2016年07月31日

京都市“猫エサやり禁止条例”ができるまで  エサやり禁止プロジェクトチーム 四十三

 これに対し、土井直也・保健衛生推進室生活衛生担当部長は、

 「まず、現在、計画している施設,1万平米の中で,ふれあい広場とかドッグランを設けたいと考えておるんですが,ちょっと狭いのではないかということで,現在の家庭動物相談所の利用も考えたらどうかということでございますが,今現在のところ,家庭動物相談所についてどうするかというようなことについては検討をまだ行っていないところなので,また今後,検討したいと考えております」

 と言ったあと、

 「それと,あと,名称ですね。京都動物共生推進支援センターということで御提案いただいたわけですが,その名称も,今後,愛称も含めて,また決めていかなくてはならないと思っております」

 と述べた。

 この役人のセリフが、いかにも、中村氏を、軽くあしらっている感じがする。その点が、筆者が中村氏を黒幕ではないと感じる理由である。

 もう一つ、そう思う点がある。

 門川大作市長の20131126日付のブログに、京都市会の海外視察のメンバーが、市長室で市長に提言書を渡している写真がある。そこには、机を挟み、市長と視察団が対面し、団長の中村氏が、提言書を渡している写真がある。筆者が注目するのは、マッチポンプ公明市議・吉田孝雄氏が、議員団の列には並ばず、市長の後ろに立っていることだ。(下がその写真、市長オフィシャルサイトより)

  

市長の側.JPG


 この写真の構図に象徴されるように、マッチポンプ吉田市議こそが、市長の側にいる人物で、中村氏は、マッチポンプとは違い、市長と一体的な黒幕ではないのではないか。

 そう内心思いつつも、念のため、筆者は、中村三之助氏に、こういう質問をした。

 (続く)

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猫エサやり禁止条例の京都市が、自称右翼の低劣な小チンピラとつるんで、エサやりを脅迫


 野良猫エサやり禁止条例の京都市が、自称右翼の低劣なコチンピラのゴミとつるんで、当サイトで連載中の「京都市“猫エサやり禁止条例”ができるまで」で紹介した、地域猫活動をする佐川夫妻に対し、脅迫を加えるという、度し難い犯罪を犯している。
 そのことを詳細に記した、ペット法塾代表で大阪の弁護士の植田勝博氏による、京都府警察本部、西京警察署への申し入れ全文は、下記からダウンロード可。
 
 
 
 
 

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2016年07月30日

「130万円の壁」の時代背景

 平成二十八年七月二十五日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「「130万円の壁」の時代背景」


 を企画、取材、執筆しました。



21日付の朝日新聞朝刊に「『130万円の壁』早期解消訴え」という記事がある。それによると、「日本商工会議所の三村明夫会頭は20日の会見で、パートの主婦らが社会保険料の負担を避けるために働く時間を抑える『130万円の壁』の早期解消に取り組んでいく考えを明らかにした。同日都内であった日商の夏季政策懇談会で、人口減少による人手不足を課題に挙げる中小企業が多く、三村会頭は『女性や若者の労働参加を増やすのは重要な課題』と語った」という。

 この「130万円の壁」とは、結婚した配偶者の年収が130万円未満なら、国民年金や健康保険の保険料の納付せずに、健康保険の被扶養者、国民年金の第3号被保険者になれることから、パートで働く主婦が、わざと年収を130万円以下になるよう低く抑える現象を言う。

 いうまでもない話だが、「130万円の壁」という制度は、夫は会社で定年まで正社員として働き、妻は家を守る、というライフスタイルを前提としている。たしかに、かつては大半の家庭がそうだった。

 だが、共働き世帯は高度経済成長期から増え続けている。政府の統計によると、1992年に初めて共働き世帯数が専業主婦世帯数を抜き、いまや共働き1,077世帯に対し、専業主婦世帯720世帯(2014年)と、共働きが主流になっている。

 そもそも共働きをするのは、お金が要るからであり、専業主婦(専業主夫を含む。以下同)でいられるのは、夫(専業主夫の場合は妻、以下同)の収入が多いからである。そういう、いわば恵まれた家庭の主婦が、年金や健康保険料を納めず、それでいて健康保険のサービスを受けることができ、老後には国民年金を払った人々と同額の年金が入る。

 一方、近年は、未婚化も加速している。2010年の生涯未婚率は、男性20.14%、女性10.61%(政府統計)。1950年の男女とも生涯未婚率約2%程度だった時代からは想像もつかない。しかも非正規雇用の割合も、1984年の15.3%から、2015年は37.5%と、激増している(政府統計)。

 こうした未婚者(そのなかには非正規も多い)や、非正規雇用などで共働きせざるを得ない世帯は、130万円の壁の恩恵を全く受けることができない、という、制度矛盾が浮き彫りになっている。

 なお、政府は今年10月から、従業員501人以上の企業のパートタイマーのうち、勤務時間が週20時間以上、1か月の賃金88万円(年収約106万円)など条件を満たすと、健康保険や厚生年金に強制加入にすることを決定している。これまでの週30時間以上、年収130万円以上の加入対象からの拡大であり、106万円の壁といわれる。

 こうした動向から、130万円、106万円といった壁について、経済ジャーナリストの荻原博子氏は「この壁は自然消滅していくと思います」と述べている。(20141215日付週刊アエラより)

 なお、少子高齢化は共働きが招いた、という論もあるが、20160530日付週刊アエラには、こう書いてある。「実は女性の働く割合が多いほど出生率も高い傾向がある。国内では、島根や山形、福井など子育て中の女性が仕事をしている割合が高い都道府県のほうが、出生率が高水準。逆に神奈川や兵庫、埼玉などは専業主婦率が高く、出生率は低い。

 海外に目を向けるとスウェーデンやデンマーク、アイスランド、ニュージーランドのように女性の就業率が高い国はどこも出生率が高い。これらの国は、女性の社会進出が始まった197080年代頃までは少子化が進んでいたが、902000年代に入り、出生率が回復した。立命館大学産業社会学部教授の筒井淳也さんは言う。

 「仕事と子育てを両立しやすい環境が整えば、女性の労働参加は出生率をプラスにする力があります。具体的には、男性の働き方を改善し、家事育児を夫婦で分担し、共働き世帯を社会で支えることがポイントです」

 要するに、女性の社会進出よりも男性の家庭進出が出生率回復の鍵を握っているのだ。

 だが、今の日本では(中略)6歳未満の子どもがいる世帯の男性が家事・育児にかける時間は一日平均1時間程度。これは出生率の高いスウェーデンや、男性の育児参加を進めて出生率が回復基調にあるドイツの3分の1程度しかない。

 男性の家庭進出が進まない元凶が長時間労働。しかもこれは、フルタイムで働きたい女性の社会進出を阻んでいる。

 『男性は仕事、女性は家庭』という価値観をもとにした働き方や、税・社会保障制度を改め、介護や育児は社会で支えて共働き世帯をバックアップしないと、少子高齢化の流れに歯止めはかけられない」

 つまり、130万円といった金銭面の話ではなく、どういう国にしていくか、というビジョンと、それに基づく「制度の再設計」が必要だ。(佐々木奎一)

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2016年07月26日

テレビ文化の巨星・大橋巨泉の最後の最後の「遺言」

 平成二十八年七月二十二日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「テレビ文化の巨星・大橋巨泉の最後の最後の「遺言」」


 を企画、取材、執筆しました。



21日の各紙は大橋巨泉氏が、12日午後929分、急性呼吸不全で千葉県内の病院で死去したことを報じている。享年82歳。

 巨泉氏の歩みは、次の通り。1934322日、東京・両国で生まれる。43年、千葉県に疎開。52年、早大入学。のちに中退。在学中からジャズ評論を始める。66年、「11PM」(日テレ系)の司会に。76年、「クイズダービー」(TBS系)放送開始。83年、「世界まるごとHOWマッチ」(TBS系)放送開始。90年、「セミリタイア」宣言。番組を降板し、1年の大半を海外で過ごす。2001年、参院議員当選、翌年辞職。05年、胃がんが見つかる。13年、中咽頭がんが見つかる。14年、縦隔腫瘍が見つかる。155月、肺がんの手術を受ける。(朝日新聞より)

 毎日新聞20日付夕刊では、巨泉氏のことを「テレビ文化を育てた巨星」と称し、こう記している。「シャバダバシャバダバ――。軽快な女声スキャットで始まるテレビ界初の深夜ワイドショー『11PM」(日本テレビ系)は衝撃的だった。それまでテレビではタブー視されていたマージャン、競馬といったギャンブル系の遊びや、釣り、ゴルフ、ボウリングなどのレジャーが次々登場した。カバーガールがにっこりほほ笑み、当時15歳の由美かおるが歌って踊る清潔なお色気路線も魅力の番組だった。

