次いで同年8月23日付の「高度焼却炉の現場に見るプラゴミの行方」の元原稿は以下のとおり。
7月26日付の当コーナーで、マイクロプラスチックを減らすために一市民にできること、を紹介した。そのなかで、プラスチックを燃やしても有害物質が出ないとされる高度な焼却炉があるが問題も多い、という話をした。
高度な焼却炉とは、一旦どんなものなのか?それを知るため、横浜市の焼却場へ行ってきた。
そもそも横浜市の家庭ごみは、燃やすゴミ(台所のゴミ等)、プラスチック製容器包装(以下、プラゴミ)、燃えないゴミ(ガラス、蛍光灯など)、缶・瓶・ペットボトル、古紙、粗大ゴミなどに分別して出すことになっている。
これらのゴミは、市内に4つある焼却工場に持って行くことになっている。横浜市HPによると、各工場に事前に申し込めば見学できる、と書いてある。そこで、同市で最も最新鋭で年間1万人以上が見学にやってくるという「金沢工場」へ8月20日の午後に行ってきた。(写真は金沢工場)
ゴミ処理を担当する同市資源循環局の男性一人が、案内役となった。見学者は筆者一人だけだった。まず、100人ほど座れるスペースの会議室に案内され、そこでスクリーン画像を見ながら、30分ほど解説を聞いた。その後、約1時間、工場内を見学した。(写真は焼却炉に運ばれるゴミ)
この職員によると、横浜市の一般家庭から出る1年間のゴミの量は約90万トン。そのうち燃やすゴミは60万トン。家庭から出されたゴミは、市内に830台ある収集車で集めて各工場へ運ぶ。
そのうち金沢工場は、同市の金沢区、港南区、栄区、磯子区、戸塚区、泉区、瀬田区を中心としたゴミが運ばれてくる。
金沢工場は、2001年稼働。総工費は約626億円。ここには850〜950度で燃やすことのできる高度な焼却炉が3基あり、ここで1日400トンのゴミを燃やしている。
850度以上の高温で焼やすことによりダイオキシンの発生を抑え、また、消石灰により、大気汚染物質の、塩化水素や硫黄酸化物を中和除去し、活性炭により水銀やダイオキシン類を吸着除去しているという。
また、アンモニア水気化ガスを吹き込み、脱硝触媒することにより、大気汚染の窒素酸化物を分解除去する。こうして大気汚染はなくなる仕組みなのだという。
ただし、焼却炉を止めた時に400〜600度に下がることがある。そうなるとダイオキシンが発生するため、作業員は、原発作業と酷似した防毒マスクと作業服を着こむことになっている。(写真はその作業服)
こうして燃やしたゴミは、メタル、スラグ、溶融灰(カバーリング)に分類される。メタルとは、金などを含むレアメタルで価値があるため、「年間400トン近く売っている」という。スラグとは、アルファルトなどの材料として使われる。溶融灰は使い道がなく、埋め立てられる。(写真はメタル。焼却すると3層に分かれる)
また、焼却炉を動かすにより発電を行っており、年間15億円分、電力会社に売電したりしている。
なお、この職員に対し、「これまで故障などで焼却炉が動かなくなったことはありますか?」と聞いたところ、「故障はたまにあります。一度、水管が破裂して二週間止まったこともありました。だ、ポンプ類などは、故障しても交換できるよう、予備を置いて対応しています」という。
なお、職員によると、家庭の燃やすゴミで一番多いのは、生ゴミ36.5%で、プラスチックは5.1%という。この数字をみて、プラスチックはそんなに少ないだろうか、と疑問を持ったが、それには次の理由があったのだった。
横浜市内で収集したゴミは、工場内で、燃やすゴミと、資源ゴミに選別する。「資源ゴミ」とは、燃やすゴミ以外で分別したゴミ。つまり、プラゴミや瓶・缶・ペットボトルなどなど。
そして、横浜市では、資源ゴミは原則、工場で燃やしていない。工場でプラスチックを燃やしている分は、燃やすゴミを入れるためのビニール袋など、ごくわずかという。それが上記の5.1%分というわけ。
では、プラスチック類はどうしているのか? 「それを一番見たいんです」と筆者は言うと、その職員は、「選別センターは隣にありますが、それは改めて選別センターに電話して見学を申し込んでください」という。
そもそも、横浜市のHPには、選別センターの見学の案内はなかった。工場の解説でも、燃やすゴミが増えると温暖化になる、中でも最も多い生ゴミを減らすために、食品廃棄ロスを減らしましょう、と呼びかけていたが、プラスチックの話は絶無だった。どうもプラスチックに対する問題意識は低いようである。(写真は選別工場)
「資源ゴミのプラゴミは、どうしているのですか?」と聞くと、「民間のJFEスチールなどの製鉄会社に持って行き、そこでコークスの補助燃料に使っています。売っているのか、無料で渡しているのかは、わかりません」という。
その後、工場内に、プラゴミがどう処理されているのかを示すパネルがあった。そこには、「プラスチック製容器は、リサイクル業者によってガス化されます この合成ガスはアンモニアの製造に使われます→代表的な用途は工場の排ガス処理の薬品として また [キンカン]などの製品や繊維原料に生まれ変わります」と書いてある。製鉄会社に持って行っているという話は、パネルには一切書いていなかった。
なお、横浜市の資源局が作成している資料がネットにひっそりとアップされている。その中に、家庭のプラゴミは年間4万8千トン排出されている、との記載があった。これらは民間中間処理施設で異物除去・梱包した後、国指定のリサイクル邦人に引き渡す。それらは「プラスチック製品の原材料、ガス化、コークス炉化学原料化、高炉還元剤など」に利用されている、と書いてあった。このような細かい記載を読んでいる市民はほとんどいないはずであり、到底、市民には伝わらない。横浜市は、市民に分別させておきながら、その後どうなっているのか全く説明責任を果たしていない。
なお、ペットボトルの方は、リサイクル事業者の工場に運ばれ、細かく砕かれてペットボトルの原料になったり、衣料品や文房具、たまごパック等にリサイクルされているとのことだったが、ペットボトルは海を最も汚している物体であるが、それを減らす啓発もしておらず、リサイクル現場の見学すらしていない。
日本の三大都市である横浜市にして、プラスチックのゴミの行方が全く市民に知らされていないのが実情だ。(佐々木奎一)