2018年01月27日

ルポ猫を飼う いきさつ 四

 こうして、フジちゃんと、カミさんの実家のオス猫を、居間のガラス窓越しで、引き合わせることとなった。


すると、実家の猫のほうは、ニャンニャンと親しげに鳴いて近付いた。


だが、意外にも、フジちゃんのほうは、プイっと横を向いて無視した。気に食わなかったのだろうか。


そして、「なんだ、ほかの猫がすでにいる家なのか。こんな家に興味なし」、という感じで、さっさと庭の外に出て行ってしまった。


実家のオス猫が、新手のフジちゃんを追い返そうとするならわかる。が、野良猫で日々ひもじい思いをしているフジちゃんが、こういう態度をとるとは、思わなかった。


人間なら、もっといやしく媚びへつらって、飼われようとすることだろう。


要するに、たとえ雨露をしのぎ毎日食事が出る生活が送れるとしても、自分以外の猫のいる家に住むくらいなら、飢えや寒さに苦しんでも、我が道を行く、というプライドが、ほとばしっている。


 司馬遼太郎氏の「街道をゆく」に、モンゴルには「悪く生きるより、よく死ね」という言葉がある、とあったが、猫の生きざまにも共通する。


この気位の高さ――。


人間も猫を見習うべきである。

 (続く)

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2018年01月03日

ルポ猫を飼う いきさつ 三


  そして、悲しみのなかで考えた。


 実は、カミさんの実家では、すでにオス猫を一匹飼っている。が、もう一匹は飼えない、という。


なんでも、以前、カミさんが飼っていたメス猫が、カミさんの国家試験の勉強のさ中、膝に乗ったり、部屋にいたりで、合格の結果が出る直前まで見守り、息を引き取った。


  カミさんは応援してくれたその猫のことを感謝し、今も、居間にその猫の写真を飾っている。

  そしてその猫は生前、カミさんの実家に一匹だけで住んでいたところ、ある日、オス猫もあらたに飼うことにした。すると、メス猫のほうの食が細り、ストレスでずいぶん苦しんだ。結局、その後、オス猫が、家でぬくぬくと生きることを潔しとせず、血気のままに家を飛び出し、再び一匹になったことで、ストレスは解消された。


そういう経験をしたため、猫を一匹飼って、あとから猫をあらたに飼うと、前からいた猫が、苦しんでしまう、だから、実家でフジちゃんは飼えないという。


 だが、それは猫によるのではないか、と筆者は思った。


まず、フジちゃんと顔合わせして、相性がよさそうか、たしかめてみる価値はあるのではないか。

(続く)

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