それにしても「京都市まちねこ活動支援事業」(以下、「まちねこ事業」という)は、どのようにしてできたのだろうか?
まちねこ事業が実施されたのは平成22年4月1日から。筆者の調べでは、それまでに京都市は、会議を6回開いている。会議の名称は「飼い主のいない猫対策検討会議」。
その第一回目は、平成21年11月30日午後3時から4時30分にかけて、京都市家庭動物相談所(京都市南区内)で行われた。
出席者は、多田二郎(北保健所)、谷口哲彦(左京保健所)、河野誠(中京保健所)、松原三佳(山科保健所)、辻尚信(伏見保健所)、北村喜一(家庭動物相談所)、■■(社団法人京都市獣医師会)、永井善彦・仲俊典・田邊輝彦(生活衛生課)。
そこでは、次の意見交換がなされた。
■■「市獣医師会として参画するからには、決定前に意見を聞いておきたい。手術はよりスムーズに行っていけるように進めていってほしい。現場としては、ソトネコを野良ネコとして安くしてほしいと連れてくることがある。どこまでが野良猫であるかという判断の整理とともに地域の認可が必要である。野良ネコとしてやってくれと、どんどんやっていくとして窓口が対応しきれるのか。手術を行う場所での技術提供していくが、手術の手法には獣医師により幅があり、経費面と安全面の問題を考えていかなければならない。また、寺、公園や大学内の猫はどのように対応するか」
前出の通り■■とは、京都市獣医師会の黒塗りの人物であるが、のっけから、消極的で迷惑そうな言いぶりでる。特に注目なのは、「地域の認可が必要である」と言い切っている点である。これは後のまちねこ事業、エサやり禁止条例に直結する“縛り”である。
この■■の発言に対し、生活衛生課の辻氏は、こう言った。
「外で餌をやっているが自分の猫でないという方や家から離れたところまでいって猫のいるところで餌をやっている方がいる。飼い猫との境界があいまいで、識別が難しい。餌の始末や糞の始末の問題がある。餌やりをされている方に非常に期待感がある。しかしながら、受け入れる許容量、相談所の業務との兼ね合い、予算などを含めてどの程度なのか。東京のやり方は、モデル地域からハルスプラン(※筆者註:「人と動物との調和のとれた共生社会の実現」を意味するHuman and Animal Live Together in Harmonyの頭文字HALTHのPlanの意味で「東京都動物愛護管理推進計画」を指す)、制度の実施と段階を踏んで行われてきている。地域の取捨選択が生じた場合の問題。団体のノウハウを活用することは必要であろう。活動に際して、合意形成、捕獲、術後のケアなど住民にはどこまでを求めるのか」
このように辻氏は、手術費用が軽減されるため、エサやりには期待感がある、と言いつつ、予算や業務の増大などを理由に、「受け入れる許容量」は「どの程度なのか」と、迷惑そうな物言いで、さらに地域の「合意形成」の必要性など、■■同様、“縛り”を講じることを念頭にしゃべっている。
また、「地域の取捨選択」と言っても言っている。これは、避妊去勢手術の助成は、地域により「取捨選択」するという意味と見られる。つまり、自治体全域に助成を適用させるのではなく、ある地域では助成する一方、別の地域では自腹で手術させる、という“差別思想”がはなから見て取れる。
(続く)