平成二十九年三月十七月付、のauのニュースサイト
EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事
「「共謀罪」成立をたくらむ安倍自公政権」
を企画、取材、執筆しました。
自公政権が「共謀罪」成立をたくらんでいる。
共謀罪とは、広範囲にわたる犯罪(277の罪)を計画段階で処罰する「共謀罪」法案(組織的犯罪処罰法改正案)を指す。
「共謀」とは、「二人以上の者が、共同でたくらむこと」(広辞苑第六版)。つまり、犯罪を実行する前の、たくらんだ段階で逮捕してしまおう、という法案である。これは例によって現行の刑事法、そして憲法を根底から覆す法案であり、いかにも自公政権らしい法案である。
大学などで刑法を学ぶと、最初に出てくるのが、「罪刑法定主義」という言葉である。罪刑法定主義とは、「どのような行為が処罰されるか及びその場合どのような刑罰が加えられるかは行為前の法律(成文法)によってだけ定められるとする立法上の立場。近代刑罰論における基本原則である」(法律用語辞典 第4版(有斐閣刊))
また、罪刑法定主義は、成文法として国会で成立すれば、どんな法律の中身でもよいというわけではない。その刑罰が国民の人権を侵害したり、合理的根拠のない場合は、刑罰権の濫用に当たるとされる。
こうして成文化した行為をした者が、犯罪に該当する要件となる。つまり、「行為がなければ犯罪はない」というのが、刑事法の鉄の掟である。
なぜ行為がなければ犯罪は成立しないのかというと、歴史をさかのぼれば、時の権力者に都合の悪い人々は、往々にして、政治犯などというくくりで逮捕監禁して葬ってきた。要するに、権力者が恣意的に国民に刑を科すことのできないよう、近代国家では、罪刑法定主義が鉄則となっているのである。(参考、放送大学ラジオ「刑事法第2回」)
無論、自公政権が成立させようとしている共謀罪は、その罪刑法定主義をブチ壊す暴挙である。そのため、法律家や学者などを中心に、反対の声が沸き起こっている。
例えば、16日付朝日新聞電子版によると、「法学や政治学などの専門家で作る『立憲デモクラシーの会』が15日、犯罪を計画段階で処罰する『共謀罪』の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案に反対する声明を発表した。
その会見で同会共同代表の長谷部恭男・早大教授(憲法)は、「立憲主義の観点から、刑事法の基本原理を動かすには十分な理由が必要だが、必要性も合理性も立証されていない」「権力行使が最も鋭く現れるのが刑事罰の行使。それを抑制する刑事法の基本原則が揺るがされる。刑事法の原則は憲法の個々の条文の前提であり、そうした根幹が壊されようとしているのは重大な問題だ」と警鐘している。
また、同会の五野井郁夫・高千穂大教授(国際政治学)は「人々が内面で物事を考えて、他人とつながって一緒に何かをする自由を脅かす。民主主義の営みを根幹から揺るがし危険だ。警察が人の内面に踏み込むということは、今まで戦後なかった事態だ」と指摘している。
なお、同会の反対声明にはこうある。
「政府は、広範囲にわたる犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」法案(組織的犯罪処罰法改正案)の今国会での成立を図っている。同法案は、対象とする数が当初案より絞られたとはいえ、277もの罪を対象とするもので、刑事罰の謙抑性の原則(人権を制約しかねない刑事罰は必要最小限にとどめるという原則)や、犯罪行為が既遂の場合に処罰するという原則など、刑事法の基本原則を揺るがしかねないとして、刑事法研究者からも広く、懸念や批判の声があがっている。
政府は、国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約(以下「国際的組織犯罪防止条約」という)を批准する上で同法案が不可欠であると説明している。しかし、この条約は、ConventionagainstTransnationalOrganizedCrimeという英語名からも分かる通り、国境を超えるorganizedcrimeの活動防止を目的とするものである。
organizedcrimeとは、マネーロンダリング、違法薬物・銃器の密輸・密売、売春目的での人身取引等の犯罪を、利得を目的として継続的に行う集団を指す(日本で言う「暴力団」、外国で言う「マフィア」)。organizedcrimeを『組織的犯罪』と訳すこと自体、妥当性に疑念があるが、277もの罪につき、共同で行う目的を持つ人の集まりを包括的に『組織的犯罪集団』とし、その活動を計画段階で処罰対象とする共謀罪法案と、国際的組織犯罪防止条約とでは、そもそもの趣旨・目的が異なる」
次から次へと壊憲法を成立させる安倍大作自公政権。早く政権交代して、専守防衛、罪刑法定主義といった先人が築き大切に守ってきた精神を体現した社会を、取り戻さなければならない。(佐々木奎一)