約10分後について、眞人さんはこう語る。
「ここの入り口付近に、向こうからパトカーが2台も来ました。びっくりしましたね。2台も」
「何人くらい警官きたんですか?」
「6〜8人くらい。びっくりしました。警官に囲まれて。警官は、『エサをやらないでください』と言うんですよね。そのとき何も知らなかったし、警察がやるな、と言うんだったら、これはやっぱり違法なんかな、と思いましたよね。そのときは何も勉強なんかしていなかったので。違法なのかなと思って、『あ、そうですか、ではそうします、でも、ちょっと家内とも相談します』とは言い残したんですけどね。
この猫たちどうするかな、と思って。
その後、色々調べたり、植田弁護士に相談したりして、違法ではないので続けよう、と」
このように語った直後、通ってきたエサやりルートとは反対方向から、一人のおじいさんが歩いて来た。目がくりくりとして、性格のよさそうな方である。
「味方してくださっている方です」、でも残念なことに、ここの住民ではないんです、と久子さんはいう。
そして、今日はジャーナリストの方が取材に来てるんです、と久子さんは言った。それを聞いたおじいさんは、心なしか、目が少しうるんだように見えた。佐川夫妻が多くの住民からバッシングを受けながら猫のために活動しているのをみてきた者として、エサやり側の観点で取材にやってきた人間がいるのを知り、心から喜んでいるように筆者には見えた。
すると、おじいさんは、にわかにこう語り始めた。
「私の友達も、何人か猫好きがおって、そのうちの一人、こないだも話聞いたら、自分のとこで野良が5匹。で、もともと飼っていたのは2匹なんやって。5匹なったん(野良猫が)。まだなんぼでも来るんやって。せいやから、自分には月に一ぺんしか(不妊去勢手術は経済的に)できへんことやけども、捕まえて、一か月に一ぺん、そういう筋の御医者さんが来てくれはるんやって。そうすると安いんやて。去年12匹、去勢手術したって。そうしてる、いうことを、反対する住民みんなに話して、『嫌いな人はほな、何してくれてはるんですか?』言うて、話し合ったら、『何もしてへん』って。『私は一生懸命そうしてんねん』言うたら、そしたら理解してくれはって」
眞人さんは「ああ、そうですか。そこはいいところですよ。それを言っても理解しない(苦笑)」という。
(続く)