2017年03月13日

加速する高齢社会の労働風景の青写真


 平成二十九年二月二十七月付、のauのニュースサイト


   EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「加速する高齢社会の労働風景の青写真」


 を企画、取材、執筆しました。



20日付のジャパンタイムズ電子版(ブルームバーグ配信)に、公園で半袖シャツの老人の女性が、左右それぞれの手にダンベルを持ち、それを肩まで持ち上げながら、なにやら体操をしている写真のアップ付きで、「日本の『高齢者』を再定義すれば、労働力人口の減少問題は解消しそうだ」という見出しの記事を載せている。これは、日本老年学会・日本老年医学会の高齢者に関する定義検討ワーキングループの先月の提言に基づいた記事である。

 同グループ座長は、甲斐一郎(東京大学名誉教授、日本老年学会理事長)と大内尉義(国家公務員共済組合連会虎の門病院院長、両学会前理事長)。この提言は、後述のように国策に沿っているわけだが、座長の肩書からもそれが見て取れる。

 同提言には、こう書いてある。「わが国を含む多くの国で、高齢者は暦年齢65歳以上と定義されています。しかし、この定義には医学的・生物学的に明確な根拠はありません。わが国においては、近年、個人差はあるものの、この高齢者の定義が現状に合わない状況が生じています。高齢者・特に前期高齢者の人々は、まだまだ若く活動的な人が多く、高齢者扱いをすることに対する躊躇、されることに対する違和感は多くの人が感じるところです」

 このようなことからワーキンググループを立ち上げ、「検討した結果、現在の高齢者においては1020年前と比較して加齢に伴う身体的機能変化の出現が510年遅延しており、『若返り』現象がみられています。従来、高齢者とされてきた65歳以上の人でも、特に6574歳の前期高齢者においては、心身の健康が保たれており、活発な社会活動が可能な人が大多数を占めています(中略)これらを踏まえ(中略)65歳以上の人を以下のように区分することを提言したい」として、こうある。

 「6474歳 准高齢者 准高齢期(pre-old)

 「7589歳 高齢者 高齢期(old)」

 「90歳〜 超高齢者 超高齢期(oldest-old super-old)」

 同記事で、座長の大内氏は、こう述べている。この再定義により、「労働力人口を1,000万人以上押し上げます。よりよい栄養摂取、ヘルスケア、公衆衛生により、こんにちの高齢市民は、過去の世代よりも断然健康です。その人たちをリタイア扱いするのは社会的損失です。健康で精力的な65歳以上の人はたくさんいます(大内氏自身、アクティブな68歳)。そうした人たちは、報酬を得るにせよ、得ないにせよ、働くことで社会に貢献したい、と心から思っています」「人々がもっと長く働くことで、急騰する医療費を抑えることもできます」と、このようにあった。

 ちなみに、「平成28年版厚生労働白書−人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える」によると、日本の平均寿命は、2015年時点で男性80.79年、女性87.05年と世界トップクラスで、国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口(平成241月推計)によれば、今後もさらに延びることが予測されている。

 高齢化率(65歳以上人口割合)は、201526.7%から、将来(出生中位・死亡中位推計)においても、202029.1%、204036.1%、206039.9%と、2060年まで一貫して上昇していくことが見込まれている。

2015年の就業者数(就業率、小数点第1位は四捨五入以下同)は、6064534万人(62%)、6569399万人(42%)、70歳以上330万人(14%)と、70歳以上の大半は働いていない。

 だが、政府の調査によれば、「あなた自身について、何歳から高齢者になると思いますか」との問いに対し、6569歳では、50%が「70歳以上」、19%が「75歳以上」、4%が「80歳以上」と回答。つまり、7割以上は、6569歳になっても、自分はまだ高齢者ではないと思っている。

 そして、7074歳では、「75歳以上」31.2%、「80歳以上」9%と、4割がまだまだ自分は高齢者ではない、と考えている。

 また、60歳以上の男女を対象に、「何歳まで働きたいか」と質問したところ、「70歳まで」24%、「75歳ぐらいまで」10%、「76歳以上」3%、「働けるうちはいつでも」30%と、実に64%が65歳以降も働きたいと思っており、そのうち43%は70歳を過ぎても働く気満々で、そのうち3割は、一生働き続けたいという。

 要するに、この白書の言わんとしていることは、冒頭の、高齢者の再定義の趣旨と符合する。

 つまり、今後、企業の定年退職の年齢は70歳が標準となり、定年後75歳までが再雇用で、75歳以上の求人も多々ある、そんな世の中になっていく、という青写真を役人たちは描いている。

 なお、前出の元気な高齢者である大内氏は、年金支給年齢が上がることについては、そういうことは考えていないという趣旨のことを言い、かたくなに否定していた。

 実際、年金支給を70歳からとか75歳からにするなどと政府が言ったら、暴動が起きるかもしれない。

 ただし、現在年金受給者が働いている間は厚生年金の支給調整があるが、その調整幅を増やして、働いて収入を得ている間は年金がより入らない仕組みにしてくるかもしれない。役人たちは。(佐々木奎一)

posted by ssk at 22:44| Comment(0) | 連載