 『俗悪番組』とたたかれながらも(中略)903月まで25年続き、そのうち20年間、司会を務め番組の顔となったのが大橋巨泉さんだった。(中略)

 『お色気番組の元祖』と言われがちだが、巨泉さんの真骨頂は、落首や狂歌のように、軟派番組の中に政治や社会への批判を突きつける硬派企画を挟み込んだ反骨精神だ。

 従軍慰安婦や公害、返還前の沖縄の現実といった硬派ネタから、ストリップ、超能力、アングラ芝居などの軟派ネタまで取り上げた」

 また、21日付朝日新聞朝刊によれば、「『野球は巨人、司会は巨泉』のキャッチフレーズで売り出したテレビの世界では、『企画段階から関わり、絶対に数字を取る』という信念を持っていた。『倍率ドン』『さらに倍』のかけ声で盛り上げたTBS系の『クイズダービー』(197692年)は、最高視聴率が40%超」「『世界まるごとHOWマッチ』では、石坂浩二さんを本名からとった『兵ちゃん』、ビートたけしさんを『たけし』と呼び捨てにした。くだけたキャラクターと型破りな発言で、自己主張するタレント司会者の先駆けとなった」(同紙20日付夕刊)。

 そして、「クイズダービーの司会を降りた90年、『人生あと20年くらい。このまま視聴率競争の中でお金を稼いで死ぬのも情けない』と『セミリタイア宣言』。気候のいい時期に合わせてカナダや豪州、ニュージーランド、日本を巡り、海外で土産物店を経営しつつ、趣味のゴルフや釣りを楽しんだ。

2001年、週刊誌(※筆者注:週刊現代)の連載コラムで当時の『小泉フィーバー』に警鐘を鳴らし、民主党幹事長だった菅直人(中略)が参院選に比例区での立候補を打診した。しかし当選後は、テロ特措法に基づく自衛隊派遣承認案に賛成する党の方針に造反。有事法制論議に前向きに応じる党執行部を批判し、半年で辞職した」(同紙21日付朝刊)。

 その後、「毎年受けていた人間ドックがきっかけで、2005年に胃がんが判明した。中咽頭がんやその後の転移で手術や放射線治療を繰り返した」。(同紙20日付夕刊)

 そのテレビ界の巨星・巨泉氏は、昨年の安保法制成立間際、週刊朝日918日号で、こういう寄稿をしている。それは「巨泉の『こんなモノいらない!』『ハイアン!と叫び続けよう』『違憲』安保法制反対」というタイトル。本文には、こうある。

 「何故戦争がいけないか。戦争が始まると、すべての優先順位は無視され、戦争に勝つことが優先される。昔から『人ひとり殺せば犯罪だけど、戦争で何人も殺せば英雄になる』と言われてきた。

 特に日本国は危ない。民主主義、個人主義の発達した欧米では、戦争になっても生命の大事さは重視される。捕虜になって生きて帰ると英雄と言われる。日本では、捕虜になるくらいなら、自決しろと教わった。いったん戦争になったら、日本では一般の人は、人間として扱われなくなる。

 それなのに安倍政権は、この国を戦争のできる国にしようとしている。これまで主として反対してきたのは、われわれ戦争を体験してきた世代であったが、すでに80の坂を越え、日に日に少数になってゆく。井上ひさし、菅原文太、愛川欽也と毎年消えてゆく。この10年間で4回のがんを体験したボクも、いつ彼らの後を追ってもおかしくない。焦りは日々つのる。

 ボクらは『忠君愛国』『滅私奉公』と教わって育った。国のために命を捨てるのは当たり前と信じていた。だから特攻や人間魚雷は、崇高な行為だと思った。ところが戦後学んでみると、こうした行為を米国では、『日本人の狂気』と言って恐れていたという。

 ボクらの世代は、辛うじて終戦で助かったが、実は当時の政治家や軍部は、ボクら少年や、母や姉らの女性たちまで動員しようとしていた。1112歳のボクらは実際に竹槍の訓練をさせられた。校庭にわら人形を立て、その胸に向かって竹槍(単に竹の先を斜めに切ったもの)で刺すのである。なかなかうまく行かないが、たまにうまく刺さって『ドヤ顔』をしていると、教官に怒鳴られた。『バカモン、刺したらすぐ引き抜かないと、肉がしまって抜けなくなるぞ!

 どっちがバカモンだろう。上陸してくる米軍は、近代兵器で武装している。竹槍が届く前に、射殺されている。これは『狂気』どころか『バカ』であろう。それでもこの愚行を本気で考え、本土決戦に備えていた政治家や軍人がいたのである。彼らの根底にあったのは、『生命の軽視』であったはずである。

 竹槍こそ使わなかったが、本土決戦を本気で考えているうちに、東京大空襲から広島・長崎まで、何十万人という市民の命が、無意味に失われた。そして300万人の貴重な犠牲の上に、われわれは平和を手に入れ、戦争のできない憲法のもと、70年の繁栄を享受してきた。

 いかに戦争が悪で、平和や自由が尊いか。若い人もようやくわかってくれたようだ。830日の大集会はインパクトがあった。(中略)

 日本人は崖っぷちに立っているのだ。空気に流されやすい日本人は、戦争法制ができあがったら、後戻りできまい。何とか参議院で廃案にできないものか。それは『ハイアン!』と叫び続けることだ。継続こそが力なのである」

 その巨泉氏は、週刊現代79日付の連載「今週の遺言」最終回で、「これがボクの本当の遺言になる」として、「何時まで生きられるかわからない。休載のお詫びとこれまでのお礼、そしてボクの病状を記します」として書きつづる中で、「最後から二段目」という、最後の最後に言いたかった、まさに遺言に当たる箇所で、こう、つづっている。

 「今も恐ろしい事や情けない事、恥知らずな事が連日報道されている。書きたい事や言いたい事は山ほどあるのだが、許して下さい。しかしこのままでは死んでも死にきれないので、最後の遺言として一つだけは書いておきたい。安倍晋三の野望は恐ろしいものです。選挙民をナメている安倍晋三に一泡吹かせて下さい。7月の参院選挙、野党に投票して下さい。最後のお願いです」

 テレビ文化をつくった巨泉氏。その根っこには、自由と平和、民主主義に立脚した、日本国憲法がある。いわば、巨泉氏は、日本国憲法から生まれた花と果実である。国民はその花、果実を享受してきた。“安倍晋三の野望”とは、その日本国憲法の破壊である。

 マスメディアでは、巨泉氏をしのぶタレントやテレビ業界の言葉が並んでいるが、肝心要の、巨泉氏の最後の遺言は、九分九厘、スルーしている。これでは巨泉氏は、うかばれない。巨泉氏に対する、忘恩である。(佐々木奎一)



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2016年07月23日

かぶとむし

玄関の近くに、カブトムシのオスがいた。このへんでは、カブトムシが生息しているにちがいない。
都心ではあり得ない。
写真はそのカブトムシ。

かぶとむし1.JPG


かぶとむし2.JPG
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2016年07月21日

白票、無効票、低投票率にみる有権者登録制の是非

 平成二十八年七月十八日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「白票、無効票、低投票率にみる有権者登録制の是非」


 を企画、取材、執筆しました。



12日付の日本経済新聞の記事「10代の初選挙、悩んだ考えた、『改憲かも…棄権後悔』『白票入れた。投票は義務だから』」は、10代の投票行動を紹介していた。そのなかに、「東京大1年の男子学生(18)は『憲法改正には反対。といって野党の政策には賛同できない』と白票を投じた。報道を見て政策や候補者を調べたが、決めきれなかった。棄権も考えたが『投票は義務。最初に行かないとズルズル行かなくなると思った』」とある。

 また、11日付の毎日新聞夕刊によると、「参院選「徳島・高知」選挙区で県内から候補者が出なかった高知で、合区に対する有権者の反発から投票用紙に『合区反対』などと書かれたものがあり、無効投票率は前回選の17倍に上った」「無効投票のうち候補者名無しの白票も2倍弱」に増えたという。

