2016年12月14日

海と、天地の生き物を汚染するマイクロ・プラスチック 九

 次いで同年712日付の「マイクロプラスチックを減らすため一市民にできること」の元原稿は以下のとおり。


712日付の当コーナーで紹介した海を汚染する「マイクロプラスチック」。この問題を解決していくにはどうすればよいか――。引き続き東京農工大学の高田秀重教授(56歳)に取材した。

 「まず、一番はポイ捨てをやめることです」と高田氏は指摘する。ポイ捨てされたプラスチックゴミは、雨などによって水路に入り、やがて海に流れてしまう。

 また、ペットボトル対策は最重要といえる。ペットボトルのリサイクル率は87%と、色々なプラスチック製品のなかで一番リサイクル率は高い。これ以上は率が上がらないとも言われている。

 だが、実はペットボトルは海でみつかるプラスチックのゴミで一番多い。リサイクルされていない残りの13%の一部が海に出ていくのだ。

 「例えば、河川清掃するNGOが荒川で一年間に集めたペットボトルは3万本。日本全国、世界全体でみれば、何百万本という量になります」(高田氏)

 しかも、ペットボトルのリサイクルは経済的にペイされていないという。

 「ペットボトルをリサイクルしてできたものを売っても、その途中でかかる費用は賄えません。なので独立した事業としては成り立ちませんが、自治体がリサイクルを補助しているので、それでやっと事業として回っています。

 要するに、ペットボトルを使えば使うほど、僕らの税金が使われていくわけです。

 ペットボトルをリサイクルしているというのは、幻想に過ぎないわけです」(高田氏)

 では、ペットボトルを減らすには、どうすればよいか。

 「水筒を持ち歩くことが大切。例えば有料で給水できるものをコンビニなどに置けばよい。そういう流通、消費の仕組みをつくっていくべきだと思う。

 給水機も色々な場所にあります。それに水を入れておくのもよい。この間、環境省に行ったとき、環境省の建物のなかに給水機があったので水筒に水を入れて飲んでいたんですけど、環境省の職員の方は、逆にペットボトル買っていましたが(苦笑)」(高田氏)

 環境省の会議の席でもペットボトルが出てきたので、高田氏は役人たちをたしなめたともいう。

 スーパーやコンビニなどでレジ袋を使なわいことも大切。

 「ペットボトル、レジ袋は減らしていけます。この二つを減らすだけでもプラスチックゴミは今の半分ほど減ります」(高田氏)

 それにスクラブの洗顔剤や歯磨き粉に使われるマイクロビーズは、マイクロプラスチックの中のごく一部ではあるが、マイクロビーズの場合、水道管から下水処理場を素通りして確実に海に入って行くという特性があるので、「化粧品などにマイクロビーズを配合するのは止めた方がいい」と高田氏はいう。

 ただ、化粧メーカーはなかなか日本でマイクロビーズ入りの販売を止めないのが実情。だから消費者が買い控える必要がある。

 また、「3R」(Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル))という言葉がある。リデュースは「ごみそのものを減らす」、リユースは「何回も繰り返し使う」、リサイクルは「分別して再び資源として利用する」。

 「3Rの促進が大事です。それによって海に入って行くプラスチックの量を減らすことができます。ただ、3Rの促進といっても限界があります。そもそも使う量を減らさないと、大量に使って大量にリサイクルしても、大量な分、リサイクルされ残ったものも大量になり、海に出ていくことになります。まずは使う量を減らすのが大事です」(高田氏)

 また、「生分解性プラスチック」という、微生物により分解されるプラスチックもあるが、これについて高田氏はこう語る。

 「溶けて完全に水と二酸化炭素になるものであれば有効だと思います。ただ、今の使われ方は、生分解性のプラスチックと石油系のプラスチックを混ぜて素材をつくっています。例えば、コンビニのレジ袋にも生分解性のものはあります。この間、環境省の会議でコンビニの協会の方が出席し、生分解性のプラスチックの普及をしている担当の方がいらっしゃったのですが、やはり100%生分解性のものではなくて、石油系のものを混ぜているそうです。

