フジちゃんに対し、一緒に住もう、といったん約束しておきながら、それを反故にし、フジちゃんを絶望に追いやり死なせてしまったのだろうか? 頭がガンガンした。
それにしても、昨日、大家さんから異例の許可をもらったというのに、一日遅れで間に合わなかったというのでは、あまりに残酷な話ではないか?
悲しみにくれたカミさんは、涙がとまらなかった。
「ふじちゃん、ごめん」と何度もつぶやいていた。
フジちゃんに対し、一緒に住もう、といったん約束しておきながら、それを反故にし、フジちゃんを絶望に追いやり死なせてしまったのだろうか? 頭がガンガンした。
それにしても、昨日、大家さんから異例の許可をもらったというのに、一日遅れで間に合わなかったというのでは、あまりに残酷な話ではないか?
悲しみにくれたカミさんは、涙がとまらなかった。
「ふじちゃん、ごめん」と何度もつぶやいていた。
それまで毎日必ず、カミさんか妹がふじちゃんにごはんをあげられていたにもかかわらずである。
「最後に見たのは金曜日」、カミさんもフジちゃんの消息は金曜日が最後…。
「そんな…」
しばらく絶句したカミさんは、涙ながらに言葉を絞り出す。
「これから一緒に暮らすんです。今日、今日これから一緒に行くんです」
そんなカミさんに、おばさんは不思議そうに「ボランティアか何かの方ですか」と聞く。
カミさんは半ば取乱し気味にかぶりを振りながら「違います。一緒に暮らすんです」と答えた。
涙が止まらなかったが、少し冷静さを取り戻したカミさんは、自分の連絡先を書いたメモをおばさんに渡した。
「あの子と一緒に暮らします。もしあの子を見かけたら、こちらに連絡を下さい」と、お願いした。
おばさんは、「わかりました。今度、たまを見かけたら、ここに必ず…」
そう言い残し、おばさんは、かなたへ去っていった。
「死んだかもしれませんよ」
その言葉を聞いた時、カミさんは、文字通り、こん棒で頭を思い切り殴られたような、衝撃をうけた。
「猫は死ぬときに姿を隠すというし…」などと、おばさんは、続ける。
「そんな……」
カミさんの目から、涙がどっとあふれ、しばらく言葉がつげなかった。
おばさんが、「あの猫はガリガリにやせて、(背中の毛をむしり過ぎて、)はげて…」云々と言っていた時は、カミさんは割と冷静に聞いていた。フジちゃんは、カミさんや妹たちがご飯をあげるようになってから、はげていたところに、うっすらと毛が生えはじめていて、一番ひどい時よりは、若干よくなっていた、おばさんは、そんなフジちゃんの変化を知らないのだ、と思っていた。
しかし、そうは言っても、ひどく弱っていたことには間違いなかった。だから、「死んだかもしれませんよ」という言葉には、かなりインパクトがあったのだ。
そして、カミさんには、気になっていることがあった。
「猫は死ぬ時には、姿を隠す」、それは一般論としては知っている。気になるのは、「最後に見たのは金曜日」と、おばさんが言ったことだ。
前日の土曜日の午前中、カミさんは、大家さんから、猫を飼う許可がおりた、ということは先に述べた。この連絡を受ける数時間前、ふじちゃんにご飯をあげに行ったのだが、この時、ふじちゃんに会えなかったのだ。それまでご飯をあげはじめてから、必ず、カミさんか妹がご飯をあげにいくと、すぐにフジちゃんが近づいてきてご飯をたべていた。それにもかかわらず、この日は午前中ずっと待っていても、ふじちゃんは現れなかった。
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