと機関銃の様な音がマイクロフォンを通じて観衆の耳朶を打つ、加藤さんの手から放射線が飛出していることがまざまざと実証されたのだ

 次いで放射性になった銀貨や人工ラヂウムを吸い上げた八ツ手の葉、菊の葉を計数管に近づけると同じく音を立てる、天体から降りそそぐ謎の宇宙線も音に変えて“科学手品”よろしく平易な実演に観衆の拍手を浴びて公表を博した。(写真は講演会の呼び物となった加藤さん(右)の“放射性人間”の実験)(19401119日付讀賣新聞朝刊より)

  

放射人間 大衆うならす.JPG

 このように戦中の日本は、731部隊で中国人やロシア人、韓国人などを人体実験しただけではなく、自国民にも人体実験をしていた。

 そして、それを書き立てたのが、讀賣新聞である。ちなみに、ほかの大手紙である東京日日新聞(現毎日新聞)、朝日新聞は、このおぞましい出来事を報じていない。

 讀賣新聞の社主・正力松太郎はエログロ(エロチックでグロテスクなこと。扇情的で怪奇なこと。「広辞苑第六版」より)で部数を伸ばした、といわれているが、この記事は、そのことを物語って余りある。

 この一事だけでも、仁科は戦犯ものと筆者は思うが、敗戦直後の19462月、仁科は文化勲章を受章した。(1946211日付讀賣新聞朝刊)

  

文化勲章.JPG


 (続く)

posted by ssk at 00:10| Comment(0) | 連載
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