 私は『逆に事態は悪くなる』という意見を申し上げました。中途半端に混ぜない方がいい。生分解性のプラスチックをつくるなら100%生分解性の製品にすればよい。

 そうしないと、生分解性のプラスチックだけ溶けて、石油系のプラスチックだけ残って、むしろ小さな破片は増えてしまい、通常のプラスチックよりも扱いにくくなります。

 破片になっていない段階の大きなゴミの形であれば、海岸での回収や浮いているものの回収は人手を出せばやれますが、細かく砕けて数ミリメートルになってしまうと回収できません。そういう意味では、今流通している生分解性のプラスチックは、マイクロプラスチックの生成が早まってよくありません」

 また、プラスチックのゴミを燃やす自治体も増えている。それについて、高田氏はこう語る。

 「プラスチックを使ってしまった以上、安全な処理の仕方、有害なものが出ない形で燃やしていくしかないと思います。プラスチックですから、最終的には燃やせば二酸化炭素と水にはなりますので。

 ただ、いくつか問題があって、一つは、塩と一緒の状態で燃やすとダイオキシンができやすくなります。もちろん、塩ビのように塩素を含むものを燃やせば、燃やす条件が悪ければダイオキシンが生成します。燃やす条件とは、温度が低い、酸素の供給が十分ではないなどです。

 それと、塩素を含まないプラスチックだけで燃やしたとしても、燃やす条件によっては、ダイオキシン以外の色々な発がん物質が生成します。

 そういうものが生成しないような今の技術を使った高度な焼却炉があり、色々な自治体で導入して燃やすようにしていますが、これは非常にコストがかかります。

 大体人口40万人の市のゴミを処理するための焼却炉をつくると、大体100億円かかります。焼却炉の寿命は30年ですから、これから少子高齢化して税収も減るなかで30年ごとに100億円、40万人で出し合えるかどうか、非常に疑問です。

 そもそも使う量を減らして、燃やす量を減らして長持ちさせていかなければいけない。あるいは、2箇所使っている焼却炉を一か所にするとかしていかないと、ずっと回っていきません。

 それと、今、高級な焼却炉をつくっても、事故や不具合で結構止まっているところが多いです。例えば、東京都調布市がそうですし、世田谷区も、この間、講演をやったときに聞いた話では、『世田谷区でも高級な焼却炉をつくったのですが、結構止まって動かないことが多くて困っています」という話を聞きました。

 それに、焼却炉をつくる用地がなくて、住民同士で対立している自治体もあります。例えば、小金井市には焼却炉がないので、小金井市のゴミは日野市に持って行こうとして対立が起こっています。

 燃やす選択肢は、最後の手段。やはり、なるべくゴミを減らしていく以外にありません。プラスチックの大量消費、大量焼却は、持続的な道ではありません」

 また、高田氏はこうも語った。

 「そもそもプラスチックは石油から作るもので、その石油は太古の昔に棲んでいた生物が死んで堆積して、数百万年から数千万年かけて石油になっています。プラスチックを燃やすというのは、石油を燃やしているのと同じです。

 日本では、プラスチックを燃やすことを『サーマルリサイクル』と呼んでいますが、諸外国ではそういう呼び方をしていません。リサイクルというのは、石油でできたプラスチックを燃やしてできた二酸化炭素が、またすぐに別なものに使われることをいいます。燃やすと、またすぐにプラスチックになればいいですが、実際はプラスチックになるまでには数百万年はかかるので、決してサイクルは成立しないわけです。どんどん二酸化炭素が大気中にたまって温暖化の原因になります。

 プラスチックを燃やすことはリサイクルではありません。廃棄物処理の会社のなかには、サーマルリサイクルと呼んで、どんどん進めようとしている会社もありますが、それは間違いなのです。

 また、プラスチックのゴミを埋め立てる方法もありますが、これは有害な化学物質が浸み出して高い濃度になります。シートを使えば防げますが、それをいつまでも続けられるのか疑問です。

 こうしたやり方は、数十年、数百年続くやり方では決してありません」

 また、高田氏は「知恵と技術を使えば、うまく回っていくと思います。少しずつそういう風潮はできてきていると思います。また、そうした環境に配慮した会社が評価されて売れていくようになっていくといよいと思います」とも語った。

 マイクロプラスチックは今後、20年で10倍になるという。そうすると、有害性が顕在化する事態になりかねない、と高田氏は警鐘する。そうなると人類はおろか地球の全ての生命に悪影響が及んでしまう。そうさせないために一人一人の消費者にできることは実に多い。(佐々木奎一)

posted by ssk at 19:15| Comment(0) | 連載