2017年04月15日

遺族年金「男女差別」合憲判決の“副作用”

 平成二十九年四月七月付、のauのニュースサイト


   EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「遺族年金「男女差別」合憲判決の“副作用”


 を企画、取材、執筆しました。



322日付の朝日新聞朝刊に「遺族年金の性差、合憲 地方公務員、夫受給に年齢制限 最高裁初判断」という記事がある。それによれば、「地方公務員災害補償法の規定で、遺族が妻の場合は遺族補償年金を年齢制限なく受け取れるのに、夫の受給資格については「55歳以上」とされていることが憲法違反かどうかが争われた訴訟の判決で、最高裁第三小法廷(山崎敏充裁判長)は21日、この規定を「合憲」とする初の判断を示した。(中略)

 男性は1998年、市立中学校教諭だった妻を労災で亡くし、遺族補償年金を請求したが、男性が当時51歳だったために不支給とされた。第三小法廷は、遺族補償年金制度について、憲法25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を実現するための社会保障の性格を持つとした上で、「男女の賃金格差や雇用形態の違いなどから妻の置かれた社会的状況を考えると、夫側にのみ年齢制限を設ける規定は合理的」とした。

2013年の大阪地裁判決は、規定は「性差別で違憲」と判断。だが、15年の大阪高裁判決は「配偶者の死亡時に生計を維持できない可能性は、妻の方が高い」として合憲だと判断していた」という。

 さらに「先進国で性差『日本くらい』」という小見出しでこうある。「「非常に残念。男女格差解消の流れに水を差す判決だ」。東京都内で会見した原告の男性は、無念さをにじませた。夫の受給する場合にだけ、55歳の年齢制限を設けた規定は、地方公務員の労災だけでなく、国家公務員災害補償法や民間の労働者向けの労災保険法、遺族厚生年金にもある。一方、受給要件などでの男女格差を解消する動きもある。低所得の母子家庭に支給されていた児童扶養手当は、2010年から父子家庭にも支給されるようになった。労災で顔などに傷痕が残った場合、女性の障害等級を男性より高く認定していた基準については、10年に京都地裁が「違憲」と判断して確定。112月に男女で統一された。

 東京大学社会科学研究所の大沢真理教授(社会政策)によると、遺族補償などで男女に差がある制度は、海外では1990年代に見直しが進み、「先進国で残っているのは日本くらい」という。「遺族の所得を受給要件にすることで社会保障の目的は達成できるはずで、年齢で男女別に条件を設ける必要は元々ない。最高裁判決からは、立法に問題提起する姿勢も見えない」」とあり、「男女で格差がある主な制度」として、ほかに次の事例を挙げている。

<寡婦(寡夫)控除> 死別や離婚で一人親になった時に受けられる所得控除で、父子家庭は所得500万円以下なら控除額27万円。母子家庭は500万円以下なら控除額35万円、500万円超なら27万円」

 なお、ほかにも例えば、国民年金には「寡婦年金」、厚生年金には「中高齢寡婦加算」といった、夫を亡くした妻に対してのみ支払われる給付金もある。

 これらは、専業主婦が1千万人以上いた時代の名残である。(1980年は専業主婦1,114万世帯、共働き614万世帯。2015年は専業主婦687万世帯、共働き1,114万世。政府統計)

 また、共働きが増える中で、「勤続年数10年以上」の女性労働者の割合も、198524.9%から、201232.2%に増加してきた(厚生省「賃金構造基本統計調査」)。管理職に占める女性の割合も1989年時点では、部長1.3%、課長2%、係長4.6%だったのが、2012年には同4.97.914.4%と、少しずつすこしずつ増えてきている(同)。無論、まだまだ世界最低レベルではあるが、これから徐々に女性の管理職も増えていくことだろう。

 その時代の変化に無頓着なことによる制度疲労により、本来、国民のセーフティーネットであるはずの社会保険の網の目からこぼれ落ちる人がでてくる。例えば前出の男性ような人たちだ。

