平成二十九年二月十三月付、のauのニュースサイト
EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事
「受動喫煙禁止法案に自民党部会で9割反対…」
を企画、取材、執筆しました。
2月8日付の朝日新聞朝刊に「飲食店、原則禁煙に例外 受動喫煙対策法案 30平方メートル以下のバー・スナックなど」という記事がある。それによると、厚労省が検討している受動喫煙禁止法案が自民党などの反対で当初のたたき台よりも後退しているという。
具体的には、「政府案では、飲食店は原則建物内禁煙で、煙が漏れず、飲食ができない「喫煙専用室」の設置は認める。ただし、延べ床面積約30平方メートル以下の小規模店で、主に酒を提供するキャバレーやバーなどは、店頭に注意を喚起する表示や換気などを前提に、喫煙を認める」という。これを「案1」と称している。
そして、「案2」なるものをつくるという。その中身は、30平米以下のキャバレー、バーは喫煙可にすることに加え、「居酒屋や焼き鳥屋、おでん屋など」も30平米以下の小規模店は喫煙オッケィにするというもの。
なお、こうした30平米以下の例外案について、日本禁煙学会の作田学理事長は「例外を認めると、なし崩し的に法律が意味のないものになってしまう。スペインでは面積によって当初は規制に差をつけたが、『不公平だ』として廃止された」と警鐘している。(9日付毎日新聞朝刊)
たしかに、小規模な店ならお咎めなし、というのは“脱法行為”であり、法を骨抜きにするものだ。
では、どうすればよいか。
例えば、「平昌での冬季五輪が1年後に迫る韓国は、法律で医療機関や学校などが屋内全面禁煙、飲食店や官公庁、駅は喫煙室の設置を認める屋内禁煙としている。飲食店は段階的に対策を進め、12年に店舗面積が150平方メートル以上の大型店のみの規制から始め、14年に100平方メートル以上、15年から店の広さに関係なく全飲食店を規制対象とした」(同)とある。このように、段階的に例外なく全面禁煙にできればスムーズだが、日本では、タバコが禁止になると店が潰れてしまう、というキャバレーなどの零細店が反発している。
だから、1月16日付当コーナーで提唱したように、延べ床面積約30平方メートル以下のキャバレー、バーなどの脱法行為の小規模店には、事業許可料として、雇っている労働者数、あるいは延べ床面積に応じて、けっこうな額を、数年おきに役所に納入するよう義務付ける。例えば、最低でも1千万円以上を3年おきに払う、といった具合にだ。喫煙者がそうした店に流れ込むはずなので、払えるはずである。そうすれば、不公平感をなくすことができる。
また、冒頭記事によれば、喫煙許可店は「店頭に注意を喚起する表示」をするというが、これも当コーナーで記したように、店の看板、玄関ドア、ホームページ、名刺、広告等に、必ず、喫煙可を示す不気味な「タバコを吸っているドクロ」などのマークをデカデカと掲げ、米印で「当店は、タバコにより健康に害を及ぼす有害店なので、タバコを吸わない方はご遠慮願います」というふうに、日本語、英語、中国語、フランス語、スペイン語などの主要言語で示すことを義務付けるべきである。
なお、冒頭の、厚労省「案2」(30平米以下の居酒屋や焼き鳥屋、おでん屋などでも喫煙可)は、なし崩し的に、酒が飲める店ではどこでもタバコを吸えるようにしてしまえ、という、受動喫煙禁止の趣旨からかけ離れた脱法案であり、こんなデタラメな案をつくること自体、厚労省の無責任体質を物語っている。
このように、受動喫煙の被害をなくしていくためには、冒頭の「案1」をブラシュアップしていく以外に考えられない。
が、驚いたことに、その案1や案2についてさえ、自民党の国会議員が猛烈に反対しているという。10日付の朝日新聞朝刊の記事「受動喫煙対策で自民紛糾 『喫煙の自由認めろ』『東京だけでやれ』」によれば、9日に開かれた自民党厚生労働部会には、約80人の議員が参加し、厚労省の案1、2について、議論した。そこでは、「『小規模店への配慮が足りず、廃業だ』『30平方メートルの基準はきつい』などの意見が相次いだ。規制反対の署名活動を念頭に、『次の選挙が危なくなる』という声もあり、全体のうち反対意見が9割を占めたという」。さらに、「『零細な店はつぶれる』『職業選択の自由を奪い、憲法違反だ』」という批判も出たという(10日付毎日新聞朝刊)
しかも9日付のジャパンタイムズ電子版によれば、この自民党部会では、喫煙者を取り締まり、根絶やしにしようとしており、憲法で保障した基本的人権の侵害だ!と息巻く議員もいたという。
受動喫煙により毎年1万5千人が殺されている状況だというのに、なお、喫煙の権利を声高に叫ぶこの人たちは、受動喫煙に苦しむ被害者のことを一体どう考えているのだろうか。内心、受動喫煙で死ぬ奴は勝手に死ね! そんなことで死ぬ奴のことなど知ったことではない! と思っているとしか考えられない。
さらに、この自民党の部会に呼応する形で、民進党内で10日、「愛煙家」を自称する赤松広隆前衆院副議長ら十数人が出席し、「分煙推進議員連盟」が発足。政府が検討中の受動喫煙対策を強化する法改正案への懸念を表明したという。(11日付朝日新聞朝刊)
加えて自民党の補完勢力である「公明党の井上義久幹事長は10日の記者会見で「分煙スペースがない飲食店に配慮が必要」と指摘。愛煙家の超党派議員で構成する「もくもく会」は近く、分煙の居酒屋で会合を開く」という。(11日付日本経済新聞朝刊「分煙で与野党共闘?」)
このように受動喫煙被害者にとって絶望的な景色が広がっているが、民進党議員の動向は、あくまで個人的な動きに見受けられる。野党各党は、政党として、受動喫煙をどうしていくのかを公約に掲げ、有権者に受動喫煙に対するスタンスを示すべきだ。(佐々木奎一)