平成二十七年十月二日付、のauのニュースサイト
EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事
「マイナンバーで会社に「副業」が知られる事態に…」
を企画、取材、執筆しました。
けさの朝日新聞にイラスト付きで「マイナンバーQ&A 上 『番号通知』届いたら 今月中旬から来月末、各戸へ郵送」という記事がある。これは今月5日に施行されるマイナンバー法の解説記事。マイナンバーとは、税や社会保障の個人情報を番号で結びつけ、政府が所得を把握するため、住民票を持つすべての人に付けられる12桁の番号。
今後の流れは、「10月5日時点で住民登録している住所あてに、家族ごとにまとめて、マイナンバーを印刷した『通知カード』が郵送される。届くのは10月中旬から11月末の見込みだ。不在で受け取れなかった場合も、1週間は郵便局で保管され、自宅や勤務先に再配達してもらえる。その後は原則として市区町村の窓口で受け取る」「企業は源泉徴収票などに社員のマイナンバーを記入する必要があり、10月以降、勤務先には自分のマイナンバーを教えることになるため、通知カードはなくさないように注意する必要がある」という。
ちなみに、このマイナンバーによりOLの一部にも影響が出そうだと昨日付ジャパンタイムズ電子版に載っている。同紙によると、銀座などの酒場のホステスの中には、給料の安いOLが副業でやっているケースも多いという。その多くは、「第2の仕事」を周囲に知られたくない、と思ってやっている。
これまで税務署は、ホステスを雇っている事業者の名前は確認できたが、ホステスについては偽名を使っていることもあり、個人を特定するのは難しかった。そのため、ホステスのなかには、「第二の仕事」で稼いだ分を納税していない者もいる。つまり、脱税である。
しかし、マイナンバーの導入により、ホステスは確定申告することになる。すると税務署は、本当の収入が記載されているその文書を受け取った後、その情報を地方自治体に送るかもしれない。さらに、地方自治体は、源泉徴収や年末調整の手続きのため、そのOLの課税総額を詳述した文書を、昼間の雇い主に送るかもしれない。
そうすると、自分のところの低いサラリーにそぐわない高い税金が、そのOLに課せられていることを会社が知り、副業が発覚する可能性がある。そのため、ホステスをしていることが会社の上層部や職場の同僚にバレるかもしれない…という恐れから、「副業」を辞めるOLも出てくることが予想されるのだという。
ちなみにこの背景には、給与の低迷がある。この国のサラリーマンの年間平均年収は、1997年の467万円をピークに、2013年には414万円まで低下している。だから、さらなる収入源を探す労働者が発生する。それなのに、多くの会社は、従業員が副業するのを嫌っている。リクルートキャリアが昨年12月から今年2月に実施した調査によると、国内4513社のうち、従業員の副業を許しているのは、わずか3.8%という。
なお、同記事では触れていないが、、OLだけではなく、男性サラリーマンのなかにも、こっそりバイトしている人は当然いる。そういう人たちも、副業を辞めるハメになるかもしれない。
だが、そもそも、サラリーが低いことが副業をする原因なのだから、他で何をして働こうが、迷惑をかけない限り、会社に干渉する資格は本来ない。副業を認める社会風土が求められる。
それと同時に、会社に副業を合算した年収を知られるというのは、プライバシーの侵害である。プライバシーを守るためには、会社に任せるのではなく、サラリーマン、OLが自ら確定申告できるシステムと風土が必要だ。
マイナンバーにより副業が断たれ、年収が何割も減って生活が立ち行かなくなる…そういう人を出してはいけない。(佐々木奎一)