 こういうことがまかり通ると、管理職などの高収入のポストは男こそふさわしい、働く場所は男が中心であり、女は男に席を譲るべき、という風潮になり、女性が能力を存分に発揮する場所を奪う結果になってしまいかねない。(佐々木奎一)




posted by ssk at 15:19| Comment(0) | 記事

肛門に入れず下剤も服用せず…大腸がん新検査

 平成二十九年四月三月付、のauのニュースサイト


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 「肛門に入れず下剤も服用せず…大腸がん新検査」


 を企画、取材、執筆しました。



  「大腸がん」は、がんの死亡数の部位別で、男女計で2位(女性で1位、男性で3位、2014年、国立がん研究センター)となる。

 この大腸がんの検査について、当コーナーは14519日付「肛門から入れずに飲むだけ…大腸がん内視鏡検査」でふれた。そこでは、「便潜血検査で陽性になって内視鏡による精密検査が必要になっても、実際に受けたと確認できたのは6割程度」という低い数字にとどまるワケは、多くの人が肛門に内視鏡を入れるのに抵抗を覚えるため、と見受けられる点を指摘。

 そうした中、「カプセル内視鏡」と呼ばれる長さ3.1cm、直径1.1cmのものを飲むことにより、1秒間に435枚の画像が撮影され、その画像が腹などに貼った電極を通して、肩からさげたレコーダーに記録。カプセルを飲む前後に下剤を服用することで、平均4時間ほどでカプセルが体の外に出てくる、このカプセルは使い捨てである。

 要するに、カプセル内視鏡により、肛門に内視鏡を入れずに検査をすることができる。この画期的な検査方法が、保険適用されることとなった、ということを紹介した。

 その後、この検査は普及した。

 ちなみに、カプセル内視鏡のデメリットとしては、「下剤の服用量が約34L(通常内視鏡では約2L)と多い」、「検査時間が長く、日中ほぼ1日かかる」、「費用が保険適用の3割負担で約3万円かかる」(順天堂医院消化器内科HP)などがある。

 そうした中、さらに負担の少ない大腸検査の方法が編み出されたという記事がある。

329日付読売新聞電子版によると、「島津製作所(京都市)が開発した高精度の質量分析計を使い、早期の大腸がんを9割以上の高い確率で発見できる検査方法を開発したと、神戸大や同社などの研究チームが発表した。

 年内にも京都市内の病院で一般の受診者に試験運用して、有効性を確かめる。

 研究チームによると、質量分析計は、同社独自の技術で物質を1000兆分の1グラムのレベルまで高い精度で計測できる。この分析計で血液検査を行い、大腸がんの指標となるアミノ酸など8種類の物質が含まれている量を分析する。分析は数滴の血液で可能という。

 早期の大腸がん患者300人に検査したところ、9割を超える精度で早期がんを確認できた」という。

 血液数滴で大腸がんの検査が可能になれば、大腸検査に対する人々の抵抗は絶無に等しくなることだろう。今後のゆくえに注目したい。(佐々木奎一)

posted by ssk at 15:03| Comment(0) | 記事

認知症ドライバーあぶり出し制度


 平成二十九年三月三十一月付、のauのニュースサイト


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 「認知症ドライバーあぶり出し制度」


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 ザ・ドリフターズの高木ブー(84)が、警視庁の交通事故防止イベントで、運転免許を返納したという。高齢者の事故が増加するなか、「家族の一言で返納を決めた」のだという。交通事故を起こすと本人だけではなく、無辜の市民を傷つけることになる。それだから、家族が運転をやめるよう勧める、という高木ブーのようなケースは、ありがちな構図である。

 ただし、車が生活に欠かせない、だとか、自分は認知症でないから大丈夫、とか、車に乗らないで何の人生か、と言うほど車が大好き、といった理由で、免許を返納しない人が大半である。(昨年、65歳以上の高齢者で運転免許証を自主返納した人数は全体の4%にとどまる。警視庁より)