 白票ほか「無効投票」には、ほかにどういうものがあるのだろうか。141224日付毎日新聞熊本版によると、同月の衆院選の熊本市の開票所で見られた無効票は、「有名な芸能人の名前を書いたものが多く、政務活動費の使い方に問題があって号泣会見をした元兵庫県議の名前もありました。その他に『700億円ムダ』と書かれたものも目につきました。700億円は今回の衆院選にかかる予算額」という。また、「125区で無効票を投じた有権者に取材したところ、大半は『期待できる候補者(あるいは政治家)がいないから』でした。『期待できない』というのを詳しく聞いてみると『選挙前の言葉と選挙後の行動が必ずしも一致しない』『庶民の代表という感じがしない』『安心感を感じない』ということでした」という。

 また同記事では、「無効票を投じた人は、投票したい候補者はいないけれども『棄権は良くない』と考える生真面目な人なのかもしれません」と分析している。

 が、いうまでもなく白票ほか無効票は、選挙の得票数には影響しない。つまり、その投じた一票は、政治には全く反映されないのが現実である。

 しかも、昨今は、こんな珍奇な現象も起きている。11日付の毎日新聞夕刊の記事「誤認便乗?『支持政党なし』今回得票64万超」によると、「10日に投開票された参院選比例代表で、政治団体『支持政党なし』の得票が64万票を超えた。(中略)佐野秀光代表(45)(中略)は東京都大田区にある情報通信関連会社の社長。学生時代は自民党学生部に入っていたという。2009年から率いる政治団体の名称を『新党本質』『安楽死党』と変え、13年から『支持政党なし』を使用。新党本質だった09年の衆院選比例代表北海道ブロックでは7399票だったが14年衆院選の同ブロックで10万票余を獲得。(中略)政策は『一切なし』。既存政党の政策にインターネット上で賛否を問い、結果に応じて国会で議決権を行使するという。(中略)

 西川伸一・明治大教授(政治学)は『紛らわしい名称で有権者の誤認に便乗しようという考えが明らか。政党の主張を支持して投票する人に非礼を働いている』と分析。(中略)松本正生・埼玉大教授(政治意識論)は「白票と似た意味の既存政党批判票を狙っているのだろうが、選挙そのものを冒とくしている」と非難。一方で「憲法は結社の自由を保障している。世間の良識でクリアしていくしかない」と語った」という。

 無効票を投じると、こういう怪しげな団体に投票することになり、その団体が将来、国政で亡国に舵を切る決定的な一議席を担うとにもなりかねない。白票や支持政党なし、といった無効な一票は、よくない。

 が、そうはいっても、投票所まで足を運んでいる点は、はなから選挙に行かない者よりは、多少はましかもしれない。

 このたびの参院選の投票率は、5470%で戦後4番目の低さ。参院選の投票率は1980年に7454%を記録して以降、低下傾向が続き、95年に最低の4452%を記録しているという。(11日付朝日新聞朝刊より。同紙集計)十代の有権者が加わったことを加味しても、投票率は少な過ぎる。

 ちなみに、この慢性的な低投票率を背景して、日本では、選挙のたびに、「みなさん選挙に行きましょう」といった類の呼びかけが巷で氾濫する。まるで、政治に無関心な人々に対し、お願いですから選挙に行って下さい、と、頭を下げて懇願するかのようなトーンである。

 これは、本末転倒である。

 周知のとおり、選挙権というのは、戦前は、女性にはなかった。男性も1925年までは、高額納税者にしか、なかった。つまり、選挙権を持つ、ということは、当たり前ではない。本来、国民が既存の権力から勝ち取る権利である。

 それを、選挙に行きましょう、とお願いされて、仕方ないなぁ、と渋々行くような履き違えた風潮を、変える必要があるのではないか?

 例えば、アメリカの大統領選挙の「選挙権」は、「18歳以上の者で有権者登録を行った者に与えられる。多くの国では、選挙管理機関が職権で、住民登録などを利用して選挙権年齢に達した者を有権者として登録しているが、住民登録制度のない米国では本人が自ら有権者登録を行わなければ、いかなる選挙の選挙権も得ることができない。さらに独特なのは、登録の際に自らの支持政党(又は「政党非加入」)を申告する点である。有権者は申告した政党の党員として登録され、後に述べる予備選挙や党員集会への参加資格が与えられる」とある。(「アメリカ大統領選挙の手続」国立国会図書館ISSUE BRIEF NUMBER 456(Oct.25.2004)より)

 もしも日本も「有権者登録制」「支持政党申告制」にすれば、投票率は、登録者を母数とすれば格段に上がる。

 登録制導入で期待できる点もありそうだ。そもそも政治家というのは、元来、有権者に支持されるようと努めるのが常である。いまは、政治に無関心な、「無党派層」という、選挙に行くかどうかもわからない漠とした有権者の歓心を買うために、政党、議員が、心を砕いている。選挙のたびに現れるタレント議員は、その象徴といえよう。これはポピュリズムである。

 日本大百科全書(小学館刊)によると、「ポピュリズム」とは、「大衆の支持を基盤とする政治運動。一般庶民の素人覚を頼りに、政権や特権階級、エリート層、官僚、大地主、大企業などの腐敗や特権を正す政治エネルギーとなることもあるが、一方で人気取りに終始し、大衆の不満や不安をあおる衆愚政治に陥ることもある」「ポピュリズムの特徴は、(1)理性的な議論よりも情念や感情を重視する、(2)政治不信や既存の社会制度への批判を背景に広がることが多い、(3)集団的熱狂、仮想敵への攻撃、民主主義の否定などに向かいやすい、(4)有権者の関心に応じて主張が変わり一貫性がない、(5)多くの場合一過性の運動である、などである」。

 有権者登録制にすれば、少なくとも、政治家は、政治に関心のある人々を相手にすることになる。自然に、政治家の言動は、いまとは違ってくるはすだ。少なくとも政治に無関心な人々の目線に合わせた政治ではなくなり、今よりは、政治の質が上がる効果があるのではないか。(佐々木奎一)

posted by ssk at 21:08| Comment(0) | 記事

野党共闘の課題


 参院選の野党共闘では、課題があった。その象徴が、神奈川県。
 ここの得票数は、以下のとおり。
当 三原じゅん子 〈2〉自現    1,004,877
当 三浦信祐   〈1〉公新〈自〉   629,582
当 真山勇一   〈2〉民前〈生〉   582,127
当 中西健治   〈2〉自現      524,070
▽ 浅賀由香      共新〈生〉   487,729
▽ 金子洋一   (2)民現〈生〉   448,954
▽ 丹羽大       お維新     218,853
  森英夫       社新〈生〉    76,424
  清水太一      こ新       50,256
  佐藤政則      無新       32,113
  片野英司      諸新       25,714
  壹岐愛子      諸新       21,611
 カッコ内数字は当選回数。敬称略。
 政党の1字略称は公認。〈 〉内政党は推薦・支持・共同公認。
 選挙区欄で都道府県名の右にあるカッコ内は、改選数。落選者名の左の▽は、法定得票に達した人。(朝日新聞より)

 このなかの、共産公認の浅賀由香氏と、民進党公認の金子洋一氏は、票を分け合い、自民党の中西健治氏が漁夫の利を得たのは、無念としかいいようがない。

 それと北海道。こちらはかろうじて鉢呂氏が当選したからよかったものの、神奈川と似たような状況だった。
 ◆北海道(3)
当 長谷川岳 〈2〉自現〈公〉 648,269
当 徳永エリ 〈2〉民現    559,996
当 鉢呂吉雄 〈1〉民新    491,129
▽ 柿木克弘    自新〈公〉 482,688
▽ 森英士     共新    239,564
  佐藤和夫    こ新     34,092
  中村治     諸新     29,072
  飯田佳宏    無新     26,686
  森山佳則    諸新     21,006
  水越寛陽    無新     12,944

 千葉県も、示唆深かった。
  ◆千葉(3)
当 猪口邦子  〈2〉自現〈公〉 760,093
当 元栄太一郎 〈1〉自新〈公〉 577,392
当 小西洋之  〈2〉民現    472,219
▽ 浅野史子     共新    351,561
▽ 水野賢一  (1)民現    314,670
  高橋正夫     無新     57,329
  香取成知     こ新     50,098
  古川裕三     諸新     23,777 

 選挙マシーンたることが教義というカルト教団・池田大作教は、信者たちの住んでるエリアごとに、どの候補に入れるか票の分割調整をして、複数当選を目論むのが常。そういう狂信者たちを相手にしているのだから、野党も、あるていど組織化をはかる必要がある。
  つまり、千葉のケースでは、2、3位を小西氏と、もう一名の野党で固めるため、野党の候補者を2名に絞った上で、票を効率的に入れるよう呼びかけていれば、全国屈指の激戦区となり、全体の票数も伸びて2議席取れたかもしれない。

