「福岡市の手法」とは一体何なのか?
「わんにゃんよかネット」という福岡市動物管理センターのHPがある。そこには「飼い主のいない猫との共生活動(地域猫活動)」とあり、こう書いてある。
「地域猫活動」とは「周辺住民の理解を得た上で、ボランティアグループなどが、屋外で生活する飼い主のいない猫に不妊・去勢手術を施し、トイレや餌やりの時間を決めて世話をするなど、一定のルールに従い、猫を一代限りで飼育することで問題解決を図っていく活動です」とある。
そして「具体的な活動内容」として、「不妊去勢手術」「トイレの管理」「ルールを守ったエサやり」を挙げている。
また、「福岡市飼い主のいない猫との共生支援事業」と呼ばれる市の支援内容として、「専門的な問題への助言・資料提供」(「飼い主のいない猫」との共生を進める上で、猫の習性や行動など専門的な問題に対して助言や資料を提供)、「講習会等へ講師派遣」(「飼い主のいない猫」との共生を進める上で、地域の合意形成等に必要な講習会等の開催にあたって、説明等を行う講師を派遣)、「『飼い主のいない猫』の不妊・去勢手術の実施」を挙げている。
この中で「周辺住民の理解を得た上で」、というのが、ひっかかるが、具体的に何をもって理解というのかは、書いていない。
そして、同HPの最後には、こう書いてある。
「支援に際しては、地域の指定が必要となりますので、詳しくは家庭動物啓発センターへご相談ください」(写真はわんにゃんよかネットHPより)
福岡市の他のHPも色々調べたが、やはり「地域の指定」とは何を指すのかは、書いていなかった。
住民に情報をオープンにしない、というのは、なんだか隠したいことがあるようで、怪しい。
そこで福岡市の保健福祉局 生活衛生部 生活衛生課に聞いてみた。
筆者は、電話に出た役人に対し、「福岡市がやっている地域猫制度というのは、『地域の指定が必要』とありますが、これは何か条件はあるのですか?」と聞いた。
すると、役人はこう答えた。
「地域指定の条件とは、その地域に、少なくとも三人の住民の活動主体がいることが条件です。基本は別の世帯の人です。地域とは、通常、町内会が単位です。
もう一つの条件は、地域住民の理解を得ることです。これには決まったやり方はありませんが、客観的にわかるものとして、通常、『町内会長の同意』、これが現実的です。
それともう一つが、対象猫がはっきりしていること、これが条件です」
さらに、役人はこう語った。
「地域の指定を受けないと、支援はしません。支援とは、不妊去勢手術を無償で実施することです。地元への職員の説明などの支援は、地域の指定を受けていなくても実施します」
「3人以上」「町内会の同意」という点は、京都市と酷似している。高いハードルをクリアすると、不妊去勢手術代がタダになるという、ゼロか100か両極端で、差別的である点も、全く一緒である。福岡市の役人が町内会に職員が説明するという点も、京都市の役人がまちねこ事業の説明をして、幾度となく断られているのを彷彿とさせる。
違う点は、京都市は「餌やりのための私有地の確保」という、さらなる要件をプラスしている点である。
町内会の合意がなければ地域猫とはみなさい、というのは、町内会の合意がなければ、野良猫は害獣なので共生はできない、といっているに等しい。そうすると必然的に、町内会の合意がなければ、地域猫活動の一環である猫へのエサやりもいけない、ということになる。
福岡市は、エサやり禁止条例を制定した京都市の「予備軍」である。実は特に西日本に「京都市予備軍」は多い。そういう街は、いつエサやり禁止条例ができても、何ら不思議ではない。そのことはまたの機会に記す。
要するに、京都市は、野良猫との共生という地域猫の精神を骨抜きにするため、福岡市の制度を援用した。
(続く)