 そうした中、今月12日より、70歳以上の運転免許更新手続きが改正された。これは、一言でいうと、認知症のドライバーをあぶり出し、強制的に免許を取り消し・停止する制度である。

 この改正をザックリ説明すると、75歳以上は、まず、約30分の「認知機能検査」を受けることになる。同検査は、「手がかり再生」(16種類の絵を記憶し、何が描かれていたかを回答)、「時計描画」(時計の文字盤を描き、指定された時刻を表す針を描く)など。

 このテストの点数により、「認知症のおそれのある人」と認定されると、後日、「臨時適性検査」と呼ばれる専門医の診断を受けるか、医師の診断書を提出しなければならない。医師が認知症と認定した場合、運転免許の取り消し、または停止となる。

 また、「臨時認知機能検査制度」なるものが新設されることとなった。

 これは、以下18の違反行為をした場合に適用される。

 信号無視(例:赤信号を無視)

 通行禁止違反(例:通行禁止の道路を通行)

 通行区分違反(例:歩道を通行、逆走)

 横断等禁止違反(例:転回禁止の道路で転回)

 進路変更禁止違反(例:黄の線で区画されている車道で、黄の線を越えて進路変更)

 しゃ断踏切立入り等(例:踏切の遮断機が閉じている間に踏切内に進入)

 交差点右左折方法違反(例:徐行せずに左折)

 指定通行区分違反(例:直進レーンを通行しているにもかかわらず、交差点で右折)

 環状交差点左折等方法違反(例:徐行せずに環状交差点で左折)

 優先道路通行車妨害等(例:交差道路が優先道路であるのにもかかわらず、優先道路を通行中の車両の進行を妨害)

 交差点優先車妨害(例:対向して交差点を直進する車両があるのにもかかわらず、それを妨害して交差点を右折)

 環状交差点通行車妨害等(例:環状交差点内を通行する他の車両の進行を妨害)

 横断歩道等における横断歩行者等妨害等(例:歩行者が横断歩道を通行しているにもかかわらず、一時停止することなく横断歩道を通行)

 横断歩道のない交差点における横断歩行者等妨害等(例:横断歩道のない交差点を歩行者が通行しているにもかかわらず、交差点に進入して、歩行者を妨害)

 徐行場所違反(例:徐行すべき場所で徐行しない)

 指定場所一時不停止等(例:一時停止をせずに交差点に進入)

 合図不履行(例:右折をするときに合図を出さない)

 安全運転義務違反(例:ハンドル操作を誤った場合、必要な注意をすることなく漫然と運転)

 これら「18基準行為」をおかして捕まると、自宅に通知書が届き、1か月以内に「臨時認知機能検査」なるものを受けなければならない。そして、この検査の結果、認知症のおそれがある場合と判定されると、前出の同じように医師の診断を受け、認知症と認定されれば、免許取り消し、または停止となる。(参考、警視庁HP

 なお、この制度の肝心要は、18基準行為をどこまで取り締まることができるである。例えば、神奈川県なんかに住んでいると、18基準行為など日常茶飯事である。例えば、交差点で対向車が直進しているのに、わずか12秒で衝突するタイミングで右折する車や、横断歩道で歩行者があるいているのに、一時停止せず、歩行者の前や後ろをタッチの差で通過する車などは、異様に多い。こうした輩を、どこまで取り締まれるのか、どこまで野放しにするのか。

 なお、上記18基準行為をおかすのは、いうまでもなく、高齢者に限らない。というより、高齢者以外の輩のほうが、圧倒的に多いのが現実である。それだから、認知症をあぶり出すだけではなく、この際、高齢者以外の、危険運転をする輩も厳しく取り締まるべきである。

 なお、将来は、自動運転技術の進化により、認知症の人でも、目的地を指定するだけで車が勝手に安全運転で人を運ぶ時代が来る、かもしれない。(佐々木奎一)

posted by ssk at 14:36| Comment(0) | 記事