2015年11月08日

京都市“猫エサやり禁止条例”ができるまで 苦情の内実 七十五

 さらに、おじいさんは、こう言う。

 「そうして、『周りの人と仲良くできるようになった』、言うてね。そうしてがんばってねんねん、言うてた」

 そして、佐川夫妻に対し、「金銭的にも時間的にも全くないから、応援はできても、なんにも助けはできへんので。だからせめてお礼だけは言って」おきたくて、と言う。

 「いやいや、ありがとうございます。そういう方がいらっしゃるのは心強いんですよ」と眞人さんは応える。

 さらに、おじいさんはこう語る。

 「すごいと思いますよ。こんなエサやるにしても、毎日、全部合わせて十何匹いるでしょ。なんせここ、ものすごい多いんですよ。せやけど、ここ散歩してると、みんな猫が優雅にしてるんですよ。ここの猫。最初、不思議やったん。こんな山の野良で、なんでこんなに優雅にしてんのかなと思って。ふっくらしてるし。ほんなら、こうやって毎朝来てる人がいて、わーすごいな、と思って」

 その後、筆者は、「苦情言っている人は見たことありますか?」と、聞いてみた。

 おじいさんは、こう言う。「このあいだね、(苦情を)言うてはるときに、お会いしたことあります。その方にちょっと話をしたら、最後、まあ、ちょっと顔をね、穏やかにはなってくれはったけどね。もちろん、私の手前、にこやかにしやはっただけかもしれませんけどね」

 その後、「いつも大丈夫かな、思いながら通ってます。じゃあ失礼します」、そう言って、おじいさんは再び歩きはじめた。

 その後、写真を何枚か撮った後、佐川夫妻と筆者は、来た道を引き返した。歩きながら、眞人さんは、こう語った。

 「今日来られるということで、なんで私、こうやってずっとエサをやり続けているのかなあ、というのを考えていたんですけども、私、今の世界の、大きな流れとして、バックボーンになっている考え方というのは、民主主義を追求するというのと、生命を大事にする、ということだと思っているんです。

 命を大事にする。それによって今、殺人がものすごく減ってきているわけですよ。昔は、中世の時代には、10万人あたり100人も1000人も殺されていたそうですね。それが今はどんどん下がって10万人あたり1人も殺されていないんですね。自殺の方のほうがずっと多いんですよね。

 『命を大事する』という考えた方がバックボーンにあると思うんです。交通事故も減ったし、色々なことで、それが一番大事なこととしてやっている。

 ただ、イスラミック・ステートとか、ときどきそういう犯罪の報道とか戦争とかあるから、すごい死んでいる人が多い、殺されている人が多い、と思うかもしれないけど、昔からみたらものすごく減っているそうなんです」

 (続く)

posted by ssk at 20:00| Comment(0) | 連載
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