2015年09月17日

京都市“猫エサやり禁止条例”ができるまで 苦情の内実 二十七・二十八

 「牧原プラン」は、野良猫への餌やりについて、随所にふれている。

 まず、「引取り数を減らす」というタイトルページには、「引取りの65%、殺処分の76%を占める猫の対応が重要」とあり、「不妊去勢手術の徹底」、「猫の室内飼育の徹底」「地域猫活動」とともに、猫に餌をやっているイラストに禁止マークをつけて「無責任な餌やりの防止対策」とある。


無責任な餌やり.jpg

 さらに「殺処分をなくすための各主体のアクション(取組み)」というお題のページの、「国民」の欄に「無責任な餌やりの防止」と明記している。


無責任な餌やり2.jpg

 それでいて、肝心の「無責任な餌やりの防止」の中身は、一切書いていない。

 なお、環境省が牧原プランの4年前に発した「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」にも、次の一文がある。

 「飼い主がいない動物に対する無責任なエサやりなどの行為により、みだりな繁殖、ふん尿による被害の増加など、動物の愛護及び管理上好ましくない事態を引き起こす場合があることについても十分に留意する必要があることから、本ガイドラインでは、飼い主のいない猫の扱い方についても基本的な事項を記載しました」


ガイドライン.JPG

 この2つの環境省の文書にある「無責任なエサやり」について、元東京都新宿区の保健所衛生課職員の高木優治氏に見解を聞いたところ、高木氏は、こう指摘した。

 「『無責任なエサやり』という表現は、すごい抽象的な概念。何をもって無責任というのか? この表現によって、役所の方は、『そう書いてあるんだから、無責任なエサやりはダメなんです』ということで、自動的にエサやり禁止を始めたんです。根拠はここ。

 どうしていいかわからない時に、『牧原プラン』と『住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン』に、『無責任なエサやり』という言葉が入ったことで、『これは迷惑行為ですよ』という位置づけが、得られた。

 行政にとっては、今まで言ってきたこと(エサをやらないで下さい、という言葉)に、根拠をもらえた」

 では、「無責任なエサやり」とは何なのか――。置きエサ、撒きエサのことだろうか?その点を聞くと、高木氏は、「それはわからない。『迷惑だ』と言う人がいた瞬間、それが無責任なエサやりになる可能性があるわけじゃないですか。『あいつは、あそこで1時間も猫に餌やっている!冗談じゃねえよ!!』という人もいる。『それが目障り』と言うなら、無責任になるかもしれない。『公有地でエサやっているから、無責任だろ!』『駐車場でエサやっているのは、所有者の意向聞いていないから、無責任だろ!』『ヒトンチの敷地でエサやるのは無責任だろ。ジブンチの敷地でやれ!』という話になってくる」

 では、どうすればいいのか?そう聞くと、高木氏はこう語った。

 「エサやり禁止は一切言うな。新宿は一切言わないできました。そういう苦情があったときに、エサをやっている人に、エサをやっちゃいけない、とは言わない。こうしてね、とは言いますけど。例えば、手術をすすめたり、食べた後の片づけはちゃんとやってね、猫は自分でウンコ片付けられないんだから、ウンコくらい片付けようね、一人でキツイんだったら友達みつけてね、と」

 また、こうも語った。

 「置きエサ、撒きエサはダメです。これは猫が食べるとは限らない。それに、猫をコントロールできなくなる。

 つまり、何度、避妊去勢手術したって、撒いたり置いたりしたら、猫がどんどん来ちゃうんで、おっつかなくなるんですよ。

 それと、置いたら、その猫が食べているかどうかわからない。自分は、この三毛にあげたい。三毛が来ないから置いていった。すると、こっちのクロが来て食べるかもしれない。でも、あげた人にとっては、このクロの存在はわからない。

 エサをあげている人が、その猫の数を把握できない。そういうエサのあげ方は、ダメです。自分がキチンと世話ができる猫の数は、ちゃんと把握した方がいい。把握しないと、手術もできない。増えたときに、ひたすらエサをあげ続けていると、収拾がつかなくなる。猫のコントロールをできない自分をコントロールできなくなる」

 また、こう語った。

 「置きエサ、撒きエサをすると、僕らと地域猫活動をちゃんとやっているボランティアの人たちが、クレームを食らうんですよ。このボランティアたちは、町の人たちが、わかっているから。そうすると、この人たちがどんなに一生懸命やっても、叩かれるわけなんです。潰されるんですよ、町の人に。だから、置きエサ、撒きエサやっている人は、猫が好きとか何とかじゃないと思う。がんばっている人を潰すだけの行為にしかならない。それは動物愛護の精神ではない。一生懸命やっているボランティアさんを真っ向からひっぱたいていくようなものだから、置きエサはダメ」

 そこで、筆者が、「環境省は無責任なエサやりとは何かを定義する必要があるのではないか」と問うと、高木氏は、こう語った。

 「定義というか、『無責任な餌やり』という言葉そのものを、なくした方がいい。『置きエサ、撒きエサは禁止』と。そっちの方がスッキリする」

 (続く)


 参考

 牧原プラン.pdf

 住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン - 環境省.pdf

posted by ssk at 21:02| Comment(0) | 連載
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