 それと、今回の参院選では、予想に反し、野党共闘の立役者・共産党が伸びなかった。共産党は、候補者をおろし、全体観に立ち、いわば無私の行動を取った。その結果、民進党が一人区で接戦をいくつか制することができた。それなのに、自分のところは予想より票が伸びなかった。かわいそうである。
 民進党は、衆院選や次の参院選で、共産党に花を持たすのが筋であるし、そういう度量がなければ政権はとれまい。自民党の、よくいえば懐の深さ、わるくいえば老獪さを、見習った方がよい。

 それと、野党共闘の軍師・小林節氏は、今回、残念な結果だった。が、もうノーサイドで、民進党は、わだかまりを解消していくべきである。
 小林氏は、これまで国会議員になることを否定してきたが、今回、立候補した。
 これを奇貨とし、民進党は、小林節氏を幹事長といった相応の立場で迎え入れればいいのに、と思う。
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2016年07月19日

人事の焦点、安倍政権で異彩を放つ谷垣禎一幹事長

 平成二十八年七月十五日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「人事の焦点、安倍政権で異彩を放つ谷垣禎一幹事長」


 を企画、取材、執筆しました。



 参院選で改憲勢力による3分の2議席を達した安倍自公政権。その安倍首相は早速、「強力な布陣をつくっていきたい」と11日の会見で表明した。このとき安倍首相は、憲法改正に言及し、「(国会の)憲法審査会で議論が収斂(しゅうれん)していくことが期待される」と意気込み、野党4党が安倍自公政権のもとでの憲法改正に反対していることに対しては、「建設的な対応とは言えないのではないか。どの条文をどう変えるべきか真剣に議論していくべきだ」と批判。そして悪名高い「自民党憲法改正草案」については、「改正草案を実現していくのは、党総裁としての責務」と言ったという。なお、党役員人事と内閣改造は83日に行う予定(12日付朝日新聞朝刊より)。

 この人事は「12年の第2次政権発足以来、続投している麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、岸田文雄外相の3閣僚に加え、谷垣禎一幹事長を続投させるかなどが焦点」(11日付日本経済新聞朝刊)という。

 また、会見では安倍首相は、菅官房長官や谷垣幹事長を留任させるかを問われ、「それぞれ極めて有能だが、この段階では白紙だ」と語っている。(712日付毎日新聞朝刊)

 こうして名前の挙がる面々のなかでもポイントは、谷垣禎一幹事長である。

 例えば、政治ジャーナリストの田原総一朗氏は14日付の日経BPネットの記事「参院選与党圧勝で始まる『憲法改正』論議のプロセスに注視せよ」で、「83日に行われる内閣改造では、憲法改正をスムーズにやるための人事になるのではないかと見られる。自民党内ではハト派に属する谷垣禎一幹事長の交代もあり得るだろう。自民党の憲法改正草案は谷垣総裁時代の2012年に作成したものだが、谷垣氏自体は全面的にはこの草案に賛成というわけではないからだ」と指摘している。

 実際、谷垣氏は、改憲勢力の圧勝が伝えられるテレビの参院選挙速報の番組のなかで、自民党壊憲草案について「別にあれにこだわっているわけではありません」、「草案に固執しているわけではありません」と言い切り、「国会のなかの憲法審査会できちっと議論すべきである。とくに野党第一党との合意をつくるべき」と、安倍自公政権の暴走に歯止めをかける発言を繰り返していた。

 また、谷垣氏は330日付のプレジデント電子版のインタビューでも、「谷垣総裁時代の20124月、自民党は「日本国憲法改正草案」と題する全面改正の改憲案を策定しています。改憲では安倍政権もこの案の実現を目指すのですか」との問いに対し、「あの案は、自民党が野党になって少し時間のあるとき、憲法をどうするか、議論もしておく必要があるということで、あのときに考えたことです。憲法改正を言うのであれば、どういう改正をするのか、ある程度、絵を持っている必要があります。何も材料がないというわけにもいかないから、一応、ああいうことをやったわけです。もともと、そうは言っても簡単にはいかないだろうと思っていました。全部、あの案で行くというものでもないし、もう少しブラッシュアップが必要なところもある。改憲が現実的な課題となったときに何をやるかは、野党第一党も巻き込んで、きちんとしなければ、というところから始めるべきで、もう少し確実なステップを踏まなければいけない」と発言をしている。

 「自民党改正草案を実現していくのが責務」と息巻く安倍首相の一味のなかで、谷垣氏の穏健さは際立っている。それゆえに、改憲を実行に移す段階に入ると、谷垣氏は、安倍氏にうとまれ用済みとなって捨てられるのではないか。つまり、谷垣氏が幹事長を外されれば、安倍自公は改憲手続き入るサインとみてよさそうだ。

 逆にいうと、8月の人事で谷垣氏が幹事長に留まれば、安倍氏は、改憲手続きの前に、衆院選を行う線が浮上する。

 なぜなら、改憲を強行した場合、支持率が急落することが予想されるので、国民にアメダマをたっぷり与えて支持率を戻す時間がいる。衆院任期まで残り約2年半であることを考えると、これから改憲して緊急事態条項を発令でもしない限り、今回の参院選で勝っただけでは不十分なのである。来る衆院選で大勝し、じっくり腰を据えて改憲を実行したい、というのが安倍氏の本音のはずである。

 これに関連し、例えば、11日付の日本経済新聞朝刊には、「首相は今回にあわせて衆院を解散する衆参同日選を見送った。ただ17年には連立を組む公明党が国政並みに重視する東京都議会選挙がある。18年になれば9月に党総裁任期、12月には衆院の任期満了を控え、有利なタイミングで解散できる余地が狭まる。政権幹部の一人は『年末から年明けに解散すべきだ』と語る」とある。

 このように近い将来解散することを視野に入れているとすれば、安倍氏が谷垣氏をおろすのは、衆院選のあとになることだろう。谷垣氏が幹事長として発言すれば、改憲の争点隠しになるので、衆院選で改憲勢力が勝ちやすくなるからである。

 ちなみに、14日付の朝日新聞によると、「福田康夫元首相は13日、東京都内で講演し、衆参両院で憲法改正に前向きな勢力が国会発議に必要な3分の2以上の議席を得たことについて『できるだけ多くの国民が憲法の内容について理解を進めていく時期ではないか。それ(3分の2)をもって(改憲の)結論を出そうなんていうことは考えないほうがいいと思う』と述べ、慎重に議論を進めるべきだとの考えを示した」という。

 福田氏は11年暮れに政界引退しているが、谷垣氏といい、福田氏といい、一昔前の自民党の中には、こういう穏健な政治理念を持ち、堂々と自身の考えを発言する議員も多かった。官邸の顔色ばかりうかがう、いまのカマボコのような同じ色、形ばかりのイエスマンばかりではなかった。

 自民党の派閥はあしきもの、として忌み嫌われ衰退したが、昔は、派閥のなかで薫陶を受け議員は育った。

 谷垣氏も、2000年の「加藤の乱」では、森喜朗内閣への不信任決議案に際し、加藤紘一氏が派閥の総会で「私と山崎拓さんはこれから2人で本会議場で不信任案に対する賛成投票をして参りたいと思っております』と討死を宣言。「一緒に行きます」という部下たちに対し、加藤氏は、「いや残ってください」と守ろうとした。すると、部下たちは加藤氏を取り囲んだ。そのなかに谷垣氏もいた。谷垣氏は加藤氏の肩をつかみ、「加藤先生は大将なんだから。一人で突撃なんてダメですよ!!」と涙ながらに引き留めていた。それほど派閥に生きてきた政治家だった。

 要するに、派閥が機能していた頃の方が、政治家に活気があった。よくいわれるように、派閥が衰退した主因は、小選挙区制である。そうであるならば、派閥のよいところと、小選挙区の利点を取り入れた、今の小選挙区制と、かつての中選挙区制を調和させた、新たな選挙制度に改める必要があるのではないか。

 安倍自公政権のなかで異彩を放つ谷垣氏は、そういうことまで考えさせる存在である。

(佐々木奎一)




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2016年07月14日

参院選、改憲勢力3分の2超える

 平成二十八年七月十一日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「参院選、改憲勢力3分の2超える」


 を企画、取材、執筆しました。



10日投開票の参院選は、今日の早朝6時前に最終結果が判明した。焦点の改憲勢力が3分の2に達したのかどうかについては、メディアの選挙速報は、錯綜を極めた。

 従来、改憲勢力で78議席を取れば参院で3分の2に達する、というのが定説だった。その改憲勢力のなかには、与党である自公のみならず、野党に分類される、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党がいる。

