平成二十七年十一月二日付、のauのニュースサイト
EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」記事
「カモの頭に刺さった矢…相次ぐ野鳥虐待の現実」
を企画、取材、執筆しました。
11月1日付の日本経済新聞朝刊に「矢刺さったカモ 埼玉の公園」という記事がある。それによると埼玉県入間市の「彩の森入間公園」で10月下旬、頭に矢が刺さったカモが見つかっていたことが31日、公園の管理事務所への取材で判明したという。矢は吹き矢のようなもの。
つい先月29日にも兵庫県伊丹市の昆陽池公園の池で、長さ約10センチの吹き矢が左目付近から貫通して刺さった雌のオナガガモが捕獲されている。(同紙)
それだけではない。今年3月には埼玉県川島町の越辺川の河川敷で、ボーガンの矢(約53cm)が左胸から右脚にかけて貫通したコハクチョウが見つかり、病院で手術を受けたが2日後に死んだ。(同紙)
今年6月には胴体に矢のようなものが貫通しているシラサギが大分市郊外で見つかっている。(朝日新聞より)
13年6月には姫路市飾磨区妻鹿の市営住宅で、首付近に矢のようなものが刺さったハトが発見されている。(同紙)
その前月には、大阪市旭区太子橋3丁目のマンションで、長さ14.5cmの竹串が首を貫通しているハトが見つかった。(同紙)
06年3月には東京・上野公園の不忍池で、頭部などに矢が刺さったカモが3羽見つかった。(読売新聞より)
00年12月3日には福島市吉倉の馬川で、産まれたばかりの子カモの、頭から尾にかけて矢が刺さっていたのが発見された。(同紙)
同月6日には福島市大森の大森川で、矢が刺さったカモが浮いているのを発見され病院に運ばれた。矢は左肩から首を貫通しており、生きているのが不思議なほどの状態という。(毎日新聞より)
無論、矢だけではない。
今年10月1日には千葉県市川市南八幡5丁目の路上で、体長約23センチの子ガモ1羽が、ハサミのようなもので首を切られて死んでいたのを発見された。前日には船橋市金杉台の団地の草むらで首のない鳥1羽の死骸が発見されている。(朝日新聞)
08年5月には茨城県水戸市の千波湖で、ハクチョウとコクチョウ計8羽を棒で殴り殺したとして、市内の男子中学生(15)を書類送検、友人の男子中学生(13)を児童相談所に通告した。(日本経済新聞)
ほかにも、野鳥を農薬や殺虫剤で毒殺したり銃殺する事件が全国各地で起きている。
こうした鳥類の虐殺事件では通常、「鳥獣保護法違反」の容疑で捜査、逮捕、起訴、有罪の流れとなるが、鳥の命は、軽く扱われているのが実態である。例えば04年09月には、千葉県成東町でサギ類の集団繁殖地の竹林にショベルカーで乗り入れて1400平方mを破壊し、サギ199羽を殺したとして鳥獣保護法違反容疑で、同町の自営業の男性(53)が書類送検された。しかし、千葉地検八日市場支部は「男性が反省していることや再犯の可能性が低いことを考慮して不起訴」としていたりする。(読売新聞)
そもそも動物愛護法には、殺傷罪は「二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金」、虐待罪は「百万円以下の罰金」を課しているが、対象の動物に野鳥は含まれていない。
そのため野鳥は「鳥獣保護法」となるが、同法には殺傷や虐待の記載はなく、法の目的に明記れている「生物の多様性の確保(生態系の保護」という観点と、条文で「鳥獣の捕獲等」の「許可」は環境大臣又は都道府県知事がすることになっているから、殺傷、虐待などの「捕獲等」の行為を許可なく行なっている、というのが違法の根拠になっている。罰則は最も重いもので「一年以下の懲役または百万円以下の罰金」。これは動物愛護法の2分の1である。(参考文献:九州国際大学社会文化研究所・神山智美氏「罰則から見る野生動物の位置づけ : 動物法制における野生動物の法的価値を考える」))
法改正の必要があるのではないか?また、一市民にできることは、野鳥を虐殺する輩がいることを認知し、不審者が野鳥に近付くときは見守ることではないだろうか。市民の「目」があれば、犯罪行為は今よりも格段にしずらくなるに違いない。(佐々木奎一)