平成二十九年三月二十四月付、のauのニュースサイト
EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事
「禁煙をはばむ第一の要因は「悪友」論」
を企画、取材、執筆しました。
今週の朝日新聞朝刊に「患者を生きる 依存症 タバコ」という連載記事が載っている。そこには、どこにでも転がっているような話のほんの一例として、沖縄の女性二人の事例が載っている。
記事によると、この二人は高校時代からの友人関係(共に46歳)。そのうち一人は2015年4月、同僚から話を聞いて禁煙外来に受診し、禁煙補助薬「チャンピックス」を処方され、服用初日から吸いたい気持ちがなくなった。
そのことを聞いたもう一方も受診する気になり、翌月、禁煙外来へ行った。が、「チャンピックスを飲むと胸がムカムカして気持ち悪くなった。介護福祉士として施設で働いていたが、仕事もおぼつかないくらい気持ち悪い。それでも、タバコを吸いたい欲求がすっかり失せ」た、という。
このようにチャンピックスには、副作用があることは、当コーナーで再三指摘している通り。なお、筆者の経験では、副作用のないニコチンガムにより余裕で禁煙できる。が、それではどうしてもタバコを止めれないという始末におえない人は、チャンピックスでもくらうより仕方がないのではないか。
話を元に戻す。こうして二人はタバコをやめたかにみえた。が、落とし穴があったのだそうだ。
翌月、後者は、「次男が所属する野球チームの母親の飲み会に参加した。普段は飲まないワインを炭酸で割ると、おいしくて、数杯飲んでしまった。ほろ酔い気分で店を出ると、友人の母親が、細いメンソールのタバコを箱から取り出した。『吸うけどほしい?』と聞かれた。『いいの?』。手が伸びた。5月に禁煙して以来、4カ月ぶりに吸うタバコ。おいしいと思った。2本もらってその場で吸い、別れ際に家で吸いたいからと、さらに1本もらって帰った。翌朝、仕事に出かける前に吸った。『朝1本だけなら大丈夫』。自分に言い聞かせた。朝だけのつもりが昼にも吸い、翌日、コンビニエンスストアで1箱買った」
もう一人の方も、「教会へ礼拝に出かけた日曜日、知人から1本もらって吸ってしまった。翌日、仕事中は我慢したが、終わると喫煙者の同僚のいる職場まで車を運転して出かけ、1本だけもらった。火をつけ、煙を肺いっぱい吸い込んだ。『箱だけは買うまい』。その気持ちは堅く、3週間ほどは同僚や知人から1本ずつもらう生活を続けていたが、結局、箱を買うようになった」という。
これはありがちな話だ。いったんタバコをストップして出戻るのは、大抵、周囲の喫煙者から、1本だけ、とか、今日だけ、とか言ってタバコをもらうためである。
これは筆者が呼吸器科の医師から直接聞いた話なのだが、こういう時に禁煙している人にタバコを手渡す者は、「悪友である」という。
悪友扱いするのは極論だという人もいるかもしれない。が、実際のところ、悪友とみなす気概、覚悟がなくては、タバコは大抵やめれない。
なお、前出の記事中では、「職場の飲み会で喫煙者から「吸う?」と聞かれて断ると、申し訳ない気持ちになった」とあるのだが、こういう感情は真っ先に捨てるべきである。
そもそも、タバコをやめている者の前で、タバコを手渡すなどというのは、本当の友達のすることではない。悪友そのものである。
たとえ己は吸っていようと、友達が禁煙しているなら、その友の前ではタバコは吸わない、タバコの煙のある環境は居させない、というのが、良友の姿といえよう。
では、良友がおらず、悪友しかいない場合は、どうすればよいか。悪友は遠ざけ、新たな出会いを重ねることをお勧めする。(佐々木奎一)