 しかし、選挙速報では、大半の新聞電子版、民放で示していた議席獲得の図表では、与党と野党で立て分けた議席数をのせているところや、各党の議席数をのせているところがほとんど。改憲勢力と非改憲勢力で色分けしていないため、刻々と選挙結果が判明するなかで、改憲勢力が78議席に達するのかどうか、あと何議席で達するのか、といった点が、図表からは見えてこなかった。

 そのなかで朝日新聞は、改憲勢力(改憲4党)が3分の2に達するかどうかを、数値とグラフで示しており、比較的、見やすかった(後述のように誤報に等しいのだが…)。

 その朝日新聞電子版によると、11日深夜3時頃の段階で、残っている議席は1つ。そして、改憲勢力が3分の2に達するまでには、あと1議席、とあった。そして、551分の速報によると、最後の比例一議席は、意外にも、生活の党と山本太郎となかまたちが獲得。これにより、改憲4党の獲得議席数は77議席となり、焦点の78議席にはギリギリ達しなかった。

 では、これで改憲が防げる情勢になったかというと、実はそうではない。そのことは、10日付の日本経済新聞朝刊に、にわかに載った記事にくわしい。それは「無所属ら4人改憲前向き、『3分の2』攻防、実質は74議席に」という記事。それによると、「改憲発議には衆参両院でそれぞれ3分の2以上の議席が必要(中略)定数242の参院では162議席が越えるべきハードルとなる。日本経済新聞の取材では非改選のうち、アントニオ猪木、井上義行、松沢成文、渡辺美知太郎の4氏が改憲に前向きな立場だ。4氏が加わると、今回の選挙で改憲勢力がとらなければならない議席数は74議席になる」とある。

 この無所属4人を含めた改憲勢力で74議席をとれば3分の2に達する、ということについては、実は毎日新聞がいち早く報じていた。6日付朝刊同紙によると、同紙が参院候補者のみならず、非改選議員にもアンケート調査を実施したところ、くだんの無所属の4人が、憲法改正に「賛成」と回答したことを突き止めていたのだ。そのため、唯一、毎日新聞電子版のみ、選挙速報のグラフは、改憲4党プラス無所属を合わせた、改選非改選含めた議席数で、162議席を取れば3分の2に達することが一目瞭然になっていた。

 そして、その結果は、165議席だった。

 要するに、昨日の参院選により、改憲勢力は、衆参ともに3分の2の議席に達し、憲法改正の発議が可能となった。

 今後は、憲法改正の日程が具体化されていくことになる。なお、衆院の任期は残り約2年半。それまでに、緊急事態条項などの憲法改正をゴリ押しすると、支持率が下がり、次の衆院選、次の参院選に響くのは必至。そう考えると、早い段階で、衆院選を実施するかもしれない。

 今回の参院選では、野党は、焦点だった78議席については、ぎりぎり喰いとめ、32ある一人区で11勝した。これは来たる衆院選で、改憲勢力の3分の2議席を防ぐことを可能にする力をつけてきていることを意味する。(佐々木奎一)

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2016年07月13日

ニンジン

520日付の週刊朝日の連載「司馬遼太郎の言葉 37」は、「『三浦半島記』の世界3 読経の『忍人』」という記事だった。そこでは、次の司馬氏の言葉を紹介している。

 「頼朝は、たしかにただ一人で日本史を変えた。(略)その偉業のわりには、後世の人気に乏しい。頼朝は、自分自身の成功にさえ酔わなかった。その酷薄さはあるいは生来のものでないかもしれず、人心に対する虚無の思いの底に、つねに血刀をもつ長田荘司忠致とその子らが棲んでいたかと思える」

 そして、本文には、こうある。

 「源氏の棟梁で、平清盛のライバルだった義朝は「平治の乱」(1159年)に敗れ、都落ちする。

 知多半島の長田荘司忠致を頼った。同行の鎌田政家の舅で、長年の知己でもある。忠致は敗走に疲れた義朝に行水をすすめる一方、政家は酒席でもてなした。

 ところがすべて罠だった。

 まず、風呂に隠れていた数人の男たちが裸の義朝にのしかかって刺殺した。

 騒ぎを聞いて立ち上がった政家はすねを斬られ、倒れると、談笑していた男たちが次々に刺した。」

 「一方、父を失った頼朝は捕らえられた。13歳だが、男児であり、本来なら殺されても仕方がなかった。しかし亡くした子に面影が似ていると、清盛の継母が命乞いをしたことで、伊豆に流される。

 以後、20年間、頼朝は伊豆の蛭ケ小島(現伊豆の国市)で読経三昧の日々を送ることになる。

 般若心経を毎日十九回高唱し、念仏は千百遍となえた。

 千遍は父義朝のため、百遍は鎌田政家のためである。

〈憎悪の情の深さは尋常ではなかった。日々、死者たちを供養しているのは、頼朝の場合、恨みを日々深めているといってよかった〉

 こうして忍耐の日々を送った頼朝は、1180年に挙兵する。

 最初は敗れたが、伊豆半島の北条氏、三浦半島の三浦氏、房総半島の上総氏、千葉氏などの協力を得て、鎌倉幕府をつくり上げていく。

 うそのような話で、父を殺した長田忠致も平家の衰えを見て、頼朝の陣に加わっている。受け入れる頼朝もまたすさまじい。」

 そして、こう記している。

 「『初代鎌倉市長に挨拶しようか』

 と、1995年、司馬さんは鎌倉・鶴岡八幡宮の近くの頼朝の墓に詣でている。長い階段を上りつつ、司馬さんはいった。

『頼朝は忍人だね』

 一瞬、人参かと思ったが、『三浦半島記』に説明がある。

〈忍という文字は、善と悪の両義性をもっている。耐えしのぶには、意志の力が要る〉

 この意志力は善だという。

〈しかしそれだけのつよい意志をもつ者は、いざとなれば残忍だろうということから、“忍人”という場合、平然としてむごいことができる人ということになる〉

 頼朝は源義経、範頼といった2人の弟を死に追い込んでいる。とくに平家との戦いで大功をあげた義経の人気が高かっただけに、頼朝は冷酷な印象を後世に与えた」


 池田大作教が蔓延し、時の権力と結びつき猛威を振るう時世に嫌気が差すとき、「忍人」として耐えしのんだ頼朝に思いを馳せると、筆者は、気が楽になる。


 頼朝は、「忍人」として耐えしのぶなかで、在るべき国づくりの姿を模索したことだろう。頼朝は、残忍といわれることが多いが、いくさのない国を志向していたはずだ。実際、鎌倉幕府は約150年間続き、その頼朝の政治は徳川家康に受け継がれ、200年以上もの太平の世を築いた。


 驕る池田教と安倍党が猛威を振るう今も、スケールの大きい忍人が胎動していることだろう。

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2016年07月08日

参院選の争点「ナチスの手口」の「緊急事態条項」

 平成二十八年七月八日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「参院選の争点「ナチスの手口」の「緊急事態条項」」


 を企画、取材、執筆しました。




 参院選について各紙朝刊は、「改憲4党、3分の2に迫る 自民、単独過半数も視野 参院選・終盤情勢調査」(7日付朝日新聞)、「参院選 終盤情勢 改憲勢力23の勢い」(6日付毎日新聞)、「参院選終盤情勢 本社調査 与党 改選過半数へ堅調」(6日付読売新聞)、「改憲勢力、3分の2に迫る、自民、単独過半数も視野、民進、巻き返し苦戦」(6日付日本経済新聞)などという見出しで報じている。

 これによると、「安倍晋三首相が目指す憲法改正に賛同する自民、公明両党、おおさか維新の会などの『改憲勢力』は、改憲発議に必要な全議席の3分の2162)に届く見通しが強まった」(毎日新聞)、「3分の2に迫る勢い」(朝日新聞)、「3分の2に迫る情勢」(日本経済新聞)、「3分の2162)をうかがう情勢」(読売新聞)などと、「迫る」「うかがう」といった、例によって政府与党に遠慮した、意味不明なぼやけた表現をしている。ありていにいうと、改憲発議をする可能性が極めて高い危機的な情勢となっている、ということである。

