2016年12月18日

天皇退位を巡る有識者会議の動向と天皇陛下の望み


 平成二十八年十二月十二月付、のauのニュースサイト


   EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「天皇退位を巡る有識者会議の動向と天皇陛下の望み」


 を企画、取材、執筆しました。




1日付の日本テレビに「陛下 友人に電話で“恒久的な退位制度を”」というニュースがある。

 それによれば、「天皇陛下が『退位』をめぐるお気持ちを公表する前の今年7月、友人に電話をかけ、『退位』の意向を強く訴えるとともに『将来を含めて可能な制度にしてほしい』と恒久的な退位の制度を希望されていたことが明らかになった。

 これは天皇陛下の同級生の明石元紹氏が明らかにしたもの。明石氏によると、713日に『退位』の意向が報道された8日後の21日の夜10時ごろ、天皇陛下から突然、電話があったという。

 天皇陛下は明石さんに対し、皇太子さまに『譲位したい』という意向を告げ、『天皇は務めを果たせる人間がやるべきで譲位は合理的な考え方だ』と話されたという。また『退位』については『将来を含めて可能な制度にしてほしい』と恒久的な制度を望まれたという。

 更に『摂政は絶対に嫌だ』と述べ、大正末期、昭和天皇が大正天皇の摂政を務めたことで周囲の人々がそれぞれの天皇の支持派に二分し、2人とも不快な思いをしたとされる歴史も説明された」という。

 そうした中、11日付の朝日新聞朝刊が、同有識者会議の論点を載せている。それによると会議のなかではこういう意見があったという。

 摂政について、皇室典範16条には「天皇が成年に達しない時」「天皇が精神もしくは身体の重患または重大な事故により国事に関する行為を自らすることができない時」と定められている。

 この摂政について、園部逸夫氏(元最高裁判事)は、高齢化時代では天皇と摂政が長期間併存する可能性がある、「天皇、摂政と国民との関係が混乱し、場合によっては天皇の象徴性や権威も低下する」、百地(ももち)章・国士舘大大学院客員教授)は「高齢でも天皇陛下のご意思がはっきりしている場合に摂政を置くのは、本来の趣旨と矛盾する」といった反対の声があった。

 他方、平川祐弘(すけひろ)・東大名誉教授、大原康男・国学院大名誉教授、櫻井よしこ・ジャーナリストの3氏は、皇室典範を改正し、摂政設置の要件に「高齢」を加えるよう提案。「退位せずとも高齢化問題への対処は摂政でできる」(平川氏)、「摂政を置くことで天皇一代の間に元号を変えないことにも適合する」(大原氏)などと摂政に賛成したという。

 そして、本題中の本題である「天皇が高齢となった場合の退位をどう考えるか」については、半数の8人が賛成、7人が反対、1人が慎重な姿勢を示した。(次の各氏の発言はNHKより抜粋)

 退位に賛成の発言は次の通り。

 「退位は皇室の安定性を確保するには避けるべきだが、国民の意思として認めるなら否定しない。退位を認める場合は、皇室典範を改正し、恒久制度化すべきだ」(古川隆久・日本大学教授)。

 「高齢社会を迎えた今日、天皇の終身在位制は公務の遂行とは両立しがたい状況に至っており、退位を認めるべきだ。特例法では憲法の趣旨に合致しないおそれがあり、恒久的な制度に改正すべきだ」(大石眞・京都大学大学院教授)

 「退位について、一代限りの特例法は憲法の規定や国民世論などから困難であり、『高齢譲位』に論点を絞れば、皇室典範の改正はさほど難しくない」(岩井克己・朝日新聞皇室担当特別嘱託)。

 これら3人は、退位を恒久的な制度にしようという明確な意思があり、評価できよう。

 それに対し、退位は一代限りとするなど、あくまで特例、あるい特例から、と位置付けているのは、以下の5名。

 「人間的・人道的観点でこの問題を考える必要がある。特例法で退位を認める場合でも、皇室典範の改正を前提とした法律にしなければならない」(保阪正康氏・ノンフィクション作家)。

 「天皇がご高齢となった場合は、退位を認めるべきで、法律の形式は当面適用される皇室典範の特例法とすることが適当だ」(石原信雄元官房副長官)。

 「高齢化社会の到来に対応すべく、例外的に譲位を認めるべきだ。皇室典範に根拠規定を置き、それに基づいて特別法を制定し、高齢により公務をみずから行えないときには、その意思に基づき、皇室会議の議をへて譲位を認めるべきだ」(百地章・国士舘大学大学院客員教授)。

 「まずは今上天皇の退位を特別法で行い、引き続き、皇室典範の改正による退位制度の導入を検討すべきだ」(園部逸夫・元最高裁判所判事)

 「憲法は象徴的行為が困難となった場合に退位を認めることを想定していないが、現天皇のみ対象とした特例法を定めることも憲法上は可能だ。憲法論で言えば、天皇の地位を退位すれば、象徴ではなくなるので二重性は生じない」(高橋和之・東京大学名誉教授)

 これら5名は、特例、一代限り、あるいは特例からスタート(いつまでたっても恒久化しない可能性あり)している点が、冒頭の天皇陛下の望みに、明確に反している。安倍自公政権もこの類である。

 一方、退位そのものに反対しているのは以下の面々。

 「天皇は続くことと祈ることに意味があり、世襲制の天皇に能力主義的な価値観を持ち込むと皇室制度の維持が困難になる。退位をしなくても高齢化への対処は可能で、ご高齢の場合も摂政を置けばいい」(平川祐弘・東京大学名誉教授)

 「公務の負担軽減は、各皇族で分担し、量的な軽減を図り、方式も改めるべきだ。退位の制度を設けるのではなく、皇室典範を改正して高齢の場合にも『摂政』を置けるようにすべきだ」(原康男・國學院大学名誉教授)。

 「天皇の仕事の第一は、昔から国民のために祈ることであり、国民の目に触れるような活動はありがたいが、本当は必要はなく、任務を怠ったことにもならない。摂政であれば、何も問題なくスムーズにいくので皇室典範どおりにやればいい」(渡部昇一・上智大学名誉教授)。

 「退位のために皇室典範の改正も特例法の制定もすべきではない」(笠原英彦・慶應義塾大学教授)。

 「天皇のお役割は、国家国民のために『祭し』をとり行ってくださることであり、天皇でなければ果たせない役割を明確にし、そのほかのことは、皇太子さまや秋篠宮さまに分担していただく仕組みを作るべきだ。ご譲位ではなく、摂政を置かれるべきだ」(櫻井よしこ・ジャーナリスト)。

 「ご高齢の現状に鑑みて、国事行為の臨時代行こそが最も適した対応だ。法的な措置を要することは、与野党が一致するまで見送るのが相当で、天皇より上皇の方が権威を持つ『権威の分裂』という事態がありうるので、退位にはよほど慎重でなければならない」(今谷明・帝京大学特任教授)。

 「退位を認めると皇室制度の存立を脅かす。退位を実現すれば、憲法上の瑕疵が生じ、皇位の正統性に憲法上の疑義を生じさせる」(八木秀次・麗澤大学教授)。

 このように議論されている状況だが、このまま安倍自公政権の望みどおりに、恒久的ではない、特例法にしてよいのだろうか?

 よいわけがない。(佐々木奎一)

posted by ssk at 15:47| Comment(0) | 記事