 そうした中、ニュースサイトIWJ1日付で「参院3分の2議席で現実化する!世界の常識では絶対悪『ナチス』の手口。ヒトラー独裁政権を徹底検証!」と題し、ジャーナリスト岩上安身氏の石田勇治・東京大学教授への計4時間にわたるインタビュー動画をアップしている。それによると、改憲の発議で取沙汰されている自民党壊憲草案の「緊急事態条項」の中身は「国会の事前同意必要なし」「基本的人権が制限される」「法律と同じ効果を持つ政令の制定が可能に」「総理大臣が予算措置を行える」「『緊急事態』の期間に制限がない」「内閣は衆議院の任期を延長することができる」「地方自治がなくなる」「司法も行政に遠慮せざるを得ない状態になる」「集会・結社・言論・報道の自由が制限されるおそれ」がある。

 この自民党の「緊急事態条項」が、ヒトラーが自作自演で国会を炎上させ、直ちに成立させた「国会議事堂炎上令」(民族と国家を防衛するための大統領緊急令)と、その後につくった「授権法」を合わせた内容と酷似しているという。

 ヒトラーは、国会議事堂炎上令により、「共産主義者による国家の安全を危険にさらす暴力行為を未然に防ぐため」という名目で、国民の「人身の自由」「住居の不可侵」「信書・郵便・電信電話の秘密」「集会の権利」「結社の権利」「所有権の保障」などを「当分の間、効力を停止」する。また、「言論の自由」や、「家宅捜査・押収の命令」などの制限は「一定の法律上の限界を超えるときにおいても、認められる」とし、これにより国民の基本的人権を制限した。これにより、令状なしの逮捕(保護拘禁)、収容所に拘禁が横行した。また、この条文には、「州において公共の安全及び秩序の回復に必要な措置がとられないときは、共和国政府は、その限りにおいて州最高官庁の権限を一時的に用いることができる」とすることで、地方自治体の権限をはく奪した。これにより、例えばナチスの党章であるカギ十字の「ハーケンクロイツ」を、地方の役所などに掲げるようナチスが迫り、反対した首長らはすべて更迭されるなどして、あっという間、ものの一か月もたたないうちに、「ナチ化」が完了したという。

 なお、この「国会議事堂炎上令」の期間は「当面の間」とされていたが、結局、1945年まで解消されなかった。

 自民党の「緊急事態条項」も、際限なく期間延長が可能である。

 ヒトラーはこうして異論を封殺した上で、「授権法」を成立させた。授権法成立には、国会議員総数の3分の2以上の出席、出席議員の3分の2の賛成投票が必要だが、それが思い通りにならない。そのため、議事堂炎上事件の容疑者として共産党の国会議員を全員拘束して、議決のための母数を減らし、反対派の欠席戦術を未然に防ぐため、「議長の認めない事由で欠席する者」は登院を認めず、「その欠席は出席とみなす」という、議院運営規則改正案を直前に国会に提出し、1933323日、通過させた。このとき、補助警察という肩書のナチスの突撃隊員が多数議場に入って議員を威圧し、採決が行われた。

 こうして決まった「授権法」は第1条「国の法律は、憲法に定める手続きによる他、政府によっても制定されうる」、第2条「政府が制定した国の法律は、憲法と背反しうる」とある通り、ワイマール共和国憲法の無意味化をはかり、「国会議事堂炎上令」とともにヒトラー独裁の法的根拠となった。その後、ヒトラーは、やりたい放題で、続々と「ナチ法」と呼ばれる新法を制定していった。

 自民党の「緊急事態条項」も、国会を経ないで法律をつくる権限がある。

 なお、ヒトラーは、授権法成立までは特に、表向きは、平和演説などをやり、子供と手つないでニコニコしている写真など、親しみやすい人物像を宣伝し、民衆宰相ヒトラー、平和愛好家ヒトラーと呼ばれていた。3334年頃のイギリスの新聞は「ヒトラーはジェントルマン」と書いてあるという。その裏では、ヒトラーは、軍人向けに秘密の再軍備の演説をしたりしていた。つまり、国民に対し、本音を隠して、権力を掌握していったというわけ。

 なお、安倍首相は、例えば、2015814日の「戦後70年談話」で、「自由で民主的な国を創り上げ、法の支配を重んじ、ひたすら不戦の誓いを堅持してまいりました。七十年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たちは、静かな誇りを抱きながら、この不動の方針を、これからも貫いてまいります」「我が国は、自由、民主主義、人権といった基本的価値を揺るぎないものとして堅持」します、などと言っていたが、例えば、これはほんの一例だが、第一次安倍内閣で元法相だった長勢甚遠氏は、平成24510日に、「創生『日本』」という団体の研修会で、自民党改憲草案にはがっかりした、国民主権、基本的人権、平和主義。この3つは、マッカーサーが押し付けた戦後レジームそのものだ、この三つをなくさなければ本当の自主憲法にはならない、といって、会場から拍手を浴びている。

 この長勢氏は、「創生『日本』」の会長代理。そして会長には、安倍晋三氏が就いている。ほかにも、副会長に菅義偉、塩崎恭久、下村博文、高市早苗、世耕弘成、事務局長代理に稲田朋美、委員に麻生太郎氏などなど、挙げたら切りがない程、安倍政権の主要メンバーが名を連ねている。

70年談話などの演説と、創生「日本」の思想、どちらが安倍自公政権の本音なのかは、「ナチスの手口」からみて明白である。安倍自公政権は「緊急事態条項」を成立させた暁には、ヒトラーの時のように、隠していた爪をむき出しにして、やりたいことをやり始めることだろう。その命運は、10日投開票の参院選にかかっている。(佐々木奎一)



参考


長勢甚遠氏「国民主権、基本的人権、平和主義。この3つをなくす!

https://www.youtube.com/watch?v=ZDOjGXAI03s


創生「日本」役員・メンバー

http://www.sosei-nippon.jp/default_02.html

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2016年07月07日

参院選のキーマン「メルヘンチックな青い鳥層」

 平成二十八年七月四日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「参院選のキーマン「メルヘンチックな青い鳥層」」


 を企画、取材、執筆しました。



 けさの朝日新聞が参院選の世論調査を載せている。それによると、改憲勢力についての次の問い、「参議院選挙の結果、憲法改正に前向きな、自民、公明、おおさか維新、日本のこころの4党の議席が、参議院全体で、3分の2以上を占めたほうがよいと思いますか」に対し、「占めたほうがよい36」「占めないほうがよい41」(「%」は省略。小数点以下は四捨五入。以下同)となったという。

 また、「いまの日本の政治にとってより重要なのは、次のうちどちらだと思いますか。与党が安定した力を持つことですか。野党がもっと力を持つことですか」との問いに対し、「与党が安定した力を持つ38」「野党がもっと力を持つ43」という回答だったという。

 そうであるならば、投票先は反改憲の野党勢力になりそうなものだが、「今、どの政党を支持していますか」との問いについての回答は、野党の民進9、共産4、社民0、生活0、その他の政党1に対し、改憲勢力の自民31、公明4、おおさか維新2、日本のこころ0、元気0、新党改革0と、合計で野党13に対し、改憲勢力37という、改憲派の圧勝をにおわせる数値となっている。

 前出の「与党が安定した力を持つ38」「野党がもっと力を持つ43」と比較すると、改憲勢力37というのは、ほぼ同数だが、野党13というのは、38より25も減っている。

 これは一体どういうことなのか――。実は上記の「今、どの政党を支持していますか」との問いでは、「支持する政党はない23」「答えない・分からない26」という層がいる。

 この23プラス2649のうち、約半数の26を、先の13に加えると、先の38となる。

 つまり、「支持する政党はない23」「答えない・分からない26」の中には、正真正銘、政治のことがわからず、選挙には行かない、という人がいる。こういう人は論外だが、他方で、約半数は、政治には、ある程度関心はあり、改憲勢力が三分の二をとることには問題意識を持っており、かといって野党も理想と違うので支持できないし…、だから選挙にも行かない、という層がいる。「この層」が、キーポイントである。

 なお、前回、前々回の、参院選の約一週間前にも、朝日新聞は、同様の世論調査をしている。「今、どの政党を支持していますか」という問いに対し、前回2013年時には、「支持政党なし38」「答えない・分からない8」、合計46だった。そして、実際の投票率は、52.61%だった。前々回2010年時には、「支持政党なし30」「答えない・分からない13」、計43。投票率は57.92%だった。

 このように、世論調査で、支持政党なし、答えない、と言っている割合と、投票に行っていない率は、ほぼ一致している。

 それに照らすと、今回も、「この層」は、選挙に行かない可能性が極めて高い。

 ということは、このままでは、さきの野党13、改憲勢力37という数値に近い結果になる可能性が、このままでは高い。

 それにしても、「この層」は、改憲勢力が圧勝してしまうのがダメだと思っているのに、その事態を避けるために必要な野党への投票ができない、というのは、野党に理想を求め過ぎている。それに、昨年までの、野党が分裂してバラバラのため、与党の一人勝ちを招く、という事態は、「野党共闘」により、もうない。野党第一党は名前を変え、新しいリーダーも出てきている。要するに、以前とは状況は違う。

 もちろん、野党は理想とは程遠いが、理想の政党でなければ投票しない、というのは、現実には存在しない、「幸せの青い鳥」をもとめるようなものである。選挙の投票というのは、現実を直視して、たとえ理想とはかけ離れていても、よりましなほう、をシビアに選択していく作業である。この選択の繰り返しのなかで、徐々に理想に近い政党をつくっていく、という、気の長いプロセスが必要になってくる。そうした苦々しい選択も経ないで、「理想通りの政党がないから、どこに投票したらいいか決めれない、だから選挙には行かない、関心を持たせない今の政治がわるい」などというのは、精神的に幼稚と言わざるを得ない。

 「青い鳥症候群」という言葉がある。これは「いつまでも“幸福の青い鳥”がどこかにいると信じ、追い求めようとする若者の心の状態と行動パターン」という。「先の見通しや状況を考えないだけでなく、生活そのものを安直に考え、対人関係に不器用で、こらえ性がないのが特徴」で、「どこかもっと自分にふさわしいところがあるに違いないという思い込みから、努力や忍耐をしないで、転職・転校を繰り返し」、「自分で思い描いていた仕事や学校のイメージと、現実のギャップに耐えることができないで、職場や学校に行かなくなってしまったり、無気力になってしまう」「自分の人生に責任をもちたがらず、バランスのとれた大人へと成熟していくことを先延ばしにしようとする現代の青年の一般的傾向」という。(「心の病.net」より)

 つまり、青い鳥層は、精神的に幼稚だが、若者だけではなく、中年や高齢者にもいる。こういう人たちのなかに、上記のように、改憲勢力が三分の二をとるのは問題だけど、野党も理想とは程遠いし…、といって青い鳥を求め、どの党、候補者にも投票したくない、といって選挙に行かない人たちがいる。

 なお、今日発表の時事通信の世論調査によると、「自民党は改選50議席から上積みし、公明党と合わせ改選過半数(61)の勢いで、27年ぶりの単独過半数(57)」が射程距離で、与党におおさか維新の会と日本のこころを大切にする党を加えた「改憲勢力」で、改憲発議に必要な3分の2162)の確保」も、断定はできないが、そうなる可能性は高い状況という。

 青い鳥層は、メルヘンチックに理想を求め、今回も選挙に行かないのだろうか。(佐々木奎一)

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2016年07月04日

英EU離脱、舛添集団リンチに見る民主主義の深い病い

 平成二十八年七月一日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「英EU離脱、舛添集団リンチに見る民主主義の深い病い」


 を企画、取材、執筆しました。



 イギリスのEU離脱について、627日付の当コーナーでは、英王立国際問題研究所主任研究員トーマス・レインズ氏が、「比較的所得が低く、反エスタブリッシュメント(支配階級)感情が強い層の人たちが離脱に票を投じた。離脱派と残留派の対立は、米大統領選で候補指名を確実にした民主党のヒラリー・クリントン、共和党のドナルド・トランプ両氏の支持者間の分断に似ており、多くの先進国に共通して見られる」と指摘し、フランスの国際政治学者ドミニク・モイジ氏は、「背景には、大衆のエリート層、エスタブリッシュメント(支配階級)に対する反発がある」「EU離脱を決めたことで、英国が悪い方向へ大きな一歩を踏み出したのは間違いない」と指摘したことを紹介した。

 要するに、大衆が、国民投票により、自分たちの命運を自分たちで決めた結果、悪い方向へ踏み出す。これは、「衆愚政治」である。

 日本大百科全書(小学館刊)によると、「衆愚政治」とは、下記のとおり。

 「古代ギリシアの民主政ポリスにおいて、参政権を獲得した大衆が烏合の衆と化して無定見な政策の決定を行った政治。その典型とされる紀元前5世紀後半のアテネでは、ペロポネソス戦争の遂行にあたって、ペリクレス亡きあとクレオンをはじめとするデマゴゴス(民衆指導者)が国政の最高決定機関である民会を牛耳って失策を重ね、やがて敗北に至った。こうした状況を厳しく批判したのがプラトンやアリストテレスらの思想家であり、彼らは、前5〜前4世紀のアテネで実現された徹底した民主政治(民衆による支配)を下層の貧民による支配ととらえ、これを衆愚政治として批判したのである。同様の見解は、後のローマの歴史家ポリビオスの政治理論にもみられる」

 つまり、衆愚政治という、いわば民主政最大の病いが、今、世界で吹き荒れているということになる。では、わが日本は、例外といえるだろうか。

 先般、違法行為をしたわけでもない舛添氏に対し、たまごサンドを買ったなどとぃう低次元の話で、大衆、マスコミ、政治家が寄ってたかって舛添氏を執拗に集団リンチで辞任に追いやったのは、周知のとおり。

 そのときのマスコミは常軌を逸していた。なお、新聞はひどい内容で、週刊誌はさらにひどく、テレビは、さらに次元の違う低劣さである。

 テレビの低劣さは、挙げればきりがないが、ほんの一例をあげると、例えば、19日付のフジテレビの「Mr.サンデー」という番組では、舛添氏の高校時代の文通相手の女性を取材し、驚くべきことに、舛添氏が当時書いたラブレターを公開して人格批判した。(22日付日刊現代電子版より)

 ほかにも、例えばフジテレビの番組「直撃LIVE グッディ!」は舛添氏に対する都議会での集中審議の際、「あなたならどう攻める?」との字幕を出し、視聴者にツイッターで回答を求めた(18日付朝日新聞朝刊より)。

 ほかにも、これもほんの一例だが、11日放送のカンテレのトークバラエティー「胸いっぱいサミット!」で、コラムニストの勝谷誠彦氏は、舛添氏について、「みっともない。こいつこんなに下品なのか。やっぱりねずみ男やなと思った」と罵倒したり(611日付デイリースポーツ電子版)、お笑い芸人の松本人志は8日放送のフジテレビ系「ワイドナショー」で、舛添氏について、「言い返しがかわいくないんですよ。もうちょっとかわいく言ってくれたらいいんですけど」「結局、メッキと頭がハゲてきたんでしょうね」などと、容姿を茶化して罵った。ひとの容姿を馬鹿にするというのは、いじめである。

 こうした公共の電波を使って、公然といじめる、という異様な状況下で、舛添氏は14日の議院運営委員会で、「子どものことを言うのはなんですが、高1の娘と中1の息子がいます。毎朝、テレビに追いかけられ、泣きながら帰って来る。妻にもカメラを回して『やめてください』とガーガーと叫んでいる映像ばかり流して『変な女』と報じられます。週刊誌やワイドショーは基本的人権を考えてもくれない。子どもも殺害予告をされている」と述べるほど深刻な状況になっていた。(14日付日刊スポーツ電子版)

 このように切々と訴えているにもかかわらず、低劣を地でいくテレビのワイドショーや週刊誌のみならず、新聞、そして、都議会、国会、政府与党から野党まで、こぞって舛添氏を批判して、公然と辞任を迫り、辞めさせた。

 この状況を、漫画家の小林よしのり氏は、「『民主主義という病い』はもう脳髄に達していて、治療不可能である」、と嘆いている。

 こういう状態が露呈するなかで、長年日本が手本としてきた民主主義の大国イギリスですら、衆愚政治に陥り判断を誤った、といわれる中、果たして、わが日本の大衆は、賢明な判断ができるだろうか?

 もちろん、民主主義というのは、大衆が誤った判断、政策を行ったしても、それにより手痛い失敗に遭うことで、大衆は学び、少しずつ賢明になっていくものなのかもしれない。ただし、それには膨大な犠牲を払う。例えば、第三次世界大戦のような戦争がおこり、何億人も犠牲になった末に、大衆は学ぶかもしれない。

 他方、このようなプロセスを経て甚大な犠牲を払うのではなく、ワイドショーや週刊誌、スポーツ新聞といった類の、ゴシップ政治ニュースだけで政治を判断しているような、低劣なことばかりに関心がいってしまう人たちには、参政権付与はまだ早いのではないか、そういう人たちの参政権は剥奪すべし、といった声も出てくるかもしれない。例えば、全ての成人に対し、政治、社会常識の試験を科し、その試験に合格しない限り、選挙での投票権も国民投票権も与えない、といった政策を求める声が上がるかもしれない。

 ちなみに、29日付の読売新聞朝刊の記事「英EU離脱 国民投票の危うさ指摘 閣僚、ポピュリズム懸念」によると、「英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めたことを巡って28日、閣議後の記者会見で、国民投票がポピュリズム(大衆迎合主義)に陥る危険性を指摘する声が相次いだ」、具体的には、「麻生副総理兼財務相は『議院内閣制を良しとする英国で、代議員制度ではなく直接投票を選んだのはいかがなものか』と述べ、議会で冷静に議論を進めるべきだったと強調」し、「河野国家公安委員長は『離脱派の公約があまり正確ではなかったとも言われている。ポピュリズムに陥らないよう、民主主義で物事を決める難しさを再認識する必要がある』と語った」という。

 このように、安倍自公政権の閣僚たちでさえ、衆愚政治の世界的潮流を認識している。そうであるがゆえに、もしも参院選で自公が勝ったとしても、憲法改正のための国民投票をするべきではない。もしもこの時代に国民投票をすれば、衆愚政治の波に乗じて憲法改正をした「デマゴーグ(煽動政治家)」として、安倍自公政権の面々は、歴史に汚名を刻むことだろう。われわれは民主主義の危機に直面している。(佐々木奎一)





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2016年07月01日

イギリス「国民投票」でEU離脱の教訓

 平成二十八年六月二十七日付、のauのニュースサイト


  EZニュースフラッシュ増刊号の「朝刊ピックアップ」で記事 


 「イギリス「国民投票」でEU離脱の教訓」


 を企画、取材、執筆しました。



 先週金曜(624日)の昼前、イギリスが欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票の開票の結果、離脱支持が全体の過半数を占め、離脱をすることになった、という情報が、にわかに流れた。これを受け、世界中の金融市場に激震が走った。

 「英通貨ポンドは対ドルで31年ぶりの安値を付けた。マネーは『安全資産』とされる円や金に向かい、金の国際価格は約2年ぶりの高値を付けた。日経平均の終値は前日比1286円(8%)安の14952円と、18カ月ぶりの安値を付けた。IT(情報技術)バブルが崩壊した20004月以来の急落で、過去8番目の大きな下げだ。東証1部で値上がりしたのは6銘柄しかなく、株価が暴落した1987年の『ブラックマンデー』の7銘柄より少なかった。(中略)アジア市場では、香港株やシンガポール株などが下落。(中略)円相場は日本時間の正午前に一時1ドル=99円ちょうどを付けた。100円突破は201311月以来だ。東京市場の1日の値幅は760銭に達した」(25日付日本経済新聞朝刊)。

 「続いてこの日の取引が始まった欧州市場では独仏の株価指数が大きく下げ、イタリアとスペインの指数も12%超下落した。英指数のFTSE100は一時8%超下落したが、売り方の買い戻しも入って終値では3%安だった。残る米国市場でも、ダウ平均が前日比610ドル32セント(34%)安の17400ドル75セントで終え、3カ月ぶりの安値に沈んだ」(同日付同紙夕刊)

 なお、国民投票の結果を受け、イギリスのデービッド・キャメロン首相は辞任を表明した。

 このイギリスのEU離脱について、欧州ではどういう見方がされているのかについて、同紙では、「エリートと大衆断裂、試練」と題し、フランスを代表する国際政治学者の仏国際関係研究所特別顧問ドミニク・モイジ氏が、こう述べている。

 「英国が直面する最初の苦難は、連合王国を維持できるかという問題だ。ロンドンやスコットランドではEUに残留すべきだとの声が多数派で、ほかの地域は北アイルランドを除き、おおむね離脱に賛成だった。ロンドンは連合王国を抜けられないだろうが、スコットランドはそれができるし、そう願うはずだ。地域間の対立が浮き彫りになり、英国は連合王国の解体というリスクに向き合うことになる。

EU離脱を決めたことで、英国が悪い方向へ大きな一歩を踏み出したのは間違いないが、一つの選択として尊重されなければならない。だが、無謀な賭けに負けたキャメロン首相が辞任し、責任を取るのは当然だろう。次の首相はEU離脱の影響をいかに抑えるかが求められる。

 英国は域内2位の経済規模を持つ。米国と特別な関係を築いており、欧州における外交や安全保障上の主要なプレーヤーだった。そして、欧州の民主国家の生みの親でもある。それだけにEUにとって英国の離脱は大きな打撃で今後、弱体化するのは避けられない。欧州統合計画の崩壊が始まったといえる。

EUからの離脱を選んだ英国民の判断は、欧州の多数派の意思を反映したともいえる。今、欧州各国がEU離脱の是非を問う国民投票をすれば、英国と同じような結果になるだろう。

EU離脱を主張する勢力はデンマークやオランダにもある。フランスには(極右政党の)国民戦線があり、国民投票の実施を要求している。英国のEU離脱は、こうしたポピュリズム(大衆迎合主義)や反欧州統合の動きを勢いづける。英国の国民投票でこの大惨事が来る時期が早まるが、もともと避けられなかったのも確かだろう。

 こうした急進政党が欧州で勢力を伸ばしている背景には、大衆のエリート層、エスタブリッシュメント(支配階級)に対する反発がある。有権者は既存の政党が自らの声を代弁していないと感じている。それゆえ、極右や極左政党はエリート層を非難する同じ方向に近づきつつある。

 我々は英国民投票の結果を教訓としなければならない」

 また、EUの対外政策などに詳しい英王立国際問題研究所主任研究員トーマス・レインズ氏は、こう語っている。

 「投票運動中は離脱派と残留派が中傷合戦を繰り広げ、英国社会に亀裂を残した。特に離脱した場合の経済的影響について主張が対立した。離脱派が根拠とした数字はまっとうな組織が出したものとは言えなかった。エコノミストの大半は離脱で英国が受ける打撃を警告してきた。それでも比較的所得が低く、反エスタブリッシュメント(支配階級)感情が強い層の人たちが離脱に票を投じた。

 離脱派と残留派の対立は、米大統領選で候補指名を確実にした民主党のヒラリー・クリントン、共和党のドナルド・トランプ両氏の支持者間の分断に似ており、多くの先進国に共通して見られる。近代的なコスモポリタン(世界主義)の社会が心地よいと考える人々と、伝統的な地域の価値観が脅かされていると感じる人々との間の深い溝だ」

 この世界規模の根深い対立のうねりは、日本にはないといえるだろうか?

 イギリスのEU離脱は「国民投票」で決まった。国民投票といえば、日本でも、安倍自公政権が7月の参院選で改憲勢力で三分の二議席を取れたら実行しようとしている。

 「国民投票」の危うさについてはね25日付の同紙に、「世界史のなかでナチスほど『民意』をよく問うた政権はなかった」というコラムがある。そこには、こう書いてある。

 「世界史のなかでナチスほど『民意』をよく問うた政権はなかった――。などと書けばまさかという声が出るに違いないが、一面の事実である。重大な問題はしばしば国民投票にかけられ、そのたびに政権の意向を支える結論がもたらされた。しかも圧倒的な票差だった。▼国際連盟脱退、ヒトラーのための『総統』職の新設、オーストリア併合……。いずれも直接民主主義の手法にのっとり、人々の幅広い『支持』を得たのだ。もちろんそこには、反対など許さない徹底した監視・密告の網が張り巡らされていた。投票用紙には『賛成』に印を付けるよう、露骨な仕掛けを施したこともあった。▼欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国の国民投票を、そんな手合いと一緒にするつもりはない。直接民主制は古代から続く民主主義の一つのかたちだ。とはいえそれが有無を言わさぬ決定力を持つとともに、世の感情を過剰なまでに映す存在なのだと見定めておく必要はあろう。切れ味はぞっとするほど鋭いのである。▼ナチスのやり方はインチキだらけだったが、ちまたに漂う空気に迎合し、熱狂した人も少なくなかったとされる。かの独裁者は国民投票の特質を知り抜いていたのだろう。いまキャメロン首相は、取り扱いの難しいそういう危険物を持ち出した非をつくづく悔いているかもしれない。魔物のような『民意』を恨んでも遅い」

 ちなみに、安倍自公政権の麻生太郎・財務相兼副総理は、憲法改正論に関して、「ナチス政権の手口を学んだらどうか」と発言したのは記憶に新しい。目下、そのナチスに学んだ手口の具体的な形と見られているのは、自民党壊憲草案にある「緊急事態条項」である。国民投票による急激な政治の悪化――これは日本にとって対岸の火事ではない。(佐々木奎一)





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